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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科86巻13号

2014年12月発行

雑誌目次

特集 口腔粘膜の難治疾患への対応法

ページ範囲:P.1067 - P.1067

再発性アフタ

著者: 寳地信介 ,   大久保淳一 ,   髙橋梓 ,   橋田光一 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.1068 - P.1071

POINT

●アフタとは,粘膜に生じる10mmまでの円形ないし,楕円形の境界明瞭な潰瘍で,再発を繰り返す場合を再発性アフタという1)

●再発性アフタは日常診療で最も遭遇する機会が多い口腔粘膜炎症性疾患である。

●再発性アフタの主な鑑別疾患は,ウイルス性口内炎,ベーチェット病,難治性咽頭潰瘍などである1)

口腔・咽頭アレルギー

著者: 原田保

ページ範囲:P.1072 - P.1077

POINT

●特定花粉症患者で花粉と相同性のある食物を摂取すると,口腔・咽頭にアレルギー反応を惹起することがある。この疾患概念を口腔アレルギー症候群(OAS)という。

●近年花粉症は増加している。OASからアナフィラキシー反応を起こすことがあり,救命そのほかの目的でこの疾患を熟知しなければならない。

●OASはクラス2食物アレルギーと考えられ,特定花粉とクラス2食物のリンゴ,メロン,キウイなどが反応し,症状が発現する。花粉症と関係する食物を記載し,発症機序などを説明した。

●OSAの診断に問診が最も重要である。抗原の検索にはRAST検査,皮膚プリックテスト,プリック・プリックテスト(PPT)があるが,PPTが最も有用である。

●OASの根治的な治療法はなく,抗原食品の回避が重要である。将来有望な治療は免疫療法であるが,現在有効性は確立されてない。

●稀であるがアナフィラキシー反応が起こり,死亡することもある。副腎皮質ホルモン薬やエピネフリンなどを使用し,救命しなければならない。

口腔・咽頭特殊感染症

著者: 鈴木幹男

ページ範囲:P.1078 - P.1083

POINT

●特殊感染症は,臨床所見や治療経過が通常と違うと気づくことが大切である。

●梅毒,HIV/AIDSはいずれも感症法の5類感染症である。

●5類感染症は7日以内に届出をすること。

●男性同性間性的接触感染による感染例が多い。

●梅毒と診断した場合にはHIV感染も検査する。

口腔・咽頭難治性潰瘍

著者: 八木正夫 ,   阪上智史 ,   友田幸一

ページ範囲:P.1084 - P.1091

POINT

●口腔・咽頭の潰瘍を生じる疾患は多岐にわたるが,診断および治療に難渋することがある。

●難治性口腔咽頭潰瘍は,長期にわたり口腔・咽頭に限局し,非特異的な潰瘍性病変を呈する再発傾向の強い疾病である。

●その潰瘍は,大きさ,形状,深さなどさまざまで,単発あるいは複数の場合がある。

●難治性口腔咽頭潰瘍は,原因不明で,単一疾患であるかどうかにも疑問があり,経過中にベーチェット病を含め他疾患に移行する例も少なくない。

●そのため除外診断が診断上重要であり,悪性病変や皮膚科疾患との鑑別点などから病理学的検査はほぼ必須であり,場合により繰り返し行う必要がある。

●治療法は経口ステロイドが主体となることがほとんどであるが,再発を繰り返すことが多く長期に治療が必要になることから,コルヒチンや漢方薬などさまざまな薬剤を試みることが多い。

●診断の難しさから検査所見や治療法などは患者にとって理解しにくい部分があり,かつ予後予測が困難であることから,ていねいな説明が必要である。

ガマ腫・口唇囊胞

著者: 太田伸男 ,   深瀬滋

ページ範囲:P.1092 - P.1095

POINT

●ガマ腫の診断は,問診と試験穿刺による内容液の確認が決め手となる。

●OK-432を確実にガマ腫の病変部位に局所注入することによって,治療効果が高まる。

●口唇囊胞では,内容液を吸引せずに少量の生理食塩水に懸濁したOK-432を局所注入する。

●腫瘍性疾患との鑑別に,得られた穿刺液中の腫瘍細胞の有無についても検討することが望ましい。

原著

耳鳴を伴った頭内爆発音症候群の1例

著者: 田中伸明 ,   水足邦雄 ,   塩谷彰浩

ページ範囲:P.1097 - P.1101

はじめに

 頭内爆発音症候群(exploding head syndrome:EHS)は,主に入眠時や覚醒時に突然爆発音を感じる良性の疾患であり1),器質的疾患や神経疾患,てんかんの検索を含めた各種精査を行っても異常がないことが特徴とされており,一般に痛みは伴わない。EHSは睡眠関連疾患国際診断分類第3版(International Classification of Sleep Disorders-Third Edition:ICSD-3)においては睡眠時随伴症群に分類されており,診断基準も示されている(表1)2)。本疾患は,下丘が関与している聴覚原性発作(audiogenic seizure)と病態が類似していることが指摘されているほか3),音の振幅を圧縮する蝸牛または聴覚中枢における自動利得制御の破綻によって生じると推測されているが4),その原因や発症機序はいまだ不明である5)

