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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科86巻5号

2014年04月発行

雑誌目次

増刊号 画像診断パーフェクトガイド―読影のポイントとピットフォール 画像診断ガイダンス

ページ範囲:P.7 - P.7

耳・側頭骨

著者: 小川郁

ページ範囲:P.8 - P.9

はじめに

 耳・側頭骨疾患の診断においては画像検査が不可欠である。側頭骨は耳管から鼓室,乳突洞,乳突蜂巣という外界から連続する複雑で個人差の大きい含気腔とその中の巧妙に構成された耳小骨を中心とする伝音機構,さらには最も緻密で微細な感覚器である蝸牛と前庭とを含有する内耳骨包からなる。また,側頭骨内にはこれらに加えて顔面神経およびその分枝が複雑に走行するなど,体内で最も複雑な骨組織であることは間違いない。このような側頭骨およびその隣接臓器に生じる耳・側頭骨疾患はこれらの構造に関連する多彩な症状を呈し,その診断に際しては,はじめに聴覚検査,前庭機能検査,顔面神経機能検査などの機能検査を行うが,治療方針を決定するためには画像検査を行う必要がある。

 近年の画像検査法の進歩はめざましく,特にMRIを主体とする軟部組織の画像診断の精度は格段に向上しているが,複雑な骨組織に生じる耳・側頭骨疾患の診断への応用には一定の限界がある。一方,CTは耳・側頭骨疾患の診断の主役を担っており,コーンビームCTなどの新しい検査法によってその解像度も飛躍的に向上しているが,MRIに反して軟部組織の情報は少なくなるなど,各検査法の適応と限界とを理解する必要がある。このように耳・側頭骨の画像診断では対象となる耳・側頭骨疾患の病態を理解し,適切に画像検査法を選択,画像診断を進めることが最も重要となる。

 本企画「画像診断パーフェクトガイド―読影のポイントとピットフォール」では,「画像診断の狙い」として各疾患の病態と特徴からみた画像診断の位置づけを明らかにし,「画像診断の進め方」で具体的な画像検査の種類や撮影条件などを整理していただいた。次いで「読影の実際とポイント」では代表例の画像を呈示していただき,各執筆者の豊富な経験から,読影のポイントを,また,最も複雑な構造と個人差などから生じうる「読影のピットフォール」についてもまとめていただいた。「読影の実際とポイント」と「読影のPitfall」が本企画の中心であり,代表例の画像を確認しながらしっかりと読んでいただきたい。最後は「Take Home Message」であり,まず初めに「Take Home Message」を読んで何が重要なポイントかを把握したうえで「読影の実際とポイント」から「読影のPitfall」と通読していただくのも理解の助けになるので活用していただきたい。

鼻・副鼻腔/口腔・咽頭・唾液腺

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.10 - P.13

はじめに

 鼻・副鼻腔の疾患は先天性の異常,外傷,炎症,腫瘍,免疫異常など多岐にわたるが,診断そして治療へと進む場合,特に顔面骨,副鼻腔,鼻涙管などの涙器,続く頭蓋底,咽頭など,隣接する部位と関係する解剖を熟知ことが大切である。過去,本領域では顔面に皮切を入れる手術,Caldwell-Luc法など侵襲の多い手術が主体であったが,その多くは現在endoscopic sinus surgery(ESS)にとって代わられている。一方で,拡大手術を必要とする症例も決してなくなっていないのが現状である。手術療法,保存的治療,腫瘍では放射線治療のいずれかを選択する際,画像による正確な診断,病変部位の把握が重要である。口腔,咽頭,唾液腺は耳鼻咽喉科医にとって他科と境界の領域を含んでおり,ぜひとも把握しておかなければならない領域である。さまざまな感染症,免疫異常による病変,腫瘍性疾患が存在し,特に悪性腫瘍においてはその進展範囲を画像検査から正確に診断することが最も大切である。

喉頭・気管・食道/頭頸部

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.15 - P.17

はじめに

 頸部には喉頭や気管・食道,頸動脈や内頸静脈などの大血管,下部脳神経や横隔神経・腕神経叢,甲状腺・副甲状腺など,生命維持やQOLにかかわるさまざまな重要臓器が集まっている。外傷,先天性,炎症性,腫瘍性など病態は多岐にわたり,扁平上皮癌や悪性リンパ腫などの悪性腫瘍も稀ではない。頸部の損傷や急性炎症は気道閉塞や大出血により即生命にかかわり,悪性腫瘍の診断の遅れは生命予後やQOLを大きく左右する。多彩な疾患に対する知識を身につけ,鑑別診断能力を高めておくことが求められる。喉頭・気管・食道と頸部の項では代表的な外傷,先天性,炎症性,腫瘍性疾患を取り上げ,pick upミニレクチャーとして話題の疾患について解説した。

部位別診断法 Ⅰ.耳・側頭骨

ページ範囲:P.19 - P.19

外耳疾患

著者: 萩森伸一

ページ範囲:P.20 - P.27

画像診断の狙い

 外耳の画像診断は,側頭骨高分解能CTによるのが基本である。発生学的に外耳は中耳と密接に関係するので,読影には外耳のみならず,耳小骨連鎖異常など中耳病変の有無についても注意しなければならない。一側性の疾患では,患側を健側の画像とよく比較することが重要である。先天性外耳道閉鎖症の分類にはSchuknechtの分類(Type A~D)1),Altmannの分類2,3),Cremersらの分類4)などがある。また外耳道真珠腫には狭義と広義(閉塞性角化症)のものがあり,診断には注意を要する。サーファーズ・イアはほかの骨増殖性疾患との鑑別が,放射線による外耳道骨壊死では,悪性外耳道炎をはじめ,そのほかの炎症性疾患との鑑別が必要である。放射線による側頭骨壊死には,Ramsdenらの分類(限局型と広範囲型)5)やPathakら6)の分類(Type 1・2およびa・b)がある。

急性中耳炎と急性乳様突起炎

著者: 新鍋晶浩

ページ範囲:P.28 - P.31

画像診断の狙い

 急性中耳炎は,鼻咽腔の感染が耳管および鼓室内へと波及した結果生じる。鼓膜所見で重症度も含めた診断ができること,細菌検査および適切な抗菌薬の選択により治癒に至る症例が多いことから,急性中耳炎に対して画像検査を行う機会は少ない。しかしながら,外耳道狭窄,鼓膜の硬化病変などの何らかの理由で中耳内貯留液の評価が困難な症例,顔面神経麻痺や急性乳様突起炎など中耳炎による重篤な合併症が生じた症例に対し,側頭骨ターゲットCTを行うことがある。特に小児における放射線被曝の影響は十分に認識しておかなければならない1)が,急性中耳炎の重症例は2歳未満の乳幼児に好発し,診断の遅れは頭蓋内合併症のような重篤な合併症へとつながる危険性がある。

 急性乳様突起炎は,耳介後方の皮膚の発赤腫脹,耳介聳立という特徴的な局所所見を伴う。治療は抗菌薬投与および膿瘍ドレナージであり,鼓膜切開,鼓膜換気チューブ留置,あるいは乳突削開術といった外科的治療法を選択する際に,同じく側頭骨ターゲットCTによる評価が重要になる。また,隠蔽性乳様突起炎という鼓膜所見に乏しい乳様突起炎も存在するため,鼓膜所見に異常がみられない場合でも外耳道後壁や耳介後方の皮膚発赤腫脹,耳介聳立の有無を確認し,疑わしい場合には側頭骨ターゲットCTを考慮すべきである。

慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎

著者: 土井勝美

ページ範囲:P.32 - P.45

画像診断の狙い

 慢性中耳炎,真珠腫性中耳炎の画像診断では,側頭骨の高分解能CT検査(high resolution computer tomography:HRCT)が有用である。通常1mmスライスで,水平断と冠状断の両撮影によるCT画像を評価する。罹病期間が長期化し病態が重症化すると,慢性中耳炎では肉芽組織により,真珠腫性中耳炎では真珠腫上皮および周囲に存在する肉芽組織により側頭骨の骨破壊が進行する。CT検査による側頭骨の評価が有用となる理由である。難聴発症の要因の1つである耳小骨病変に関しては,特に軟部組織が存在する中耳腔内では,CT検査による耳小骨の詳細な描出は困難な場合が多く,実際の手術時に確認することになる。一方で,含気の良好な正常の側頭骨であれば,耳小骨と中耳腔のコントラストが良好であるため,CT画像から3次元構築した耳小骨画像やヘリカルCT画像により比較的明瞭な耳小骨画像として評価できる。

 慢性化膿性中耳炎,真珠腫性中耳炎に対して鼓室形成術および乳突削開術が適応となるが,顔面神経麻痺(顔面神経管の損傷),めまい・耳鳴(蝸牛・三半規管の機能低下),出血(S状静脈洞や高位頸静脈球からの大量出血),髄液漏(脳硬膜の損傷)などの合併症を未然に予防するために,術前にCT画像の十分な評価が重要になる。顔面神経の走行,中頭蓋底の硬膜下垂の程度,S状静脈洞および頸静脈球の位置,蝸牛・三半規管・内耳道周囲の中耳病変,そして中耳腔自体の発育の程度にも個人差が大きい。CT画像の術前の詳細な評価は,最適な手術法の選択,手術時のより慎重な操作につながり,術後合併症の予防におおいに役立つ。

中耳外傷と側頭骨骨折

著者: 小川洋

ページ範囲:P.46 - P.51

画像診断の狙い

 中耳外傷は,中耳に限局した耳かきなどによる直達外傷や平手打ちによる鼓膜穿孔などの介達外傷によるものと,頭部外傷に伴う側頭骨骨折によるものがある。さらに,側頭骨骨折は古典的には縦骨折,横骨折,その混合型に分類され,近年では迷路骨包に骨折が及んでいるか,迷路骨包が保たれているかに分類されている1)。縦骨折は,頭部に対して側方からの外力により生じやすく,横骨折は頭部に対して前方,もしくは後方からの外力により生じやすいとされている。迷路骨包に骨折が及んでいる場合,感音難聴,顔面神経損傷,髄液漏の合併する頻度が高く,側頭骨骨折の5~20%を占める2)

 画像検査は外傷における病態を明らかにするための基本となる。頭部外傷において頭蓋内病変の検索が最優先されるが,側頭骨骨折は頻度が高く,耳鼻咽喉科による対応が不可欠であり,聴力障害,めまい,顔面神経麻痺といった症状は患者の生活に大きく影響する。画像診断の進歩により微細な病変の評価が可能となっているが,本稿では臨床症状を考慮しながら行う読影のポイントについて解説する。

中耳奇形

著者: 山本裕

ページ範囲:P.52 - P.57

画像診断の狙い

 鼓室腔は中耳伝音系の要となる耳小骨を収める空間であり,その周りは蝸牛壁,内頸動脈管,頸静脈球,顔面神経管などで構成される。中耳奇形を診断するうえでは,耳小骨そのものの形態だけでなく,これらの構成要素の空間的な位置関係を把握することが重要となる。また画像所見に加えて聴力検査などの機能検査所見を評価し,画像所見との関連性を十分に検討することが不可欠となる。

耳硬化症と類似疾患(骨Paget病)

著者: 大石直樹

ページ範囲:P.58 - P.61

画像診断の狙い

 耳硬化症は側頭骨錐体部の硬化性・海綿状性変性をきたす疾患であり,アブミ骨の固着と蝸牛周囲の骨吸収により,伝音・感音・混合難聴をきたしうる疾患である。組織学的には,otospongiosisと呼ばれる骨の海綿状血管増生病変がみられる初期と,引き続いて血管増生が落ち着き緻密骨を形成する硬化期,とがみられる。それぞれ活動(active)期,非活動(inactive)期と呼ばれる。解剖学的には,最も初期の変化は卵円窓前方でサジ状突起付近のfissula antefenestramに生じ,のちに蝸牛や前庭に進展していく。前者をfenestral typeと呼び,主に伝音難聴を呈し,蝸牛に進展した状態をretrofenestral(あるいはcochlear)typeと呼び,通常は感音難聴を呈するようになる。両者の混合もみられる。

 耳硬化症の典型的な診断は,臨床診断は鼓膜所見が正常な両側性の進行性伝音難聴という病歴によって行われ,最終診断は病理組織学的所見によって確認される,ということが多かった。しかし近年の画像診断の進歩から,耳硬化症を初期の段階から画像により診断できる確率が高くなってきており,また予後予測や手術成績の予測にも用いることができるようになってきたため,画像診断の重要性が増している。Retrofenestral typeはほかに側頭骨に異常をきたす病変,すなわち骨Paget病やVan der Hoeve症候群をはじめとするosteogenesis imperfecta(OI)などとの鑑別を要する。

錐体部病変

著者: 平海晴一

ページ範囲:P.62 - P.67

画像診断の狙い

 錐体部にできる病変には,神経鞘腫や髄膜腫のような充実性腫瘍と囊胞性病変がある。そのなかで耳鼻咽喉科医が遭遇し,診断・治療を行うものとしては囊胞性病変,なかでも錐体部真珠腫とコレステリン肉芽腫が多い。錐体部真珠腫とコレステリン肉芽腫はいずれも周囲の骨を破壊して増大していく病変であり手術治療が必要であるが,錐体部真珠腫の場合は母膜の完全摘出,コレステリン肉芽腫の場合は開放・ドレナージが第一選択となり,治療方針が異なる。しかしながら錐体部は生検を含めたアプローチが困難な部位で直視もできないことから,両者の鑑別は画像診断で行うこととなる。また,診断がついて手術を行う場合には,顔面神経,内耳,内頸動脈,頸静脈球,S状静脈洞,頭蓋内への進展を正しく評価し,最適な手術アプローチを計画することが重要である。

耳管疾患

著者: 福井英人 ,   土井直

ページ範囲:P.68 - P.74

画像診断の狙い

 耳管は中耳と鼻咽腔をつなぐ唯一の交通路であり,主に中耳における換気,異物の排除,病原体からの防御の機能をもち,これらの機能が障害されることにより真珠腫性中耳炎などのさまざまな中耳疾患が誘発される。この耳管機能障害としては,①耳管開放症,閉鎖不全耳管,②フロッピーチューブ,③耳管の器質的狭窄もしくは耳管閉塞の3つが挙げられる1)。この病態把握のために耳管の機能や形態を評価することは非常に重要であるが,頭部深部で頭蓋底を走行するため耳管咽頭口以外,耳管自体を直接,観察することは容易ではない。さらに解剖学的にも小さな器官でもあり,その生体における形態学的な研究は困難であった。昨今の画像診断技術のめざましい進歩に伴い,次世代CTやMRIが開発され,組織像にも迫る画質が得られるようになってきた。そこで本稿では耳管疾患の画像診断について述べる。

