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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科86巻11号

2014年10月発行

雑誌目次

特集 インフルエンザ

著者: 岩田敏

ページ範囲:P.889 - P.889

インフルエンザウイルスの特徴と型別分類

著者: 鈴木康司 ,   田代眞人 ,   信澤枝里

ページ範囲:P.890 - P.897

POINT

●インフルエンザウイルスは抗原性の違いによりA型,B型,C型に分類され,A型ウイルスはさらに18HA亜型,11NA亜型に分類される。

●A型インフルエンザウイルスはヒトのほか,鳥,ブタ,ウマを宿主とする。

●A型インフルエンザは人獣共通感染症である。

●インフルエンザウイルスのレセプターは,糖鎖末端のシアル酸であり,その分布が宿主特異性を左右する。

小児のインフルエンザ診療におけるポイント

著者: 菅谷憲夫

ページ範囲:P.898 - P.902

POINT

●乳幼児のインフルエンザでは,全身症状は軽く,呼吸器症状が中心となる。

●ノイラミニダーゼ阻害薬により治療した場合,解熱後も,数日間はウイルス排泄が続く。

●ノイラミニダーゼ阻害薬,特にオセルタミビルは,B型インフルエンザに効果が低い。

●治療により生じた耐性ウイルスは,人から人に感染することはなく,重症化もない。

●インフルエンザワクチンは発病防止効果に加えて,indirect protection(集団免疫効果)が重要である。

成人のインフルエンザ診療におけるポイント

著者: 池松秀之

ページ範囲:P.904 - P.909

POINT

●成人では倦怠感などの全身症状が強く,日常生活に大きな障害となる。

●成人は,一般生活の場での感染とともに,家庭内で子どもから感染を受けることも多い。

●迅速診断キットは臨床的に有用であり,検体採取は鼻咽頭拭いが推奨される。

●H275Y変異をもつA(H1N1)でのオセルタミビルの臨床効果は減弱していた。

●A(H1N1)pdm09においてH275Y変異株がみられており,その動向が注目される。

●高齢者ではインフルエンザ後の細菌性肺炎の合併は稀ではなく,注意が必要である。

耳鼻咽喉科診療からみたインフルエンザ

著者: 許芳行

ページ範囲:P.910 - P.914

POINT

●上気道を専門とする耳鼻咽喉科医は,インフルエンザの診療に携わる機会が多い。

●臨床症状,流行状況,迅速診断キットの結果をみて,総合的にインフルエンザの診断を行う。

●ハイリスク患者の存在を念頭に細菌感染症などの合併症の存在にも注意する。

●抗インフルエンザ薬をはじめ,各薬剤の特徴を理解したうえで薬物療法を行う。

●耳鼻咽喉科医自身,ほかの医療従事者の感染予防,受診する患者の感染拡大にも十分な注意を払う。

抗インフルエンザウイルス薬の特徴と使い分け

著者: 渡辺彰

ページ範囲:P.916 - P.923

POINT

●2009年の新型インフルエンザでは,日本が最も効果的なインフルエンザ診療を行った。

●インフルエンザ診療のキーポイントは抗インフルエンザ薬の早期投与である。

●抗インフルエンザ薬の有効性を否定するコクラン・レビューの見解には反論が多い。

●現在使われている抗インフルエンザ薬はいずれもノイラミニダーゼ阻害薬である。

●ファビピラビルは,新型インフルエンザの出現時などに国が使用を許可する。

●ときどき出現するオセルタミビル耐性ウイルスは,耐性の程度が低く,問題は小さい。

原著

鼻口蓋管囊胞の1例

著者: 臼井大祐 ,   八尾和雄 ,   岡本牧人 ,   赤尾一郎

ページ範囲:P.925 - P.929

はじめに

 鼻口蓋管囊胞は1914年にMayer1)により初めて報告された,比較的稀な発育性の非歯原性囊胞である。

 本囊胞は多くの症例が上顎正中部に発生し,胎生期に存在し生後1年以内に消退する鼻口蓋管の遺残上皮に由来する1〜3)。発生原因については遺残上皮への口腔内からの感染の波及,中切歯根の根端部に生じた炎症の波及,不適合義歯,咀嚼による刺激などに起因する外傷などが誘引となり症状を呈する4,5)

 今回われわれは上顎正中部から上顎洞や鼻腔,口蓋を圧排するように増大・発育している巨大な鼻口蓋管囊胞を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

初診時メラノーシスと診断され2年以上経過したあとに悪性黒色腫と診断された1例

著者: 木村将吾 ,   水町貴諭 ,   干野季美子 ,   本間明宏 ,   福田諭

ページ範囲:P.931 - P.935

はじめに

 メラノーシスとは皮膚などに多くみられる良性の色素沈着であり,悪性黒色腫とはメラニン産生能を有する色素細胞(メラノサイト)に由来する悪性腫瘍である。悪性黒色腫の発生部位は,皮膚や眼球,消化管粘膜などさまざまであるが,頭頸部領域においても鼻副鼻腔や口腔粘膜に発生しうる。

