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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科86巻3号

2014年03月発行

雑誌目次

特集① アレルギー用薬の上手な使い方

ページ範囲:P.199 - P.199

アレルギー用薬の分類と特性

著者: 山口正雄

ページ範囲:P.200 - P.206

POINT

●アレルギー用薬は長期管理に適した薬剤である。

●ヒスタミン受容体H1は構造上の特性にもとづき,ほかの受容体と交差しない薬剤が長期管理に用いられる。

●メディエータ遊離抑制薬,第2世代抗ヒスタミン薬,トロンボキサンA2阻害薬,ロイコトリエン受容体拮抗薬,Th2サイトカイン阻害薬が長期管理薬に該当する。

●内服薬と局所薬を効果的に組み合わせる。

≪作用機序と使用上の留意点≫

ケミカルメディエータ遊離抑制薬

著者: 神崎晶

ページ範囲:P.207 - P.209

POINT

●効果が第2世代抗ヒスタミン薬よりも弱く,1~2週の連用を要する。

●眠気などの副作用は少ないため使いやすい。

●経口剤のみならず外用薬もある。

●妊婦・小児へのリスクについてまとめた。

トロンボキサンA2受容体阻害薬

著者: 寺田哲也

ページ範囲:P.210 - P.212

POINT

●PGD2・TXA2の受容体拮抗薬(デュアルアンタゴニスト)の特徴。

●PGD2の薬理特性。

●TXA2の薬理特性。

●初期療法としてのラマトロバンの有用性。

ロイコトリエン受容体拮抗薬

著者: 瀬尾友佳子 ,   野中学

ページ範囲:P.213 - P.217

POINT

●3種類の抗ロイコトリエン薬のなかでは,有効性が高く,アドヒアランスのよいモンテルカストが使いやすい。

●アレルギー性鼻炎では,特に鼻閉に有効である。

●喘息合併慢性副鼻腔炎では,ステロイド鼻噴霧薬を併用すると,血中好酸球増多や鼻茸・副鼻腔粘膜好酸球浸潤を抑制し,有効性を発揮する。

●気道アレルギー性炎症の治療では,ステロイド依存性経路とロイコトリエン依存性経路の両者を阻害する必要がある。

点鼻抗アレルギー薬

著者: 岡野光博

ページ範囲:P.218 - P.221

POINT

●点鼻のアレルギー用薬には,ステロイド薬,血管収縮薬,抗ヒスタミン薬およびケミカルメディエータ遊離抑制薬がある。

●有効性と安全性を上げるための点鼻指導が重要である。

●鼻噴霧用ステロイド薬は花粉症の初期治療にも有効である。

●点鼻血管収縮薬はリバウンド現象や薬物性鼻炎の誘発に注意し,必要最小限の使用に留める。

●鼻噴霧用抗ヒスタミン薬やケミカルメディエータ遊離抑制薬は頻回の点鼻が必要である。

アレルギー点眼用薬

著者: 福島敦樹

ページ範囲:P.222 - P.224

POINT

●アレルギー性結膜疾患の病型により,処方すべき点眼薬が異なる。

●抗アレルギー点眼薬はメディエータ遊離抑制作用点眼薬とヒスタミンH1受容体拮抗作用点眼薬に大別され,すべてのアレルギー性結膜疾患に適応がある。

●ステロイド点眼薬は基本的に重症例に適応があり,副作用として眼圧上昇に注意を払う。

●免疫抑制点眼薬はT細胞の機能を抑制し,適応は春季カタルのみである。

≪アレルギー用薬を処方する際のポイント≫

通年性アレルギー性鼻炎への薬物療法

著者: 後藤穣

ページ範囲:P.226 - P.231

POINT

●病型・重症度によって薬剤の選択を考慮する。

●重症度が高ければ併用療法を行う。

●きわめて重症なケースには点鼻血管収縮薬,内服ステロイド薬を1~2週間程度追加する。

●第2世代抗ヒスタミン薬配合剤は鼻閉治療の新しい選択肢になる。

季節性鼻アレルギーへの薬物治療

著者: 太田伸男

ページ範囲:P.232 - P.236

POINT

●花粉症の治療戦略においては,成人および小児いずれも初期治療が重要である。

●薬物は,患者の重症度と病型に応じて選択する。

●舌下免疫療法が治療法の選択に加わった。アドヒアランスと副反応予防のための患者指導がきわめて重要である。

喉頭アレルギーへの薬物治療

著者: 阪本浩一

ページ範囲:P.238 - P.244

POINT

●喉頭アレルギーは,喉頭のⅠ型慢性アレルギー疾患であり,原因抗原により季節性,通年性に分類され,それぞれ,診断基準が提唱されている。

●喉頭アレルギーの鑑別診断として,胃食道酸逆流症(GERD),後鼻漏症候群が重要である。

●喉頭アレルギーの治療として,ヒスタミンH1拮抗薬が有効である。吸入ステロイド薬も有効であるが,咳喘息などの呼吸器疾患との鑑別を十分につけてから使用する必要がある。