聴器癌

著者: 中川尚志

ページ範囲:P.76 - P.82

画像診断の狙い

 聴器癌はcompact boneに囲まれているため,直視できない。このため,進展度は画像診断によって判断する1)。聴器癌はほかの頭頸部癌のように定められた進展度分類がない。国際的に最も用いられている進展度分類は,Arriagaら2)が提唱した外耳道扁平上皮癌のPittsburg分類である。分類そのものは外耳道扁平上皮癌に対して提案されたものであるが,中耳原発の扁平上皮癌やほかの組織型に対する病期分類がないため,聴器癌すべてに使われている。そののち,2000年にMoodyら3)が顔面神経麻痺を判断基準に加えた改訂案(modified Pittsburg T staging system)をだした。この進展度分類を表1に示した。

急性感音難聴

著者: 曾根三千彦

ページ範囲:P.83 - P.88

画像診断の狙い

 急性感音難聴をきたす疾患は多岐にわたる。発症時の経緯を含めた問診が最も大切ではあるが,臨床症状を客観的に補足・評価する検査手段の1つとして画像診断の意義がある。近年の画像検査の進歩は目覚ましく,以前は急性感音難聴症例に対して聴神経腫瘍との鑑別が主な目的であったが,MRIを中心として内耳障害の病態把握も可能となってきた1)。内耳障害の程度を視覚的に把握できることは,予後の予測や治療の有効性を評価する指標にもなりうる。本稿では,急性感音難聴を生じる疾患として外リンパ瘻,内耳炎,突発性難聴,メニエール病に焦点をしぼり,症例の呈示とともにそのポイントを解説する。

内耳奇形と高位頸静脈球症,側頭骨内頸動脈走行異常

著者: 片岡祐子

ページ範囲:P.89 - P.97

画像診断の狙い

 小児で難聴やめまいを呈する症例のうち数%から20%程度が,なんらかの内耳奇形を有すると報告されている。奇形の種類によっては,難聴の進行や反復性髄膜炎などの原因となるものもあり,正確な画像診断を行い,フォローアップや治療に繋げていくことが必須となる場合もある。また高位頸静脈球症,側頭骨内頸動脈走行異常はそれほど頻度が高い疾患ではなく,通常無症状であることが多いが,鼓膜切開を行う際に大出血を起こし,重篤な合併症の原因となる可能性もあるため,このような疾患や解剖学的位置を理解しておくことは重要である。本稿では内耳奇形,血管走行異常の診断のポイントについて概説する。

顔面神経麻痺と顔面神経鞘腫

著者: 濵田昌史

ページ範囲:P.98 - P.102

画像診断の狙い

 顔面神経麻痺症例における画像診断の目的は,ズバリ「ベル麻痺をベル麻痺と診断する」ことである。ベル麻痺は末しょう性顔面神経麻痺症例の6~7割を占めるが,このベル麻痺を特発性(原因不明)であると確認するためには,そのほかのハント症候群,外傷,中耳炎,腫瘍などを否定する必要がある。ハント症候群は皮疹・粘膜疹の存在,難聴・めまいの有無ならびに抗水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)抗体価によって鑑別され,外傷性麻痺と中耳炎性麻痺はその病歴,鼓膜所見よりそれぞれ鑑別可能なので,画像診断の一番の役割は1%程度ながら確実に存在する腫瘍性麻痺をベル麻痺から識別することにほかならない1)

聴神経腫瘍と小脳橋角部腫瘍

著者: 稲垣彰 ,   村上信五

ページ範囲:P.103 - P.107

画像診断の狙い

 小脳橋角部腫瘍の80~90%を占める聴神経腫瘍から,頻度は低いが重要な病変を鑑別する。

pick upミニレクチャー

上半規管裂隙症候群

著者: 鈴木光也

ページ範囲:P.108 - P.110

画像診断の狙い

 圧刺激や音刺激などの外的刺激を受けた際に,眼振やめまいが誘発される現象を瘻孔症状およびTullio現象と呼ぶ。瘻孔症状およびTullio現象は上半規管裂隙症候群でもみられるが,その際に誘発される眼球運動や臨床症状は特徴的である。画像診断の目的は,眼球運動や臨床症状から疑われた上半規管裂隙を確認することにある。

ANCA関連血管炎性中耳炎

著者: 松原篤

ページ範囲:P.112 - P.113

画像診断の狙い

 近年ANCA関連血管炎に合併する難治性中耳炎を,ANCA関連血管炎性中耳炎(otitis media with ANCA associated vasculitis:OMAAV)と呼称することが提唱されている1)。難治性中耳炎として鑑別を要するほかの疾患としては,コレステリン肉芽腫症,結核性中耳炎,好酸球性中耳炎,中耳腫瘍などがあり2),中耳や側頭骨の状態を判断するため,また合併症の診断などの目的で側頭骨CTや頭部造影MRIが行われる。

グロムス腫瘍

著者: 稲吉康比呂 ,   角田篤信 ,   岸本誠司

ページ範囲:P.114 - P.115

画像診断の狙い

 グロムス腫瘍は化学受容体である傍神経節から発生する腫瘍(paraganglioma)であり,耳鼻咽喉科・頭頸部外科の領域では稀な腫瘍である。鼓室壁,特に鼓室内側壁・鼓室神経(Jacobson神経)に近接して生じる鼓室型グロムス腫瘍(glomus tympanicum tumor)と頸静脈球の外膜側に存在するグロムス小体から生じる頸静脈球型グロムス腫瘍(頸静脈孔グロムス腫瘍:glomus jugulare tumor)があり,併せてjugulotympanic paragangliomaと呼ぶ1)。初発症状としては拍動性耳鳴,難聴,めまいなどを呈する。鑑別すべき疾患としては,コレステリン肉芽腫,顔面神経鞘腫,高位頸静脈球,内頸動脈走行異常,髄膜腫,転移性腫瘍などが挙げられる。グロムス腫瘍は血流に富んだ腫瘍のため,安易に生検を行うと思わぬ大出血が生じる。そのため,画像検査による診断が特に重要である。また実際には画像診断だけでなく,局所所見も踏まえて行っていくことになる。

 グロムス腫瘍の治療は手術による摘出が基本であることから,術式選択においては画像診断による進展範囲の正確な把握が不可欠である。また術中出血のコントロールや,術後還流障害の予測のため血管造影を行うことも重要である。

Ⅱ.鼻・副鼻腔

ページ範囲:P.117 - P.117

先天奇形と外傷

著者: 市村恵一

ページ範囲:P.118 - P.123

画像診断の狙い

 先天奇形では他疾患との鑑別のため,また病変の拡がりの確定のため,手術方法の決定のために画像が用いられる。一方,外傷では,生命予後に影響するか判定する場合,放置すると永久に機能障害が残る可能性がある場合,手術の適応を決定する場合,ほかの診断手段が有効でない場合に画像が必要となる。

