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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科85巻4号

2013年04月発行

雑誌目次

特集 身につけたいリハビリテーションの最新スキル

ページ範囲:P.299 - P.299

めまいのリハビリテーション

著者: 新井基洋

ページ範囲:P.300 - P.305

POINT

●めまいの治療には薬物治療以外の選択肢としてリハビリテーション(以下,リハビリと略す)がある。

●簡単に外来で指導できるリハビリを示した。

●めまいリハビリは,視刺激,前庭刺激,深部感覚刺激の反復刺激で構成され,小脳の中枢代償を促進させる効果に基づく。

●リハビリの種類は座位,立位,仰臥位に分かれ,患者が不得意なものを施行させる(短所を伸ばすことが重要)。

●リハビリ施行開始後,一過性にめまい感が悪化してもそれを乗り越える必要がある。

●めまいリハビリを安全に継続させる配慮が医師に必要。

顔面神経麻痺のリハビリテーション

著者: 栢森良二

ページ範囲:P.306 - P.312

POINT

●リハビリテーション(以下,リハビリと略す)手技の神経解剖,生理学的基礎を理解する。

 神経断裂線維があると迷入再生による病的共同運動(以下,病的運動と略す)が生じる。随意運動によって神経再生は良好であるが,神経断裂線維の再生も促進され病的運動も増悪する。

