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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科85巻13号

2013年12月発行

雑誌目次

特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域疾患の最新疫学

ページ範囲:P.1037 - P.1037

難聴・耳鳴の疫学

著者: 中島務 ,   安江穂

ページ範囲:P.1038 - P.1044

POINT

●難聴は,年齢が進むと有病率が上昇するが,耳鳴有病率は年齢とともに上昇するが60歳代,70歳代をピークに減少傾向になる。

●加齢による難聴では,高音部では男性が女性より悪いが,低音部はむしろ女性のほうが悪い傾向にある。

●耳鳴が「常に有」人は,その後,経過をみても「常に有」状態が続きやすいが,耳鳴の不快度は,耳鳴が常に有り続ける確率よりも少なく,数年後には「まあまあ不快」へ軽快したり,さらには「不快ではない」状態にもなりうる。

●耳鳴は睡眠・抑うつの関連因子である。

●突発性難聴の約9割,急性低音障害型感音難聴の約6割の患者が耳鳴を訴える。突発性難聴固定後は耳鳴も固定する例が多い。しかしながら,耳鳴は,聴力が固定してからでも,一部の症例で軽快する例がある。

めまい・平衡障害

著者: 將積日出夫 ,   坪田雅仁 ,   赤荻勝一

ページ範囲:P.1046 - P.1051

POINT

●メニエール病

●良性発作性頭位眩暈症

●診断基準

●頻度

●高齢化社会

アレルギー性鼻炎の最新疫学

著者: 藤枝重治 ,   坂下雅文 ,   大澤陽子 ,   富田かおり ,   意元義政 ,   徳永貴広

ページ範囲:P.1052 - P.1058

POINT

●現在もアレルギー性鼻炎患者は増加している。

●発症は低年齢化している。

●主たる吸入抗原に対して未感作の人は,成人の約30%しかいない。

●GWASによる遺伝子解析が進んでいるが,得られた遺伝子の機能はわかっていない。

●早期介入によりアレルギー性鼻炎発症の予防の可能性はある。

副鼻腔炎の疫学

著者: 平川勝洋 ,   石野岳志

ページ範囲:P.1060 - P.1066

POINT

●慢性副鼻腔炎(chronic rhinosinusitis:CRS)の発症はわが国において近年減少しつつある。

●慢性副鼻腔炎の発症に関連する因子として,解剖学的形態,胃食道逆流は一定の見解は得られていないが,大気環境,アレルギー,年齢に関しては関連性が認められ,組織学的には鼻茸や副鼻腔粘膜への好酸球浸潤の割合が経時的に増加傾向である。

●好酸球性副鼻腔炎は,近年のわが国での大規模調査で診断基準案が提案され,発症率も推計された。

●真菌性副鼻腔炎は,急性浸潤性真菌性副鼻腔炎において,予後因子の推計がなされ,眼球摘出の必要性に関しては予後に有意性が認められなかったことが報告されている。

●アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎は,わが国と海外とで発症率は同様程度である可能性がある。

睡眠時無呼吸症候群

著者: 北村拓朗 ,   宮崎総一郎 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.1068 - P.1074

POINT

●睡眠時無呼吸症候群の有病率は,対象疾患をSDBとするのかOSASとするのか,また呼吸障害の判定閾値をいくつにするのかなどによって大きく異なる。

●日本人男性のOSAS有病率は17.6%と報告されており,欧米と同様な有病率であることが示されている。

●小児のOSAS有病率は1.2~5.7%であると推定されている。

●日本の6~8歳児のOSAS有病率はISCD-2の診断基準では3.5%であった。

●成人女性,小児では疫学データがまだ不足している。

頭頸部癌

著者: 加藤孝邦 ,   波多野篤 ,   斉藤孝夫

ページ範囲:P.1076 - P.1083

POINT

●頭頸部癌は本当に増加しているのか

●頭頸部癌治療の治療法の主流は

●重複癌は同時性の重複癌以外も増加しているのか

書評

中耳手術アトラス―Middle Ear and Mastoid Microsurgery

著者: 湯浅有

ページ範囲:P.1067 - P.1067

多くの図と美しい写真により中耳手術のポイントを詳細に理解できる

 本書は,イタリアの耳科手術の巨匠Mario Sanna先生らによって昨年出版された『Middle Ear and Mastoid Microsurgery』第2版の和訳書である。執筆者である須納瀬 弘先生は小生とともに1999年より半年間,Sanna先生の手術施設であるGruppo Otologicoで耳科手術および頭蓋底手術の研鑽を積まれた。その半年間で彼はSanna先生より絶対的な信頼を獲得,原書初版の作成依頼を受け,帰国後も何度かイタリアへ渡り執筆を続け,2003年には原書初版の発刊へこぎつけている。