副鼻腔炎・副鼻腔真菌症

著者: 瀬尾友佳子 ,   野中学

ページ範囲:P.124 - P.131

画像診断の狙い

 鼻閉や鼻漏,後鼻漏,嗅覚障害などの鼻症状を有する患者の鼻内所見で膿性鼻汁や鼻茸,鼻粘膜腫脹を認め,副鼻腔炎,副鼻腔真菌症が疑われた場合,その確定診断には問診やアレルギー検査,画像所見が有用である。特に重症度の把握,手術の適応,治療の効果などを正確に判定するには画像診断が必要である。副鼻腔炎は罹病期間により急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎に分類されるが,特殊型として,歯性上顎洞炎や副鼻腔真菌症などがある。副鼻腔真菌症は,慢性非浸潤性(寄生型),急性浸潤性,慢性浸潤性,アレルギー性副鼻腔真菌症(allergic fungal sinusitis:AFS)の4つに分類される。本稿では,これら副鼻腔疾患の画像読影のポイント,Pitfallを中心に,化膿性副鼻腔炎,好酸球性副鼻腔炎,歯性上顎洞炎,慢性非浸潤性副鼻腔真菌症,急性浸潤性副鼻腔真菌症,AFSの画像診断について概説する。

鼻性眼窩内合併症・鼻性頭蓋内合併症

著者: 吉田拓人 ,   春名眞一

ページ範囲:P.132 - P.137

画像診断の狙い

■鼻性眼窩内合併症

 副鼻腔と眼窩は解剖学的に隣接しており,両者の隔壁は粘膜と骨膜,ところにより菲薄な骨のみとなっている。そのため,副鼻腔に生じた炎症が眼窩へと容易に及ぶことがある。これが鼻性眼窩内合併症の病態であり,その重症度はいくつかに分類される。代表的なものはChandlerら1)により提唱される以下の5型の分類である。
Ⅰ.眼窩隔膜より前方に発生する炎症性浮腫・眼瞼蜂巣炎・隔壁前蜂巣炎
Ⅱ.眼窩内組織に炎症が波及するものの膿瘍を形成しない眼窩蜂窩織炎(図1)
Ⅲ.眼窩骨膜下膿瘍(図2)
Ⅳ.眼窩内膿瘍(図3)
Ⅴ.海綿静脈洞血栓症(図4)

である。

 患者の病態がどの重症度にあたるのか画像診断を行うことにより,判断が可能となり,保存的治療でいくのか外科的治療を要するのかを決定できる。また病変の存在部位を同定することにより,適切な排膿ドレナージのためには内視鏡下手術のみで対応できるのか,外切開を併用する必要があるのか,アプローチ法を決定することができる。

多発血管炎性肉芽腫症と悪性リンパ腫

著者: 駒林優樹 ,   原渕保明

ページ範囲:P.138 - P.143

画像診断の狙い

■多発血管炎性肉芽腫症

 多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA/Wegener肉芽腫症から2011年の国際学会にて改称)は,①鼻,耳,眼,上気道および肺の壊死性肉芽腫性病変,②全身の中小血管の壊死性肉芽腫性血管炎,③腎の壊死性半月体形成性腎炎を3徴とする難治性の全身性血管炎である。このため,鼻副鼻腔のみならず,耳や眼窩,肺,腎といった全身臓器へ疾患の進展を評価していく必要がある。また,本疾患の鑑別疾患としては,あとに述べる鼻性NK/T細胞リンパ腫が重要である。

副鼻腔囊胞/鼻・副鼻腔乳頭腫

著者: 許芳行 ,   比野平恭之

ページ範囲:P.144 - P.148

画像診断の狙い

 副鼻腔囊胞,鼻・副鼻腔乳頭腫は,ともに一側性の副鼻腔陰影として認められることが多い。副鼻腔炎・ポリープ,真菌症,悪性腫瘍との鑑別が重要であるが,副鼻腔囊胞,鼻・副鼻腔乳頭腫に対する適切な術式決定においても画像診断が果たす役割は大きい。特に鼻・副鼻腔乳頭腫においては近年,鼻外手術に代わって侵襲の少ないendoscopic medial maxillectomy(EMM)1)やendoscopic modified lothrop procedure(EMLP)2)など内視鏡下アプローチが積極的に選択されるようになってきたが,腫瘍を完全に摘出して再発を予防するためには,術前に腫瘍の進展範囲に加えて腫瘍基部が同定できていることが望ましい。

鼻・副鼻腔癌

著者: 藤間憲幸 ,   本間明宏

ページ範囲:P.149 - P.155

画像診断の狙い

 鼻・副鼻腔癌の組織型は多岐にわたるが,日常診療で遭遇するほとんどは扁平上皮癌(squamous cell carcinoma:SCC)である。SCCは画像所見の幅が広く,ほかの悪性腫瘍のみならず良性腫瘍とも鑑別が難しいことがある。非典型例も含めたSCCの画像所見を把握することは鑑別診断を絞るうえでも重要である。また,治療方針決定には進展範囲の評価が重要であり画像診断による正確な判断が求められる。進展範囲の評価はover/under diagnosisにより誤った病期分類を行ってしまう場合や,神経周囲進展など見落としがちな所見に遭遇する場合もあり注意が必要である。本稿では鼻・副鼻腔癌のなかでもSCCを中心に画像所見と鑑別診断,進展範囲の評価のポイントについて概説する。

特殊な悪性腫瘍

著者: 近松一朗

ページ範囲:P.156 - P.162

画像診断の狙い

 鼻副鼻腔に発生する悪性腫瘍病変の多くは上顎洞扁平上皮癌である。しかしながら,それ以外の悪性腫瘍は非常にさまざまな組織型のものが発生する。画像診断によって良悪性の鑑別はある程度可能であるが,組織型の診断までは困難である。そのため画像診断に加えて,発生部位,進展方向,臨床症状,年齢,性別,局所所見なども有用な情報となる。

 ここでの画像診断の狙いは,炎症性疾患との鑑別,腫瘍の性状の把握,進展範囲の正確な評価(腫瘍性病変と炎症性病変の区別)であり,正確な画像診断を行うことは生検部位の決定,外科的治療の適応を含めた治療計画の立案,さらに予後の予測に重要である。本稿では,鼻副鼻腔に発生する特殊な悪性腫瘍として比較的頻度の高い腺様囊胞癌,嗅神経芽細胞腫,悪性黒色腫について述べる。これらの腫瘍は,同時に診断や治療に難渋することも多い腫瘍である。

pick upミニレクチャー

線維性骨異形成症・骨形成性線維腫

著者: 川内秀之

ページ範囲:P.164 - P.165

画像診断の狙い

 顔面を形成する骨組織(上顎骨,下顎骨,頰骨,側頭骨など)に発生する病変のなかで鑑別すべき疾患としては,線維性骨異形成症,骨形成性線維腫のほかに,エナメル上皮腫,軟骨肉腫,骨肉腫,線維肉腫などが挙げられる。疾患の種類と進展範囲により自・他覚症状の状況は異なるが,いずれにおいても形態の異常や疼痛などを主訴に受診することが多い。線維性骨異形成症は比較的若年者に発生することが多く,成長ホルモンの分泌が盛んな時期に増殖する傾向がある。