●後鼻漏の合併,特に,鼻アレルギーとの合併時に点鼻ステロイドの併用が有用である。

特集② 知っておきたい血液内科の知識―専門医の診方・治し方

ページ範囲:P.247 - P.247

急性骨髄性白血病・慢性骨髄性白血病

著者: 雁金大樹 ,   岡本真一郎

ページ範囲:P.248 - P.252

POINT

●急性骨髄性白血病と慢性骨髄性白血病は,その病態がまったく異なる疾患である。

●急性骨髄性白血病はいくつかの病型に分類されるが,急性前骨髄球性白血病を除いて特異的な治療法はなく,化学療法・造血幹細胞移植が主要な治療法である。

●急性前骨髄球性白血病に対しては,有効な分子標的療法があり,高い確率で治癒が望める。

●慢性骨髄性白血病の治療法も著しく改善し,分子標的薬のみで治癒が望める疾患となった。

●炎症を示唆する所見がなく白血球の増加を認める場合,白血球数の異常値に加えて鼻出血や口腔内からの出血・血腫を認める場合には,これらの疾患を鑑別することが大切である。

悪性リンパ腫

著者: 小林幸夫

ページ範囲:P.253 - P.257

POINT

●新たな薬剤が開発されている。

●リンパ節生検の時期と方法が重要である。

●経過観察時の二次がんの発症も重要。

多発性骨髄腫

著者: 田中淳司

ページ範囲:P.258 - P.262

POINT

●多発性骨髄腫は,形質細胞ががん化したもので単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)を大量に産生する。

●多彩な症状が現れるが,主に骨髄腫細胞による造血障害,骨の障害とM蛋白による腎臓などの臓器障害に起因する。

●サリドマイド,レナリドマイド,ボルテゾミブといった新規薬剤が開発され,従来よりも治療法が格段に進歩してきている。

●移植適応のある患者ではボルテゾミブとデキサメタゾン(BD)療法などの後に自家末しょう血幹細胞移植を実施する。

●移植適応のない高齢患者などではメルファランとプレドニゾロン(MP)療法に新規薬剤を加えた治療を行う。

骨髄異形成症候群

著者: 奈良美保 ,   澤田賢一

ページ範囲:P.264 - P.268

POINT

●MDSは,造血幹細胞レベルのクローン性異常による骨髄不全症候群の1病態である。

●MDSは,慢性的な1系統以上の血球減少で発見されることが多く,臨床症状としては貧血,出血傾向,易感染性である。

●MDSの診断には末しょう血検査,骨髄検査を行う。血球減少,血球の異形成の割合からWHO分類第4版のMDSの分類を基にして診断し,骨髄芽球比率,染色体核型,血球減少の系統数を用いたリスク分類を行う。

●リスク分類によって治療方針は異なるが,高リスク群の治療では白血病化のリスクが高いため,55歳以下の若年者であれば造血幹細胞移植を行う。低リスク群の場合,経過観察を行うことも多い。

成人T細胞白血病

著者: 野坂生郷 ,   麻生範雄

ページ範囲:P.270 - P.276

POINT

●成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia/lymphoma:ATL)は,ヒトT細胞白血病ウイルスタイプ1型(human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)の感染により惹起されるCD4陽性T細胞リンパ腫である。

