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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科85巻1号

2013年01月発行

雑誌目次

特集 花粉症の治療―新たな展開

ページ範囲:P.19 - P.19

予防と保存的治療

著者: 竹内万彦

ページ範囲:P.20 - P.29

POINT

●花粉症に対する各種薬剤の初期療法の有用性がプラセボ対象の二重盲検比較試験にて証明されている。

●予防には抗原回避を含めた多面的な対策が必要である。

●薬物療法は花粉症の保存的治療において中心的存在であり,鼻アレルギー診療ガイドラインが示すように,各薬剤の特徴をよく理解し,患者ごとに病型,背景を考慮して選択すべきである。

●鼻噴霧用ステロイド薬は効果が強く,1日1回使用の薬剤が発売され,服薬コンプライアンスが向上すると思われる。

●抗ロイコトリエン薬は鼻閉に強い効果をもつとされており,初期治療にも花粉飛散開始後も使用できる。

●小児に使用可能な剤型も各種発売されており,以前より選択の幅が広まった。今後,抗原特異的な舌下免疫療法の一般臨床での使用が期待される。

外科的治療

著者: 松根彰志

ページ範囲:P.30 - P.34

POINT

●花粉症に対する外科的治療は,耳鼻咽喉科専門医による治療の特徴である。

●保存的治療に抵抗する難治例,特に鼻閉症状が適応となることが多い。

●手術支援機器を用いた下鼻甲介粘膜減量術,後鼻神経切断術が広く行われている。

●成人例では適宜鼻中隔矯正術を加えることが必要である。

●レーザー手術も外来日帰り手術として有効,有用な例もある。

花粉症の漢方治療

著者: 田原英一

ページ範囲:P.36 - P.41

POINT

●花粉症の急性期は滲出性であり,小青竜湯や越婢加朮湯のような麻黄剤がよく用いられる。

●亜急性期には浮腫性となり鼻閉が始まる時期となり,この際は葛根湯(加川芎辛夷)あるいは柴胡桂枝乾姜湯がしばしば用いられる。

●慢性期は増殖性の変化が加わり,柴胡剤(小柴胡湯加桔梗石膏など),駆瘀血剤(桂枝茯苓丸など)を併用するが,一部に冷えて新陳代謝が低下して治りにくくなった病態があり,麻黄附子細辛湯や茯苓四逆湯などが用いられる。

食事療法・民間療法

著者: 蒲池桂子

ページ範囲:P.42 - P.48

POINT

●花粉症の患者は国民の20%に及ぶとされており,また,このうち成人アレルギー性鼻炎患者の代替医療受療率は19%,漢方薬(医師の処方によらない),乳酸菌食品,プロポリスが上位を占めており年齢があがるにつれて受療率が上昇している。

●機能性食品としての食事療法では,プロバイオティクス,スギ花粉舌下免疫療法とスギ花粉抗原を含むワクチンとしての米の開発などが研究されている。

●治験で指摘される高いプラセボ効果の背景には,生活日誌の記入などによる規則正しい生活,生活の見直しが花粉症症状を抑える免疫系の強化に関連している可能性がある。

●免疫力強化のための食事療法としては,睡眠不足とストレスの解消,摂取栄養素の見直し,暴飲暴食の管理,腸内環境に着目した食事を重視する。

●民間療法との対峙について:長く庶民の間で伝承されてきた民間療法も多く,その中から学ぶことは多い。伝承されてきた民間療法の研究はさらに続けられることが重要と思われる。

花粉症のセルフケア

著者: 久保伸夫

ページ範囲:P.50 - P.53

POINT

●スギ・ヒノキ花粉症に対する患者意識は,恐るべき疾患というより厄介な自然災害。

●時間的負担,経済的負担を重視する患者はセルフケアを優先し,効果のないときに医療機関を受診する。

●マスクやゴーグルなど花粉回避はセルフケアの基本。健康食品でエビデンスのあるセルフケアは乳酸菌のみ。

●室内では新鮮花粉は床に落下しており,床掃除が最も有効なセルフケア。

Current Article

組織再生工学を応用した中耳疾患の病態解明

著者: 田中康広

ページ範囲:P.10 - P.18

はじめに

 真珠腫性中耳炎や癒着性中耳炎をはじめとする慢性炎症を伴う中耳疾患に関する研究は,これまで動物実験もしくは摘出標本からの免疫組織学的検討によるものがほとんどであった。一方,培養細胞を用いたin vitroでの研究は文献として報告されたものが少なく,現在まで発症機序や成因については明らかにされていない。その原因のひとつとしてin vitroにおいては培養細胞を用いた研究が主体となるが,最近まで三次元的に培養細胞を用いて組織構築を行うことが困難であり,真珠腫性中耳炎や癒着性中耳炎のモデル作製には限界があったことが挙げられる。近年,air-liquid interface methodを用いた培養法によって三次元的に立体構築させる細胞培養が開発され,細胞を気相に触れさせることにより細胞の分化を誘導させることが可能となった。さらに,温度応答性培養皿の出現により,組織構築された培養細胞シートを細胞自体にダメージを与えることなく回収することが可能となり,病変部位への移植についても検討されている。このことは新しく組織構築された培養細胞を用いて,in vitroだけではなくin vivoでの研究にも応用できる可能性を示唆している。

 本稿では,これまでにわれわれが行ってきたair-liquid interface methodによる三次元培養皮膚を用いた実験的真珠腫モデルの作製を中心とし,温度応答性培養皿を利用した癒着性中耳炎治療への可能性などについても触れてゆく。

