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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科84巻9号

2012年08月発行

Current Article

純音聴力検査の深淵―モデルに基づく再探検への誘い

著者: 伊藤健1

所属機関: 1帝京大学耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲:P.609 - P.617

文献概要

Ⅰ はじめに

1.聴覚医学への入門

 耳鼻咽喉科の医師にとって純音聴力検査は大変身近であるのに,聴覚医学は敷居が高いという印象がもたれ入門が敬遠される傾向があるように思える。純音聴力検査は聴覚医学の入り口の「門」という役割を超えて「鳥居」のような象徴的意味合いまで含む必要不可欠な検査であるが,実際には客観的生理検査のように単純明快なものではない。特に骨導検査の場合には検査音がほとんど減衰することなく反対側の蝸牛に伝わるため,必ずマスキングを行わなければならない。むしろ両側の内耳に骨導音を自由に聞かせておいて(骨導振動子の位置はさほど重要ではない),マスキングで非検査側を遮蔽することにより検査側の蝸牛の能力を知るというスタンスこそ本質的であり,骨導検査イコールマスキングであるといえる。この純音聴力検査におけるマスキングは一見単純にみえて実際には理解が容易でないことはよく知られており,初学者に聴覚医学に対する苦手意識を形成させやすい。このような困難を惹起する原因としては以下の点が挙げられる。

参考文献

1)岩井喜典・他:医用画像診断装置―CT,MRIを中心として.コロナ社,東京,1988
2)内藤 泰:耳鼻咽喉科診断における脳機能画像の応用.日耳鼻109:75-83,2006
3)松平登志正・他:デモンストレーション機能を備えたマスキング練習ソフト.Otol Jpn 11:190-194,2001
4)日本聴覚医学会(編):聴覚検査の実際(改訂3版).南山堂,東京,2009
5)Kashio A, et al:Carhart notch 2-kHz bone conduction threshold dip-a nondefinitive predictor of stapes fixation in conductive hearing loss with normal tympanic membrane. Arch Otolaryngol Head Neck Surg 137:236-240, 2011
6)Stenfelt S, et al:A model of the occlusion effect with bone-conducted stimulation. Int J Audiol 46:595-608, 2007
7)服部 浩:図解実用的マスキングの手引き(第4版).中山書店,東京,2009
8)服部 浩:基本的聴覚検査マニュアル(第3版).金芳堂,京都,2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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