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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科86巻4号

2014年04月発行

雑誌目次

特集 音声外科Update

ページ範囲:P.301 - P.301

喉頭微細手術の基本

著者: 齋藤康一郎

ページ範囲:P.302 - P.313

POINT

●音声障害の原因病変を,ストロボスコピーを含めた内視鏡検査で詳細に評価し,患者の生活環境や声の職業性にも留意して適応を決定し,インフォームド・コンセントを得る。

●麻酔科医師と情報を共有して連携する。

●術直前の画像から手術の流れをイメージしておく。

●歯牙や口唇の損傷に注意したていねいな喉頭直達鏡操作で良好な視野を確保する。

●無理のない姿勢で顕微鏡下に鉗子操作が行えるように椅子や顕微鏡を調節し,器具を安定させて確実な操作を行う。

●手術の流れ・術者の意図を理解した助手の役割は大きい。

●声帯組織の過剰切除は禁物である。

●術後の再発防止に留意してフォローアップを行う。

●声帯だけを診ることなく,コメディカルと連携して総合的に診療にあたる。

マイクロフラップ手術

著者: 岸本曜 ,   平野滋

ページ範囲:P.314 - P.318

POINT

●1990年代に確立された,声帯病変に対するマイクロフラップ手術は世界的なスタンダードとなった。

●マイクロフラップ手術では病変のみを切除し,上皮,粘膜固有層浅層を含めた健常組織を可能な限り温存するため,音声機能の温存,改善につながり,その適応は多岐にわたる。

●手術手技,手術器具とともに症例を呈示し,マイクロフラップ手術におけるTipsを紹介する。

ビデオラリンゴスコープ下に行う喉頭微細手術

著者: 原浩貴

ページ範囲:P.320 - P.325

POINT

●ビデオラリンゴスコープ下の喉頭微細手術では,直達鏡に組み込まれた硬性内視鏡に高感度3CCDカラービデオカメラを装着し,内視鏡像を大画面モニターに写し出し,鮮明な画像のもと喉頭微細手術を行う。

●ビデオラリンゴスコープ下の喉頭微細手術では,①器具や直達鏡の影による視野欠損がなく,②顕微鏡がないため鉗子類の取回しが容易で,③直達鏡内に硬性内視鏡を挿入すると前連合・喉頭室・声門下病変の確認が容易という利点がある。

●ビデオラリンゴスコープ下の喉頭微細手術については両眼視ができないことが欠点とされていたが,CCDカメラが高性能化し,モニターの大型化に加え,ハイビジョン化したことから,もはや欠点として挙げるほどの問題はない。

