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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科85巻8号

2013年07月発行

雑誌目次

特集① 甲状腺・副甲状腺診療Update

ページ範囲:P.555 - P.555

甲状腺腫瘍診療ガイドライン

著者: 藤原和典 ,   北野博也

ページ範囲:P.556 - P.560

POINT

●甲状腺腫瘍診療ガイドラインについて解説した。

●甲状腺診療の指標として,甲状腺腫瘍診療ガイドラインを参照のこと。

術中反回神経モニタリング

著者: 荒木幸仁 ,   塩谷彰浩

ページ範囲:P.562 - P.567

POINT

●簡便で安全な表面電極付挿管チューブを用いた方法が普及してきている。

●機器の設定,評価項目,術中の手順などInternational Neural Monitoring Study Groupによるガイドラインも発表されており,適正な使用を心がける。

●Loss of signal時の評価法を把握し,術式の変更や声帯機能予後予測などを適切に判断する必要がある。

●現時点では反回神経障害のリスクを減少させる明らかなエビデンスは確立されていない。その有用性と限界を認識し使用する必要がある。

反回神経の再建

著者: 宇留野隆

ページ範囲:P.568 - P.574

POINT

●甲状腺癌手術において,術前に声帯麻痺のない症例でも,術中に反回神経浸潤を認める症例は少なくない。

●反回神経合併切除症例では,神経再建により,声帯運動は改善しないが,音声機能は改善する。

●反回神経入口部近くの浸潤であっても,下咽頭収縮筋を切開することにより,吻合すべき末しょう反回神経を見出すことができる。

●反回神経再建に関する知識と技術は,甲状腺手術において必須である。

腎性副甲状腺機能亢進症に対する薬物療法

著者: 矢野彰三 ,   杉本利嗣

ページ範囲:P.576 - P.583

POINT

●慢性腎臓病(CKD)患者では,骨・ミネラル代謝異常の発症予防と是正,異所性石灰化や心血管イベントの発症予防,死亡リスクの低減を目的に,血清リン(P)・カルシウム(Ca)濃度および副甲状腺ホルモン(PTH)の管理を行う。

●透析患者では,Pの管理を最優先とし,血清P 3.5~6.0mg/dLの範囲を目標にCa非含有P吸着剤を中心に用いる。

●次に,血清Ca濃度の調節を優先し,Ca剤,活性型ビタミンD製剤やシナカルセトなどを用いて8.4~10.0mg/dLの範囲に管理する。

●最後に,PTHをintact PTH 60~240pg/mLまたはwhole PTH 35~150pg/mLとなるように上記薬剤の増減を行い,薬物治療で管理困難例はすみやかに副甲状腺摘除術(PTx)を行う。

●保存期CKD患者では,血清P・Caを各施設の基準値内になるよう,食事のP制限やP吸着剤,経口活性型ビタミンD製剤を用いる。

●CKD1-2および生化学異常を有さないCKD3の患者では骨密度・骨代謝マーカーを測定し,脆弱性骨折予防のための薬物開始基準を満たす場合は治療を開始することが望ましい。

迅速iPTHモニタリング

著者: 下出祐造 ,   堤内俊喜 ,   辻裕之

ページ範囲:P.584 - P.587

POINT

●副甲状腺機能亢進症

●術中intactPTH迅速測定

●低侵襲手術

分化型甲状腺癌診療における遺伝子組換えヒト甲状腺刺激ホルモン製剤の役割

著者: 大月直樹 ,   丹生健一

ページ範囲:P.588 - P.591

POINT

●遺伝子組換えヒト甲状腺刺激ホルモン(rhTSH)製剤は分化型甲状腺癌で甲状腺(準)全摘術を施行した患者に対し,放射性ヨード全身シンチグラフィーおよび血清サイログロブリン試験での診断補助,甲状腺全摘術後のアブレーション(残存甲状腺床の破壊)に用いられる。

