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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科85巻10号

2013年09月発行

雑誌目次

特集① 院内感染を防ぐ―基本的知識と対策

ページ範囲:P.751 - P.751

外来における器材の消毒・滅菌

著者: 尾家重治

ページ範囲:P.752 - P.756

POINT

●耳鏡などの耐熱性器材の消毒には,熱水が適している。

●マウスピースなどのプラスチック器材で非耐熱性の場合には,次亜塩素酸ナトリウムによる消毒を行う。

●生検鉗子付きの鼻咽喉ファイバースコープには,全自動の内視鏡自動洗浄消毒機を用いた高水準消毒薬(過酢酸,フタラール,グルタラール)による消毒を行う。

病棟における院内感染対策

著者: 吉岡範 ,   朝野和典

ページ範囲:P.758 - P.764

POINT

●耳鼻咽喉科領域で院内感染対策上特に問題とされる病原性微生物は肺炎球菌・インフルエンザ菌・モラクセラ・カタラーリス・MRSA・MSSAなどである。

●耳鼻咽喉科病棟における院内感染対策は,ほかの病棟と基本的には同じである。

●院内感染対策の基本は標準予防策および経路別予防策である。

●院内感染対策を成功させるためには職員の教育が必須である。

手術室・ICUにおける院内感染対策

著者: 行岡秀和

ページ範囲:P.766 - P.773

POINT

●手術部位感染(SSI)の定義,原因,危険因子を理解する。

●術前準備とSSIの関係を理解する。

●手術部位以外の感染にも注意する。

●ICUでは人工呼吸器関連肺炎,カテーテル関連血流感染,膀胱留置カテーテル関連尿路感染対策が重要である。

●ICUでは標準予防策が特に重要である。

●針刺し事故の予防と対応を理解する。

多剤耐性菌の耐性獲得メカニズムと感染対策

著者: 加藤大三 ,   八木哲也

ページ範囲:P.774 - P.779

POINT

●MRSAなど常在菌として存在し治療薬もいくつか選択肢がある細菌とVREや多剤耐性緑膿菌,アシネトバクターなどのようにヒトの常在菌ではなく治療法もきわめて限られる細菌があり,それに対応して感染対策を行う必要がある。

●薬剤耐性化経路の違いを理解して感染対策を考える必要がある。

●耐性菌を発生させないために重要なのは,普段からの標準予防策/接触予防策の遵守と抗菌薬の適正使用の実践である。

●多剤耐性グラム陰性菌の感染対策では,早期発見と水平伝播防止が重要であり,積極的な保菌調査やスタッフコホーティングを含めた厳重な接触予防策と環境管理の強化を行い,さらにコリスチンやチゲサイクリンを含む多剤併用療法による治療が必要となる。