●電気生理学なENoGで機能予後診断を行う。

 ENoG<40%の症例では4か月後に(40-ENoG)%の病的運動が出現すると考え,リハビリを行う。

●3~4か月までに完治しなければ,これ以降は迷入再生線維による表情筋への過誤支配であり,病的運動が顕在化する。

●急性期リハビリの目標は病的運動と顔面拘縮の予防軽減である。

 粗大な随意運動や低周波刺激を行わない。表情筋のストレッチングによって短縮を予防する。上眼瞼挙筋による開瞼運動を行い眼裂狭小化の予防と前頭筋収縮伸長を促す。

●迷入再生回路がある症例では表情筋を収縮する筋力強化やフィードバック手技によって,病的運動は増悪する。

●慢性の病的運動に対してはボツリヌス治療を行い,神経筋再学習によって表情運動を大脳皮質コントロールにしてこれを軽減する。

機能的嚥下障害

著者: 藤谷順子

ページ範囲:P.314 - P.319

POINT

●機能的嚥下障害へのリハビリテーション訓練には,食物を用いた直接訓練,食物を用いない間接訓練,呼吸・排痰訓練などがある。

●食形態の選択や液体のとろみ付け,口腔ケアも重要な誤嚥予防策である。

●評価の結果に基づいて訓練を,言語聴覚士,看護師やその他の職種に指示(処方)したり,本人家族に指導する。

●スタッフに指示した場合には,進行状況を確認し,ディスカッションするチーム医療が重要である。

●本人家族に対しては,1回だけではなく,2,3回の診察や評価を通して,理解を深めてもらい,また段階的にリハビリテーションを指導してゆくとよい。

頭頸部癌手術後の嚥下障害

著者: 藤本保志

ページ範囲:P.320 - P.325

POINT

●リハビリテーション立案には病態の把握,予後の予測,社会背景の把握が重要である。

●訓練計画は病態に基づいて合理的なプログラムをめざす。

●適切な嚥下食の選択と自立にむけた指導が重要である。

●癌の再発や多重癌発生などの大きな変化を把握する。

●リハビリテーション施設紹介時の留意点

シャント発声のリハビリテーション

著者: 福島啓文

ページ範囲:P.326 - P.332

POINT

●気管孔の形状に応じたデバイスを選択する必要がある。

●交換のタイミングは飲水時の弁からの漏れの有無である。

●術後早期合併症と経過観察中の合併症の対処法を解説した。

●音声獲得率は96.8%と良好な結果であった。

頸部リンパ節郭清後の上肢の障害

著者: 田尻寿子 ,   鬼塚哲郎

ページ範囲:P.334 - P.338

POINT

●僧帽筋麻痺の診断には視診,触診が重要である。

●可動域訓練はドレーン抜去後,なるべく早期に開始することが望ましい。

●可動域訓練は仰臥位で開始すると,上肢の負荷が軽減され安全である。

●リハビリテーションにより上肢可動域障害や痛みなどの愁訴が改善される。

Current Article

PPARsによるアレルギー性炎症と好酸球活性化の制御

著者: 本田耕平

ページ範囲:P.288 - P.297

はじめに

 ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体(peroxisome proliferator-activated receptors:PPARs)は,ステロイドホルモン,サイロイドホルモン,ビタミンD3などのレセプターと同様にリガンド応答性の核内レセプターファミリーのメンバーである。PPARは1990年に発見され,げっ歯類の肝細胞において,ペルオキシゾーム増殖作用をもつ化合物によって転写促進能を獲得するリガンド未同定の核内受容体型転写因子として,最初にα型が単離された1)。PPARはリガンドと結合しRXRとヘテロ2両体を形成し標的遺伝子の転写を制御する。PPARは単に脂肪分解に関与する細胞内小器官であるペルオキシゾームの増殖作用だけでなく,ペルオキシゾームが増殖する際の主要なさまざまな遺伝子を調節するリガンド誘導性の転写因子であることが判明した。ほかの核内レセプターが特定のリガンドに結合するのに対し,PPARは種々のリガンドと結合しインスリン感受性増強作用などの糖代謝,中性脂肪低下作用などの脂質代謝に加え,動脈硬化,免疫・炎症反応,細胞増殖,悪性腫瘍の制御機能などのさまざまな生理活性や生体のホメオスタシス制御において主導的な役割を果たしていることも明らかになってきた。さらにその合成リガンドは近年多くの疾患の治療に応用されつつある。

 本稿ではPPARとアレルギー炎症との関連,特に好酸球活性化制御について解説する。

原著

喉頭浮腫を合併したムンプスの1例

著者: 土田麻里子 ,   橘智靖 ,   小河原悠哉 ,   松山祐子 ,   阿部郁

ページ範囲:P.339 - P.342

はじめに

 流行性耳下腺炎(以下,ムンプスと略す)は耳下腺の有痛性腫脹と発熱を主体とする疾患である。日常診療でよく遭遇する疾患であり,感音難聴,無菌性髄膜炎,精巣炎などの合併症はよく知られている。しかし咽喉頭浮腫を合併した報告例は少なく,合併症として広く認識されてはいない。今回われわれは,喉頭浮腫を合併したムンプスの1例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する。

直達鏡下に摘出しえた下咽頭血管腫の1例

著者: 岡本康太郎 ,   上田大 ,   和多田美奈子 ,   信原健二

ページ範囲:P.343 - P.347

はじめに

 血管腫は,組織学的に腫瘍を構成する血管成分により毛細血管性,海綿状,静脈性,動脈性に分類され,胎生期の発育障害に基づく組織奇形あるいは過誤腫であるとも考えられている1)。血管腫のうち,65%が頭頸部に発生する2)。頭頸部では血管腫は口腔,口唇に多く発生し3),下咽頭に発生することは比較的稀である4)。今回,われわれは下咽頭に発生した血管腫の1例を経験したので文献的考察を含めて報告する。

耳後部hinge flapを用いて再建した耳介癌の1例

著者: 森照茂 ,   星川広史 ,   武田純治 ,   福村崇 ,   森望

ページ範囲:P.349 - P.352

はじめに

 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域における悪性腫瘍で聴器癌は1%弱と1,2),比較的珍しいとされている。聴器癌は通常,耳介癌,外耳道癌,中耳癌に分類されるが,その発生頻度についてLewis3)は自験例の150例を検討し,それぞれ60%,28%,12%であったと報告している。腫瘍を発見しやすい耳介癌の予後は比較的良好であると考えられている1~3)。今回われわれは耳介癌を1例経験したので若干の文献的考察を交えて報告する。

小脳梗塞を伴った片頭痛関連めまいの1症例

著者: 山内智彦 ,   鈴木啓二 ,   市村恵一

ページ範囲:P.353 - P.357

はじめに

 片頭痛関連めまい(migraine associated vertigo)は,近年その疾患概念が認知されてきているものの,いまだに耳鼻咽喉科医には十分に知られていない疾患である。また,疾患名も統一されておらず,片頭痛性めまい1),片頭痛関連めまい2,5,7),片頭痛関連性めまい3),片頭痛関連のめまいなど4),多くの名称が用いられているのが現状である。近年は「片頭痛関連めまい」の疾患名が用いられることが多いため,本稿でも,これに倣うことにした。また,片頭痛の分類の中に,脳底型片頭痛と呼ばれるものがあり,これは脳血管が収縮的に働くことにより前兆や,構音障害,回転性めまい,耳鳴といった随伴症状が引き起こされると考えられているが,耳鼻咽喉科医にとっては,さらに稀な疾患と思われる。

