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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科85巻11号

2013年10月発行

雑誌目次

特集 帰してはいけない耳鼻咽喉科外来患者

ページ範囲:P.855 - P.855

咽頭痛―急性喉頭蓋炎,扁桃周囲膿瘍

著者: 原浩貴 ,   山下裕司

ページ範囲:P.856 - P.862

POINT

●咽頭痛はありふれた症状の1つであるが,上気道炎症の重要な症状であることを忘れない。

●上気道感染症は,重篤化した場合に気道狭窄をきたし呼吸困難や窒息を引き起こす可能性がある。

●咽頭痛がある場合,咽頭のみでなく喉頭の所見を確認することが必須である。

●重症化を防ぐためには初診医の適切な診断,治療が必要である。

●急性喉頭蓋炎や扁桃周囲膿瘍は,病診連携の必要性も高い領域である。上気道感染に伴う気道狭窄すなわち咽頭・喉頭レベルでの狭窄を見逃さず,速やかに入院加療あるいは高次医療機関への搬送を実施することが求められる。

深頸部膿瘍

著者: 岩田昇 ,   鈴木賢二

ページ範囲:P.864 - P.871

POINT

●深頸部感染症(頸部蜂窩織炎,深頸部膿瘍)は耳鼻咽喉科領域で非常に緊急性の高い重要な疾患の1つである

●当科で経験した右深頸部膿瘍の症例,反復性化膿性甲状腺炎がもとで左深頸部膿瘍から下咽頭梨状窩瘻の診断に至った症例,そして晩期放射線有害事象が原因と考えられた高齢者の深頸部膿瘍の3症例を呈示した。

●本症を疑ったら直ちに検査・診断を行い,呼吸状態に注意しながら強力な抗菌薬治療と外科的治療が必要である。

●本症は強力な抗菌薬投与で改善するが,最近は耐性菌も増えており,抗菌薬選択は非常に重要である。

●高齢者,糖尿病などの基礎疾患を有する患者では重症化の傾向が強いため,治療に苦慮する場合がある。

視力障害―鼻性視神経症

著者: 山本光 ,   飯田政弘

ページ範囲:P.872 - P.876

POINT

●鼻性視神経症は副鼻腔の囊胞や炎症などが原因となる視神経疾患である。

●鼻副鼻腔疾患の診断にはCT,MRIなどの画像検査が有用である。

●治療は原則的に手術による副鼻腔の開放,ドレナージである。

●発症後24時間をこえるものでは視力予後が悪い。

めまい

著者: 五島史行

ページ範囲:P.878 - P.882

POINT

●救急外来におけるめまい患者のうち約3%程度が返してはいけないめまいである脳幹,小脳梗塞である。

●これらの鑑別のためには加齢,高血圧,心房細動,非回転性めまい,めまい以外の神経学的症状の合併というリスクファクターに注意する必要がある。

●注意すべき疾患の症状としては歩行が困難な症例,自立困難例である。

●眼球運動検査としてHINT〔head impulse test(HIT),注視眼振,test of skew〕を行い,HITが正常か不安定,あるいは方向交代性眼振またはskew deviationを認める場合には,中枢性疾患を強く疑う必要がある。

刺創・異物

著者: 永谷群司 ,   小泉弘樹 ,   大久保淳一 ,   大淵豊明 ,   若杉哲郎 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.884 - P.891