病棟で問題となる市中感染症―インフルエンザウイルスとノロウイルス

著者: 伊東宏明 ,   金山敦宏 ,   大石和徳 ,   渡邉治雄

ページ範囲:P.780 - P.784

POINT

●感染経路別の感染対策を理解すれば,適切な対処ができる。

●病原体が不明でも,臓器・器官別に感染症を分類することで感染対策ができる。

●インフルエンザウイルスとノロウイルスに対する感染対策を理解し,ほかの感染症にも応用する。

針刺し事故への対応と予防策

著者: 田中恵美 ,   川崎志保理 ,   小林弘幸 ,   堀賢

ページ範囲:P.786 - P.793

POINT

●針刺し事故後の対応方法について示した。

●針刺し切創事故後の情報共有と関連部署との連携強化に期待される役割について示した。

●針刺し事故発生の状況と分析からの教育方法の変更と予防への取り組みを具体的に示した。

特集② 知っておきたい消化器疾患の知識―専門医の診方・治し方

ページ範囲:P.795 - P.795

GERDの診断と治療

著者: 春間賢

ページ範囲:P.796 - P.800

POINT

●胃内容物の食道への逆流で胸焼け症状や逆流性食道炎を発症する。

●嗄声や喉頭肉芽腫,咽喉頭異常感症はGERDが原因となっていることがある。

●GERDの治療の第一はプロトンポンプ阻害薬である。

●合併症を予防するためには胃酸分泌抑製薬による維持療法が必要である。

●GERDは長期管理が必要な疾患である。

食道癌の内視鏡治療の適応と実際

著者: 高田理 ,   清崎浩一 ,   吉田行雄 ,   力山敏樹

ページ範囲:P.802 - P.808

POINT

●通常(白色光)観察による診断は,色調・隆起の高さ・陥凹の深さ・大きさなどを参考に深達度の診断を行う。

●拡大内視鏡観察による診断は,食道癌の深達度の診断能を向上させた〔特に,T1a-EP(M1)/T1a-LPM(M2)の拾い上げ〕。

●頸部食道や梨状窩の病変は観察しづらいため,十分気をつけて観察する必要がある。

●粘膜下層剝離術は大きさには制限なく病変を一括で大きく切除することが可能で,外科的切除に比べ侵襲度の低い治療である。

胃癌の内視鏡治療の適応と実際

著者: 齊藤正昭 ,   清崎浩一 ,   吉田行雄 ,   力山敏樹

ページ範囲:P.810 - P.813

POINT

●日本胃癌学会胃癌治療ガイドラインを理解し,それに準じた早期胃癌に対する治療法を選択することが重要である。

●胃癌の組織型,腫瘍型,脈管侵襲の有無などを考慮し,ESDのみで治癒切除となるか,あるいは追加外科切除が必要かを判断する。

●内視鏡治療後におけるH. Pylori除菌療法は,異時性多発胃癌の予防のために有用である。

ピロリ菌

著者: 森英毅 ,   鈴木秀和

ページ範囲:P.814 - P.819

POINT

●2013年2月にヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌療法が保険適用となり,ほとんどすべての感染者に健康保険で除菌することが可能になった。

Helicobacter pyloriは胃・十二指腸潰瘍,慢性萎縮性胃炎,胃がんの発症と深いかかわりがあるだけでなく,消化管外疾患とのかかわりも示唆されてきている。

Helicobacter pyloriの感染診断,除菌判定にはさまざまな検査法があるが,それぞれの検査法の特徴を理解したうえで運用する必要がある。

●一次除菌,二次除菌で除菌不成功である患者は2~3%存在し,三次除菌療法レジメンの確立が急務である。シタフロキサシンを含む三次除菌レジメンが良好な成績を収めている。

経皮内視鏡的胃瘻造設術

著者: 鈴木裕 ,   野呂拓史 ,   大平寛典

ページ範囲:P.820 - P.825

POINT

●PEGは非開腹的に胃の内腔と腹壁の皮膚との間に瘻孔を形成させる内視鏡的な手術法である。

●造設手技としては,Pull法,Push法,Introducer法がある。

●最近,Introducer法の欠点を改良したIntroducer変法が開発された。

●術前,術後管理は,通常の外科的手術に準じる。

●適応に関しては医学的有用性に加えて,倫理観や死生観も考慮すべきである。

炎症性腸疾患―過敏性腸症候群・潰瘍性大腸炎・クローン病

著者: 中村志郎 ,   樋田信幸 ,   飯室正樹 ,   横山陽子 ,   上小鶴孝二

ページ範囲:P.826 - P.832

POINT

●過敏性腸症候群

 診断はRome Ⅲ基準にもとづき行うが,大腸癌などの器質的疾患の見逃しに注意する。治療は下痢型,便秘型などの病態に応じて実施する。

●潰瘍性大腸炎

 診断では感染性腸炎との鑑別に注意。治療は第一選択5-ASA製剤,第二選択ステロイド剤で,ステロイド抵抗性の難治例には血球成分除去療法,タクロリムス,抗TNF-α抗体製剤を適応する。

●クローン病

 クローン病疑い例では必ず小腸病変の評価を実施する。治療は患者の病態と受容性により栄養療法および薬物療法で実施する。抗TNF-α抗体製剤は腸管合併症形成前の導入が効果的。

書評

決められない患者たち

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.785 - P.785

「患者にとってよいこととは?」をハーバード大学の教授らが分析

 今般医学書院から,アメリカでベストセラー作家といわれてきたJerome Groopman医師とPamela Hartzband医師合作の“Your Medical Mind:How to decide what is right for you”という著書が,札幌医科大学卒業後米国留学の経験をもつ堀内志奈医師によって日本語に訳され,『決められない患者たち』という邦題で出版された。

 これはハーバード大学医学部教授と,ベス・イスラエル病院に勤務する医師の二人が,患者とその主治医に密着して得た情報を行動分析して,一般読者にわかりやすく書かれた本である。

単純X線写真の読み方・使い方

著者: 松永尚文

ページ範囲:P.809 - P.809

デジタル時代における単純X線写真の役割を再認識する必読の書

 これまで,胸部や骨軟部の単純X線写真の本は多数刊行されてきたが,全身の単純X線写真をカバーする本は刊行されて久しい。

 現在でも優れた基本的診断法である単純X線検査では,1枚のフィルム上で全体像を概観でき最初に行われる検査の1つであり,経過観察においてもその簡便性・再現性などの点で優れている。さらに,1枚のフィルムから得られる全体的な情報量の多さから診療の現場で最も多く施行されている。医療経済および患者への負担という観点からも,このような検査を最大限に活用することは大切なことである。しかし,CT・MRI検査の普及により,やや影が薄くなっているのも否めない。単純X線写真の所見を十分に評価しないで安易にCT検査が行われている現状もある。初心に返って単純X線検査の役割と限界を再認識する必要がある。そのような背景のもと,本書は刊行されたと思われる。