 今回われわれは,鼻腔粘膜からの生検によりメラノーシスと診断され2年以上経過した後に悪性黒色腫と診断された1例を経験したので報告する。

下顎骨骨髄炎が原因と考えられた深頸部ガス壊疽の1例

著者: 吉﨑直人 ,   渡邊健一

ページ範囲:P.937 - P.942

はじめに

 ガス壊疽とは,軟部組織壊死を引き起こす軟部組織内感染症のうち,嫌気性菌感染によって体内にガス産生を生じた壊疽性感染症の総称で,嫌気性桿菌であるClostridium属を起炎菌とするClostridium性と非Clostridium性に大別される。その臨床症状は急速に進行し,局所所見では組織内ガス像や筋組織破壊に伴う激しい疼痛,著明な発赤腫脹などを認め,敗血症やdisseminated intravascular coagulation(DIC)などの重篤な病態に陥る危険性を有している。深頸部感染症は歯原性の炎症や,扁桃炎や顎下腺炎といった耳鼻咽喉科領域の感染症の続発症として発症することが多く,形成された膿瘍や組織内ガスは頭頸部領域の疎な頸部組織の間隙を通じて縦隔にまで進展することもあり,縦隔炎を生じた場合には死亡率が上昇するといわれている1〜7)。ガス壊疽の治療には,切開・排膿・デブリドマンといった外科的処置,感染部位の生理食塩水洗浄,起炎菌に対して感受性を有する抗菌薬の投与が必要であり,特に抗菌薬投与は長期間継続して必要となる場合もある。今回われわれは,下顎骨骨髄炎が原因と考えられた右深頸部ガス壊疽を発症した血液透析症例を経験したので,その概要と経過に文献的考察を加えて報告する。

腺腫様甲状腺腫と診断され遠隔およびリンパ節転移をきたした1例

著者: 由井光子 ,   繁治純 ,   四宮弘隆 ,   大月直樹 ,   丹生健一

ページ範囲:P.943 - P.948

はじめに

 結節性甲状腺腫が病理組織学的に良性と診断されたにもかかわらず,リンパ節転移や遠隔転移をきたし臨床的に悪性の経過をたどる場合がある。このような病態を示す疾患は従来から転移性甲状腺腫として報告され,濾胞癌の最も分化した亜型とされてきた。摘出した原発巣の病理組織学的検索では濾胞腺腫または腺腫様甲状腺腫と診断されるため,術後に経過観察を受けることは少なく,リンパ節転移や遠隔転移が判明して初めて悪性の診断がなされることから,頻度は少ないものの臨床上注意が必要である。今回われわれは,結節性甲状腺腫に対して切除術が行われ病理組織学的に腺腫様甲状腺腫と診断されたにもかかわらず,のちに局所再発,リンパ節転移および遠隔転移をきたした稀な症例を経験したので報告する。

頸長筋に達した上咽頭腔外異物の1症例

著者: 布施慎也 ,   新井啓仁 ,   岡本康太郎 ,   辻川敬裕 ,   松井雅裕 ,   安田誠 ,   豊田健一郎 ,   中野宏 ,   久育男

ページ範囲:P.949 - P.952

はじめに

 咽頭異物は日常診療でよく接する疾患である。異物の種類としては,わが国では魚骨が大半を占め,刺入部位としては口蓋扁桃が多い。また,高齢者においては義歯やPTP包装シートの誤飲が問題となり,時に全身麻酔下での摘出を要することがある。

 小児や高齢者の場合,症状や訴えがわかりにくいことがあるうえに,いったん粘膜下に刺入埋没すると確認が困難となり画像診断が必要となる1)

 今回,われわれは受傷直後の画像診断において,異物同定が困難であったが経時的なCT施行により上咽頭腔外の異物の診断に至り摘出した小児症例を経験した。文献的考察も併せて報告する。

聾型聴力を示す耳硬化症に対するアブミ骨手術

著者: 新川樹一郎 ,   成井裕弥 ,   山本英永 ,   陶陽 ,   森安真綾 ,   矢野さゆり ,   宮本ゆう子 ,   新川敦

ページ範囲:P.953 - P.958

はじめに

 純音聴力検査にて気導聴力が100dB以上の聾型聴力を示す症例のなかには,骨導聴力がある程度保たれている混合性難聴症例が少なからず存在する。それらのなかで聴器CTにて蝸牛型耳硬化症を認める例も少なくない。今回,われわれは純音聴力検査にて聾型を示す混合性難聴症例のなかで,骨導閾値が残存していることを確認し,側頭骨CTにより耳硬化症と考えられた症例に対し,両側のアブミ骨手術を施行し,聴力の著明な改善をみた症例を3例経験したので報告する。

書評

内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術—CT読影と基本手技[3DCT画像データDVD-ROM付]

