icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科86巻12号

2014年11月発行

雑誌目次

特集① 良性発作性頭位めまい症Update

ページ範囲:P.975 - P.975

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の疫学と病態

著者: 將積日出夫

ページ範囲:P.976 - P.980

POINT

●BPPVは外来受診患者中最も多い末梢性めまい疾患である。

●BPPV患者は中年以降に多く,原因不明の特発性では女性が多い。

●本邦の有病率は人口10万人対11人と推定される。

●BPPVの病態にはクプラ結石症と半規管結石症の2種類がある。

●原因不明例が最も多いが,頭部外傷,末梢性めまい疾患も原因となる。

頭位性めまいの鑑別診断

著者: 今井貴夫

ページ範囲:P.982 - P.989

POINT

●頭位性めまいで最も頻度の高い疾患は良性発作性頭位めまい症である。

●良性発作性頭位めまい症では病巣半規管により特徴的な眼振を示す。

●頭位性めまいには頻度は低いが生命予後に影響する中枢性頭位めまいが含まれる。

●中枢性頭位めまいは,小脳の虫部,特に虫部垂や小節の異常で発症することが多い。

●頸部の回転または伸展によりめまいが誘発される頸性めまいは中枢性頭位めまいに分類される。

外側半規管型BPPVの診断と治療

著者: 中山明峰

ページ範囲:P.990 - P.996

POINT

●眼振の性質を観察しないと外側半規管型BPPVの診断はできない。

●外側半規管型BPPVの眼振方向は水平性眼振である。

●外側半規管型BPPVの患側は,カナル型かクプラ型かで異なる。

●カナル型かクプラ型かは眼振が向地性か背地性かで診断する。

●診断を正確にできれば耳石を前庭に向かわせる方向で頭位回転をする。

後半規管型BPPVの診断と治療

著者: 飯田政弘

ページ範囲:P.998 - P.1003

POINT

●後半規管型BPPVは良性発作性頭位めまい症のうち最も多い病態である。

●浮遊耳石の消失や消退によって軽快・治癒する予後良好な疾患でもあるが,長期化,再発する難治性BPPVも存在する。

●特定の頭位変化で誘発される回転性めまいで,回転性要素の強い潜時がある頭位眼振を呈する。めまい頭位を反復することで眼振は軽快または消失する傾向にある。

●理学療法として頭位治療が急性期めまい発作時に施行され,非特異的運動療法が再発予防として施行される。

良性発作性頭位めまい症の外科的療法

著者: 瀬尾徹

ページ範囲:P.1004 - P.1008

POINT

●半規管遮断術は難治性BPPVに対し有効な治療法である。

●後半規管型BPPVだけでなく,外側半規管型,前半規管型に対しても有効である。

●半規管結石のみならずクプラ結石に対しても有効である。

●めまいの制御率はほぼ100%である。

●術後の感音難聴の発生はきわめて稀である。

予防医学からみたBPPV

著者: 稲垣太郎

ページ範囲:P.1010 - P.1014

POINT

●BPPVの誘因として,「高齢者」「女性」「内耳障害」「頭部外傷」「基礎疾患」「生活習慣」などが挙げられる。

●誘因の回避は,一次予防(罹患予防)のみでなく,二次予防(再発予防)についても有効である。

●一次予防は,BPPVの病態とその誘因が広く認識されることである。

●二次予防では,卵形囊内の遊離耳石(返還耳石,剝脱耳石)の安定化と減量を考える。

●二次予防は,運動療法や生活習慣の改善などを継続する必要があるため,患者自らが治療の意義・必要性を理解しておくことが重要と考える。

特集② 創管理の最前線—知っておきたい形成外科の知識

ページ範囲:P.1015 - P.1015

局所潰瘍治療薬の使用法と留意点

著者: 堀圭二朗 ,   櫻井裕之

ページ範囲:P.1016 - P.1021

POINT

●皮膚潰瘍の局所治療を行う前に,創治癒を遷延させるような全身状態を改善したうえで,創部をよく観察しwound bed preparationを行うことが重要である。

