文献詳細
特集 耳鼻咽喉科手術におけるナビゲーションとモニタリング
文献概要
Ⅰ 鼻副鼻腔手術の特徴
鼻副鼻腔の構造は複雑で,個人差や左右差などのバリエーションが多い。また眼窩,前頭蓋,視神経さらには内頸動脈などの重要臓器が薄い骨壁を隔てた周囲に存在している。例えば,篩骨頭蓋内壁の厚さは平均で0.15mm,最も薄いところでは,わずか厚さ30~100μmである1)。従来行われていた副鼻腔の手術は,額帯鏡の光と裸眼による暗くて狭い視野で,しかも死角が多い中での鉗子操作が求められ,視器障害や頭蓋内合併症など重大な副損傷の発生も決して珍しくなかった2)。
1980年代より鼻副鼻腔疾患に対して内視鏡下鼻内手術(ESS)が行われるようになり,すべての部位が拡大明視下におかれ,安全で的確な手術操作が可能になった。以来,副損傷の発生頻度は低下してきてはいるがいまだに後を絶たない3,4)。さらにESS中の副損傷は,術者の経験年数や症例数にかかわらず発生しうる5)。ESSは,大学病院や総合病院から個人クリニックまで,幅広いカテゴリーの医療機関で行われる手術であり,副損傷に関するさまざまな報告に注目する必要がある。
鼻副鼻腔の構造は複雑で,個人差や左右差などのバリエーションが多い。また眼窩,前頭蓋,視神経さらには内頸動脈などの重要臓器が薄い骨壁を隔てた周囲に存在している。例えば,篩骨頭蓋内壁の厚さは平均で0.15mm,最も薄いところでは,わずか厚さ30~100μmである1)。従来行われていた副鼻腔の手術は,額帯鏡の光と裸眼による暗くて狭い視野で,しかも死角が多い中での鉗子操作が求められ,視器障害や頭蓋内合併症など重大な副損傷の発生も決して珍しくなかった2)。
1980年代より鼻副鼻腔疾患に対して内視鏡下鼻内手術(ESS)が行われるようになり,すべての部位が拡大明視下におかれ,安全で的確な手術操作が可能になった。以来,副損傷の発生頻度は低下してきてはいるがいまだに後を絶たない3,4)。さらにESS中の副損傷は,術者の経験年数や症例数にかかわらず発生しうる5)。ESSは,大学病院や総合病院から個人クリニックまで,幅広いカテゴリーの医療機関で行われる手術であり,副損傷に関するさまざまな報告に注目する必要がある。
参考文献
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