著者: 花澤豊行

ページ範囲:P.959 - P.959

安全・確実な内視鏡下鼻内手術のために

 日々の忙しさから逃れての旅は,格別である。さてどこに行こうかと考え探索し,目的地が定まったときには,そのワクワクした気持ちを言葉で表現することはとてつもなく難しい。まずは目的地の地図を取り寄せ,さらにそのほかの見所や美味しいお店を詳細に書き記した旅本を手元に置きたくなるのは,時間にゆとりのないわれわれ医師には必然の行為ではないだろうか。旅本選びにも大切なポイントがある。旅慣れない者にもわかりやすく,持参品には何が必要か,地図上での見所やおいしいお店はどこか,そして旅程でのトラブルの回避と遭遇した際の対応などが十分に掲載されていることが,必須の記載項目である。

 本書はまさに,内視鏡下鼻副鼻腔手術という旅に出る前に必ず用意しておきたいクオリティの高い旅本といってよいであろう。内視鏡下鼻副鼻腔手術の保険算定が改正され,鼻科治療における内視鏡手術の位置付けは一層確立された。より多くの耳鼻咽喉科医が安全で確実な内視鏡下の鼻内手術ができることを,京都大学を中心とした執筆者たちが心から願った一冊である。

Minds診療ガイドライン作成の手引き2014

著者: 長谷川友紀

ページ範囲:P.960 - P.960

診療ガイドライン作成の実際を学びたい方に

 本書は,2007年の旧版発行以来,診療ガイドライン作成者にとって標準的なテキストとして用いられてきた。7年ぶりの改訂であり,診療ガイドラインに関する最近の動向に対応すべく大幅にページ数を増して内容の充実を図っている。公益財団法人日本医療機能評価機構は,1995年の設立以来,病院の第三者評価の実施,医療事故の情報収集・分析,産科医療補償制度(無過失保険制度)など,医療の質向上を目的とした諸事業を行っている。Minds(EBM普及推進事業)は,日本医療機能評価機構の1部門として,診療ガイドライン作成の支援,評価,普及などを行っている。本書は,実際の診療ガイドラインの作成支援,評価などに豊富な経験を有するMindsのスタッフが中心になり作成された。

 EBM手法に基づく診療ガイドラインは,医療の標準化を図るための有力な手法である。日本では2000年ごろより普及し始め,当初は厚生労働省の科学研究費などにより作成が支援され,最近では学会などの自主的な努力により,年間20〜30本が作成され,公開されている。累計では300本を超え,日常遭遇する主要な疾患については,ほぼ整備されていると考えてよい。また,学会では評議員など,将来の活動の主体となるであろう多くの若手メンバーがガイドラインの作成にかかわるようになった。作成の主体となる学会も,作成メンバーの教育研修を継続して行うほか,COI(利益相反)の管理など,社会の要請にいかに応えながら作成を進めるかが課題になっている。

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欧文目次

ページ範囲:P.885 - P.885

〔お知らせ〕第23回「内視鏡下鼻内手術の研修会」のお知らせ

ページ範囲:P.924 - P.924

 耳鼻咽喉科展望会では平成27(2015)年3月5〜7日の3日間,慈恵会医科大学解剖学講座の協力のもとに下記の予定で「内視鏡下鼻内手術の研修会」を開催いたします。研修会の趣旨は実地に即した手技とそのbasicならびにextendedな知識の修得です。dissectionでは頭蓋底を含めた解剖の確認を行います。

 手術(6〜7例)は,局麻および全麻下の慢性副鼻腔炎,鼻中隔響曲症,副鼻腔嚢胞などを予定しています。また,ナビゲーションサージェリー,パワードインストルメントによる手術供覧も予定しています。

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.961 - P.961

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.962 - P.962

投稿規定

ページ範囲:P.964 - P.964

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.965 - P.965

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.966 - P.966

 猛暑の夏も過ぎ,秋を感じ始めた頃に都内の公園では蚊によるデング熱の発症,さらに全国に患者さんが帰郷し広がりをみせています。公園も都内の複数に分散しはじめていますが,本号が発刊される頃には本疾患が終息していることを願っています。一方でアフリカでのエボラ出血熱の拡大は人類にとっての脅威であり,アフリカから世界へと拡大しないことを祈るばかりです。予防ワクチンもないことから致死率も高い感染症であり,ヨーロッパにおける中世のペストを想起させます。人類の科学や経済の発展に伴うジャングルの開発なども影響しているのでしょうか,わが国の日常診療のなかでは思ってもいなかった感染症の登場です。

 さて本号の特集はやはりウイルス性疾患で,冬期には内科,小児科とともに耳鼻咽喉科がかかわるインフルエンザに関するものです。インフルエンザウイルスについて,ウイルスの特徴と型別分類,小児と成人におけるおのおのの診療のポイント,耳鼻咽喉科医に関連する対処,抗インフルエンザウイルス薬の特徴と使用法について5人の先生方による解説を掲載しています。本年から来年にかけてわが国で流行ると思われるインフルエンザについて,本誌に目をとおされることで,多くの疑問点が解決され適切な診療が行われることを望みます。過去,鳥インフルエンザ襲来による日本人のパニックに近い反応も記憶に新しい事項です。受験生の追い込みの際には流行していないことを望みます。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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