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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科85巻6号

2013年05月発行

雑誌目次

特集① 耳管機能障害Update

ページ範囲:P.381 - P.381

耳管機能障害の診断

著者: 小林俊光

ページ範囲:P.382 - P.387

POINT

●耳管機能は鼓膜所見,ティンパノグラム,耳管通気法による評価が基本。耳管機能検査装置は補助診断。

●鼓膜形成術の適応判定には,受動的開大があることが必須。隠蔽性耳管開放症にも注意する。

●真珠腫,鼓膜癒着などでは,耳管機能の評価に鼓膜切開を要することがある。

●TTAG法で開放耳管の検出ができる。問診も重要である。

●音響法で耳管開大がないことを根拠に耳管狭窄症と診断するのは誤りである。

耳管機能障害の画像診断

著者: 吉田晴郎 ,   髙橋晴雄 ,   森川実

ページ範囲:P.390 - P.396

POINT

●耳管の画像診断では,骨組織の描出に優れるCT検査,軟部組織のコントラスト分解能に優れるMR検査を目的により使い分ける。

●耳管開放症では,軟骨部中点付近や峡部付近でもガス像が認められ,軟骨部の開存範囲が正常群よりも有意に長いことが診断のポイントである。

●耳管開放症では症状が臥位で消失するため,可能であれば座位型CTや補助いすを用いて撮影時の体位を工夫する。

●耳管狭窄症では,耳管骨部全長での骨枠狭小化および耳管内腔の軟部組織腫脹が認められる。

●腫瘍による耳管圧排では,画像および耳管機能検査で耳管狭窄症が考えられても全例が中耳炎所見を呈するわけではないことに注意する。

耳管機能障害と中耳真珠腫

著者: 大田重人

ページ範囲:P.398 - P.403

POINT

●中耳真珠腫新鮮例213例の耳管機能を調査したところ,耳管狭窄症41.8%,鼻すすり型耳管開放症29.1%であった。

●さらに,耳管機能障害と鼓室形成術(closed法)施行後の経過についても調査した。

●耳管狭窄症の再形成性再発率は高い傾向であったが,有意差はなかった(p=0.07)。

●鼻すすり型耳管開放症では,術後も鼻すすり癖を継続すると再形成性再発率は有意に高かった(p<0.001)。

●耳管機能障害は,中耳真珠腫形成や術後再陥凹の一因であり,耳管機能を術前に把握しておく必要がある。

耳管狭窄症の病態と治療

著者: 土井直

ページ範囲:P.404 - P.409

POINT

●耳管は中耳腔が外界とつながる唯一の管である。

●耳管には換気,排泄,防御の3つの機能がある。

●耳管狭窄症には能動的開大の障害と受動的開大の障害がある。

●耳管開放症,特に鼻すすり型耳管開放症で陰圧が解除できない耳管狭窄症も多い。

●外科的治療の最近のトピックとしてBaloon dilation法を紹介した。

耳管開放症の病態と治療

著者: 守田雅弘

ページ範囲:P.410 - P.418

POINT

●耳管開放症の発症には,ストレスなどのメンタルな面と,体重減少,低血圧が病態に関与。

●アデノシン3リン酸経口薬や,耳管内粘膜下への自家脂肪織注入移植術の有効性は,耳管開放症の病態を裏付ける。

●耳管開放症の生活上の注意:①血流改善のための運動,ヨガなど,②多いめの水分摂取,③沐浴または足湯(40度未満のぬるいお湯で)。

●耳管開放症の処置:グリセリン,Bezold末,あるいはルゴールの塗布,ゼルフォーム®などの耳管内へのパッキング,鼓膜テープ補強法,生食点鼻など。

●耳管開放症の手術治療:耳管ピン手術が最も普及,より重症例で人工耳管手術,自家脂肪織耳管内粘膜下移植術は独自開発の注入針で効果大幅改善。

●耳管鼓膜チューブ手術は,耳管狭窄症,耳管開放症などすべての耳管機能障害に適応あり。鼓室形成術時にも有用性あり。

特集② 知っておきたい神経内科の知識―専門医の診方・治し方

ページ範囲:P.419 - P.419

パーキンソン病

著者: 大山彦光 ,   服部信孝

ページ範囲:P.420 - P.424

POINT

●パーキンソン病は振戦,固縮,動作緩慢,姿勢反射障害といった運動症状を主体とする疾患である。

●パーキンソン病では,精神症状,睡眠障害,自律神経障害,感覚障害,嗅覚障害などの非運動症状も注目されていて,典型的なパーキンソン病の運動症状を呈する前に種々の症状で神経内科以外の診療科を受診する可能性がある。