上顎洞血瘤腫

著者: 初鹿恭介 ,   増山敬祐

ページ範囲:P.167 - P.169

画像診断の狙い

 血瘤腫organized hematomaとは,副鼻腔内で炎症性変化や出血を繰り返しながら器質化し腫瘤となったものや,血管腫の存在によって発生した出血に起因する腫瘤1)であり,鼻出血,鼻閉を生じる。日本や韓国からの報告が大半を占める。好発年齢は20~40歳代と上顎癌より若い。ほとんどが一側性で,上顎洞由来である。

 一見悪性腫瘍との鑑別を要するが,疾患自体は臨床概念であり真の腫瘍ではなく,通常のFESS単独もしくはcaldwell-luc手術で根治できる疾患である。

Ⅲ.口腔・咽頭・唾液腺

ページ範囲:P.171 - P.171

扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍

著者: 鈴木正志 ,   渡辺哲生

ページ範囲:P.172 - P.179

画像診断の狙い

 扁桃周囲膿瘍,咽後膿瘍ともに代表的な深頸部感染症である。扁桃周囲膿瘍は口蓋扁桃被膜と咽頭収縮筋および頰咽頭筋膜(深頸筋膜中葉)との間にある扁桃周囲隙に生じる膿瘍である。咽後膿瘍は狭義には咽後隙(後内臓葉と翼状葉に囲まれた間隙,頭蓋底から第1胸椎までの高さ)に膿瘍を形成したものを意味するが,広義には危険隙(翼状葉と椎前葉の間,頭蓋底から横隔膜までの高さ),椎前隙(椎前葉と椎体の間,頭蓋底から尾骨までの高さ),これら3つの間隙のいずれかに膿瘍が形成された場合にも用いられている(図1)。

 両者において画像診断は,①膿瘍の確定診断(蜂窩織炎,リンパ節炎,リンパ節膿瘍の鑑別),②膿瘍の部位・進展度診断(周囲間隙,縦隔への波及の有無),③類似した症状・臨床所見を呈する疾患の鑑別に不可欠である。①については静脈的抗菌薬投与が治療として選択される。②については,気道の狭小化の有無が気管切開などの気道確保の必要性の判断,治療方法(切開,排膿)とその経路の選択に参考となる。③の鑑別すべき疾患としては,扁桃周囲膿瘍では口蓋扁桃悪性腫瘍,Lemierre症候群,咽後膿瘍では急性石灰沈着性頸長筋腱炎,川崎病,化膿性脊椎炎,結核,異物が挙げられる。

梨状陥凹瘻

著者: 佐久間直子 ,   折舘伸彦

ページ範囲:P.180 - P.184

画像診断の狙い

 下咽頭梨状陥凹瘻は第3,第4咽頭囊または鰓後体の遺残による瘻孔である。瘻孔は下咽頭梨状陥凹粘膜から尾側方向へ続き,甲状軟骨下縁外側付近で下咽頭収縮筋を斜めに貫き,気管に沿って下降し甲状腺上極背側まで走行していることが多い。

 性差はほぼなく,多くは幼少期に感染が発症して診断されるが,新生児や成人での発症例の報告もある1)。また,患側は90%以上が左側である1)

シェーグレン症候群とIgG4関連疾患

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.185 - P.191

画像診断の狙い

 シェーグレン症候群は外分泌腺を系統的に侵す自己免疫疾患であり,女性に多く,乾燥性角結膜炎や口腔乾燥症(sicca syndrome)などの症状を示す。乾燥症状のみを呈する場合は一次性シェーグレン症候群,関節リウマチ,SLE,強皮症などの膠原病を合併する場合を二次性シェーグレン症候群と称している。反復する耳下腺腫脹がみられ,診断は厚生省シェーグレン症候群診断基準1)(表1)による。したがって画像診断の意義は血清学的,病理学的検査のほかに,耳下腺組織の変化とその変性の程度を知ることと,唾液分泌機能の低下を示す検査結果にある。耳下腺組織の変化は診断基準の項目である耳下腺造影(シアログラフィ)が第一に挙げられ,次いでMRI,MRIシアログラフィも耳下腺造影と同等の画像所見が得られる。唾液分泌機能については99mTcO4シンチグラフィによる検査は現在の診断基準の項目に含められている重要な検査の1つである。

 IgG4関連疾患(IgG4-related disease)は,血清IgG4の高値と病変部へのIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とする新しい疾患概念である。自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)はすでにIgG4関連疾患として広く受け入れられている疾患であり,耳鼻咽喉科領域で扱うIgG4関連唾液腺疾患との合併も高頻度にみられる。ほかに後腹膜線維症,間質性腎炎,間質性肺炎,炎症性偽腫瘍,リーデル甲状腺炎などの合併もみられる。耳鼻咽喉科医に関連する疾患は従来の呼称であるMikulicz's disease(ミクリッツ病)とKüttner's tumor(キュットナー腫瘍)が挙げられる。ミクリッツ病はシェーグレン症候群の一亜型とされていた時代もあるが,現在はシェーグレン症候群とは異なる独立疾患となった。画像診断の意義はシェーグレン症候群と異なり,顎下腺の病変が多く,涙腺腫脹に関する組織学的変化をとらえるものである。現在用いられているIgG4関連ミクリッツ病の診断基準2)を表2に示す。

唾液腺(耳下腺)腫瘍

著者: 横島一彦 ,   中溝宗永

ページ範囲:P.192 - P.199

画像診断の狙い

 耳下腺腫瘍の根治治療は,良性・悪性にかかわらず手術であることに異論はない。そのため,画像診断は手術を前提にして行う必要がある。つまり,腫瘍の質的診断と存在部位・進展範囲の評価が必要になる。

 良性・悪性の鑑別は重要であるが,多様な組織型による術式の違いを考えると,さらに多形腺腫とワルチン腫瘍の鑑別,悪性腫瘍における組織型の診断までもが求められる。しかし,その詳細を術前に診断することが難しいことは多く指摘されており,悪性度の鑑別を目標とするのが現実的である1)。高悪性度の悪性腫瘍は比較的診断しやすいため,良性腫瘍と低・中悪性度悪性腫瘍との鑑別が肝要である。

口腔癌

著者: 鬼塚哲郎

ページ範囲:P.200 - P.206

画像診断の狙い

 口腔癌における画像診断の最も重要な目的は,腫瘍の周囲への進展評価である。口腔癌の標準治療の柱は手術であり,切除断端が陽性になると治療の成功には著しく不利になる。よって断端陽性にならないような切除線や切除アプローチ,切除の適応があるかなどの評価や計画を立てるために画像診断は不可欠である。口腔は,軟部組織と顎骨を主とした骨組織が混在する部位である。口腔癌は切除範囲が大きくなればなるほど機能障害も増すため,適正な切除線を決めるための浸潤評価が重要となる。口腔癌は頸部リンパ節転移をきたしやすいが,ここでは原発巣について述べる。

