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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科84巻5号

2012年04月発行

特集 最新の診療NAVI―日常診療必携

Ⅶ.炎症・感染症診療NAVI

10.HIV感染

著者: 松延毅1

所属機関: 1防衛医科大学校耳鼻咽喉科学講座

ページ範囲:P.227 - P.232

文献概要

Ⅰ HIV感染症の現状と疫学

 世界全体でみると,2008年の新規Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス:HIV)感染者は270万人(成人230万人,15歳未満43万人)である。新規HIV感染率がいまだに高いことや抗レトロウイルス療法により長期間の生存が可能になったことから総HIV感染者数は増加し続けている。2008年末の世界のHIV感染者数は3,340万人(成人3,130万人,15歳未満210万人)と推計されている。アフリカには約70%が分布していると報告されている。近年は東ヨーロッパと中央アジア(中国など)で新規HIV感染率が高く,原因として注射器による薬物使用が指摘されている。これら薬物使用者はしばしば風俗業にも従事しており感染リスクを拡大している。

 わが国においてはアメリカなどに比べはるかに低い水準で推移してきているが,近年増加傾向が顕著になり厚生労働省のエイズ動向委員会報告によると,2011年3月27日現在わが国におけるHIV感染者数の累計は1万2866人,後天性免疫不全症候群(AIDS)患者数の累計は5,900人である。ここ数年,HIV感染者は年間1,000人強,AIDS患者は年間400人強のペースで増え続けており,検査態勢の拡充など,感染状況の把握,拡大防止策がとられているところである。感染者の傾向として,現在では若年者の性的接触によるものが多数を占めるようになってきており,異性間の性的接触による感染も増加している1)。近年,医療の進歩によりHIVに感染しても長期間社会の一員として日常を営むことができるようになり,さらにさまざまな支援体制も整備されつつあるが,わが国ではいまだにAIDSを発症して医療機関を受診する例も多い。今後は日常診療の現場でも耳鼻咽喉科医がHIV感染症に遭遇する機会が増加すると予想される。2003年11月の感染症法改正で4類から5類感染症に変更され,発見から7日以内に所定の様式に従って届け出る必要がある。

参考文献

1)日本エイズ学会:HIV-1/2感染症の診断法2003版(日本エイズ学会推奨法).The Journal of AIDS Rsearch 5:136-140,2003
2)Bartlett JG, et al:2005-2006 Midical management of HIV infection. Johns Hopkins Medicine. Health Publishing Business Group, Baltimore, Maryrand, 2005
3)鈴木幹男・他:HIV感染症.JOHNS 26:1733-1736,2010
4)厚生労働省・エイズ治療薬研究班:抗HIV治療ガイドライン2011年3月版
5)里口正純:消化器外科とAIDS.消外 17:1937-1944,1994
6)本島柳司・他:HIV陽性患者に対する手術症例の検討.日臨外会誌 66:1252-1255,2005
7)味澤篤:耳鼻咽喉科に関連した感染症の病態・診断・治療の要点AIDS,JOHNS 16:1143-1145,2000
8)松延 毅・他:HIVウイルス.耳喉頭頸 83(増刊):212-216,2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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