●rhTSHを用いた検査の目的はアブレーションの適応決定,局所もしくはリンパ節および遠隔転移の検索,アブレーション後の経過観察である。

●rhTSHは高価で医療費の問題はあるものの,分化型甲状腺癌術後患者の受ける恩恵は大きい。

●低用量アブレーション症例の集積による有用性の検討がなされ,治療への適応拡大がなされることが期待される。

特集② 知っておきたい呼吸器疾患―専門医の診方・治し方

ページ範囲:P.593 - P.593

睡眠時無呼吸症候群

著者: 赤柴恒人

ページ範囲:P.594 - P.599

POINT

●SASは睡眠中に出現する頻回の上気道閉塞とそれに伴うガス交換障害が病態の本質である。

●睡眠中の著明なイビキと著しい日中の眠気を特徴とする。

●SASは高血圧をはじめとする種々の心血管障害の発症に直接的に関連する。

●治療はnasal CPAPが有効で第一選択である。

成人気管支喘息

著者: 大田健

ページ範囲:P.600 - P.605

POINT

●喘息は気道の慢性炎症と種々の程度の気道狭窄と気道過敏性の亢進を特徴としている。

●喘息の診断は,問診が重要な役割を演じるが,呼吸器症状がある場合には,喘息と決めつけないで鑑別診断を行うことが重要である。

●1秒量は,気流制限を評価するゴールドスタンダードであり,FV曲線は,末しょう気道の状態を把握するよい指標となる。

●長期管理では慢性の気道炎症を主な標的としており,喘息症状の有無にかかわらず,基本薬として抗炎症効果のある吸入ステロイド薬(ICS)を用いる。

●長期管理の目標は,無症状という理想的なコントロール状態の達成と維持である。

●喘息の発作は,家庭など病院外で発現することが多く,家庭での対応と救急外来を代表とする医療機関での対応が必要である。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

著者: 松元幸一郎

ページ範囲:P.606 - P.611

POINT

●診断には気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーが必要である。

●体動時呼吸困難は気流閉塞によるエアートラッピングによって生じる。

●重症度は気流閉塞の程度や呼吸困難の程度などから総合的に判定する。

●安定期の治療の主役は長時間作用型気管支拡張薬の吸入療法である。

●重症例では耳鼻咽喉科・頭頸部外科手術の周術期に配慮が必要である。

呼吸器感染症

著者: 宮下修行

ページ範囲:P.612 - P.617

POINT

●わが国では肺炎診療は主に入院治療が一般的であった。しかし医療費の適正化の社会的要請から今後は欧米と同様に外来治療がさらに推進され,入院期間の短縮が求められる。

●耐性菌の出現や蔓延を抑止するため適性抗菌薬使用を考慮しなければならない。

●肺炎は,①病院外で発症する市中肺炎,②病院内で発症する院内肺炎,③病院外で発症するが市中肺炎にも院内肺炎にも類似する医療・介護関連肺炎の3つに分類され,ガイドラインが公表されている。

●呼吸器感染症に関するガイドラインの特徴のひとつは,フローチャートによる肺炎診療の簡易化であり,3~5つのステップで抗菌薬選択に至る。

●抗菌薬の投与方法は,体内動態と薬剤特性を考えた投与法(PK/PD理論)が推奨されている。

肺サルコイドーシス

著者: 四十坊典晴 ,   山口哲生

ページ範囲:P.618 - P.623

POINT

●サルコイドーシスの診断は組織診断群と臨床診断群との2群に分かれる。

●サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患であり,非常に多彩で,多様であり,自然改善する場合から悪化し,治療を必要とする場合まで幅が広い。

●サルコイドーシスが悪化し,治療を要する場合はステロイド療法が基本である。

●難治性サルコイドーシスの場合,メトトレキサート,アザチオプリン,生物学的製剤が使用される。

専門医でなくても知っておきたい肺癌

著者: 名和公敏 ,   池田徳彦

ページ範囲:P.624 - P.628

POINT

●小細胞肺癌(SCLC)

●非小細胞肺癌(NSCLC)

