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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科85巻12号

2013年11月発行

雑誌目次

特集① においと嗅覚障害

ページ範囲:P.947 - P.947

嗅覚系の解剖と生理

著者: 勝沼紗矢香 ,   丹生健一

ページ範囲:P.948 - P.953

POINT

●におい情報の伝達は,嗅上皮にある嗅神経細胞の嗅覚受容体ににおい分子が結合することから始まる。

●嗅上皮は支持細胞,嗅神経細胞,基底細胞の主に3つの細胞から構成される偽重層上皮である。

●嗅神経細胞は生涯再生を繰り返している。

●嗅球は嗅神経細胞の入力を受け,情報を処理して中枢へ送る。

●嗅球は,嗅皮質に軸索を投射する房飾細胞や僧帽細胞と,嗅球内に限局する顆粒細胞と傍糸球細胞などの介在神経細胞とで構成される。

●嗅球から嗅皮質,さらには嗅覚野(眼窩前頭皮質)への経路は複雑で多岐にわたる。

嗅覚の非侵襲脳機能計測

著者: 外池光雄

ページ範囲:P.954 - P.961

POINT

●飛躍的な発展を遂げている非侵襲脳イメージング計測技術

●においの受容機構と嗅覚神経ネットワーク機構に対する重要な発見

●嗅覚の中枢神経系に関する脳機能計測

●嗅覚の脳波と脳磁図(MEG)計測

●嗅覚のfunctinal MRI計測

●嗅覚の近赤外分光法(NIRS)計測

●嗅覚計測の今後の展望

嗅覚障害と風味障害について

著者: 都築建三 ,   阪上雅史

ページ範囲:P.962 - P.967

POINT

●ヒトの風味は,五感のほかに嚥下,記憶,心理・精神面も修飾され総合的に認知される感覚である。いずれの要素が障害されても,風味障害となり得る。

●風味障害を診断するために,嗅覚および味覚を正確に評価することが重要である。

●嗅覚障害例の約20~30%に味覚異常を訴えるが,その約半数は味覚正常(風味障害)である。

●「嗅覚・風味障害」:検査上,嗅覚障害あり,味覚障害なし。

 「嗅覚・味覚障害」:検査上,嗅覚障害あり,味覚障害あり。

●風味障害は嗅覚障害の約10~50%に認め,50歳以上の女性に多い。原因は感冒が多い。突然に発症した重度の嗅覚障害例に多い。

嗅覚障害の診断と治療

著者: 三輪高喜

ページ範囲:P.968 - P.973

POINT

●原因により治療方法が異なるため,原因診断が重要である。

●原因診断は問診,鼻内診察,画像診断によってなされる。

●静脈性嗅覚検査は予後の診断に有用である。

●慢性副鼻腔炎による嗅覚障害の治療はステロイド薬の使い方がカギを握る。

●感冒罹患後嗅覚障害では当帰芍薬散が有効である。

特集② 耳鼻咽喉科領域のジェネリック医薬品とサプリメント

ページ範囲:P.975 - P.975

後発医薬品の承認審査

著者: 栗林亮佑

ページ範囲:P.976 - P.981

POINT

●後発医薬品の審査の流れ

●後発医薬品の生物学的同等性

●後発医薬品の承認状況と対面助言

ジェネリック医薬品の薬効と安全性,副作用

著者: 折井孝男

ページ範囲:P.982 - P.989

POINT

●患者はジェネリック医薬品(GE)に対して思い込みや先入観をもっている可能性がある。そのため,医療者はGEについての情報を適切に患者に伝える必要がある。

●医薬品を有効成分と製剤に分けてみるとGEを理解しやすい。GEの有効成分は先発医薬品(先発品)の有効成分と同一の化合物であり薬理作用は同じである。製剤としての先発品との同等性,有効性・安全性は先発品の剤形変更時などと同様に,生物学的同等性試験によって確認されている。

●先発品とGEの工場生産時にかかるコストは,両者の薬価の差ほどあるわけではない。GEは製剤のみを開発することから,開発費と普及にかかるコストが先発品よりも少ない。これがGEの薬価を低く設定できる理由として説明できる。

