耳鼻咽喉科・頭頸部外科86巻5号

2014年04月発行

増刊号 画像診断パーフェクトガイド―読影のポイントとピットフォール 部位別診断法 Ⅰ．耳・側頭骨

中耳外傷と側頭骨骨折

著者： 小川洋¹

所属機関： ¹福島県立医科大学会津医療センター耳鼻咽喉科学講座

ページ範囲：P.46 - P.51

画像診断の狙い

　中耳外傷は，中耳に限局した耳かきなどによる直達外傷や平手打ちによる鼓膜穿孔などの介達外傷によるものと，頭部外傷に伴う側頭骨骨折によるものがある。さらに，側頭骨骨折は古典的には縦骨折，横骨折，その混合型に分類され，近年では迷路骨包に骨折が及んでいるか，迷路骨包が保たれているかに分類されている^1）。縦骨折は，頭部に対して側方からの外力により生じやすく，横骨折は頭部に対して前方，もしくは後方からの外力により生じやすいとされている。迷路骨包に骨折が及んでいる場合，感音難聴，顔面神経損傷，髄液漏の合併する頻度が高く，側頭骨骨折の5～20％を占める^2）。

　画像検査は外傷における病態を明らかにするための基本となる。頭部外傷において頭蓋内病変の検索が最優先されるが，側頭骨骨折は頻度が高く，耳鼻咽喉科による対応が不可欠であり，聴力障害，めまい，顔面神経麻痺といった症状は患者の生活に大きく影響する。画像診断の進歩により微細な病変の評価が可能となっているが，本稿では臨床症状を考慮しながら行う読影のポイントについて解説する。

参考文献

1）Little SC, et al：Radiographic classification of temporal bone fractures：clinical predictability using a new system. Arch Otolaryngol Head Neck Surg 132：1300-1304, 2006

2）Robson CD, et al：Specialty imaging. Temporal bone, 1st ed. Amirsys, Canada, 2013, pp7.4-7.7

3）今泉光雅・他：外傷性顔面神経麻痺の画像診断―マルチスライスCTと3D Accu-i-tomoによる評価．耳鼻臨床101：267-274，2008

4）小澤喜久子・他：アブミ骨陥入が認められた外リンパ瘻例―マルチスライスCTの有用性．耳鼻臨床97：399-404，2004