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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科84巻5号

2012年04月発行

特集 最新の診療NAVI―日常診療必携

Ⅵ.外傷診療NAVI

3.顎顔面・鼻骨骨折

著者: 寳地信介1 鈴木秀明1 橋田光一1 池嵜祥司1 武永芙美子1 大久保淳一1

所属機関: 1産業医科大学医学部耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.169 - P.174

文献概要

Ⅰ 疾患(症候)の概説

 上顎骨は顔面中央部に位置し,周辺に眼窩,鼻・副鼻腔,口腔といった特殊な機能を有する臓器の骨組みを維持している。解剖学的な特徴から上顎骨単独の骨折は少なく,多くの場合周辺の骨と複合して骨折する場合が多い(図1)。耳鼻咽喉科で扱った顔面骨骨折の治療統計では,上顎骨骨折は鼻骨骨折に次いで多い。上顎骨骨折はLe Fort型骨折Ⅰ~Ⅲ型とsagittal fracture(口蓋の矢状骨折)の4つの基本型に大別される(表1)。Le Fort型骨折では,骨折の位置が低いほど骨折線が単純で,位置が高いほど粉砕を伴いやすい傾向がある。可動性はⅠ型ほど大きく(floating maxilla),より上方のⅡ型,Ⅲ型になるほど少なくなる。骨折の状態により,顔面全体の高度な腫脹,鼻出血,咬合異常,中顔面の変形(咬合不全が原因となるlong face,顔面中央部が陥凹するdish face,時に短縮)など多彩な症状を呈する(表1)。診察時は,受傷前の顔写真があると非常に有用である。また顔面を触診し,圧痛の有無や骨格の段差,異常な可動部位の有無,知覚障害の有無をチェックすることでより正確な部位診断ができる1)

 下顎骨は顔面骨の中でも外力を受けやすい位置にあり,中下顔面の強打で下顎骨折を生じる。一般に青年男子に多いが,高齢者では歯牙の脱臼や骨粗鬆症があるため,軽微な打撲でも下顎骨体部骨折や顎関節突起骨折をきたすことがある。下顎骨折は関節突起部,オトガイ部,体部の順に頻度が高く,下顎枝や筋突起に骨折が生じることは比較的少ない。咬筋粗面前縁より前方の骨折では開口筋群の作用で前上方へ転移しやすく,これにより,咬合・開口障害,開咬,歯列弓の変形が生じ,圧痛,軋轢音,動揺性疼痛,歯牙の損傷,下顎部顔面の変形,下顎神経領域の神経障害などが起こりうる2)

参考文献

1)坂部亜希子・他:上顎骨骨折.耳鼻咽喉科診療プラクティス13.耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の外傷と異物,文光堂,東京,2004,pp118-123
2)鈴木秀明:下顎骨骨折.口腔咽頭の臨床,医学書院,東京,2009,pp198-199
3)Becker OJ:Nasal fractures. Arch Otolaryngol 48:344-361, 1948
4)渡辺尚彦:鼻骨骨折・鼻中隔骨折.JOHNS 25:1308-1312,2009
5)深見雅也:鼻骨骨折.耳喉頭頸 69:60-69,1997

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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