 今回,当院で小脳梗塞を伴った片頭痛関連めまいの1症例を経験した。経過からは,脳底型片頭痛が疑われた症例であるが,片頭痛関連めまいや脳底型片頭痛に脳梗塞を合併することは稀8~12)であるため,本症例を報告する。

耳介に生じた軟骨様汗管腫例

著者: 東野正明 ,   長谷川恵子 ,   辻求 ,   河田了

ページ範囲:P.359 - P.362

はじめに

 軟骨様汗管腫(chondroid syringoma)は,汗腺から生じる皮膚の稀な腫瘍であり,軟骨様汗管腫の発生率は,皮膚病変の0.1%未満と報告されている1)。軟骨様汗管腫は成人,殊に中年の男性にみられ,ゆっくり成長し,無痛性で,皮下組織内もしくは皮膚組織内の小結節としてみられることが特徴とされている2)。その80~90%が汗腺の多い頭頸部領域に発生するとされており,特に鼻や口の回りに発生することが多い。

 今回われわれは,耳輪に発生した軟骨様汗管腫の稀な症例を経験し,過去に報告されている9例と合わせて考察した。

良性発作性頭位めまい症と鑑別が困難であった聴神経腫瘍症例

著者: 松吉秀武 ,   後藤英功

ページ範囲:P.363 - P.366

はじめに

 聴神経腫瘍(vestibular schwannoma:VS)の経過中での前庭,蝸牛症状などの臨床症状の発症は30%程度とされている1)。また聴力が正常あるいは左右差がない場合に腫瘍の診断に至る症状としての重要な症状はめまいとされており,めまいを訴える症例では常にVSの可能性を念頭に置く必要がある2,3)。今回,頭位変換時の回転性めまいと吐き気にて発症し,良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo:BPPV)に類似した眼振所見を認めた比較的稀なVSの1症例を経験したので報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.285 - P.285

〔お知らせ〕日本頭頸部外科学会認定頭頸部がん専門医制度 専門医認定試験の申請受付のお知らせ

ページ範囲:P.333 - P.333

頭頸部がん専門医認定試験の申請について

第4回認定試験は平成25年9月1日(日)愛知県産業労働センター(ウインクあいち)にて実施します。申請受付は平成25年5月1日から6月30日です。必要書類を揃えて,日本頭頸部外科学会事務局までご郵送ください。

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.367 - P.367

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.368 - P.368

投稿規定

ページ範囲:P.370 - P.370

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.371 - P.371

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.372 - P.372

 昨今の天気予報からは,まず中国からの黄砂,PM2.5なる有害物質の襲来が告げられ,さらに日本固有の花粉の飛散が加わり気道系に悪影響を及ぼしそうです。先週は中国からの汚染物質が九州に出現,学校の体育も室内退避というニュースがありました。あとがきを書いております本日はいよいよ関東地方に襲来という予報です。街中にはマスク着用の人が増え,薬局や駅の売店でもさまざまなマスクが販売されています。マスクについてわれわれ耳鼻咽喉科医は日常つけ慣れておりますが,どこまで防御できるか皆不安はあります。大気汚染とは別に,現在病院内はマスク着用義務化,腕時計も感染伝播の原因のひとつと着用禁止などかなり厳しくなってきました。気がつくと大学で朝着用していたマスクで,そのまま午後に外勤,そのまま診療,大学にもどり,さらに医学書院にそのまま出向き,帰宅した際に一日中交換するのを忘れ同じマスクをしたまま玄関にということもありました。清潔からは程遠い感じで,病院のコストはかかりますがマメに交換すべきと反省しています。現在,花粉症シーズンですが,今年は汚染物質とあいまって,複合的な気道症状の患者が来院することが予想されます。

 さて今月号の特集は「身につけたいリハビリテーションの最新スキル」です。日常診療でしばしば遭遇する,めまい,顔面神経麻痺,嚥下障害,頭頸部手術に関連する嚥下障害,シャント発声後のリハビリ,頸部郭清後の上肢障害のリハビリと臨床の場で知りたい内容が盛り込まれています。Current Articleではペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体(PPAR)の抗炎症作用,さらに鼻アレルギー,喘息におけるアレルギー反応抑制効果について述べられ,将来の臨床応用が期待される内容です。原著も,毎号興味ある論文が掲載されていますが,今回の6つの論文はムンプス関連,下咽頭血管腫,耳介癌とその再建,片頭痛関連めまい,めずらしい耳介汗管腫,興味ある聴神経腫瘍症例とおのおのチェック要の内容です。症例報告はきわめて重要な情報の蓄積となります。多くの投稿をお待ちしています。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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