icon fsr

文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科84巻5号

2012年04月発行

文献概要

特集 最新の診療NAVI―日常診療必携 Ⅵ.外傷診療NAVI

1.鼓膜穿孔・耳小骨連鎖離断

著者: 三代康雄1

所属機関: 1兵庫医科大学耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.157 - P.161

文献購入ページに移動
Ⅰ はじめに

 外傷性鼓膜穿孔は日常診療でしばしば遭遇する外傷性疾患であり,その発生頻度は10万人当たり1.4~8.6人という報告がある1)。穿孔をきたす原因は,①直達性と,②介達性に大別される。直達性鼓膜穿孔は原因となる物体が直接鼓膜に作用して生じる穿孔で,綿棒や耳かきが原因であることが最も多く,ほかに無生異物(石,薬品など)や虫などの有生異物の侵入,花火や溶接の火花による熱傷などにより起こる。耳かき外傷はわが国では最も頻度が高いが,日本人特有のもので,耳掃除中に転倒したり,子どもや犬に飛びつかれたりして生じることが多い。一方,介達性鼓膜穿孔は物体が間接的に関係して起こる穿孔で,殴打(特に平手打ち),飛行機搭乗,潜水,頭部外傷などにより起こる。頭部外傷(特に側頭骨骨折)による鼓膜穿孔は顔面神経麻痺や耳小骨離断などを合併することが多い。また稀なものとして,耳鼻咽喉科診療のカテーテル通気が原因になることがある。特に鼓膜の菲薄化した症例では,通気に当たっては細心の注意が必要である。

 一方,外傷性耳小骨連鎖離断も原因として,直達性と介達性に分けられるが,直達性としては耳かき外傷,介達性としては頭部外傷が多い。頭部外傷では側頭骨骨折,顔面神経麻痺を合併することが多く,また受傷直後にはほとんどの症例が意識障害を伴っているため,耳鼻咽喉科を受診するのは,ある程度外傷が落ち着いて難聴を主訴に受診することが多い。

参考文献

1)Kristensen S:Spontaneous healing of traumatic tympanic membrane perforation in man:a century of experience. J Laryngol Otol 106:1037-1050, 1992
2)Lindeman P, et al:Acute traumatic tympanic membrane perforations, Cover or observe? Arch Otolaryngol Head Neck Surg 113:1285-1287, 1987
3)Amadasun JEO:An observational study of the management of traumatic membrane perforations. J Laryngol Otol 116:181-184, 2002
4)安井拓也・他:外傷性鼓膜穿孔.JOHNS 9:1227-1231,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?