 つまり原書初版の原稿の大部分は須納瀬先生が執筆しており,また原書第2版においても執筆体制は踏襲されていることから,本書は単なるSanna先生の著書の和訳ということではなく,Sanna先生から直に薫陶を受けた須納瀬先生の,耳科手術に対する確固たる信念が刻み込まれている渾身の1冊といっても過言ではないテキストなのである。

サパイラ 身体診察のアートとサイエンス 原書第4版

著者: 青木眞

ページ範囲:P.1098 - P.1098

「身体診察が見直される今こそ手にとってほしい1冊」

身体診察の今日的意義

 本書を手に取った瞬間,最初に強く意識させられるもの,それは決してその難解な医学史的考証やラテン語文法の記載ではなく「南部」(米国南部)である。サパイラ自身が研修医時代を過ごした南部には独特の時間が流れている。それは北東部の競い合うような荒々しい速さとはきわめて異質な,どちらかといえば湿度の高い緩やかに変化する時間とでもいおうか。

 本書は序文から「現代医療に最も不足しているもの。それは時間である」と指摘する。外来患者が午前中だけで20~30名(診察時間は1人平均5分あれば御の字)であり,スピードとテクノロジーが好まれ,情報がアナログからデジタルに変わって失われたものへの思いが薄く,医学部を平然と理系とする日本。このような国で,習得に多大な時間と忍耐・労力を要し,得られる所見の普遍性や境界の鮮明さに安定感を欠きやすい身体診察の本が,そして患者の訴えの背景にある人生に思いを馳せることを説く本書がどのように受け入れられるか。これが評者の最初の懸念であった。しかし繊細な人間関係・師弟関係を重視し,収入や利権と無関係に向学心・向上心が高く,経験値が物言う職人芸を愛し,その伝統・伝承を重視する日本の文化は南部的身体診察の文化と重なりも大きいと気づいた。もちろん肺炎には全例胸部CTなどという贅沢を続けさせる経済力に陰りがみえ,身体診察が見直されるべき時期に日本が置かれていることは別としても……。

原著

下咽頭に発生したMALTリンパ腫の1例

著者: 関伸彦 ,   山﨑徳和 ,   野村一顕 ,   氷見徹夫

ページ範囲:P.1085 - P.1088

はじめに

 Mucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫は,粘膜関連リンパ組織を発生母地とする低悪性度B細胞性リンパ腫の一種である。頭頸部領域は,消化管,肺に次ぐ好発部位とされているが,下咽頭における発生はきわめて稀である。今回われわれは,右梨状陥凹に発生したMALTリンパ腫の1例を経験したので,文献的考察を含めて報告する。

機能温存が可能であった高位の頸部迷走神経鞘腫症例

著者: 渕上輝彦 ,   中屋宗雄 ,   木田渉 ,   木村有貴 ,   白石藍子 ,   伊東明子 ,   吉原晋太郎 ,   渡辺健太

ページ範囲:P.1089 - P.1091

はじめに

 頸部迷走神経鞘腫は頸部良性腫瘍を代表する疾患の1つであるが,手術的治療では機能温存をめざして被膜下摘出を行うか,迷走神経を切断して全摘出を行うかいまだ議論のあるところである。被膜下摘出を行う場合,頸部迷走神経鞘腫の局在部位が機能温存の成績を左右する一因となり,舌骨レベルや頸動脈分岐部より上に位置する場合は一般的に困難であるとされる1)。今回われわれは頸動脈分岐部より上に存在する頸部迷走神経鞘腫に対し被膜下摘出を行い機能温存が可能であったので,若干の考察を加えて報告する。