POINT

●棒突き刺傷や頸部刺創では,創傷表面から深部の損傷の程度を推測することが困難である。

●ボタン電池の誤飲では,早期より重篤な食道損傷をもたらす危険性があるため,4時間以内の摘出が望ましい。

●小児の気管・気管支異物の診断にはCTが有用であり,摘出にはラリンジアルマスクと軟性気管支鏡を使用する報告が増えている。

●小児の棒突き刺傷および異物は,疾患ではなく事故である。子どもに接する周囲の人が注意を払うことで未然に防ぐことが可能であり,社会への啓発が大切である。

ケミカル

著者: 梅野博仁

ページ範囲:P.892 - P.897

POINT

●化学熱傷は酸やアルカリ・有機溶剤・金属化合物・電池などが原因となる。

●ボタン型あるいはコイン型のリチウム電池誤飲による食道異物では食道潰瘍防止目的で異物摘出を早急に行う。

●化学的腐食剤による皮膚曝露の基本治療は流水洗浄である。

●化学的腐食剤を服用したら,食道穿孔がないことを確認し,牛乳や卵白を飲ませる。

●化学的腐食剤服用後は食道狭窄予防目的で胃管留置を継続させる。

原著

喉頭全摘者におけるボイスプロステーシスの付着物の評価

著者: 南和彦 ,   宮崎拓也 ,   土師知行

ページ範囲:P.899 - P.902

はじめに

 頭頸部悪性腫瘍の治療において,喉頭全摘術は発声機能を喪失せしめる。喉頭全摘術後の代用音声の獲得は患者のQOLの観点からきわめて重要であり,その方法として,食道発声,人工喉頭,気管食道瘻発声などがある1)。ボイスプロステーシスによる気管食道瘻発声での音声獲得は約70~90%と高く,訓練もあまり必要とせず,ほかの代用音声の併用を妨げない2~5)。このため,喉頭全摘術後の代用音声としてボイスプロステーシスを用いた気管食道瘻発声は欧米で代用発声法の主流となっている。わが国でもその使用頻度が高まっており1,2),当科でも喉頭全摘術を施行する患者に積極的にボイスプロステーシス挿入術を施行している。しかし,ボイスプロステーシスは人工素材であることから,長期間使用していると細菌や真菌が付着することで製材が劣化する。このことで発声困難となったり,唾液漏を伴うようになり,定期的な交換が必要となる6~8)。今回,われわれは喉頭全摘術後の患者において,ボイスプロステーシスを交換した際にその付着物を検討したので若干の文献的考察とともに報告する。

悪性腫瘍にて入院中に当科を紹介された減衰型方向交代性下向性眼振例の検討

著者: 晝間清 ,   渡部涼子 ,   留守卓也 ,   三橋敏雄

ページ範囲:P.903 - P.906

はじめに

 悪性腫瘍で入院治療中の患者がめまいを訴えた場合,各科担当医が脳転移などを否定したうえで末しょう性めまいとして耳鼻咽喉科に紹介されることが多い。炭酸水素ナトリウム(メイロン®)の点滴や抗めまい薬の内服でも治らず,体動時に比較的長期にめまい症状が遷延している患者のなかには往診での診察を依頼されることも少なくない。今回われわれは,ベッド上で頭位眼振検査を行い,減衰型方向交代性下向性眼振を示した患者に耳石置換法として,患側から健側に体軸を中心に回転させるbarbecue rotationと患側を上にした側臥位を保つforced prolonged position(FPP)を行い,眼振の消失と症状の改善を認めた症例を経験したので,若干の文献的考察を加え,報告する。

胸腔鏡下に縦隔ドレナージを行った降下性縦隔膿瘍の2症例

著者: 木村有貴 ,   中屋宗雄 ,   伊東明子 ,   木田渉 ,   白石藍子 ,   渕上輝彦 ,   渡辺健太 ,   阿部和也

ページ範囲:P.907 - P.912

はじめに

 咽頭や扁桃の感染,齲歯や歯根膿瘍から副咽頭間隙を経て膿瘍が縦隔に至る降下性縦隔膿瘍は抗菌薬の発達した今日でも死亡率20~40%1,2)ともいわれ,致死的となりうる病態である。従来,全縦隔に膿瘍が進展したものは開胸ドレナージが推奨されてきたが,近年では胸腔鏡下のドレナージを行った報告が増えている。今回われわれも胸腔鏡下のドレナージによって良好な結果を得た2症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

小児内耳自己免疫病の1症例

著者: 増野聡 ,   富山俊一 ,   渡邉健一 ,   斎藤亜希子 ,   斎藤明彦

ページ範囲:P.913 - P.919

はじめに

 内耳自己免疫病(autoimmune inner ear disease:AIED)は原因不明の両側性変動性進行性感音難聴と前庭機能障害を呈し免疫抑制剤が奏効する一群と定義される。1979年にMcCabeら1)によって自己免疫性感音難聴(autoimmune sensorineural hearing loss)として報告されたが,2年後には前庭障害が併発することから内耳自己免疫病と名づけられ,現在に至っている。病態は内耳特異的蛋白に対する自己免疫性組織障害で,遷延性かつ進行性のため,遂には両側聾および前庭機能の著しい障害に至り日常生活に大きな支障をきたす。診断は臨床経過によるところが大きく,McCabeら1)は両側性の感音難聴が緩徐に進行し数週間から数か月で悪化すると述べている。

 しかし,その後症例が報告されるに従いAIEDの経過は多岐にわたることが知られてきた2)。必ずしも両側性進行性感音難聴の経過をたどるとは限らず,突発性難聴やメニエール病と診断された症例が後日の経過からAIEDと診断されることも多くあり,診断に最も有用とされる臨床経過からの診断も困難な場合も多い。

 治療は副腎皮質ステロイド(以下,ステロイドと略す)が効果的であるが反復すると副作用の危険があり,また効果の減弱が認められるため,これらの問題が懸念される場合には状況に応じて免疫抑制剤の投与を要する。免疫抑制剤は治療効果が高いが発癌性などの副作用が問題であり,使用には注意が必要である。