上・中咽頭癌

著者: 遠藤一平 ,   吉崎智一

ページ範囲:P.208 - P.213

画像診断の狙い

 上・中咽頭癌の画像診断に期待されるのは,直視下で観察が困難な粘膜下や深部組織への進展の把握,resectability,治療効果判定などである。上咽頭は軟口蓋より上方の咽頭腔をさす。上咽頭腫瘤の鑑別では,上咽頭癌のほかには血管線維腫,Tornwaldt囊胞,咽頭扁桃肥大,悪性リンパ腫などがある。中咽頭は,上咽頭から続く喉頭蓋谷までの範囲をいう。中咽頭病変では中咽頭癌,悪性リンパ腫,口蓋扁桃肥大,貯留囊胞,小唾液腺由来の腫瘍などが挙げられる。

下咽頭・頸部食道癌

著者: 白倉聡 ,   別府武

ページ範囲:P.214 - P.219

画像診断の狙い

 下咽頭・頸部食道癌は早期発見例の増加や治療法の進歩により予後が向上してきたとはいえ,現在も予後不良な疾患である。疾患の治療法については周囲組織への浸潤の有無や程度により決定され,それが局所制御率と予後に関係する。診断例が飛躍的に増えてきた表在癌や,症例数は少ないが喉頭温存可能な部分切除適応例においては,その正確な病変の範囲が重要になってくるのはいうまでもない。実際に治療にあたる耳鼻咽喉科・頭頸部外科医は,さまざまな画像所見を組み合わせて正確に疾患の評価を行っていくことが第一歩となる。ここでは,各画像診断においてどのようなことを重視すべきかを具体例を挙げて詳しく述べる。

pick upミニレクチャー

唾石症

著者: 松延毅

ページ範囲:P.220 - P.222

画像診断の狙い

 唾石症(sialolitiasa)は,日常比較的遭遇することの多い疾患で,特に顎下腺の慢性炎症の最も多い原因である。唾石は脱落した上皮,管内に迷入した異物,細菌などが核となって,周囲にリン酸カルシウム,炭酸カルシウムなどが同心円状に層構造を呈して沈着し形成される。一般に唾石が形成された唾液腺の種類により,大唾液腺唾石,小唾液腺唾石に大別される。その頻度は顎下腺が98%,耳下腺が1.8%,舌下腺が1.2%,小唾液腺が0.4%と顎下腺が圧倒的に多い1)。顎下腺に多い理由としては,顎下腺唾液の性状が高ムチン成分,高pH(アルカリ性),高有機物質,石灰・リン酸塩の濃縮,低二酸化炭素,高リン酸酵素であり,解剖学的に顎下腺管(ワルトン管)の長く不規則な走行,重力依存部に位置する顎下腺・管,腺管開口部の位置や腺管よりも小さい径などが挙げられる。また唾石の存在部位と頻度については,腺管内(55%),移行部(30%),腺体内(15%)と腺管内の頻度が高い。

 小唾液腺結石は頰粘膜,上口唇に多く,口蓋,歯槽粘膜,下口唇には少ない。大きさは長径10mm前後が多く,数は1個が大多数を占める。20~40歳代に好発し,男女比は2:1とされてきたが,最近はあまり差を認めなくなってきている。腺管を閉塞する大きさになると摂食時に唾疝痛(salivary colic)と呼ばれる疼痛をきたす。また,二次性急性・慢性唾液腺炎が長期にわたると唾液腺の萎縮をきたす。

上咽頭血管線維腫

著者: 菅澤正

ページ範囲:P.224 - P.226

画像診断の狙い

 上咽頭血管線維腫(juvenile nasopharyngeal angiofibroma:JNA)治療の第一選択は手術であり,経口蓋法,鼻側切開法,midfacial degloving法,側頭下窩法などさまざまな手術アプローチが報告されているが,近年内視鏡手技の進歩とともに,内視鏡下アプローチがその適応を拡大させている。JNAは画像診断で診断可能であり,進展範囲を正確に評価することで上記のさまざまなアプローチから適切な方法を選択可能とする1)

 また,JNAは思春期の男性に好発し,顔面骨はまだ発育途上であり,骨切の必要ない低侵襲な内視鏡下アプローチが可能であるかどうかの判断はきわめて重要である。

Ⅳ.喉頭・気管・食道

ページ範囲:P.227 - P.227

喉頭・気管感染

著者: 原浩貴

ページ範囲:P.228 - P.232

画像診断の狙い

 上気道の感染症は,重篤化した場合に気道狭窄をきたし呼吸困難や窒息を引きおこす可能性がある。喉頭・気管感染に関しては,これに伴う気道狭窄を見逃さず,必要時には速やかに入院加療あるいは高次医療機関への搬送を実施するなど初診医の適切な診断,治療が求められる1)。本稿では代表的疾患として,急性喉頭蓋炎と急性声門下喉頭炎を取り上げ,画像診断を含めた検査診断上の留意点を述べる。

喉頭・気管外傷

著者: 溝上大輔 ,   冨藤雅之 ,   塩谷彰浩

ページ範囲:P.234 - P.240

画像診断の狙い

 喉頭・気管外傷は,前頸部への鋭的もしくは鈍的な外力によって生じるもので,呼吸,発声,嚥下の障害をきたす。解剖学的には,喉頭・気管は後方を頸椎,上方は下顎骨,下方は鎖骨で保護されたうえに,種々の筋肉で保持された可動性に富む器官であるため外力による損傷は受けにくい。そのため,耳鼻咽喉科医であっても喉頭・気管外傷を経験する機会は比較的少ない。原因としては野球などの球技,格闘技,交通外傷によるものが多く,交通外傷では通常,多発外傷の一部として起こる。喉頭外傷は,皮膚損傷を伴って気道が外界と交通する開放性損傷と交通しない閉鎖性外傷に分類される1~3)。治療の目的は,いずれにおいても急性期の気道管理およびその後に後遺症となりうる呼吸・音声・嚥下障害の防止である。急性期の喉頭外傷を見逃せば,窒息など気道緊急の原因となりうる。一方,喉頭・気管への傷害が高度な場合や初期治療が十分に行えなかった場合,瘢痕性狭窄により呼吸や音声・嚥下の障害をきたす可能性がある4)。診断(傷害の部位・程度)は,視触診,内視鏡検査とCTによる画像診断を組み合わせて判断する。喉頭・気管の枠組みの破壊・偏位があるかどうかの判断には画像診断が必須である。軟骨の評価にはCTが最も有用で頻用されてきたが,さらに近年ではマルチスライスCTで得られた高分解能データから再構成される冠状断,矢状断に加えて3D-CT画像も利用できる5)。画像診断の進歩は診断能を飛躍的に進歩させているだけでなく,患者や家族が病態を理解しやすいので説明にも有用である。

 本稿では,喉頭・気管外傷における画像診断のポイントや注意点について自験例を呈示しつつ述べる。

気道・食道異物

著者: 平林秀樹

ページ範囲:P.242 - P.249

画像診断の狙い

 気道・食道異物の画像診断は,異物症が疑われた際に最も重要な検査であるが,気道狭窄など緊急の対処が必要かの判断も重要である。さらに疑われる異物の種類,陥頓部位などで撮影方法を吟味する必要がある。