耳下腺に発症したメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の2例

著者: 四宮瞳 ,   四宮弘隆 ,   長谷川信吾 ,   山下大介 ,   大月直樹 ,   丹生健一

ページ範囲:P.1093 - P.1097

はじめに

 メトトレキサート(methotrexate:MTX)は,葉酸に拮抗することでDNA合成/細胞複製を阻害する作用があることから,関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)をはじめとした膠原病1),乾癬(重症例),移植後反応,中枢神経領域のリンパ腫など特定のリンパ球系細胞腫瘍の治療にも用いられている。近年,MTXを内服している患者にリンパ増殖性病変が生じうることが明らかとなりMTXが広く用いられるようになるにつれ同様の報告例が増えてきた。

 MTX関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorders:MTX-LPD)は,MTXによる免疫抑制状態の患者に生じたリンパ増殖性病変または悪性リンパ腫と定義され,新WHO分類(WHO-2001)には1998年の試案の段階で取り上げられ,免疫不全関連LPD(immunodeficiency-associated LPD:ID-LPD)のなかで,一次性免疫異常症関連LPD,human immunodeficiency virus(HIV)関連リンパ腫および移植後LPDに次いで第4の独立項目とされた2)

 今回われわれは耳下部腫脹を主訴に受診した耳下腺に発生したMTX-LPDの2例を経験したので報告する。

頸部リンパ節転移巣が未分化転化をきたした甲状腺乳頭癌症例

著者: 上田大 ,   豊田健一郎 ,   和多田美奈子

ページ範囲:P.1099 - P.1102

はじめに

 甲状腺分化癌は比較的予後が良好な悪性腫瘍であるが,甲状腺未分化癌は予後が非常に不良ある。今回,われられは,頸部リンパ節転移巣が未分化転化をきたしたと考えられた甲状腺乳頭癌の症例を経験したので,文献的考察を含めて報告する。

成人に発生した舌根部囊胞の2例

著者: 能田淳平 ,   佐伯忠彦 ,   渡辺太志 ,   大河内喜久 ,   沖村明

ページ範囲:P.1103 - P.1107

はじめに

 舌根部囊胞は,舌根部に発生する甲状舌管囊胞や貯留囊胞などの囊胞性疾患の総称であり,その発生は乳幼児に散見されるが成人では比較的稀とされている1)

 今回われわれは,成人に発生した舌根部囊胞の2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.1033 - P.1033

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1109 - P.1109

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.1110 - P.1110

投稿規定

ページ範囲:P.1112 - P.1112

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.1113 - P.1113

あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.1114 - P.1114

 楽天イーグルスが,パ・リーグ優勝に続いて,日本シリーズのタイトルも初めて手にしました。プロ野球にはあまり関心はありませんが,私も仙台生まれ,仙台育ちですので今年の日本シリーズには本当にしびれました。東北地方では初めてのプロ野球チームである楽天イーグルスは,2004年の球界再編騒動から生まれた最も新しいチームです。しかし,12球団がある都道府県のなかで宮城県は人口232万人と最少。球団創設1年目は屈辱的な38勝97敗1分けの最下位でした。特にこのシーズンの第2戦では,千葉ロッテマーリンズに0対26の歴史的な大敗を喫しました。こんな弱小球団が創設9年目で野球界の巨人を相手にプロ野球の頂点に立ったわけで,地元の熱気は大変なものでした。日本一に至った原動力の1つは楽天イーグルスと地元との一体感ですが,この一体感が生まれた原点が地元を襲った3.11の東日本大震災であることは間違いありません。奇しくも2年後の11.3に被災地に歓喜と大きな勇気を与えた今回の楽天イーグルス優勝を心から祝福したいと思います。

 さて,今月号の特集は「耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域疾患の最新疫学」です。本誌での疫学の特集は初めてだと思いますが,急速に進む超高齢化や社会環境の変化のなかで各疾患の疫学も大きく変化しており,その理解は医療の全体像を把握する意味でもきわめて重要です。今回は難聴・耳鳴,特に難聴では突発性難聴と急性低音障害型感音難聴,ムンプス難聴の3大疾患について,めまい・平衡障害としてはメニエール病と良性発作性頭位めまい症,そしてアレルギー性鼻炎,副鼻腔炎,睡眠時無呼吸症候群,頭頸部癌の疫学を各領域のエキスパートに解説していただきました。原著は5編でそれぞれ臨床的にも示唆に富む興味ある症例報告ですので,あわせて一読していただければと思います。

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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