原著

鼻腔悪性黒色腫に対するDAC-Tam療法施行中に発症した急性心筋梗塞例

著者: 乾崇樹 ,   谷裕基 ,   荒木倫利 ,   河田了

ページ範囲:P.833 - P.836

はじめに

 悪性黒色腫において,化学療法は外科的切除の適応がない進行症例や外科療法後の術後補助療法として用いられている。

 近年,悪性黒色腫に対する化学療法としてわが国で最もよく行われているレジメンはDAC-Tam療法である1)。元となったのは,Dartmouth医科大学のDel Preteら2)が1984年にDartmouth regimenとして報告した治療法で,cisplatin(CDDP),carmustine(BCNU),dacarbazine(DTIC)に抗エストロゲン薬であるtamoxifen(TAM)を加えたものであった。わが国では山﨑ら3)が未承認薬であるBCNUをnimustine(ACNU)に置き換えてDAC-Tam療法として施行し,それ以前からよく施行されていたDAV-feron療法と比較して良好な成績を報告している。

 一方で,このレジメンに使用されている抗がん薬では副作用の1つとして心毒性が知られている。抗がん薬による心毒性は血液毒性や消化管毒性などと比べるとその発生頻度は低いものの,ほとんどの抗がん薬が心毒性をもつといっても過言ではない4)

 今回われわれは,鼻腔悪性黒色腫に対してDAC-Tam療法を施行中に急性心筋梗塞(AMI)を発症した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

右咽頭痛を主訴とした内頸動脈瘤の1症例

著者: 斎藤明彦 ,   渡邊健一 ,   斎藤亜希子 ,   増野聡 ,   富山俊一 ,   大久保公裕

ページ範囲:P.837 - P.840

はじめに

 中咽頭側壁の腫脹は耳鼻咽喉科外来でしばしばみられる所見である。原因疾患は口蓋扁桃肥大,扁桃周囲膿瘍,扁平上皮癌,悪性リンパ腫,副咽頭間隙腫瘍など多岐に渡る1)。副咽頭間隙に走行する内外頸動脈の動脈瘤も腫脹をきたす原因となることがある。今回,われわれは咽頭痛を主訴とした内頸動脈瘤の1例を経験したので報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.745 - P.745

〔お知らせ〕第37回日本嚥下医学会総会ならびに学術講演会

ページ範囲:P.801 - P.801

 第37回日本嚥下医学会総会ならびに学術講演会を下記の要領で開催します。

 多方面の方々のご出題をお待ち申し上げております。演題登録はインターネットによるオンライン登録となります。医師のみならずメディカルスタッフの多数のご参加とご出題を心からお待ち申し上げます。

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.841 - P.841

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.842 - P.842

投稿規定

ページ範囲:P.844 - P.844

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.845 - P.845

あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.846 - P.846

 3年前の「あとがき」を振り返ってみても,「猛暑とゲリラ豪雨」と「短い秋,早い木枯らし,初雪」,「記録的な寒波と豪雪」がキーワードでした。どうも最近では異常気象が毎年の話題になっているという印象です。今年の夏も各地で「猛暑とゲリラ豪雨」が話題になり,ついに8月12日午後1時42分,高知県四万十市江川崎で国内最高気温41.0℃を記録しました。記録の更新は,埼玉県熊谷市,岐阜県多治見市で40.9℃を記録した2007年8月16日以来,6年ぶりのことです。この異常気象は日本だけのことではなく,既に1月にNASAは今年の世界の気温が過去最高になることを予測していました。実際に南半球のブラジルやオーストラリアでも過去最高の気温を記録しました。このような地球規模の温暖化のなかで,熱中症だけではなく感染症を中心とする疾病体系が変化する可能性も示唆されており,臨床の現場では気が抜けない日々が続きます。

 さて,そんななかで今月の特集は①「院内感染を防ぐ―基本的知識と対策」,②「知っておきたい消化管疾患の知識―専門医の診方・治し方」の2本です。院内感染は病院でも診療所でも大きな問題であり,その予防と対策は常に最重要課題です。本特集では器材の消毒・滅菌,病棟や手術室における院内感染対策から多剤耐性菌対策や針刺し事故への対応までの必須の課題を網羅していますので,この機会に改めて院内感染に関する基本的知識を整理しておきましょう。消化管疾患も耳鼻・咽喉頭と連続する境界領域疾患であり耳鼻咽喉科専門医にとってはまさに知っておきたい疾患ばかりです。今回は逆流性食道炎,食道癌,胃癌,ピロリ菌,経皮内視鏡的胃瘻造設術と炎症性腸疾患を取り上げました。ぜひ,ご一読ください。原著は2編ですが,いずれも力作です。9月号が発刊されるころにはさすがに「猛暑」は落ち着いていると思いますので,さわやかな秋風のなかでお読みいただければと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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