●必須のものではないが,手先の震えを最小限にするため,また重い手術支援機器を使用する際には重さによる手先の疲労を避けるため,手台の使用が望ましい。

●ほかの領域での鏡視下手術と同様に,術野での出血が多い場合や手術支援機器使用時の排煙が強いと視野が不良となるため,まめな止血や吸引が必須である。

声帯内自家脂肪注入術

著者: 田村悦代

ページ範囲:P.326 - P.330

POINT

声帯内自家脂肪注入療法の方法を報告する。

●適応:声門閉鎖不全疾患全般。

●脂肪採取部位:頰部脂肪体を利用する。

●注入部位

 1)片側声帯麻痺:声帯膜様部中央よりやや後方から針を刺入し,声帯筋中央から外側を目標とした深さに注入する。

 2)声帯溝症や声帯萎縮:声帯膜様部中央で,筋層の浅い部分と粘膜に注入する。

●注入器具

 1)注入針:喉頭注入用の長さ28cm,18Gを使用する。

 2)注入器:電動注入器を使用して,一定速度で徐々に注入する。

声帯内アテロコラーゲン注入術

著者: 牧山清 ,   松崎洋海

ページ範囲:P.331 - P.335

POINT

●3%アテロコラーゲンインプラントの特性を理解し,声帯内に注入した場合のゲル化について知る必要がある。

●声帯内注入術では注入物質に対応した適応症例がある。症例選択を誤ると期待した効果が得られない。

●声帯の形状や粘膜波動の観察から注入部位を決定する。

甲状軟骨形成術Ⅰ型と披裂軟骨内転術

著者: 齋藤幹

ページ範囲:P.336 - P.340

POINT

●音声改善手術は術式選択が重要であり,術前評価を慎重に行う必要がある。

●甲状軟骨形成術Ⅰ型では開窓部の決定が重要であり,特に後方で声帯レベルとずれないようにする。

●披裂軟骨内転術では梨状窩粘膜を破らないよう上方へ翻転しつつ筋突起をしっかり同定することがポイントである。

●披裂軟骨内転術における牽引方向は側筋方向であり,牽引する力は緩くてよい。

甲状軟骨形成術Ⅱ型とⅣ型

著者: 讃岐徹治

ページ範囲:P.341 - P.347

POINT

●喉頭枠組み手術は声帯に直接手術侵襲を与えるのではなく,枠組み軟骨の変形や位置を変えることにより,間接的に声帯の緊張や長さ,位置を変える音声外科手術である。

●甲状軟骨形成術Ⅱ型は甲状軟骨を正中に切開し,両側甲状披裂筋の付着部を外側へ広げる手術術式である。

●甲状軟骨形成術Ⅱ型は局所麻酔下に手術が可能であり,手術中に内転型痙攣性発声障害患者の声を聞きながら,声の詰まりの改善を確かめることができ,効果が永続的な点に特徴がある。

●甲状軟骨形成術Ⅳ型は,声帯への直接侵襲がない点と局所麻酔下の手術でピッチの確認が得られる点などの利点がある。

局所麻酔下の喉頭内視鏡手術

著者: 多田靖宏 ,   谷亜希子 ,   大森孝一

ページ範囲:P.348 - P.353

POINT

●本手術を行うための理想的な患者条件があることを理解して症例を選択すること。

●咽喉頭反射をいかに減弱させるかが手術の成否を大きく左右するので十分に行うこと。

●本手術を導入する際は,最低限左右の横開き鉗子の中サイズと直の鉗子,メスを用意すること。

●手術は術者と助手が事前に打ち合わせを行い,操作のポイントをふまえて息を合わせて行うこと。

●術後3日間は発声禁止を指示すること。

●比較的操作が容易な疾患から開始し,ある程度経験を積んでから難易度の高い疾患を行うこと。

原著

耳介軟骨を用いて喉頭気管形成術を行った喉頭気管狭窄症の1例

著者: 片桐佳明 ,   工田昌也 ,   野田礼彰 ,   平川勝洋

ページ範囲:P.355 - P.359

はじめに

 喉頭気管狭窄症の原因は気管挿管や気管切開術後などの外傷,先天性,炎症性疾患,感染症,腫瘍など,多岐にわたる。その治療については狭窄の程度や発生部位が症例ごとに異なるため,それぞれの病態に応じた治療法を選択する必要がある1)。今回,われわれは気管切開術後に肉芽を生じ,気管カニューレ抜去困難を生じた患者に対して,耳介の船状窩軟骨を用いて二期的に喉頭気管形成術を行い,良好な結果を得られた症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

内視鏡下に摘出した上顎洞内含歯性囊胞の5例

著者: 木村有貴 ,   中屋宗雄 ,   伊東明子 ,   吉原晋太郎 ,   木田渉 ,   白石藍子 ,   渕上輝彦 ,   渡辺健太

ページ範囲:P.361 - P.364

はじめに

 含歯性囊胞とは濾胞性歯囊胞のうち,埋没歯を囊胞内に含むものを指し,歯根囊胞とは異なり歯冠もしくはその一部を包含する発育囊胞1)である。歯科口腔外科領域において診療されることの多い疾患2,3)であるが,囊胞性病変が上顎洞内へ進展した場合には耳鼻咽喉科領域の診療対象となりうる。耳鼻咽喉科領域からの含歯性囊胞の報告は比較的稀であるが,近年当科にて上顎洞内含歯性囊胞症例を5例経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

黄色ブドウ球菌による偽膜性声門上炎の1例

著者: 竹中幸則 ,   北村公二 ,   猪原秀典

ページ範囲:P.365 - P.367

はじめに

 急性喉頭炎は大多数がウイルス感染によるものであり1),急性喉頭蓋炎,急性喉頭気管気管支炎のような特殊な病態を除けば,重症化する症例はきわめて稀である。今回,われわれは特異な喉頭所見を呈し,入院加療を要した偽膜性声門上炎症例を経験したので報告する。

