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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科86巻1号

2014年01月発行

雑誌目次

特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の最新トピックス

ページ範囲:P.11 - P.11

≪耳科領域≫

中耳内視鏡手術

著者: 欠畑誠治

ページ範囲:P.12 - P.19

POINT

●経外耳道的内視鏡下耳科手術(transcanal endoscopic ear surgery:TEES)は,ほとんどすべての行程を外耳道内から内視鏡下に行うkeyhole operationである。

●TEESは,低侵襲で,明視下で安全確実な,生理的機能の回復を目的とする術式である。

●真珠腫に対しては,①死角を制御し,②換気ルートの回復を行い,③乳突腔の最大限の温存を可能とすることで真珠腫再発の予防を目指している。

●Powered TEESはpowered instrumentを使って内視鏡下にretrograde mastoidectomy on demandを行う。これによりTEESの適応は拡大した。

新しい人工聴覚

著者: 岩崎聡

ページ範囲:P.20 - P.24

POINT

●人工聴覚器の分野が急速に発展している。

●人工聴覚器には人工内耳,人工中耳,植込型骨導補聴器がある。

●高音急墜型感音難聴に対する新たな治療法として残存聴力活用型人工内耳(EAS)がある。

●人工内耳は低侵襲手術の方向へ。

●伝音・混合性難聴に対する新たな治療法として植込型骨導補聴器と人工中耳がある。

●しっかりした有効性の評価と適応判断が要求される。

聴力障害と脳機能

著者: 南修司郎

ページ範囲:P.26 - P.30

POINT

●聴力障害による脳可塑性は,聴覚中枢領域のみでなく,非聴覚中枢領域にも起こる。

●聴力障害では聴覚視床発火リズム変調により聴覚野の抑制機構障害をもたらす。

●非聴覚野中枢領域のかかわりにより聴覚異常感に対する苦痛,うつ,不安といった苦痛ネットワークが形成される。

●安静時fMRIは聴力障害による脳機能的結合を調べるのに有用である。

●聴力障害による耳鳴患者では左右の聴覚野機能的結合が弱まっている。

≪顔面神経領域≫

ベル麻痺・ハント症候群の最新治療戦略

著者: 濵田昌史

ページ範囲:P.32 - P.35

POINT

●麻痺スコア,抗ウイルス薬,減荷術が3つのキーワードである。

●ベル麻痺とVZV関連麻痺の鑑別は困難である。

●原因別でなく重症度別治療を実践しよう。

●ハント症候群完全麻痺にはステロイド・抗ウイルス薬高用量併用療法が有効。

●減荷術では膝部の十分な開放を心がける。

顔面神経減荷術の新展開

著者: 羽藤直人

ページ範囲:P.36 - P.39

POINT

●顔面神経減荷術は顔面神経麻痺治療の最後の砦。

●従来法による顔面神経減荷術の目的は神経減圧による神経変性の進行予防。

●従来法の減荷術では有効性に関する明らかなエビデンスはない。

●新たな顔面神経減荷術の目的は変性した神経の再生促進。

●徐放化栄養因子を用いれば麻痺発症後3か月程度までは神経再生誘導が可能。

≪鼻科領域≫

内視鏡下頭蓋底手術

著者: 中川隆之

ページ範囲:P.40 - P.44

POINT

●下垂体手術など蝶形骨洞周辺の手術と篩骨が主な術野となる前頭蓋底手術の紹介。

●拡大蝶形骨洞手術は,蝶形骨洞側窩へのアプローチに有用な手技である。

●拡大蝶形骨洞手術には翼口蓋窩の解剖理解が不可欠である。

●拡大前頭洞手術,前篩骨動脈の処理は,前頭蓋底手術の基本手技である。

●確実な頭蓋底再建が術後経過を決める。

舌下免疫療法

著者: 藤枝重治 ,   坂下雅文 ,   大澤陽子 ,   意元義政

ページ範囲:P.46 - P.52

POINT

●舌下免疫療法は来年には保険収載になり,実地臨床で使用できる。

●皮下免疫療法に比べアナフィラキシーなどの重篤な副反応はきわめて少ないが,軽度から中等度の副反応は逆に多い。十分な対策が必要。

●スギ花粉飛散の3か月以上前から始め,最低でも1年間は継続が必要。3年から5年間治療すると,中止しても治療効果が最低同程度の期間継続する。

●口腔底粘膜の樹状細胞に特徴があり,これが作用機序に重要。

≪口腔咽頭領域≫

扁桃摘出手術

著者: 守本倫子

ページ範囲:P.54 - P.58

POINT

●IgA腎症やPFAPA症候群では,扁桃摘出術が効果があることもある。

●扁桃摘出術では従来法に加え,ラジオ波装置(コブレーション),超音波凝固装置(ハーモニックスカルぺル,ソノサージ)などが使用されるようになってきた。

●これらの機器は組織への熱侵襲を少なくすることで,術後疼痛を軽減させ,出血には差がない。

●癒着扁桃にも容易に使用できるが,扁桃被膜を見失うこともある。

●全身状態も含め,個々の症例ごと,術者ごとにどの機器を使用して手術を行うか検討することは大切である。

唾液腺内視鏡

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.60 - P.63

POINT

●唾液腺内視鏡による唾液管観察と病変の診断。

●唾液腺内視鏡による唾石治療。

●唾液腺内視鏡の将来。

IgG4関連疾患の診断と治療

著者: 高野賢一 ,   関伸彦 ,   阿部亜由美 ,   矢島諒人 ,   氷見徹夫

ページ範囲:P.64 - P.69

POINT

●耳鼻咽喉科医はIgG4関連疾患を診断する機会が多い。

●新たな包括診断基準では病理組織所見を重視している。

●診断基準のみならず,臨床所見や病理所見などから総合的に診断する。

●安易なステロイド投与による診断的治療は慎む。

●治療は主としてステロイドによるが,治療法は今後変遷していく可能性もある。