●創部の状態を観察するポイントは炎症,壊死組織,肉芽形成,上皮形成であり,それぞれの状態において感染の有無と滲出液の量を確認することが重要である。

●局所外用剤は有効成分(active ingredient)と基剤(base)を混合したものであり,それぞれについての分類をもとに適切な治療薬を選択する。

●局所外用剤の有効成分は抗炎症作用,抗菌作用,壊死組織除去作用,肉芽形成促進作用,上皮化促進作用に分類される。

●局所外用剤の基剤は大きく分けて疎水性基剤と親水性基剤に分類される。

●局所潰瘍治療薬の選択は,創部の状態によって適切な有効成分と基材の組み合わせで決定することができる。

創傷被覆材の使い分け

著者: 安田浩 ,   三宅順子

ページ範囲:P.1022 - P.1027

POINT

●創傷の良好な治癒をめざして適切に創の環境を管理することが重要である。

●湿潤環境維持には創傷被覆材は最適な材料である。

●創傷被覆材には素材による特性があり,滲出液の量などは創の状態にあった材料を選択する。

●密閉による感染惹起に注意し,創の観察を怠らない。

●縫合創に用いる場合は術後48時間程度にとどめる。

陰圧閉鎖療法(NPWT)の実際

著者: 中川雅裕 ,   井上啓太 ,   五来克也

ページ範囲:P.1028 - P.1032

POINT

●Negative pressure wound therapy(NPWT)は創傷治癒を促進し,頭頸部領域のさまざまな創傷に対して有用である。

●NPWTは平成22(2010)年4月より保険収載され健康保険の適応となった。

●添付文書によると頸部の瘻孔では禁忌・禁止項目となっているが,有用との報告も多い。

●頭頸部領域のさまざまな開放創に対してNPWTは有用であるが,効果が乏しい場合は,ほかに創傷治癒を遅延する何らかの原因が存在することを考慮する。

人工真皮を用いた皮膚欠損創の治療

著者: 副島一孝

ページ範囲:P.1033 - P.1039

POINT

●人工真皮とはコラーゲンスポンジとシリコン膜から構成される真皮再建用テンプレートである。

●皮膚欠損創に移植されると移植床から線維芽細胞や毛細血管が侵入して真皮様組織が構築される。

●真皮様組織上に分層皮膚移植を行って皮膚再建を完成する。

●薄い分層皮膚で厚い皮膚と同等の質感を得ることが可能であり,皮膚採取部の犠牲の軽減に寄与する。

●人工真皮と2次植皮の2回の手術を要することが問題点であり,その解決のためにさまざまな研究報告がみられている。

皮膚潰瘍・皮膚欠損に対する再生医療の応用

著者: 松村一

ページ範囲:P.1040 - P.1044

POINT

●ヒト自家培養表皮移植がわが国初の再生医療として皮膚欠損に用いられている。

●広範囲熱傷症例においては,移植後4週の段階で60%以上の生着が得られている。

●移植の前提として真皮層の再建が必要であり,同種皮膚移植や人工真皮移植が行われている。

●生着不良の原因は,母床の血行不良や細菌のコンタミネーションである。

●移植早期では,表皮基底層が未成熟であり,物理的な刺激に弱く容易に剝離・脱落する。

原著

耳鳴に対するエスシタロプラムの有効性

著者: 桝谷将偉 ,   中丸裕爾 ,   森田真也 ,   福田諭

ページ範囲:P.1047 - P.1050

はじめに

 耳鳴の薬物治療として,脳循環改善薬,ビタミン剤,抗不安薬などが用いられている。しかし耳鳴の原因が不明なため標準治療が確定していないのが現状である。

 2004年にFolmerら1)が耳鳴を訴えるうつ病患者に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を投与し,耳鳴の改善を認めたと報告して以来,耳鳴に対する治療薬として同薬剤が注目されるようになった。

 これまでのSSRIは休薬時に漸減する必要があり,管理が煩雑であるという難点があった。近年,わが国で承認を受けたSSRIのエスシタロプラムは,半減期が長いため退薬時に漸減する必要がないため,管理が容易という特徴がある。

 今回,われわれは同薬剤を耳鳴患者に使用し,その有効性・安全性に関して検討したので報告する。

書評

内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術—CT読影と基本手技[3DCT画像データDVD-ROM付]

