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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科86巻2号

2014年02月発行

雑誌目次

特集 小児難聴Update

ページ範囲:P.117 - P.117

小児急性中耳炎

著者: 工藤典代

ページ範囲:P.118 - P.121

POINT

●小児では難聴を訴えることはほとんどないが,ごく軽症の例を除き伝音難聴が生じる。

●伝音難聴は急性中耳炎の治癒に伴い治癒する。

●中学生以上では内耳障害に伴い骨導閾値の上昇をみることがある。

●上記の場合でも治療により概ね治癒する。

滲出性中耳炎と真珠腫性中耳炎

著者: 新鍋晶浩 ,   飯野ゆき子

ページ範囲:P.123 - P.127

POINT

●滲出性中耳炎は成長とともに治癒に向かうことが多いが,ある一定の割合で後遺症が出現する。

●真珠腫性中耳炎は滲出性中耳炎の既往をもつ症例が比較的多く,乳突蜂巣の発育も種々の程度に抑制されており,滲出性中耳炎を適切に治療することが真珠腫発症の発症率の低下につながる可能性がある。

●貯留液が遷延する要因を推察しながら診療を行い,かつエビデンスを構築していくことが重要であると考える。

小児心因性難聴

著者: 佐藤美奈子

ページ範囲:P.128 - P.132

POINT

●小児心因性難聴の典型例は両側性感音難聴で,7歳から10歳の女児に多いとされてきた。

●社会環境の変化に伴い,一側性感音難聴の症例,男児の症例の割合が増加している。

●発症には,患児を取り巻く環境にある問題が心因となることが多いが,その内容は時代とともに家庭における問題から学校における問題へと変化してきている。

●患児自身のもつ問題,すなわち内因子の1つとして,注意欠陥・多動性障害(ADHD)が注目されている。

●心因性難聴に対する心理治療は,速やかな回復を示す症例を増やし,聴力が変動する症例を減少させる効果がある。

ウイルスと小児難聴

著者: 小川洋

ページ範囲:P.133 - P.139

POINT

●胎生期に感染し聴覚障害をきたすウイルスにサイトメガロウイルスと風疹ウイルスがある。

●出生後感染し聴覚障害をきたすウイルスのなかではムンプスウイルスと麻疹ウイルスがある。

●風疹ウイルス,麻疹ウイルス,ムンプスウイルスによる感染症はワクチンで発症を予防できる。

●ウイルス感染により発症した聴覚障害は改善することが困難であり予防対策が重要である。

小児遺伝性難聴

著者: 菅谷明子 ,   福島邦博

ページ範囲:P.140 - P.146

POINT

●先天的な難聴の約半数は遺伝子が関与するため,難聴の原因として念頭に置く必要がある。

●幼小児の難聴の原因を明らかにすることの意義は,児の難聴の今後の経過や予後などの将来を予見し,その児に適した療育・治療方針を決定することにある。

●難聴の診断には詳細な家族歴の聴取,家系図の作成,聴力像の把握が必須である。

●また,遺伝学的検査も重要な役割を果たすが,実施にあたっては十分な遺伝カウンセリングが不可欠である。

●こうした難聴の診療には遺伝診療部門との連携が必要となる。

小児難聴と人工内耳

著者: 熊川孝三 ,   武田英彦

ページ範囲:P.147 - P.153

POINT

●電気生理学的聴覚検査,画像診断,遺伝学的検査は人工内耳を含め,小児難聴の治療戦略を立てるうえで有用な3本の柱となりつつある。

●最近のトピックスとして,適応年齢の引き下げ,小児における両側人工内耳と残存聴力活用型人工内耳,視覚言語の導入の是非を取り上げた。

目でみる耳鼻咽喉科

耳管通気後に顔面,頸部,縦隔気腫をきたした幼児の1例

著者: 吉原晋太郎 ,   北見欣一 ,   榊原裕史 ,   市川朝也

ページ範囲:P.114 - P.116

はじめに

 耳管通気療法(耳管通気)は耳管機能障害や滲出性中耳炎に対してわが国では広く用いられ,多くの耳鼻咽喉科医にとって日常的な外来処置である。しかし,重篤な合併症の報告も少なからずみられ,注意を要する手技でもある。今回われわれは,顔面から縦隔に至る気腫を生じた幼児の1例を経験したので報告する。

