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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科85巻7号

2013年06月発行

雑誌目次

特集 分子標的薬時代の耳鼻咽喉科診療―処方するとき,服用患者を診るときのポイント

ページ範囲:P.471 - P.471

分子標的治療薬の進歩―特徴と将来の展望

著者: 吉野優樹 ,   石岡千加史

ページ範囲:P.472 - P.478

POINT

●分子標的治療薬は腫瘍細胞の増殖・生存などに重要な分子シグナルや,腫瘍特異的な蛋白分子を作用標的として開発された薬剤である。

●分子標的治療薬は小分子化合物と抗体薬に大別される。

●各薬剤に特徴的な副作用がみられ,古典的な殺細胞性抗癌薬とは有害事象のスペクトラムが異なっている。

●有効な分子マーカーを用いて適応を選択すれば良好な効果が期待できる。

≪頭頸部癌に対する分子標的薬治療≫

セツキシマブの特性と頭頸部癌への処方の実際

著者: 榎田智弘 ,   田原信

ページ範囲:P.480 - P.487

POINT

●頭頸部癌の治療において分子標的薬セツキシマブは,生命予後の改善だけでなく,毒性の軽減にも配慮した使用も期待されている。

●実際の使用に関しては,放射線療法との併用やほかの化学療法(殺細胞薬)との併用などさまざまな使用方法が確立されつつある。また現在も多くの臨床試験によりその有効性が検証されている。

●治療に伴う毒性が従来の殺細胞薬とは異なるため,セツキシマブによる治療効果を最大限に享受できるよう,これらの毒性への適切な対応が求められている。

頭頸部癌に対する分子標的薬の将来展望―セツキシマブのほかには何があるのか

著者: 清田尚臣

ページ範囲:P.488 - P.492

POINT

●標的分子としてのerbBファミリーの可能性

●標的分子としてのVEGFの可能性

●erbBファミリーおよびVEGF以外の標的分子

≪分子標的薬を服用する患者の診方≫

頭頸部癌以外の固形がんに対する分子標的薬投与患者の診方

著者: 藤井博文

ページ範囲:P.494 - P.498

POINT

●現在いろいろな分子標的薬ががん薬物療法に用いられている。

●分子標的薬の副作用は軽度であるも従来の殺細胞性抗癌薬とはプロフィールが異なり多彩なため多科にまたがるチーム医療での管理が重要となってきた。

●各薬剤の特徴を知り適切な患者指導と処置によりアドヒアランスを維持することで治療成績を維持することが重要である。

●頭頸部領域のがんに対しても現在使用されている薬剤の適応拡大がありうるため,管理方法については連携を通じて熟知しておく必要がある。

白血病・悪性リンパ腫に対する分子標的薬の服用患者の診方

著者: 大内彩 ,   畠清彦

ページ範囲:P.500 - P.505

POINT

●慢性骨髄性白血病(CML),悪性リンパ腫は外来通院にて治療されるケースが多い。

●CMLの治療薬であるチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)には骨髄抑制による感染リスク増大や胸水貯留などの有害事象が報告されている。

●B細胞性悪性リンパ腫で使用されることが多いリツキシマブは特に初回投与時にinfusion reactionの出現頻度が高い。

●血液分野では今後新たな分子標的薬が次々と臨床に導入されると見込まれており,有害事象について診療科横断的に共有する必要がある。

自己免疫疾患に対する生物学的製剤とその使用患者の診方

著者: 湯川尚一郎 ,   三森経世

ページ範囲:P.506 - P.512

POINT

●生物学的製剤の臨床応用により,全身性自己免疫性疾患にはめざましい治療の進歩がもたらされた。

●特に,関節リウマチ(RA)に対するTNF阻害療法は,RA治療に“パラダイムシフト”をもたらし,臨床的寛解や画像的寛解が治療の目標となった。

●TNF阻害療法以外にも,IL-6受容体拮抗薬や,共刺激シグナル阻害によるT細胞活性化抑制薬といった,新たな生物学的製剤が使用されている。

●RAに対する生物学的製剤使用時には,感染症,特に肺炎には注意が必要であるが,TNF-αやIL-6を阻害することにより,臨床症状が乏しい,炎症反応が上昇しないなど,感染症が見過ごされやすい状況となることに注意が必要である。