著者: 岡野光博

ページ範囲:P.1051 - P.1051

3DCTデータを操作しながら読み進められる画期的な書

 待ち望まれていた内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術の新刊書である。本書は京都大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授の伊藤壽一氏によるご監修の下,中川隆之氏が編集を務められ,同大学で行われている手術解剖実習の講師陣が執筆されている。手術解剖実習で得られた知見などを基に,内視鏡手術を行ううえで知っておきたい新しい知識やテクニックを余すところなく伝えている。

 本書の最大の特徴は,付録のDVD-ROMに収められている5例のcadaverのCT画像データを閲覧・操作しながら読み進めることができる点であろう。いうまでもなく手術を行ううえでの基本は局所解剖の理解であり,内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術においては術前CTの適切な読影が大切である。本書の構成はDVD-ROMに収められている5例のCT読影および解剖が中心となっており,本書に掲載されている図の多くはDVD-ROMに収められている5例を用いている。5例のファイルを開き,「i-VIEWワンデータビューワ」で画像を「クルクル」回して,図と同じスライスがヒットしたときは楽しく,前後左右上下に「クルクル」することで解剖の理解が進む。手術書のみならず数多ある耳鼻咽喉科学関連の教科書の中でも,ここまでCT画像データを読者自身が詳細に操作できる書物はあまりないように思う。「面白くて,ためになる」企画がなされている。

プロメテウス解剖学アトラス—頭頸部/神経解剖 第2版

著者: 杉本哲夫

ページ範囲:P.1052 - P.1052

洗練された美しい図を読ませる内容

 『プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第2版』が出版された。本書は洗練された美しい解剖図と読ませる内容を特色としている。初版にはすでに高い評価が与えられており,第2版はその伝統を見事に引き継いだ第一級のアトラスといえる。

 本書は初版に比べると内容がさらに充実し,頭頸部と脳の解剖実習にも,知識の整理にも,これ1冊で十分賄えるアトラスになった。訳者序に紹介されたとおり,旧版の頸部の内容が頭部と合体し,頭頸部として新しく編成された。頭頸部のセクションに新しく組み込まれた内容をみると,そのすべてが医学教育のグローバルスタンダード基準をクリアしており,これからの医学教育に必須の項目といっても過言ではない。

--------------------

欧文目次

ページ範囲:P.971 - P.971

〔お知らせ〕第10回 日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会のご案内

ページ範囲:P.1045 - P.1045

 第10回 日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会を長野県軽井沢町で開催させていただくことになりました。多数の先生方のご参加を心からお待ち申し上げます。

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1053 - P.1053

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.1054 - P.1054

投稿規定

ページ範囲:P.1056 - P.1056

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.1057 - P.1057

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.1058 - P.1058

 9月から10月にかけて嬉しいニュースが続きました。まずはテニスの全米オープン。錦織圭選手の活躍は凄かったですね。上位シードを次々と破っての決勝戦進出。最後は力つきてしまいましたが,日本で開催されたジャパンオープンではファンの期待どおり見事優勝。世界に通じるトップレベルの選手を育成しようとSONY創業者盛田正明氏が設立した“盛田正明ファンド”による支援でニック・ボロテリー・テニスアカデミーに留学し,厳しいハードルを乗り越えてきた成果が遂に世界に認められるときがやってきました。同じく盛田ファンドの支援で同アカデミーに留学した西岡良仁選手も仁川アジア大会で金メダル。 最近はAppleやSUMSUNGに押され気味ですが,やっぱり“It's a SONY!”です。仁川アジア大会の競泳でも萩野公介選手が,世界体操競技選手権大会では内村航平選手が圧倒的な力をみせてくれました。草食系などといわれますが,今時の日本男子は実に逞しいです。

 そして10月,青色発光ダイオードを発明した赤﨑 勇教授,天野浩教授,中村修二教授の3名がノーベル物理学賞を受賞しました。ご存知のように赤﨑教授と天野教授が名古屋大学で窒化ガリウム半導体による青色LED作製に成功し,中村修二教授が日亜化学工業で量産化に成功したことに対する評価です。基礎研究から実用化に至るまですべての過程で日本人の功績が認められたことは嬉しい限りです。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?