●パーキンソン症状(パーキンソニズム)を呈する疾患にはパーキンソン病とパーキンソン症候群があり,鑑別が重要である。

●パーキンソン病の薬物療法は,レボドパ製剤とドパミンアゴニスト製剤が主体である。

●レボドパ製剤の長期使用に伴う問題として,ウェアリング・オフやジスキネジアといった運動合併症があり,薬剤によるコントロールが難しい場合には脳深部刺激療法(DBS)が適応になる場合がある。

●パーキンソン病治療には内科,外科,リハビリテーションといった集学的アプローチが重要であり,パーキンソン病患者の診療の際には神経内科医へのコンサルトが必須である。

アルツハイマー病

著者: 池田篤平 ,   山田正仁

ページ範囲:P.426 - P.431

POINT

●患者の日常生活上の障害を知るために,家族(同居者)同伴で受診していただき,的確な病歴把握,診察を行う。

●検査では,ほかの認知症を呈する疾患の除外とアルツハイマー病らしい所見のチェックを行う。

●認知機能の改善効果を有する治療薬(症状改善薬)が複数発売されており,それぞれの特徴から使い分けを行う。

●認知症の行動心理症状(BPSD)に対しては,家庭環境の調整などケアを中心とし,興奮が強いときのみ注意して抗精神病薬などを使用する。

●アミロイドカスケード仮説が広く受け入れられており,この過程に焦点を置いた根本的治療法(疾患修飾薬)が開発されつつある。

筋萎縮性側索硬化症

著者: 矢口裕章 ,   佐々木秀直

ページ範囲:P.432 - P.436

POINT

●筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は発症から数年以内に自力呼吸が困難となる代表的難治性神経疾患である。

●言語障害,嚥下障害など球症状を主症状とする病型の場合には耳鼻咽喉科を初診する可能性がある。

●症状が進行すると気管切開,喉頭気管分離術,気管食道吻合などの外科的処置が必要となる症例もある。

ギラン・バレー症候群

著者: 森雅裕

ページ範囲:P.438 - P.442

POINT

●ギラン・バレー症候群は急性に2肢以上の筋力低下をきたす末しょう神経障害であり,その病因には自己免疫が関与すると考えられている。

●ギラン・バレー症候群はその主たる障害の部位によって軸索型と脱髄型に分類されている。

●軸索型ギラン・バレー症候群に関しては,Campylobacter jejuniなどの感染が契機となり,抗ガングリオシド抗体が作られ,それが神経軸索を障害するという病態が明らかになっている。

●治療は中等度~重症患者に対する血液浄化療法とヒト免疫グロブリン大量静注療法の有効性を示すエビデンスが蓄積され,一般的に行われている。

●構音・嚥下障害が目立つ亜型があり,これらのタイプでは呼吸筋麻痺を併発する率が比較的高いので,注意を要する。

重症筋無力症

著者: 永石彰子 ,   本村政勝

ページ範囲:P.444 - P.448

POINT

●病原性のある自己抗体として,アセチルコリン受容体抗体と筋特異的受容体型チロシンキナーゼ抗体がある。

●症状から眼筋型・全身型に分類される。初発症状では眼症状が多いが,嚥下・構音障害などの球症状単独での発症もある。

●易疲労性を特徴とし,症状の日内変動を認める。

●クリーゼと呼ばれる呼吸不全を急速に生じることがある。

●複視などの自覚症状,眼瞼下垂などの理学所見,塩酸エドロフォニウム試験,反復刺激検査,および,病原性自己抗体の検出により診断する。

●治療には,コリンエステラーゼ阻害薬,ステロイド,免疫抑制薬を基本にして,重症例には血漿交換療法,および,免疫グロブリン大量静注療法などが用いられる。

目でみる耳鼻咽喉科

非反回下喉頭神経症例の三次元CT頸部血管造影像

著者: 岸根有美 ,   竹田貴策 ,   鎌田知子 ,   川島慶之

ページ範囲:P.378 - P.380

はじめに

 非反回下喉頭神経(nonrecurrent inferior laryngeal nerve:NRILN)とは,下喉頭神経が鎖骨下動脈を反回せず迷走神経から直接喉頭に進入する走行異常でStedman1)により初めて報告された。原則的に右側のみに発生し右鎖骨下動脈の起始異常を伴い,頻度は0.5~0.8%2~4)と報告されている。甲状腺手術の合併症としての反回神経麻痺の発生率は1.8%だが,NRILN症例では12.9%と高くなることが報告されている2)。このため術前に右腕頭動脈と右鎖骨下動脈の走行を確認し,NRILNを予測することが反回神経麻痺の予防に重要である。今回われわれは副甲状腺手術の術中にNRILNを認め,術後に三次元CT血管造影にて右鎖骨下動脈の起始異常を確認した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