反回神経麻痺/輪状披裂関節脱臼

著者: 三枝英人

ページ範囲:P.250 - P.253

画像診断の狙い

 反回神経麻痺と輪状披裂関節脱臼の鑑別について,後者に対する特徴的な喉頭内視鏡所見1)に対する観察は重要であるが,それのみでは診断の難しい場合がある。また,反回神経麻痺であるとの確定診断には内喉頭筋への筋電図検査が最も有効であるが,その施行は患者への侵襲も伴ううえ,技術的にも容易ではない。一方,近年の画像再構成技術の進歩により,輪状披裂関節脱臼の画像診断にマルチスライスヘリカルCTや3DCTの有用性2,3)が報告されているが,これらも必ずしも万能の検査とはいえない。例えば,若年者や女性で喉頭軟骨群の石灰化の程度が弱い場合には,輪状披裂関節の細部にわたる描出は難しい。特に,輪状披裂関節の脱臼は,基本的には関節面同士の接触が完全には失われていない亜脱臼の状態であり,脱臼した披裂軟骨の変位が強くない場合には,判定に悩むことも多い。また,斜喉頭をはじめ喉頭軟骨群の生理的な左右差4)がある場合にも,その判別は難しい。声帯運動障害に対するマルチスライスヘリカルCTの撮像は吸気時と,発声もしくは息堪え時の2つの動作時に同期して行い,その撮像時間は2秒程度ではあるが,発声時の喉頭の上下運動が大きい場合や,こちらが意図したとおりの喉頭の構えで息堪えができていないなどの場合では,期待どおりの画像は得られない。何より,喉頭の解剖に精通していない場合には,それの判別に困るであろう。さらに,画像再構成を行うソフトや装置は高価であり,再構成に要する時間や労力もかかるため,多くの医療機関で行える普遍的な検査とはいいにくい。

 反回神経麻痺と輪状披裂関節脱臼との最大の違いは,後者では輪状披裂関節面から脱臼し,解放された披裂軟骨上部構造が発声時に外側輪状披裂筋を中心とする内転筋群の収縮により上外方へ倒れ込むように移動し,同時に声帯遊離縁の高さが健側より高位に移動することである1)。この現象は,披裂軟骨が輪状軟骨の前内方へ脱臼する前方脱臼と,後外方へ脱臼する後方脱臼とで共通のものである。したがって,輪状披裂関節脱臼が疑われる場合には,まず,この現象について観察を行うことが有用である。しかし,通常の喉頭内視鏡による声帯の上方からのみの観察では,この現象を確認することは難しい。これに対して,喉頭正面からX線透視を用いて,発声時の声帯辺縁と披裂軟骨上部構造の外上方への変位を観察する方法(図1)は,X線透視装置さえあれば可能な検査であり,全国の多くの医療機関で施行が可能である1)。しかし,声帯自体は軟部組織であり,輪状披裂関節の石灰化が乏しい場合にはCT同様にその判定は難しい。これに対して,バリウムを嚥下させたあとに,発声時に脱臼した披裂軟骨上部構造が上外方に変位する現象を,披裂軟骨外側面とわずかな軟部組織と粘膜とで接する下咽頭梨状陥凹の内側面の運動性として観察する方法が報告されている5,6)。この方法を用いると,直接,披裂軟骨を描出しなくとも,脱臼した披裂軟骨の異常な運動性が容易に描出されうる。本項では,主にこのバリウム嚥下後の発声時の喉頭正面X線透視画像検査について述べる。

喉頭癌

著者: 齋藤康一郎 ,   矢部はる奈 ,   宇野光祐

ページ範囲:P.254 - P.263

画像診断の狙い

 悪性腫瘍に限らず,喉頭疾患の診断に際しては,内視鏡検査の威力は絶大である。悪性腫瘍の診察時は,疾患の進展範囲や声帯の可動性の診断のためにも,内視鏡検査は必須である。また,喉頭癌のなかでも最も頻度の高い声門癌の場合,ストロボスコピーを併用し,病変部分の粘膜波動を慎重に観察することで,微小な病変であっても悪性を疑い,診断精度を向上させることが可能である。さらに,悪性腫瘍を疑った場合に行われる,喉頭微細手術のセッティングでの検査は,組織診断のみならず,深部浸潤を含めた疾患の進展範囲を見極めることも目的としている。検査に際し,顕微鏡の接線方向となる声門上,あるいは死角となる喉頭室や声門下の慎重な観察のためには,内視鏡の併用も有用である。喉頭癌を取り扱うに際しての画像診断の狙いは,これらの内視鏡検査や喉頭微細手術では診断が困難な深部・軟骨への浸潤や喉頭外への進展に関する情報を得,さらには転移の検索を行い,正確に病態を把握することにある。

pick upミニレクチャー

喉頭気管狭窄

著者: 守本倫子

ページ範囲:P.264 - P.266

画像診断の狙い

 内視鏡検査では声門部より上部の狭窄は診断できるものの,声門下部は十分に観察することができず,単純X線や頸部CTなどの画像情報と併せて総合的に診断する必要がある。

Ⅴ.頭頸部

ページ範囲:P.267 - P.267

先天性囊胞・瘻

著者: 肥後隆三郎

ページ範囲:P.268 - P.273

画像診断の狙い

 頭頸部に腫瘤を認めた場合に鑑別すべき疾患は感染性,炎症性,先天性,腫瘍性など多岐にわたる。この項ではこれらのなかで特に頸部の先天性囊胞・瘻に焦点を絞って述べることとする。頸部の先天性囊胞・瘻はもともと稀な疾患ではあるが,それらのなかで比較的頻度が高いのは正中頸囊胞(甲状舌管囊胞),側頸囊胞,下咽頭梨状窩瘻,リンパ管腫である。2007~2013年の7年間に当科を受診し,入院加療に至った症例数の内訳をみると正中頸囊胞と側頸囊胞が7例ずつ,下咽頭梨状窩瘻が1例であった(表1)。リンパ管腫は比較的若年でみつかることが多く小児外科で治療されたり,また当科では硬化療法を行っていないため,この期間内で入院加療した症例はなかった。本稿では正中頸囊胞,側頸囊胞,下咽頭梨状窩瘻の3疾患について画像を供覧し読影のポイントとpitfallについて述べたいと思う。

深頸部感染症

著者: 菊地茂 ,   杉木司

ページ範囲:P.274 - P.279

画像診断の狙い

 深頸部感染症を含め,頸部腫脹をきたした患者が来院したときには,詳細な病歴を聴取し,視診,触診をていねいに行い,バイタルサインなどの全身状態を把握後に,画像診断により頸部の状況を的確に精査する。深頸部感染症が疑われる場合,①その腫脹が深頸部感染症によるものであるか,②深頸部感染症のどのステージであるか,すなわち,リンパ節炎か,蜂巣炎か,膿瘍かの鑑別,③感染の進展範囲(特に下方への進展の有無)の確認,④感染の原発部位や原因の確認,⑤縦隔炎,内頸静脈血栓症などの合併症の診断,⑥切開・排膿術,気管切開術などの気道確保の必要性などに関する治療方針の決定,⑦治療効果の判定などが画像診断上で重要なチェックポイントである。