原著

彎曲型咽喉頭鏡が有用であった下咽頭梨状窩瘻の摘出例

著者: 宇野光祐 ,   荒木康智 ,   稲垣康治 ,   佐藤靖夫

ページ範囲:P.55 - P.60

はじめに

 下咽頭梨状窩瘻は,下咽頭梨状陥凹に瘻孔が遺残する先天性疾患である。その瘻孔は下咽頭収縮筋を貫通し,甲状腺上極周囲にまで達する瘻管を形成することから,側頸部膿瘍,急性甲状腺炎の原因となることが知られている。瘻管を完全摘出することが根治治療となるが,術中に瘻管の同定に苦慮することも多く見受けられ,結果として再発を招くことも少なくない。今回われわれは,彎曲型咽喉頭鏡(以下,彎曲鏡と略す)を用いて,瘻管を明視下におき完全摘出した小児2症例を経験したので,文献的考察を交えて報告する。

鋭的頸部外傷の4症例

著者: 吉原晋太郎 ,   佐藤拓 ,   清水裕也 ,   後藤多嘉緒 ,   西村信一 ,   越智篤

ページ範囲:P.61 - P.65

はじめに

 頸部は気管,大血管,神経などの重要組織が存在するとともに,嚥下,音声などの複雑な機能が密集している部位である。鋭的,鈍的に外傷を受けることで緊急の観血的処置を要する場合があると同時に,その後の喉頭機能温存を考慮した適切な対応が必要である。今回われわれは,刃物による頸部刺創3症例とサーフボードによる杙創1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

声門下血管腫の1例

著者: 井上真規 ,   小河原昇 ,   田辺輝彦

ページ範囲:P.67 - P.72

はじめに

 乳児血管腫は1歳未満の乳児において頭頸部に生じる最も多い良性腫瘍の1つであるが1,2),声門下血管腫は非常に稀である3)。声門下血管腫は呼吸状態が悪化した場合には緊急に気管内挿管や気管切開による気道確保が必要であるが,声門下血管腫の治療はまだ確立していない4)。今回気管内挿管を要したが,プレドニゾロンとプロプラノロールで加療し縮小した声門下血管腫の症例を経験したので報告する。

口内法によって摘出したステノン管内唾石症の1例

著者: 南和彦 ,   土師知行

ページ範囲:P.73 - P.76

はじめに

 唾石症は耳鼻咽喉科領域でしばしば遭遇する疾患であるが,そのほとんどが顎下腺に発生する。耳下腺に生じる唾石の発生頻度は低くく1~3),偶然検査で発見されるなど無症状である場合が多いため,治療を要することは稀である4)。今回われわれは,耳下腺炎,耳下腺膿瘍を反復したステノン管内の耳下腺唾石症に対し,口内法による摘出術を施行したので文献的考察を加えて報告する。

当科における舌扁平上皮癌の臨床的検討―術前治療の効果

著者: 平賀幸弘 ,   黄淳一 ,   霜村真一 ,   河西八郎

ページ範囲:P.77 - P.82

はじめに

 当科では,1989年より現在まで頭頸部扁平上皮癌の術前治療として外照射による放射線を基本とし,抗癌薬投与を併用する集学的治療を行ってきた1)。2004年までは導入化学療法(induction chemotherapy:ICT)で,2005年からは化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy:CCRT)を取り入れ,必要な症例には手術を行っている。この治療方針は舌扁平上皮癌(舌癌)でも変わりはない。一方,現在では特にStage Ⅰ,Ⅱの早期舌癌の原発巣においては,多くの施設で手術単独の治療指針が採られている。

 本検討は,われわれの治療方針による舌癌治療の成績を解析し,他施設の報告と比較することによって舌癌の最良の治療法を模索することが目的である。

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欧文目次

ページ範囲:P.5 - P.5

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.83 - P.83

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.84 - P.84

投稿規定

ページ範囲:P.86 - P.86

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.87 - P.87

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.88 - P.88

 時間の経過するのは早く,昨年は医学界において山中教授のiPS細胞のノーベル賞受賞の一報,続くM氏のヒトへの臨床応用捏造騒ぎがありましたが,後者のほうはあっという間に過去の事件となり,その後は衆議院解散選挙,10数党の乱立,トンネルの事故,北朝鮮ミサイル騒ぎと,このあとがきが掲載されるころはいくつもの新しいできごとが起こっているものと思います。おそらく政党の多くは消滅しその数は少なくなっていることが予想されます。先日,出席しました基礎~臨床のすべての学会の委員が集まる会議で,コーディネーターの先生より「日本から発信される論文は捏造が多く問題となっていること,ある日本人麻酔医の190編前後の英文捏造論文が発覚し,これまで1位だった90数編捏造の海外のDrを抜きダブルスコアでトップになったこと,日本で発刊される英文誌は認められないものが多く,今や中近東や東南アジアの捏造に近い論文のよい投稿先になっていること」などが話されました。そのなかでの山中先生の快挙,M氏の超極端な捏造という風に今回「感激と惨劇」が同時に登場した感じです。さて本誌1月号には感激の内容が多く掲載されています。田中康弘先生のCurrent Article「組織再生工学を応用した中耳疾患の病態解明」として真珠腫性中耳炎の実験モデルの作製から病態を突き止めようとするものです。特集として「花粉症」に対しての総説で従来と異なった切り口で,漢方や食事療法まで踏み込んだ内容となっています。原著としては5編の論文が掲載されています。舌癌に関する臨床検討,唾石症,声門下血腫,彎曲型咽喉頭鏡の応用,鋭的頸部外傷症例などいずれも興味ある内容で,日常診療に役立つ内容です。2013年には本誌のさらなる充実が期待されます。編集委員,医学書院ともども心機一転,さらなる努力をしたいと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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