icon fsr

文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科84巻9号

2012年08月発行

文献概要

鏡下囁語

Menièreの原著とその周辺 第三編 Menièreの主論文(2)

著者: 飯沼壽孝1

所属機関: 1埼玉医科大学

ページ範囲:P.673 - P.677

文献購入ページに移動
第三編の概要

 Menièreの主論文の後半を紹介する。前半はMenière病の疾患としての概念に至る経過を示した。内耳病変であるとまず説明を行い,次いで有名な若い娘の剖検例を呈示して,病変は三半規管にあったことを証明した。最後にFlourensの三半規管切断実験における動物の旋回運動から,実験的にもMenière病が三半規管病変とする立証を得たと結論した。これから紹介する後半では,まず片頭痛を取り上げてMenière病の症状を共有することを根拠として片頭痛は内耳性であると主張した。次に異物による鼓膜裂傷が耳小骨を経由して卵円窓から内耳に衝撃を与える結果,Menière病の症状に類似した症状を呈することを例証とした。さらに耳管閉塞で生じた内耳の陰圧の結果で,鼓膜が内陥し,通気でこれを急に解除すると鼓膜の急激な動きが耳小骨連鎖を経て内耳に影響を及ぼすことを説明した。次は,小脳と小脳脚の損傷実験に話題を転じて旋回運動は生ずるが難聴は生じないことを述べて,Menière病における小脳と小脳脚の損傷の関連を否定した。論議が転々とする傾向があるが,次は鑑別診断であり,突然に生ずる難聴を鑑別点とした。最後は診断を誤った医師の行った当時のさまざまな治療法を紹介した。Menièreの結論では難聴に関する治療法は無いとした。この間に抽象的な難聴に関する感想が述べられる。最後は4項目の結論である。Flourensの原著は現在の科学論文に近い様式であるが,Menièreの論文はかなりに散文的であっておわかり難かったと拝察する。これから引き続き紹介する症例報告や,ことに講演見聞録はきわめて散文的である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?