 今回,われわれは7歳で発症した強いめまいを伴う内耳自己免疫病の女児を経験し,免疫抑制剤による治療で良好の治療成績を得たので報告する。

Laryngeal sensory neuropathyの2症例

著者: 渡部浩

ページ範囲:P.921 - P.924

はじめに

 耳鼻咽喉科日常診療において,咽喉頭異常感症や遷延する咳嗽は比較的よく遭遇する症候であるが,治療に難渋する症例も稀ではない。最近,海外において,咽喉頭異常感症や遷延性咳嗽の原因として,迷走神経障害に起因する病態が考えられており,laryngeal sensory neuropathy1,2)やpostviral vagal neuropathy3)の名称で報告が散見される。これらの治療として,抗うつ薬や抗けいれん薬が有効である。しかしながら,いまだわが国での報告はない。今回,laryngeal sensory neuropathyと考えられ,神経障害性疼痛治療薬であるプレガバリンが奏効した2症例を経験したので報告する。

手技・工夫

当科でのデジタル画像の簡便な記録・管理方法と活用システム

著者: 細野研二 ,   赤羽誉 ,   谷口由希子 ,   今泉宏哲 ,   岡安唯 ,   篠原章人

ページ範囲:P.925 - P.931

はじめに

 耳鼻咽喉科領域の多くは直接観察が可能で,正確な記録を残すことが重要である。デジタル画像の一般的な記録方法として,DVD(digital versatile disc)やHDD(hard disk drive)が用いられているが1),整理が面倒,同一患者の過去の画像を簡便に閲覧できないなどの問題が挙げられる。1999年に当時の厚生省により「診療録等の電子媒体による保存」が医療施設で承認されて以降,電子カルテシステムが普及し,近年,大学病院や一部の大病院では電子カルテ内にデジタル画像も保存することが可能となっているが,高額の投資が必要で,当院のような市中病院ではまだ一般的とはいえないのが現状である。

 当院(350病床)では,2005年3月より電子カルテシステム(シーメンス亀田医療情報システム社)を導入しているが,放射線画像以外のデジタル画像の取り込みシステムがなく不便であり,また今後新たな導入の目途もつかないため,われわれは既存の院内システムを利用して記録画像を日常診療に活用できるように工夫したので,このシステムを紹介する。

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欧文目次

ページ範囲:P.851 - P.851

〔お知らせ〕第22回 内視鏡下鼻内手術の研修会

ページ範囲:P.883 - P.883

 耳鼻咽喉科展望会では2014(平成26)年2月27日~3月1日の3日間,東京慈恵会医科大学解剖学講座の協力のもとに下記の予定で「内視鏡下鼻内手術の研修会」を開催いたします。研修会の趣旨は実地に即した手技とそのbasicならびにextendedな知識の修得です。Dissectionでは頭蓋底を含めた解剖の確認を行います。手術(6~7例)は,局麻および全麻下の慢性副鼻腔炎,鼻中隔彎曲症,副鼻腔囊胞などを予定しています。また,ナビゲーションサージェリー,パワードインストルメントによる手術供覧も予定しています。

 参加ご希望の方は下記の申込方法に従ってお申し込み下さい。

〔お知らせ〕第5回 耳鼻咽喉科心身医学研究会

ページ範囲:P.919 - P.919

日 時:2013年10月19日(土)15:50~19:15

会 場:慶應義塾大学病院 3号館北棟 1Fラウンジ

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.933 - P.933

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.934 - P.934

投稿規定

ページ範囲:P.936 - P.936

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.937 - P.937

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.938 - P.938

 夏休み期間が明け,9月,10月,11月は耳鼻咽喉科に限らず多くの科で学会が開催されます。まさに学会シーズン到来です。日常診療と学会発表,参加,会議参加とのバランスが大切で,いずれも重要事項です。若い先生方の積極的な学会発表とそのあとの論文執筆を強く望みます。その際はぜひ本誌も投稿先の1つと考えてほしいと願っています。

 9月の最も大きな出来事は2020年の東京オリンピック開催決定でした。いろいろと不安視される側面もありますが,トータルでみると,すべての分野で前向きにそして何かを期待させる大イベントです。その前後では,医学・医療に関しての国際学会なども増加することが予想されます。そのころ,本誌,また編集委員,各医療機関の耳鼻咽喉科の先生方も,医学書院も何をしているか?楽しみです。いずれにしても,耳鼻咽喉科関係者で出場する人はいない代わりに,皆健康でオリンピック観戦したいところです。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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