 わが国におけるEHSの報告は睡眠学の分野を中心に散見されるが,耳鼻咽喉科領域での文献的報告はない。今回われわれは,耳漏を主訴に来院した患者でEHSを診断・治療する機会を得たので,考察を加えて報告する。

悪性外耳道炎5症例の検討

著者: 髙橋里沙 ,   喜瀬祥啓 ,   今里圭 ,   山浦明日香 ,   橋田光一 ,   小泉弘樹 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.1103 - P.1107

はじめに

 悪性外耳道炎(malignant external otitis)は耳漏・耳痛,外耳道肉芽,耳漏からの緑膿菌の検出,糖尿病の合併を特徴とする難治性の外耳道炎である1)。下位脳神経麻痺,頭蓋底骨髄炎,さらには頭蓋内合併症をきたすこともあり,時に致死的となりうる疾患である2)。しかし近年,緑膿菌に有効な抗菌薬の発達により緑膿菌による典型例は減少し,緑膿菌以外の菌による発症例や,AIDS患者や白血病患者に発症する例など,非典型的な症例も報告されている3)。今回,われわれは当科にて入院し,加療を行った悪性外耳道炎の5例を経験したので若干の文献的考察を含めて報告する。

喉頭浮腫を生じた遺伝性血管性浮腫の1例

著者: 花栗誠 ,   今里圭 ,   椋本祥子 ,   堀内孝彦 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.1109 - P.1113

はじめに

 発作性に局所的な浮腫を繰り返す疾患は,「クインケ浮腫」1)と呼ばれ,原因不明であるが予後良好な疾患としてそれほど重要視されてこなかった。しかしクインケ浮腫のなかには気道閉塞に至る危険性のある重篤な疾患も含まれている。遺伝性血管性浮腫はその1つであり,C1インヒビター活性の低下により,ブラジキニンや補体分解産物が過剰産生され,血管透過性が亢進することによって発作性・限局性浮腫をきたす疾患である。

 遺伝性血管性浮腫による喉頭浮腫に対しては,一般的に抗ヒスタミン薬や副腎皮質ステロイド薬は必ずしも有効ではなく,気道確保,C1インヒビター製剤投与などの適切な治療を行わなければ30〜56%の患者が死に至る2〜5)。今回われわれは,遺伝性血管性浮腫による喉頭浮腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

口腔咽頭・食道異物例の臨床的検討

著者: 能田淳平 ,   佐伯忠彦 ,   大河内喜久 ,   渡辺太志 ,   藤澤貴史 ,   田淵真彦 ,   中村雅彦 ,   高岡諒

ページ範囲:P.1115 - P.1120

はじめに

 口腔から食道までの異物例は耳鼻咽喉科ばかりでなく,内科や時間外救急外来を受診する疾患でもある。通常は外来で摘出できることが多いが,なかには入院のうえで緊急手術を要する例もあり,迅速な対応が要求される。

 今回われわれは,当院における口腔咽頭食道異物診療の現況を把握し,今後の異物対応の一助とする目的で,最近7年間に当院を受診し,口腔咽頭食道領域に異物を確認できた症例に対して臨床的検討を行ったので報告する。

Kartagener症候群の2症例

著者: 坂井田寛 ,   坂井田麻祐子 ,   北野雅子 ,   柴田丈夫 ,   小川覚 ,   竹内万彦

ページ範囲:P.1121 - P.1125

はじめに

 原発性線毛運動不全症(primary ciliary dyskinesia:PCD)は線毛の構造的,機能的な異常によって慢性副鼻腔炎や気管支拡張症などの慢性気道感染症などをきたす常染色体劣性遺伝性疾患である。発生頻度は2万人に1人とされている1)。特に内臓逆位を伴う場合には,Kartagener症候群と呼ばれ,報告されている2〜4)。今回,線毛の電子顕微鏡検査によって確定診断したKartagener症候群の2症例を報告する。

鏡下囁語

声の大きい人に悪人はいない,か?

著者: 廣瀬肇

ページ範囲:P.1128 - P.1130

 声の大きい人に悪人はいないという諺があるという。本当に,そういう諺があるのだろうか,気になっていた。というのも,私自身かなり声が大きいほうだと思っているからである。

 いろいろ調べてみたが,どうも伝聞ばかりで,はっきりしない。わずかに,明治43(1910)年に,藤井乙男という人が編集,刊行した諺語大辞典1)に,それらしい記載があることがわかった(図1)。それは“馬方船頭遠方の人,まぁ大きな声するやつに悪いやつはいない(うまかたせんどうをちのひと,まぁおおきなこえするやつにわるいやつはいない)”というものである。つまり馬方や船頭,遠くにいる人など,ともかく地声の大きな人(がさつで下品な人)に悪人はいない,というのも,悪人は,たいてい小声で悪事をささやくものだからだ,という解説になっている。