≪喉頭領域≫

経口腔ロボット支援手術

著者: 伊藤博之 ,   清水顕

ページ範囲:P.70 - P.73

POINT

●da Vinciサージカルシステムによる耳鼻咽喉科・頭頸部外科のロボット支援手術を論説する。

●ロボット支援手術は内視鏡手術を高度に発展させた方法である。

●3D立体視やモーションスケール機能,手ぶれキャンセルができるため繊細な手術が可能である。

●経口腔ロボット支援手術はda Vinciで咽頭病変を切除する方法である。

●わが国で臨床応用が開始され,安全性と優位性を検証している。

加齢による音声障害

著者: 平野滋

ページ範囲:P.74 - P.80

POINT

●加齢による音声障害は,呼気流・呼気圧の低下,声帯粘膜・筋肉の萎縮と脆弱化などが原因となって起こる。

●声帯粘膜の組織は,ヒアルロン酸の減少とコラーゲンの蓄積による線維化をきたし萎縮する。

●診断は喉頭内視鏡検査,特にストロボスコピー検査によってなされ,声帯粘膜の萎縮,振動の減弱化,声門閉鎖不全を認める。

●音声治療は音声機能拡張訓練(vocal function exercise),共鳴法などが用いられ,症例によっては効果があるので最初に行う治療として適している。

●声帯内方移動術(甲状軟骨形成術,喉頭注入術)は声門閉鎖不全の是正には役に立つが,音声の改善は不十分なことが多い。

●粘膜萎縮に対しては塩基性線維芽細胞増殖因子による再生医療が効果的である。

≪頭頸部腫瘍領域≫

HPVウイルス関連中咽頭癌

著者: 安井俊道 ,   猪原秀典

ページ範囲:P.82 - P.86

POINT

●HPV関連中咽頭癌が増加している。

●HPV関連中咽頭癌の臨床像とは。

●HPV関連中咽頭癌は非関連癌に比べて予後がよい。

●HPV関連中咽頭癌には,陰窩から発生する微小癌が存在する。

●囊胞性リンパ節とHPVの関係性とは。

●HPV関連中咽頭癌の今後の展望。

抗EGFR抗体薬の作用機序と開発状況

著者: 岡野晋

ページ範囲:P.88 - P.92

POINT

●抗EGFR抗体薬は細胞の分化・増殖などにかかわる受容体をブロックすることにより効果を発揮する。

●抗腫瘍効果には,ADCC活性,CDC活性なども関与している。

●セツキシマブのほかにも多くの抗体薬を用いた臨床試験が進行中であり,その有効性が検証されている。

鏡下囁語

イランの首都テヘランでの学会と病院の印象記

著者: 加我君孝

ページ範囲:P.94 - P.97

1.ヨーロッパの中世1000年の間,ギリシャ・ローマの医学を継承発展させた中東の国々

 2500年前のギリシャのヒポクラテスの医学は,西暦100年の後半に,ローマのガレノスに受け継がれて発展した。その後ヨーロッパは中世に入り,14世紀のルネサンスまで約1000年もの間,医学は停滞していたかのように教わってきた。実はギリシャ・ローマの医学は,トルコを経て中東諸国に継承され大きな発展をした。イラン,すなわち昔のペルシャはその拠点の1つであった。ルネサンスを迎え,ペルシャ語やアラビア語で書かれた医学書がイタリアのサレルノでラテン語に訳された。その訳がヨーロッパ各国に伝えられた。筆者は2012年5月にイラン聴覚医学会の特別講演に招かれたことを機会に,テヘランで見聞きしたことを報告したい。

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欧文目次

ページ範囲:P.5 - P.5

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.99 - P.99

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.100 - P.100

投稿規定

ページ範囲:P.102 - P.102

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.103 - P.103

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.104 - P.104

 2014年1月号は,年の初めにふさわしい特集を組みました。「耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の最新トピックス」として,耳科領域では中耳手術アプローチ,人工聴覚,聴力障害と脳機能について,顔面神経領域では麻痺の新治療戦略と減荷術,鼻科領域では内視鏡の頭蓋底手術,舌下免疫療法について,口腔咽頭領域ではコブレーターをはじめとして種々の機器の特徴,唾液腺内視鏡,IgG4関連疾患について,喉頭領域ではロボット手術,音声外科について,また頭頸部腫瘍領域ではHPV関連中咽頭癌,抗EGFR抗体薬など,各領域における最新の話題が取り上げられ,とてもわかりやすく解説されています。これらの内容は本年予定されている多くの学会でディスカッションされるだろう内容でもあり,講習会や専門医試験でも取り上げられる事項と考えられます。新しい疾患概念,手術法,薬物療法についてぜひ一読されることを編集委員一同願っています。

 鏡下囁語は加我君孝先生の随筆「イランの首都テヘランでの学会と病院の印象記」が掲載されています。加我先生がイラン聴覚医学会に出席されたときの様子と,特にイスラム圏での女性の服装について,戒律に従い厳格であることが写真とともに述べられています。確かに私もイスラム圏から日本への女性留学医師とともに大学の手術室に入った経験がありますが,同様にベールと手術着の下に長袖のシャツを着ての手術スタイルでした。今後,国や宗教を超えてさまざまな領域や事項で協力していくことが増えると考えられ,ますますフレキシブルな対応が求められると思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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