●多発血管炎性肉芽腫症(GPA,Wegener肉芽腫症)は,難治性血管炎症候群のひとつであり,ステロイド大量とシクロホスファミド併用療法以外に有効な治療がほとんどなかったが,抗CD20抗体製剤であるリツキシマブの使用が可能となり,有効性が期待される。

原著

石灰沈着性頸長筋腱炎の2例

著者: 渡辺太志 ,   佐伯忠彦 ,   大河内喜久

ページ範囲:P.513 - P.516

はじめに

 石灰沈着性頸長筋腱炎は嚥下痛,頸部痛や頸部可動域制限を主症状とする比較的稀な疾患である。咽後膿瘍や急性頸椎炎との鑑別が重要であるが,環椎軸椎前方の石灰化像が特徴的所見とされている。今回われわれは石灰沈着性頸長筋腱炎の2例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

長さ1mの食道異物症例

著者: 木村寛 ,   安藤孝将 ,   菓子井良郎

ページ範囲:P.517 - P.519

はじめに

 約25cmの食道1)に約1mの長さの異物が長期間,食道に停留しているとは一般には考え難い。しかし,今回,われわれは,約1mの電気コードが長期間,食道に停留していた認知症をもつ稀な食道異物症例を経験したので報告する。

睡眠時無呼吸症候群患者における甲状腺機能の検討

著者: 竹内頌子 ,   大淵豊明 ,   高橋里沙 ,   増田理佐 ,   柴田美雅 ,   寳地信介 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.521 - P.523

はじめに

 甲状腺機能低下症は,睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)を合併する頻度が有意に高いことが知られている1)。一方,SASにおいて甲状腺機能低下症を合併する割合は1%程度と報告されており2),睡眠時無呼吸症候群の全例に甲状腺機能スクリーニングを行う必要性については意見が定まっていない。今回われわれは,睡眠時無呼吸症候群が疑われ,終夜睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)を施行した症例における甲状腺機能を評価し,その相関について検討したので報告する。

顔面神経麻痺に対するファムシクロビルの使用経験

著者: 星野朝文

ページ範囲:P.525 - P.529

はじめに

 末しょう性顔面神経麻痺に対して,副腎皮質ステロイド(以下,ステロイドと略す)療法が標準治療として広く行われている1)。一方,抗ウイルス薬の使用については議論の分かれるところである。ウイルスの再活性化が病態の原因のひとつと考えると2),抗ウイルス薬の効果が期待される。実際に,抗ウイルス薬の1つであるバラシクロビルが有効だとする報告もある3)。しかし,一方でバラシクロビルや,その活性代謝物であるアシクロビルは有効でないとの報告もある4~6)。2011年に報告されたBell麻痺に対するステロイドと抗ウイルス薬の効果についてのメタ解析でも,抗ウイルス薬(アシクロビルとバラシクロビル)の治療効果については統計学的に有意でないとしている1)。また,2012年に報告された最も新しい報告でもバラシクロビルの効果については否定的である7)

 一方,抗ヘルペスウイルス薬のファムシクロビルが,顔面神経麻痺に対して有効であるとの報告が最近みられる。2008年には,Minneropら8)はファムシクロビルとプレドニゾロンを併用すると,プレドニゾロン単独より有意に麻痺が改善したと報告している。2011年にも同様にファムシクロビルの有効性の報告がある9)。日本国内では,ファムシクロビルは2008年7月に発売されて,帯状疱疹に対して主に皮膚科で用いられているが,国内での顔面神経麻痺に対してのファムシクロビルの報告はみられない。そこで,今回は顔面神経麻痺を呈した2症例に,抗ウイルス薬としてファムシクロビルを使用し良好な経過を得たので,その使用経験を報告する。