原著

成人に発症した第3咽頭囊由来鰓性囊胞の1例

著者: 菱村祐介 ,   畠山博充 ,   蠣崎文彦 ,   福田諭 ,   三橋智子

ページ範囲:P.155 - P.159

はじめに

 頸部囊胞疾患は多岐にわたり,さまざまな鑑別疾患(リンパ管腫,甲状腺・副甲状腺由来の囊胞,胸腺腫,下咽頭梨状陥凹瘻,胚細胞腫,気管支原性囊胞,鰓性囊胞など)が挙げられ1),画像診断のみでは鑑別には困難な症例も多い。頻度が最も高いのは鰓性囊胞であるが,外胚葉性の鰓溝または内胚葉性の咽頭囊の発生学的遺残に由来することから(図1),その遺残形式によって咽頭や皮膚に瘻孔を伴うものもあり,時に重篤な感染症を引き起こすことがある。その多くは小児から若年成人に多く発症し,第1,第2鰓弓由来のものが約95%を占めるが,第3,4鰓弓由来のものは稀である2)

 今回われわれは成人に発症した第3咽頭囊由来鰓性囊胞の1例を経験したのでここに報告する。

患側骨導閾値の上昇を伴う後半規管型BPPV症例の検討

著者: 晝間清 ,   渡部涼子 ,   杉崎洋紀 ,   小山京子 ,   小野英莉香 ,   留守卓也 ,   三橋敏雄

ページ範囲:P.161 - P.165

はじめに

 後半規管型benign paroxysmal positional vertigo(BPPV)は特発性で通常は聴力が正常もしくは左右差を見出せない場合が多い。しかし,一部にはメニエール病や一側性感音難聴を伴った症例に遭遇することがある。今回われわれは,めまいを主訴に来院し,後半規管型BPPVと診断した症例のなかで,すでに患側の難聴もしくは健側に比較して患側の骨導閾値の上昇を伴っていた症例を検討したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

口腔レンサ球菌が検出された真珠腫性中耳炎症例

著者: 橋田光一 ,   池嵜祥司 ,   小泉弘樹 ,   竹内頌子 ,   大淵豊明 ,   寳地信介 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.167 - P.170

はじめに

 口腔レンサ球菌(oral streptococci)とはヒトの口腔を中心に存在する一群のレンサ球菌属である。口腔内細菌叢を形成しており,菌種によっては細菌性心内膜炎や深部臓器において重篤な膿瘍感染症を引き起こすことが知られている。今回われわれは,口腔レンサ球菌が検出された真珠腫性中耳炎症例を経験したため,若干の文献的考察を含め報告する。

アブミ骨固着症例の検討

著者: 高野賢一 ,   大國毅 ,   小笠原徳子 ,   氷見徹夫

ページ範囲:P.171 - P.177

はじめに

 アブミ骨固着を呈する疾患としては,底板が固着する耳硬化症をはじめ,中耳奇形や鼓室硬化症,アブミ骨上部構造の固着例も挙げられる。これらの疾患はアブミ骨手術による中耳伝音再建を行うことで聴力を改善することが可能である。当科では過去12年間に57例71耳のアブミ骨固着症例を経験した。今回われわれはこれらの症例について術後成績を中心に検討したので報告する。

舌根部に発生した骨性分離腫の3例

著者: 野澤眞祐 ,   橘智靖 ,   小河原悠哉 ,   松山祐子 ,   阿部郁 ,   内野かおり ,   和仁洋治 ,   中田道広 ,   深澤元晴

ページ範囲:P.179 - P.183

はじめに

 舌根部に生じる骨性病変の報告は比較的稀である。病変の好発部位が舌盲孔付近であることから,発生学上胎生期鰓弓軟骨の遺残,迷入,または化生による分離腫として報告される場合が多い。今回われわれは,舌根部に生じた骨性分離腫の3例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

書評

外来で目をまわさないめまい診療シンプルアプローチ

著者: 河野道宏

ページ範囲:P.160 - P.160

神経耳科にも精通した神経内科医による貴重な臨床書

 本書は,城倉 健先生が,めまいの診療を一般医家向けにわかりやすく解説した臨床的な教科書である。城倉先生は,神経内科医でありながら,神経耳科の勉強や研究も十分に積み重ねられた,わが国というよりも世界的にも貴重な医師である。耳鼻咽喉科医でめまい・平衡障害を専門とする医師は少数派ながら存在するが,末しょう性めまいには詳しくても中枢性めまいとなると途端に臨床経験が不十分で自信をもっていないことが多い。その点,常に脳卒中を救急患者として実際に診ている神経内科医が,神経耳科にも精通していれば,最強のめまい診療医といえる。その城倉先生が満を持して,めまいの診かたをフローチャートや動画を用いて教えてくれている,このうえない貴重な臨床書なのである。