下鼻甲介に発生した骨血管腫の1例

著者: 能田淳平 ,   佐伯忠彦 ,   渡辺太志 ,   大河内喜久

ページ範囲:P.369 - P.372

はじめに

 骨に発生する血管腫である骨血管腫は骨腫瘍の0.7%を占め,その約3分の2は脊椎骨や頭蓋骨から発生する1,2)。頭蓋骨のなかでは下顎骨が最も多く,鼻骨,頰骨,上顎骨などの報告3~5)も散見されるが,鼻甲介骨から発生することは稀である6)。今回,われわれは下鼻甲介に発生し,鼻涙管狭窄をきたした骨血管腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

異所性過誤腫性胸腺腫の1例

著者: 手島直則 ,   山本一宏

ページ範囲:P.373 - P.376

はじめに

 異所性過誤腫性胸腺腫(ectopic hamartomatous thymoma:EHT)は1982年にSmithら1)が報告した疾患概念に始まり,1984年にRosaiら2)によって名づけられた非常に稀な病変である。臨床的には鎖骨上部,胸骨上部・前部などに発生し,弾性軟で皮膚との癒着がない良性腫瘍の特徴をもつ。画像検査で周囲組織との境界は明瞭もしくは不明瞭で,内部不均一に描出されることがあり,病理診断からも滑膜肉腫や悪性神経鞘腫などとの鑑別がしばしば問題となる。確定診断を得るには本疾患を念頭に置いて精査にあたる必要がある。

 今回,われわれは胸骨上部に発生したEHTの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

難聴・めまいを生じたFabry病の1例

著者: 田村敦 ,   栗田昭宏 ,   松延毅 ,   塩谷彰浩

ページ範囲:P.377 - P.380

はじめに

 Fabry病は,X染色体劣性の遺伝性疾患で,α-ガラクトシダーゼの活性の欠損および低下により,全身にスフィンゴ糖脂質が蓄積された結果,多彩な症状を示す稀な疾患である1)。近年,本疾患の認知が高まり,わが国においても難聴,めまいの合併が多いことがわかってきている2~4)

 今回,われわれは難聴,めまいを合併した,酵素補充療法中のFabry病患者を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

副鼻腔囊胞から眼窩骨膜下膿瘍をきたした1例

著者: 金川英寿 ,   田中邦剛 ,   御厨剛史 ,   橋本誠 ,   山下裕司

ページ範囲:P.381 - P.385

はじめに

 眼窩骨膜下膿瘍は主に副鼻腔炎からの感染波及により眼窩骨と骨膜の間に膿瘍形成を起こした状態であり,治療が遅れると視力障害が残存したり,時に頭蓋内合併症を併発すると死に至ることもあるため早急な診断と治療が必要とされる疾患である1~5)

 われわれは今回,副鼻腔囊胞から副鼻腔炎を発症し,眼窩骨膜下膿瘍をきたした1例を経験した。本症例について特に手術アプローチに関する考察を加えて報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.297 - P.297

〔お知らせ〕第32回耳鼻咽喉科ニューロサイエンス研究会のお知らせ

ページ範囲:P.354 - P.354

 第32回耳鼻咽喉科ニューロサイエンス研究会(旧頭頸部自律神経研究会)を下記の要領で開催いたしますのでご案内申し上げます。皆さまのご参加をお待ちしております。また自律神経に限らず,神経伝達物質,生体内調整物質,レセプターなど幅広い耳鼻咽喉科領域の基礎的・臨床的演題をE-mailまたは郵送,FAXにて募集いたします。

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.387 - P.387

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.388 - P.388

投稿規定

ページ範囲:P.390 - P.390

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.391 - P.391

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.392 - P.392

 年度末ということではありませんが,毎日のニュースの数,スピード感とめまぐるしさに驚嘆させられます。さまざまな犯罪,事故はもちろん,STAP細胞の上昇と下降,飛行機の失踪,オリンピックとパラリンピックの感動はもちろんスポーツ界のいろいろな動き,にせベートーベン氏の終焉など1~2週間すると忘れてしまうくらい新たな話題が登場します。あの難聴とされるにせベートーベン氏の身障者手帳発行,手話を用いた記者会見,感音難聴も回復してきたことについては,ほぼ全員の耳鼻咽喉科医が首をかしげたことと思います。記者会見をみる限り,よく聞こえていて手話は不要ということもすぐわかります。

 3月は卒業式が各大学で行われましたが,月も変わればあっという間に入学式となります。ぜひ,皆清らかな気持ちで入学式に臨んでいただきたいと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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