耳鼻咽喉科・頭頸部外科84巻5号

2012年04月発行

特集 最新の診療NAVI―日常診療必携

Ⅺ．好酸球関連疾患診療NAVI

1．好酸球性中耳炎

著者： 松原篤¹

所属機関： ¹弘前大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科学講座

ページ範囲：P.307 - P.311

文献概要

Ⅰ　好酸球性中耳炎とは

　好酸球性中耳炎は，好酸球を豊富に含んだ膠状の中耳貯留液を特徴とする難治性の中耳炎である。本症は1992年に「気管支喘息における難治性中耳炎」として富岡らにより報告され^1），1995年に好酸球性中耳炎（eosinophilic otitis media）と命名された^2）。

　本症の最大の問題点は難聴の進行にある。鈴木ら^3）よる全国調査では，聾に至った症例は6％であり，Nakagawaら^4）によれば，適切な治療が行われない場合の難聴の進行速度は，通常の慢性中耳炎に比べて約10倍とされている。

参考文献

1）富岡幸子・他：気管支喘息患者における難治性中耳炎．Otol Jpn 2：603，1992

2）松谷幸子・他：気管支喘息患者の難治性中耳炎―好酸球性中耳炎（Eosinophilic Otitis Media）．耳喉頭頸 67：712-713，1995

3）鈴木秀明・他：好酸球性中耳炎全国疫学調査．Otol Jpn 14：112-117，2004

4）Nakagawa T, et al：Intractable otitis media with eosinophils：Importance of diagnosis and validity of treatment for hearing preservation. ORL 68：118-112, 2006

5）松原　篤・他：好酸球性中耳炎の臨床像の再検討および診断基準2008年試案の検証について．Otol Jpn 19：567，2009

6）Iino Y, et al：Diadnostic criteria of eosinophlic otitis media, a newly recognized middle ear disease. ANL 38：456-461, 2011

7）松原　篤：好酸球性中耳炎，l症例から見る難治性疾患の診断と治療，耳科領域（編）．加賀君孝（監），国際医学出版社，東京，2011．pp 15-26

8）大島英敏・他：抗IgEモノクローナル抗体（オマリズマブ）が奏功した好酸球性中耳炎・副鼻腔炎例．耳鼻臨床 104：319-323，2011