 脳神経外科におけるめまい診療において,最も頻度が高く,理解を深めておかなければならないのは,本書でも触れられているが,頸筋の異常緊張による頸性めまいである。緊張型頭痛(筋収縮性頭痛)を伴いやすく,その原因としてストレスが強調されやすいが,実際には姿勢の悪さに起因することがほとんどである。背筋の通った,気持ちの良い姿勢の青少年を見る機会が減ってしまった昨今,頸筋の異常緊張による頭痛やめまいは本当に多い。診療の際には,患者の背中に回って両肩の凝りの程度をじかに触って確認し,ツボでいうところの「風池」の圧痛点が陽性であれば,首凝りが強いと判断してよい。また,本書では,頭部回旋に伴うめまい(椎骨脳底動脈循環不全,vertebrobasilar insufficiency:VBI)として,bow hunter's strokeとPowers' syndromeが解説されているが,これに補うとすれば,頸椎症性(spondylotic)VBIがあり,椎骨動脈を圧迫している骨棘(lateral spur)を削除する手術の対象となることがある。Bow hunter's strokeが患側と反対側に頭部回旋させるときにめまいや気が遠くなることが多いのに対して,頸椎症性VBIは患側に回旋時に起こりやすい。ともに対側の椎骨動脈は低形成か閉塞しており,両側の後交通動脈の発達が不良であることがほとんどである。また,私が専門的に手術している聴神経腫瘍では,めまいやふらつきなどの前庭神経症状は,初発症状としては約15%,手術する時点では約45%のケースで認められる症状である。聴力低下とともに認められることがほとんどであるため,メニエール病や突発性難聴と誤診されて発見が遅れることも決して珍しくない。ぜひ,若い患者の耳鳴り・難聴を伴うめまいやふらつきに対しては,MRIによる評価をしてもらうことを切望する。

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欧文目次

ページ範囲:P.109 - P.109

〔お知らせ〕日本頭頸部癌学会主催 第五回教育セミナーのご案内

ページ範囲:P.166 - P.166

 日本頭頸部癌学会主催第五回教育セミナーを下記の要領で開催いたしますのでご案内申し上げます。

 会場は「TOC有明コンベンションセンター(東京・有明)」で第38回日本頭頸部癌学会会場(東京ファッションタウン)より徒歩約5分です。第五回セミナーの各論は1)下咽頭と2)口腔(舌)と致しました。本セミナー受講者には日本がん治療認定医機構の学術単位(3単位),また日本口腔外科学会専門医制度の資格更新のための研修単位(5単位)が与えられますので,多数のご参加をお待ちしております。日本耳鼻咽喉科学会専門医の方は学術集会参加票をお持ちください。5単位が取得できます。また日本頭頸部外科学会主催頭頸部がん専門医申請資格の学術活動(過去5年間に次の学術集会・講習会に5回以上参加していること)として認められます。

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.185 - P.185

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.186 - P.186

投稿規定

ページ範囲:P.188 - P.188

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.189 - P.189

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.190 - P.190

 大晦日は久しぶりに家族と紅白歌合戦を観ながら過ごしました。綾瀬はるかさんの司会には新人の学会発表を見守るときのようにドキドキさせられましたが,「あまちゃん」は可愛かったですね。アベノミクスで株価上昇,富士山の世界文化遺産登録,2020年東京オリンピック決定,被災地仙台で楽天日本一,と2013年は明るい話題が多い1年でしたが,読者の皆様にとってはいかがでしたでしょうか? 消費税増税や環太平洋パートナーシップ協定,隣国との関係改善,そして福島の復興と原発処理など,今年もたくさんの課題はありますが,本年が皆様にとりまして良い1年であることをお祈り申し上げます。

 さて,今月号の特集は「小児難聴Update」です。小児の難聴はなかなか気づかれないことも多く,対応の遅れは言語発達や学習障害へと繋がりかねません。できるだけ早く発見し,適切な治療や聴能訓練を開始することが望まれます。そこで,急性中耳炎,滲出性・真珠腫性中耳炎,心因性難聴への対応を工藤先生(千葉県立保健医療大),新鍋先生(自治医大),佐藤先生(東京電力病院)に,ウイルス性難聴,遺伝性難聴,人工内耳について最新のトピックスを小川先生(福島県立医大),菅谷先生(岡山大),熊川先生(虎の門病院)にご執筆いただきました。エキスパートによる解説を日常診療のブラッシュアップのためにぜひご活用ください。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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