●外科治療

●術後補助化学療法

●個別化治療

原著

小児両側同時性顔面神経麻痺の1例

著者: 服部玲子 ,   伊藤由紀子 ,   田中滋己 ,   井戸正流

ページ範囲:P.629 - P.632

はじめに

 両側性顔面神経麻痺は稀な疾患である。顔面神経麻痺の発症するタイミングにより,①一側麻痺後2週間以内に他側麻痺が発症する両側同時性麻痺,②先行する麻痺が回復したあと他側に麻痺が発症する両側交代性麻痺,③両側に3回以上の麻痺が生じる両側再発性麻痺の3種類に分類される1)。今回,小児の両側同時性顔面神経麻痺症例を経験したので報告する。

気管切開術を要した甲状舌管囊胞の1例

著者: 山本圭佑 ,   関伸彦 ,   白崎英明 ,   近藤敦 ,   長屋朋典 ,   宮田遼 ,   氷見徹夫

ページ範囲:P.633 - P.637

はじめに

 甲状舌管囊胞は甲状舌管の遺残に由来する先天性囊胞であり,甲状舌管の下降経路に沿って舌盲孔から甲状腺までの間のいずれの部位にも発生するとされている1)。舌骨より下方の頸部正中に隆起する腫瘤としてみられることが多いが,喉頭内方へ発育する甲状舌管囊胞の報告は少ない。

 今回われわれは喉頭内方への発育を認め,摘出時に気管切開術を要した甲状舌管囊胞の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

鏡下囁語

難聴とやがての認知症―研究者はいかに認知障害が難聴とリンクしているかを知らない

著者: 上村卓也

ページ範囲:P.638 - P.639

 これは,今年2月24日のニューヨーク・タイムズに載ったエッセイの表題と副題で,難聴はコミュニケーション障害を起こし,生活の質を低下させるという認識に止まっている者の1人としてその内容はぜひ紹介したいと思った。

 著者のK. Boutonはニューヨーク・タイムズの元編集者で,彼女自身高度難聴のため右耳は補聴器,左耳は人工内耳を装用している。“Shouting Won't Help”(Sarah Crichton Books,図1)という単行本を今年出版し,本文はそれを元にしたことが付記されている。以下はその抄訳である。

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欧文目次

ページ範囲:P.551 - P.551

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.641 - P.641

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.642 - P.642

投稿規定

ページ範囲:P.644 - P.644

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.645 - P.645

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.646 - P.646

 5月から夏場にかけては日本耳鼻咽喉科(日耳鼻)学会総会,次はソウルで開催の第20回国際耳鼻咽喉科学会議(IFOS 2013)とはじまり,いくつもの学会が開催され,興味ある演題や討論が交わされます。また各地方部会も開催されることと思います。診療所,病院群,大学病院の先生方もすべての学会に出席できるわけではありませんが,参加すると何がしか得るものがあります。一方で,学会等の出席が多くなると,留守の期間の診療パワーの低下,職員や医局の先生への負担もかかり,申し訳ない気分にもなります。なるべく若い先生には地方部会から日耳鼻などの大きな学会まで,ぜひ積極的に発表の機会を作ってもらいたいと思います。抄録の書き方,発表の準備,発表,質疑応答の仕方など良い経験ですし,さらに重要なことは発表後に発表内容を論文にすることです。若手の先生のための発表の準備やコツについては本誌のバックナンバーの特集にもありますのでぜひご覧ください。執筆には症例報告,臨床検討,研究成果などさまざまな内容がありますが,臨床関連の論文は本誌が最適な投稿雑誌の1つです。どしどしご投稿ください。

 さて,今月号の特集は「知っておきたい呼吸器疾患―専門医の診方,治し方」と「甲状腺・副甲状腺診療Update」を取り上げました。とても充実した内容になっています。両分野において新しい知識を得ることができると思います。原著論文は小児の両側同時性に起こった顔面神経麻痺症例と気管切開まで至った甲状舌管嚢胞の1例が報告されていますが,いずれも興味ある臨床像を示し,参考になる症例です。改めて,夏の暑さに負けずおまとめくださった,興味ある論文の投稿を期待しております。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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