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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科86巻10号

2014年09月発行

鏡下囁語

ベルリンの自然科学博物館(Museum für Naturkunde)の恐竜の大きな三半規管

著者: 加我君孝12

所属機関: 1東京大学 2独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究(感覚器)センター名誉センター

ページ範囲:P.872 - P.874

文献概要

 ベルリンにあるフンボルト大学の附属病院Charitéの近くに自然科学博物館(Museum für Naturkunde)があり,沢山の恐竜コレクションの巨大な骨格が展示されている。そのため展示室は体育館のように大きい(図1)。恐竜の名はブラキオザウルスで高さが13mもある。その頭部だけでも大きいのでびっくりさせられた(図2)。このような大きな体格を維持するには,どれだけの量を食べていたのであろうか。

 爬虫類である恐竜の眼は発達しており,聴覚よりも視覚優位の巨大動物である。体のバランスや回転運動を感じる三半規管は魚類や両棲類,爬虫類,鳥でもよく発達している。私は小動物の進化の各段階に沿って三半規管や耳石器を,連続切片の標本にしてよく観察したものであるが,恐竜のものは見たことがなかった。ベルリンのフンボルト大学での耳鼻咽喉科の学会で,会長のScherer教授がその鋳型を見せてくれた(図3,4)。手のひらに置いて見せてくれたが,サイズが大きいのには驚かされた。各三半規管の輪はヒトの親指ほどもある。ヒトの三半規管の輪の曲率直径は約6.4mmと小さい1)。体の大きい動物,例えば,ゾウの三半規管はもっと大きいのであろう。私はそっと近寄って写真に撮らせてもらった。爬虫類のため蝸牛は形成されず三半規管と耳石器だけである。哺乳類の内耳を見慣れていると妙な印象を与えるが,貴重な写真となった。三半規管の曲率直径は,Scherer教授の親指ほどもあるので,恐らく18mmほどはあると考えられる。ヒトの三半規管の3倍近くの大きさである。

参考文献

1)野村恭也・他:新耳科学アトラス—形態と計測値.Springer東京,東京,1992
2)土屋 健著,小林快次監修:そして恐竜は鳥になった.誠文堂新光社,東京,2013
3)アルフレッド・シャーウッド・ローマ・他:脊椎動物のからだ—その比較解剖学,第5版.法政大学出版,東京,1983

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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