●病院で先発品からGEに切り替え前後の臨床効果と安全性評価を1,000症例規模で実施した結果,いずれも有意な変化はなかったとの報告がある。また,GEへの懸念や疑問などが指摘された論文などについて公的機関で検討された結果,「今日の治療指針2012」耳鼻咽喉科の項に記載がある医薬品に品質上問題があるGEはみられなかった。

●「今日の治療指針2012」耳鼻咽喉科の項に記載がある医薬品106品目のうち先発品は96品目あり,2013年10月時点でGEに切り替えが可能な先発品は73%(70品目/96品目)と少なくない。

耳鼻咽喉科領域のジェネリック医薬品

著者: 山下大介

ページ範囲:P.990 - P.995

POINT

●ジェネリック医薬品とは,厚生労働省が先発医薬品と同等の効果があると認めた薬品である。

●ジェネリック医薬品は,医療費削減の一環として国が推奨している政策の1つである。

●2008年4月から患者が自由にジェネリック医薬品へ変更することが可能となった。

●患者個々の身体に対する影響が先発医薬品と同じであることを立証する必要がある。

●医師・薬剤師・製薬会社間での情報の共有や評価が重要となる。

OTC医薬品について

著者: 山本陛三朗

ページ範囲:P.996 - P.1004

POINT

●OTC医薬品は,医師が診察をもとに処方する医療用医薬品とは異なり,薬局で誰もが自由に購入でき,セルフメディケーションの手段となる医薬品である。

●OTC医薬品は不特定多数が購入するために一人ひとりの症状に応じた処方ができない。そのためOTC医薬品は種々の症状に対して効果のある成分を配合したものが多くなる。

●最近,医療用医薬品のうちOTC医薬品への配合を認可されたスイッチOTC薬が注目され,効果の増強が期待されている。

●スイッチOTC化は,セルフメディケーションの推進,逼迫する医療費財政抑制の点から今後加速していくことが予想され,今後は医療者側のOTC医薬品に対する知識が必要であると考えられる。

耳鼻咽喉科領域のサプリメント

著者: 菅原一真 ,   山下裕司

ページ範囲:P.1006 - P.1011

POINT

●最近の健康ブームを背景にサプリメントの販売量が増加している。

●耳鼻咽喉科領域でも老人性難聴のように難治性のものは医薬品での治療が困難である。サプリメントを用いて予防する試みがなされており,われわれのデータを含めて紹介した。

●耳鳴や鼻アレルギー症状など難治性の症状に対してはサプリメントが広く使用されていると考えられる。エビデンスを確立するための研究を併せて紹介した。

書評

中耳手術アトラス―Middle Ear and Mastoid Microsurgery

著者: 池園哲郎

ページ範囲:P.974 - P.974

耳科手術を実践するすべての術者にとっての座右の書

 訳者の須納瀬 弘氏は耳科学の世界的な権威であるイタリアのMario Sanna教授が率いる耳科学専門の病院Guruppo Otologico(以下,Guruppo)に留学した。氏の留学中に本書の原書初版『Middle Ear and Mastoid Microsurgery』が出版され,氏は共著者となっているが,実はその大部分を須納瀬氏本人が執筆したそうだ。Guruppoには常に何人もの医師が世界各国から留学しているが,その中で須納瀬氏がSanna教授より本書の執筆を託されたのである。原書初版の執筆は2000年1月に開始され,3年後に完成をみた。その後原書は執筆体制をほぼ踏襲する形で2012年に改訂され,その改訂第2版を和訳したのが本書である。

 Sanna教授の考えと手術法を優れた写真と詳細な解説とともに呈示する本書は,初学者からベテラン医師までどの段階の医師にとってもおおいに勉強になる優れた大著として完成している。当時留学していた同僚たちは一様に須納瀬氏の集中力と執筆にかける情熱,その仕事量に驚かされ,「Sunoseはいつ寝ているのか?」と口々に驚嘆の言葉を語っていたそうだ。