原著

当科における過去10年間の下咽頭悪性腫瘍病理統計

著者: 井口広義 ,   和田匡史 ,   天津久郎 ,   松下直樹 ,   寺西裕一 ,   山根英雄

ページ範囲:P.449 - P.453

はじめに

 頭頸部悪性腫瘍は,わが国における全悪性腫瘍の約5%程度で,そのなかでも下咽頭悪性腫瘍は比較的少なく,おおむね頭頸部悪性腫瘍の約10%程度とされる1)。組織学的には,大部分の下咽頭悪性腫瘍は通常の扁平上皮癌であるため,そのほかの希少病理についての疫学的文献報告は乏しい。今回,過去10年間に当科で経験した下咽頭悪性腫瘍症例の病理組織を統計分析し,特に通常の扁平上皮癌以外の症例に重点をおいて臨床的検討および文献的考察を行った。

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欧文目次

ページ範囲:P.377 - P.377

〔お知らせ〕第31回耳鼻咽喉科ニューロサイエンス研究会

ページ範囲:P.418 - P.418

 第31回耳鼻咽喉科ニューロサイエンス研究会(旧頭頸部自律神経研究会)を下記の要領で開催いたしますのでご案内申し上げます。皆さまのご参加をお待ちしております。また自律神経に限らず,神経伝達物質,生体内調整物質,レセプターなど幅広い耳鼻咽喉科領域の基礎的・臨床的演題を郵送,FAXまたはE-mailにて募集いたします。

〔お知らせ〕第30回耳の手術研修会

ページ範囲:P.454 - P.454

 耳鼻咽喉科展望会では2013(平成25)年7月18・19・20日の3日間,東京慈恵会医科大学解剖学講座の協力のもとに下記の予定で「耳の手術研修会」を開催いたします。

 研修内容は側頭骨の解剖,手術供覧のほか,次の項目を主に解説します。麻酔,基本的清掃手術,鼓膜・耳小骨の形成,真珠腫の手術,外耳道形成,乳突充塡,危険部位の処置,術後処置,耳小骨奇形,外傷,アブミ骨手術,内視鏡下手術などのほか,人工内耳,顔面神経の手術について。

〔お知らせ〕平成25年度 日本めまい平衡医学会 夏期セミナー(第3次)

ページ範囲:P.455 - P.455

 平成25年度の日本めまい平衡医学会夏期セミナーを下記の要綱で開催いたします。

 本年は「重心動揺の基礎と臨床」について,徳増厚二先生,落合敦先生,山本昌彦先生に,「高齢者の平衡障害と転倒予防」について,矢部多加夫先生,永田久雄先生にご講演をお願いしました。

〔お知らせ〕第58回日本聴覚医学会総会・学術講演会

ページ範囲:P.456 - P.456

会 期:2013(平成25)年10月24日(木),25日(金)

    理事会,評議員会,各種委員会は10月23日(水)に行います。

会 場:ホテル ブエナビスタ

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.457 - P.457

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.458 - P.458

投稿規定

ページ範囲:P.460 - P.460

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.461 - P.461

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.462 - P.462

 今週は札幌で日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会が開催されました。今年の宿題報告の担当は本誌編集員の東京女子医科大学吉原俊雄教授「唾液腺疾患の病態解明と臨床」と慶應義塾大学小川郁教授「聴覚異常感の病態とその中枢性制御」です。昼は満員の会場でお二人のご研究の集大成を拝聴し,夜は教室員たちと北海道の味を堪能してきました。会場の書籍売り場で既に見かけられた方もいらっしゃると思いますが,お陰さまで本年度の本誌増刊号もなんとか日耳鼻総会に間に合いました。今年のテーマは『急患・急変対応マニュアル―そのとき必要な処置と処方』です。耳鼻咽喉科領域の救急疾患には,急性喉頭蓋炎のように生命にかかわる緊急の対応が求められる疾患,視神経管骨折のように治療のタイミングを逸すると重篤な後遺症を残す疾患が少なくありません。いつ遭遇するかわからない多彩な急性疾患・急変のために,ぜひ増刊号を外来デスクにお備えください。

 さて,今月号の特集は「耳管機能障害Update」と「知っておきたい神経内科の知識」です。耳管狭窄症は古くからよく知られる病態ですが,最近では耳管開放症も一般国民に広く知られるところとなり,自ら本疾患を疑って受診する患者さんも増えてきました。そこで,本特集では小林俊光先生をはじめ耳管機能障害のエキスパートの方々に耳管機能障害の病態,診断,治療について解説いただきました。神経疾患については,従来からわれわれ耳鼻咽喉科医は嚥下障害などの疾患に伴う病態の治療を中心にかかわってきましたが,最近,嗅覚障害がパーキンソン病やアルツハイマーの初期症状として注目を集めるなど,病態の診断にも耳鼻咽喉科医の役割が期待されるようになってきました。本特集では神経疾患専門の先生方に代表的な神経疾患について耳鼻咽喉科との関連を中心にわかりやすく解説していただいております。一読下さり,神経内科との連携に役立ていただきたいと存じます。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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