耳下腺静脈奇形の1例

著者: 渡邊毅 ,   田中藤信 ,   奥竜太 ,   宗謙次 ,   髙橋晴雄

ページ範囲:P.531 - P.535

はじめに

 頭頸部領域に発生する血管腫・血管奇形は,しばしば「血管腫」と総称され数多く報告されているが,血管腫と血管奇形を明確に分類して報告したものは少ない。国際血管腫・血管奇形学会(International Society for the Study of Vascular Anomaly:ISSVA)による分類(以下,ISSVA分類と略す)では両者は明確に区別されており,おのおの治療方針も異なる。

 今回われわれは耳下腺内に発生したISSVA分類での静脈奇形症例を経験したので,血管腫と血管奇形の分類・治療法を中心に若干の文献的考察を加え報告する。

耳小骨奇形を伴った歌舞伎メーキャップ症候群の1症例

著者: 斎藤亜希子 ,   渡邊健一 ,   豊田雅基 ,   増野聡 ,   斎藤明彦 ,   富山俊一 ,   大久保公裕

ページ範囲:P.537 - P.540

はじめに

 歌舞伎メーキャップ症候群は1981年,Niikawaら1)およびKurokiら2)がそれぞれ北海道および関東地方の症例を報告し,その顔貌が歌舞伎役者の隈取に似ていることから名づけられた。精神発達遅滞,成長障害,多発性奇形および独特の顔貌を伴っており,その発生率は3~8万人に1人と報告されている3,4)。今回,われわれは難聴を主訴とし耳小骨奇形を伴った歌舞伎メーキャップ症候群の1例を経験したので報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.467 - P.467

〔お知らせ〕平成25年度 日本めまい平衡医学会 夏期セミナー(第3次)

ページ範囲:P.520 - P.520

 平成25年度の日本めまい平衡医学会夏期セミナーを下記の要綱で開催いたします。

 本年は「重心動揺の基礎と臨床」について,徳増厚二先生,落合敦先生,山本昌彦先生に,「高齢者の平衡障害と転倒予防」について,矢部多加夫先生,永田久雄先生にご講演をお願いしました。

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.541 - P.541

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.542 - P.542

投稿規定

ページ範囲:P.544 - P.544

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.545 - P.545

あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.546 - P.546

 登山家・三浦雄一郎氏が5月23日に3度目のエベレスト登頂に成功しました。「地球のてっぺんに着いた!世界最高の気分だ」,まさに80歳7か月という世界最高齢でのエベレスト登頂の快挙です。超高齢社会を迎えた日本では1950年に100人足らずだった百寿者が現在は約5万人と,この60年の間に500倍にも急増し,80歳という年齢もごく普通になっていますが,やはり80歳でのエベレスト登頂は驚くべきことです。三浦雄一郎氏といえば富士山直滑降の成功から,世界七大陸最高峰全峰からの滑降を成し遂げたプロスキーヤーとして知られ,「The Man Who Skied Down Everest」と題する映画でアカデミー賞も受賞しています。また,実父の故三浦敬三氏も99歳でモンブランの氷河からのスキー滑降を成功させるなど,まさに脅威のアンチエイジングファミリーということができます。ぜひ,一度,三浦ファミリーの聴力を測ってみたいものです。

 さて,今月号の特集は「分子標的薬時代の耳鼻咽喉科診療―処方するとき,服用患者を診るときのポイント」です。超高齢化のなかで高齢者の悪性腫瘍が増加していますが,これら高齢者の悪性腫瘍,特に再発例・転移例に対する分子標的薬の効果が期待されています。セツキシマブは上皮成長因子受容体(EGFR)に結合して,EGFRの働きを阻害するモノクローナル抗体ですが,昨年12月に頭頸部癌に対する適応追加が承認されました。まさに絶好のタイミングでの特集といえると思います。分子標的薬の総説から,頭頸部癌に対する分子標的薬治療として処方の実際から将来展望までを各分野のエキスパートに解説していただきました。さらに分子標的薬を服用する患者の診方として頭頸部癌以外の固形がん患者,白血病・悪性リンパ腫患者,自己免疫疾患患者を対象としてこれまでの多くの経験からわかりやすくまとめていただきました。これから耳鼻咽喉科医としても知らないでは済まされない治療薬になることは明らかですので,ぜひ一読していただければと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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