●レトロウイルスHTLV-1は,九州をはじめとした西南日本に感染者が多く,感染経路は主に母乳感染である。

●ATLの症状は多彩であり,末しょう血液中の異常リンパ球の出現,リンパ節腫脹,高カルシウム血症,皮膚病変をはじめ,さまざまな臓器に病変を起こす。

●ATLの臨床病型のうち,くすぶり型,予後不良因子がない慢性型は経過観察をし,急性型,リンパ腫型,予後不良因子がある慢性型が治療適応である。

●予後不良なATLでは,多剤併用化学療法を基本に,抗CCR4抗体や同種造血幹細胞移植を組み合わせた総合的な治療戦略の確立が必要である。

同種造血幹細胞移植

著者: 篠原明仁 ,   黒川峰夫

ページ範囲:P.277 - P.282

POINT

●同種骨髄移植は日本国内で年間3,000件を超える施行例があり,全体の5年生存率も50%を超え,血液疾患に対する標準療法として確立してきている。

●強力な治療手段であるが20~30%以上の非再発死亡率が報告されており,適用疾患は十分に検討する必要がある。

●治療強度を減弱した骨髄非破壊的前処置(いわゆるミニ移植)の発達に伴い,高齢者や臓器障害を有する例も施行可能になった。

●GVHD予防や移植前化学療法の進歩に伴い,臍帯血移植やHLA不一致移植の施行例が増え安定した成績を残している。

●移植患者での副鼻腔領域の感染症は比較的多く,耳鼻咽喉科医と血液内科医の連携は不可欠である。

書評

風邪症候群と関連疾患―そのすべてを知ろう《ENT臨床フロンティア》

著者: 内藤健晴

ページ範囲:P.285 - P.285

 今般,川内秀之先生(島根大学)の専門編集による《ENT臨床フロンティア》シリーズの『風邪症候群と関連疾患―そのすべてを知ろう』の書評を依頼され,当初は気軽に引き受けたものの実際,本書を目の当りにして,これはただならぬ本であることに気づき,最後にはこの本があれば日本の風邪症候群(感冒)の現状についてすべてがわかる,臨床家にとって「座右の書」であることを確信した。

 新患として医療機関を受診する動機としておそらく最も高頻度な疾患が風邪症候群であろうと思われるが,これについてこれほど完成度の高い成書を見たことは過去になかった。川内先生も序のなかで「耳鼻咽喉科の医師のみならず,他科の医師,研修医,学生の皆さんにも重宝していただける内容と思う」と書かれているが,まさに本書は風邪症候群のencyclopediaといえる。しかもタイトルに関連疾患と記載されているように感冒患者を診て,類似する関連疾患あるいは重大な帰結を引き起こしかねない合併症についても含まれており,実地臨床に本当に役立つものである。また,治療法もそれぞれの状態によるものが実際的に示されており,その上,遷延した状況の対応まで内容が及んでいる。

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欧文目次

ページ範囲:P.195 - P.195

〔お知らせ〕第31回「耳の手術研修会」のお知らせ

ページ範囲:P.263 - P.263

 耳鼻咽喉科展望会では平成26(2014)年7月10・11・12日の3日間,東京慈恵会医科大学解剖学講座の協力のもとに下記の予定で「耳の手術研修会」を開催いたします。

 研修内容は側頭骨の解剖,手術供覧のほか,次の項目を主に解説します。麻酔,基本的清掃手術,鼓膜・耳小骨の形成,真珠腫の手術,外耳道形成,乳突充塡,危険部位の処置,術後処置,耳小骨奇形,外傷,アブミ骨手術,内視鏡下手術などのほか,人工内耳,顔面神経の手術について。

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.287 - P.287

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.288 - P.288

投稿規定

ページ範囲:P.290 - P.290

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.291 - P.291

あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.292 - P.292

 2012年に山中伸弥教授らが万能細胞であるiPS細胞「体細胞のリプログラミング(初期化)による多能性獲得の発見」でノーベル賞を受賞され,日本中が興奮したのも記憶に新しいことですが,今回は何と全能細胞の発見です。STAP細胞「Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency:刺激惹起性多能性獲得細胞」と名付けられた夢の細胞が弱冠30歳の女性研究者,小保方晴子理化学研究所研究ユニットリーダーによってNatureに発表され,その衝撃は世界中を駆け巡りました。世紀の発見と割烹着姿で実験をする可愛らしい研究者とのギャップが話題をさらに大きなものにして大変な騒ぎになっています。「植物やイモリは傷つけるなど外からの刺激を与えれば,万能細胞化して再生する。ヒトを含めた哺乳類でも同様のことが考えられないか」という素朴な疑問から,「小さい細胞を取り出す操作をすると幹細胞が現れるのに,操作しないとみられない。幹細胞を取り出しているのではなく,操作によってできるのではないかという考えに至り,pH 5.7という酸性条件で25分間置くという条件にたどり着き,遂にSTAP細胞が発見されたということです。体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化することで,多能性細胞へと変化するというもので,記憶の消去のみならず自在な書き換えを可能にする新技術の開発につながる画期的なブレイクスルーです。今後ヒトの細胞でも作製が可能になれば,再生医学のみならず幅広い医学・生物学に貢献する革新的な細胞操作技術になるものと期待されます。

 さて,興奮は醒めませんが,少し冷静に今月号の2つの特集に目を通してみましょう。今年もまた花粉症の季節を迎えようとしていますが,まさにこの時期にうってつけの「特集①アレルギー用薬の上手な使い方」です。先日,舌下免疫療法薬も認可されましたので,今後のアレルギー治療法の進展が楽しみです。特集②は「知っておきたい血液内科の知識―専門医の診方・治し方」です。悪性リンパ腫をはじめとして耳鼻咽喉科診療のなかで診断されることも少なくありませんので,この機会にポイントを押さえておきたいものです。STAP細胞だけではなくソチ冬季オリンピック・パラリンピックと興奮の日々が続きますが,興奮の合間にぜひお読みいただければと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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