リンパ節炎

著者: 中田誠一 ,   藤井直子 ,   吉岡哲志 ,   鈴木賢二

ページ範囲:P.280 - P.287

画像診断の狙い

 頸部のリンパ節炎は,耳鼻咽喉科診療において通常,頸部リンパ節腫脹といったかたちで遭遇する機会の多い疾患である。多くは頭頸部領域の炎症に随伴する急性のリンパ節腫脹であり,時には悪性腫瘍との鑑別を要する。今回とりあげる化膿性リンパ節炎・亜急性壊死性リンパ節炎・結核・放線菌症・伝染性単核球症といった疾患群は,頸部リンパ節腫脹という症候時に注意深い診断を要し,また悪性疾患とも炎症とも鑑別がつきにくく,診断を間違えば治療においても難渋することが多い。今回は,そのような遭遇する機会が少ない症例も含めて,鑑別診断としてぜひ知っておかなければならない上記5疾患に焦点をあて,ほかの疾患との鑑別に主眼を置き解説した。

リンパ管腫・血管腫

著者: 笹村佳美

ページ範囲:P.288 - P.294

画像診断の狙い

 2013年に血管腫,血管奇形診療ガイドラインが発表され1),ガイドラインによるとリンパ管腫,血管腫はISSVA(International Society of Studying Vascular Anomaly)にもとづき診断,治療を行うことが推奨されている。ISSVAでは,以前はすべて血管腫として扱われていた血管腫,血管奇形がそれぞれ別の疾患と考えられ,リンパ管腫はリンパ管奇形の一種と分類されている。今回は,リンパ管腫においては最も多くみられる囊胞状リンパ管腫,血管腫においては血管奇形ではない腫瘤性疾患について述べる。

 リンパ管腫・血管腫は小児にみられることの多い囊胞性疾患であり,頸部が好発部位となる。ほかの囊胞性疾患として,正中頸囊胞,側頸囊胞などの鰓溝由来の囊胞,ガマ腫,頸部膿瘍などが挙げられるが,これらの疾患も小児に多く,リンパ管腫・血管腫と鑑別すべきである。

副咽頭間隙腫瘍

著者: 四宮弘隆 ,   丹生健一

ページ範囲:P.296 - P.301

画像診断の狙い

 副咽頭間隙とは,咽頭収縮筋,耳下腺,頭蓋底,翼突筋などに囲まれた逆円錐型のpotential spaceである。副咽頭間隙腫瘍は比較的稀な疾患であり,頭頸部腫瘍の0.5%とされる1)。副咽頭間隙腫瘍の画像診断において重要な点は,腫瘍発生部位の診断,特に腫瘍が耳下腺由来のものか否かを鑑別することと,腫瘍と周囲組織の境界を明確にして腫瘍の進展範囲を決定することである。鑑別疾患としては主に,耳下腺深葉腫瘍,神経原性腫瘍(迷走神経,交感神経,舌下神経),他領域から進展した腫瘍が挙げられる1)

甲状腺・副甲状腺疾患

著者: 古川まどか

ページ範囲:P.302 - P.310

画像診断の狙い

 甲状腺疾患は,バセドウ病,橋本病(慢性甲状腺炎),破壊性甲状腺炎(亜急性甲状腺炎,無痛性甲状腺炎など)といったびまん性疾患と,良性結節(腺腫,腺腫様結節,囊胞など)および悪性結節(悪性腫瘍)などの結節性疾患に大きく分けられる。副甲状腺疾患は,機能亢進症(原発性あるいは2次性)としてみつかり,治療を要することが多い。甲状腺,副甲状腺ともに内分泌臓器であるため,病変の形態的な特徴に加え,機能的な側面も取り入れて診断を行うことが重要である。

 まず,疾患の有無を確認すること,疾患がみつかった場合に良性疾患か悪性疾患か,さらには内科的治療を要するものか外科的に治療するものかを鑑別することが,甲状腺・副甲状腺における画像診断の大きな狙いである。

頸部リンパ節転移・悪性リンパ腫

著者: 杉本太郎 ,   野村文敬

ページ範囲:P.311 - P.315

画像診断の狙い

 頸部腫瘤を主訴に来院した患者の診断を進める場合,腫瘤がリンパ節であるか否かをまず鑑別する必要がある。次いでリンパ節腫脹が疑われる場合は,炎症性の腫脹か,悪性腫瘍の転移か,悪性リンパ腫かなどを鑑別する必要がある。頸部リンパ節腫脹が悪性腫瘍の転移である場合,原発巣は頭頸部領域にあることがほとんどである。しかし稀に頭頸部以外の臓器からの転移もあるので,頭頸部に原発巣がみつからない場合は,全身的な画像診断による検索が必要になる。

 転移リンパ節が扁平上皮癌でも食道癌の転移のこともあり,扁平上皮癌以外であった場合は,乳癌,胃癌や泌尿器科領域の癌の転移も疑う必要がある。

pick upミニレクチャー

メトトレキサート関連リンパ増殖症

著者: 郷充

ページ範囲:P.317 - P.320

画像診断の狙い

 メトトレキサート(Methotrexate:MTX)は,葉酸代謝拮抗薬に分類され,悪性腫瘍や関節リウマチ(RA)に対する治療薬である。その使用に伴う副作用としては,間質性肺炎,肝障害,骨髄抑制,口内炎・消化性潰瘍・消化管出血などが挙げられるが,MTX投与中に発生する悪性リンパ腫については1991年にEllmanらが初めて報告1)して以降,MTX関連増殖性疾患(MTX-related lymphoproliferative disorders:MTX-LPD)として数多く報告されている。2008年のリンパ組織の腫瘍に関するWHO分類第4版2)においても,MTXや他の免疫抑制薬によると考えられるLPDは「その他の医原性免疫不全症関連リンパ増殖性疾患」として新たに分類されている。この免疫不全状態はRA自体によるものと,MTX治療によって引き起こされた病態の2段階が考えられるが,MTXを中止すると悪性リンパ腫が化学療法なしに縮小傾向を示す例があること3)から,MTXによる免疫不全状態の関与が強く示唆されている。

 免疫抑制薬は,全身性エリテマトーデス,皮膚筋炎,シェーグレン症候群を主とする膠原病や,尋常性乾癬,天痕瘡,類天骨瘡を主とする自己免疫疾患にも使用されている。なかでもRAについては,日本において特に40~50歳の女性の罹患率が高く,60~70万人が罹患していると推定されている。近年では疾患病態の解明により,MTXなどの強力な疾患修飾抗リウマチ薬(DMARDs)が早期導入されるようになり,さらに,免疫調整作用のある抗TNFα抗体などの生物学的製剤も次々に開発され,RA以外にも,クローン病,べーチェット病といった自己免疫性疾患の治療に広く用いられている。今後,われわれが日常診療において,免疫抑制薬あるいは免疫抑制を起こしうる生物学的製剤に遭遇する機会が増えることが予想される。

頸動脈小体腫瘍

著者: 冨田俊樹

ページ範囲:P.321 - P.323

画像診断の狙い

 頸動脈小体腫瘍は徐々に増大する無痛性の上頸部腫瘤を主訴とする。病理組織学的には非クロム親和性の傍神経節腫で,化学受容体である頸動脈小体から発生する。稀にカテコールアミン産生腫瘍や,家族性腫瘍,両側発生例を認める1)

 鑑別すべき疾患として,神経鞘腫や神経線維腫などの神経原性腫瘍,リンパ節炎,悪性リンパ腫,原発不明癌,転移性リンパ節,キャッスルマン病などが挙げられる。

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バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.316 - P.316

投稿規定

ページ範囲:P.324 - P.324

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.325 - P.325

あとがき

ページ範囲:P.326 - P.326

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

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