基礎から学ぶ楽しい学会発表・論文執筆

著者: 川村孝

ページ範囲:P.1005 - P.1005

「楽しく,まじめで,人なつこい。そんな著者の人柄あふれる入門書」

 前著に続いて楽しい本である。本文を補足する記述はすべて脚注もしくはコラムの形になっている。この付随的な記事がないページはほとんどなく,多いところではページの半分を超える。その分,本文は本筋のみで構成され,見出しの適切さもあって論旨は大変明快である。このような構成をとっているため,著者は安心して脱線ができるのである(著者の中村氏は名だたる鉄道マニアなので「脱線」という言葉は嫌うだろうが)。

 楽しい本だが,内容は大まじめである。アカデミアの世界で求められる考え方のイロハから説き起こし,CONSORTやSTROBEなど国際的な指針,倫理問題や著作権にも言及している。さらにエディター経験を生かし,図表やスライドの作り方から一文の長さに至るまで,ほぼ余すところなく記載されている。学会発表や論文執筆の初学者は,本書を(もちろん脚注でなく本文を)ていねいに読み込んで実践すれば,かなりの水準に達することが期待できる。すでにある程度の経験をもっている方々には,弱点補強のよい指南書となろう。

原著

頸部小細胞癌の1例

著者: 木田渉 ,   中屋宗雄 ,   木村有貴 ,   白石藍子 ,   渕上輝彦 ,   渡辺健太 ,   阿部和也

ページ範囲:P.1013 - P.1016

はじめに

 肺外小細胞癌は稀な疾患であり,頭頸部に発生する頻度はさらに低い。われわれは顎下部に発生した小細胞癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

自動釘打ち機による頸部釘損傷の1症例

著者: 平賀幸弘 ,   霜村真一 ,   黄淳一 ,   金井真理

ページ範囲:P.1017 - P.1020

はじめに

 近年,建築工法の変化や建築機器の効率化によって,強力でhandyな自動釘打ち機が開発され頻繁に用いられるようになったため,本機器による事故が増加している。その受傷原因のうち13%は自殺企図によるものであり,受傷部位は80%が頭蓋で,頸部の報告は1例のみであった1)

 今回われわれは,自殺企図にて自身の頸部に自動釘打ち機で釘を8本打ち込み,緊急手術により救命し,後遺症なく退院した1症例を経験したので報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.943 - P.943

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1023 - P.1023

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.1024 - P.1024

投稿規定

ページ範囲:P.1026 - P.1026

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.1027 - P.1027

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.1028 - P.1028

 2020年五輪の東京開催が決定してよかったですね。滝川クリステルさんの「おもてなし」は,間違いなく今年の流行語大賞の筆頭候補でしょう。招致活動に尽力された皆様に心よりお祝い申し上げます。前回の東京オリンピック2日目1964年10月11日(日曜日),当時4歳だった私は父に連れられ駒沢の陸上競技場で(多分サッカーの)試合を観戦していました。コンクリートむき出しの観客席がとにかく寒く,震えていたという記憶だけが残っています。ちなみに今度は7月24日から8月9日と夏休みの開催だそうです。半世紀の間に温暖化が進み,猛暑の中の観戦もまた辛いかもしれません。

 さて,今月号の特集①は「においと嗅覚障害」です。視覚が高度に発達したヒトにとって,嗅覚や味覚などの化学受容体の障害はとかく見過ごされがちです。しかし,嗅覚はすべての動物にとって生命にかかわる重要な機能です。ヒトが人として豊かな生活を送るためになくてはならない感覚であり,耳鼻咽喉科医として大切にしていたい領域です。本特集では,嗅覚系の構造と機能について勝沼紗矢香先生(神戸大学)に,嗅覚の他覚的検査について外池光雄先生(藍野大学)に,味覚と合わせた「風味」障害について都築建三先生(兵庫医大)に,嗅覚障害の診断と治療について三輪高貴先生(金沢医科大学)に解説していただいています。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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