書評

実践 がんサバイバーシップ—患者の人生を共に考えるがん医療をめざして

著者: 堀田知光

ページ範囲:P.1131 - P.1131

がんサバイバーシップをわかりやすく体系化した書

 わが国でも「がんサバイバーシップ」という概念がようやく普及し始めている。がんサバイバーシップとは「がん経験者がその家族や仲間とともに充実した社会生活を送ることを重視した考え方」を意味している。かつて,がんは不治の病として長期の入院などにより患者は社会から切り離されてきた。しかし,今では早期発見や治療法の進歩などにより生存期間が延長し,多くのがんは長くつきあう慢性疾患として,がんと共に暮らすことが普通の時代になりつつある。

 がん体験者は患者であると同時に生活者であり,社会人でもある。2012年に閣議決定された第2期がん対策推進基本計画では,「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」が全体目標の一つに加えられた。今日,がんは日本人の死亡原因の第1位で年間に約36万人ががんで死亡しているが,一方で,直近のデータでは2014年に約81万人が新たにがんに罹患すると推計されている。したがって年間に約40万人以上のがん経験者が増える計算になる。就労を含めたサバイバーシップの充実は大きな政策課題といえる。

Pocket Drugs 2014

著者: 大内尉義

ページ範囲:P.1132 - P.1132

全ての医療人にお薦めしたい便利で使いやすいreference book

 福井次矢先生が監修され,小松康宏先生,渡邉裕司先生お二人の編集と,臨床疫学,臨床内科学,臨床薬理学を専門とされるお三方の手による『Pocket Drugs 2014』は,現在,わが国の臨床現場において使用されているほぼ全ての医薬品の効能,適応,用量・用法,副作用や禁忌等の注意事項など,薬物療法に関する最新の知識をまとめたものである。言うまでもなく,薬物治療は医療の中心であり,全ての医師は現行の薬剤について精通しておく必要がある。本書はその手助けをする目的で編纂されている。

 本書の最大の特徴は,その名の通りポケットに入るサイズの中に,個々の医薬品に関する情報が満載されていることであるが,多忙な外来,入院診療の場で使われる本書のようなreference bookは,必要な情報に素早くアクセスできることが極めて重要であり,本書はそのためにさまざまな工夫がされている。4色刷りのカラフルな紙面は,項目による色使いが統一されていてわかりやすいだけでなく,見ていて楽しい。索引も事項索引,薬剤索引が充実していて目的の薬剤へのアクセスが容易である。また,各章の冒頭に,そのジャンルの薬剤の特徴,作用機序などの総論的事項がわかりやすく記載されているのも本書の有用性を高めている。さらに,その中に,ガイドラインにおけるその薬剤の位置付けとエビデンスが記載されており,また個々の薬剤の最後にも「治療戦略」として〈evidence〉の項があり,エビデンスを重視する編集の特徴がよく表れている。薬剤の写真付きであること,薬価が記載されていることも有用で,さまざまな点で大変よく工夫されている。

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欧文目次

ページ範囲:P.1063 - P.1063

〔お知らせ〕第10回 日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会のご案内

ページ範囲:P.1102 - P.1102

 第10回 日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会を長野県軽井沢町で開催させていただくことになりました。多数の先生方のご参加を心からお待ち申し上げます。

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1133 - P.1133

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.1134 - P.1134

投稿規定

ページ範囲:P.1136 - P.1136

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.1137 - P.1137

あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.1138 - P.1138

 10月23日夜に華々しい点灯デビューを飾った大阪市中央区道頓堀の名物「道頓堀グリコサイン」。6代目となる看板は青色発光ダイオード(LED)による映像が流れ,通天閣から富士山,東京タワーまでさまざまな背景の変化を楽しめます。5代目の「道頓堀グリコサイン」は16年余りにわたり親しまれてきましたが,老朽化とネオン管の入手難のため,本年8月に点灯を終了し,リニューアル工事に入っていました。5代目を踏襲するように青色の背景にゴールインマークが浮き出るようにデザインされ,照明に14万個のLED照明が採用されました。初年度の経済効果は291億円と試算されているそうで,本当に偉大な「道頓堀グリコサイン」です。

 さて,本年のノーベル物理学賞にこの青色LEDを開発した赤﨑勇名城大学教授,天野浩名古屋大学教授,そして中村修二米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授が選ばれました。効率的な青色LEDを発明し,明るく省エネルギーな白色光源を可能とした,つまり,青色LEDに伴い可能となった技術こそがノーベル賞授与にあたる審査の基盤となる「人類に最大の利益をもたらす発明」として認められました。第一に青色LEDの効率には既存の電力系統の届かない世界中の人々に対する大きな福音が評価され,次に既存の赤・緑色ダイオードと混合することで「完全な白色」を再現できることも革命的な開発と評価されました。6代目「道頓堀グリコサイン」を生んだ本当に素晴らしい発明です。

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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