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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科84巻5号

2012年04月発行

特集 最新の診療NAVI―日常診療必携

Ⅶ.炎症・感染症診療NAVI

7.インフルエンザ

著者: 林達哉1

所属機関: 1旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科

ページ範囲:P.212 - P.216

文献概要

Ⅰ 疾患の概説

 インフルエンザは感冒様症状に高熱,強い倦怠感,筋肉痛,関節痛などの全身症状を伴い,毎年,世界中で流行する。非常に一般的な感染症であるが,通常の感冒より重症化しやすく,幼小児における急性脳症や高齢者における二次性細菌性肺炎などを合併すると死亡に至る例があることから,単なる感冒とは区別して対策を立てる必要がある。

 インフルエンザウイルスはオルソミクソウイルス科に属するRNAウイルスで,ウイルス粒子内の核蛋白複合体の抗原性の違いにより,A型,B型,C型の3種類に分類される。毎年流行を引き起こすのはA型とB型であり,ワクチンもA型とB型に対してのみ製造される。ウイルスは表面に赤血球凝集素(hemagglutinin:HA)とノイラミニダーゼ(neuraminidase:NA)という2種類の糖蛋白からなるスパイク状構造を有する。HAは気道粘膜細胞のレセプターと結合して,細胞内感染を成立させるうえで主要な役割を果たしており,ワクチン成分でもある。NAは宿主細胞内で増殖したウイルスが宿主細胞からウイルス粒子として遊離する際に酵素として作用する。抗インフルエンザ薬である各種ノイラミニダーゼ阻害薬はこの働きを阻害することにより,ウイルスの増殖を抑制する。A型インフルエンザのHAには16種類の亜型(H1~H16),NAには9種類の亜型(N1~N9)があり,その組合わせによりさまざまな動物(ヒト,トリ,ブタなど)に感染することのできる人獣共通感染症の性格を有する。

参考文献

1)WHO:Cumulative number of confirmed human cases of avian influenza A(H5N1)reported to WHO http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/H5N1_cumulative_table_archives/en/index.html
2)国立感染症研究所感染症情報センター:インフルエンザ http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/
3)徳野 治・他:各種インフルエンザ迅速診断キットの評価,検出感度の比較検討.感染症学雑誌 83:525-533,2009
4)松井邦彦・他:かぜ総論 ウイルス診断テストの結果をどのように解釈するか,インフルエンザの迅速キットによる診断を中心に.JOHNS 24:1671-1673,2008
5)腰原公人:ウイルス感染症 インフルエンザウイルス.JOHNS 26:1754-1758,2010
6)社団法人日本感染症学会・新型インフルエンザ対策委員会:日本感染症学会提言「抗インフルエンザ薬の使用適応について(改訂版)」 http://www.kansensho.or.jp/influenza/110301soiv_teigen.html
7)Sugaya N, et al:Mass vaccination of schoolchildren against influenza and its imapact on the influenza-associated mortality rate among children in Japan. Clin Infect Dis 41:939-947, 2005
8)Reichert TA, et al:The Japanese experience with vaccinating schoolchildren agains influenza. N Engl J Med 344:889-896, 2001
9)厚生労働省:インフルエンザ対策 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/index.html

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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