icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科86巻7号

2014年06月発行

雑誌目次

特集 鼻副鼻腔内視鏡手術Update

ページ範囲:P.493 - P.493

慢性副鼻腔炎手術プランニングの実際

著者: 中川隆之

ページ範囲:P.494 - P.501

POINT

●術前CT所見による手術アプローチのプランニングについて解説する。

●冠状断CTを基本とし,矢状断で前後の情報を確認する。

●鉤状突起,篩骨胞と前頭洞の関係を把握する。

●篩骨胞と前篩骨動脈,中鼻甲介基板と上鼻道の位置関係に留意する。

●篩骨胞天蓋近傍と後部篩骨洞の手術操作開始時がナビゲーションのポイント。

前頭洞炎

著者: 児玉悟

ページ範囲:P.503 - P.508

POINT

●前頭陥凹の解剖の理解と手術プランニングが重要である。

●Agger nasi cellが前頭洞開放のキーである。

●前頭洞排泄路はagger nasi cellと篩骨胞の間を通る。

●画像所見と術中所見を一致させながら,前頭洞排泄路に沿って,前頭洞を開放する。

●骨削開が必要な場合はできるだけ大きく削開する。

好酸球性鼻副鼻腔炎に対する手術療法と術後治療

著者: 松脇由典

ページ範囲:P.509 - P.515

POINT

●好酸球性鼻副鼻腔炎は両側性の篩骨洞,上鼻道,嗅裂病変が主で,易再発性であるため,問題となってきている。

●内視鏡下鼻内手術は,鼻甲介は極力温存しながら鼻副鼻腔を単洞化する。

●嗅裂,上鼻道に対しては骨を露出させることなく病的粘膜をトリーミング処置し,嗅粘膜(基底膜にある嗅細胞)をなるべく温存しつつ十分に開放する。

●術後治療は,生食による局所洗浄とステロイド局所療法,抗ロイコトリエン薬が中心で,易再発例にはステロイド内服治療を加える。

●気管支喘息を合併している患者に対しては,呼吸器内科医との協力が必要である。

鼻副鼻腔真菌症

著者: 唐木將行

ページ範囲:P.516 - P.520

POINT

●鼻副鼻腔真菌症についての治療方法をまとめた。

●治療の必要性と治療方針について触れた。

●診断の手順を示した。

●除去と清掃,徹底的な洗浄,抗真菌薬投与などの治療方針を述べた。

●典型例と注意すべき症例を紹介した。

アレルギー性鼻炎

著者: 浦長瀬昌宏

ページ範囲:P.521 - P.527

POINT

●アレルギー性鼻炎の外科的治療には,①下鼻甲介粘膜の変性,②下鼻甲介体積の減量,③後鼻神経の機能抑制を目的とした手術がある。

●症状,重症度,鼻腔形態,手術の侵襲度,年齢などを考慮して,術式を選択する。

●内視鏡下では,蝶口蓋孔前下方の下鼻甲介骨膜下に神経血管束が出現し,主に3本の枝に分岐する。この神経血管束は,後鼻神経と蝶口蓋動静脈を含んでいる。

●選択的後鼻神経切断術は,下鼻甲介骨膜下の神経血管束を切除する手術である。下鼻甲介後端への効果と術式の再現性を高めるため,骨膜下を走行する最後端から神経血管束を切除する。また,神経血管束の確認と鼻閉の改善のため下鼻甲介骨切除も併せて行う。

●鼻中隔彎曲症や慢性副鼻腔炎を併発している場合は,鼻腔環境を改善させるため,鼻中隔矯正術や内視鏡下鼻内副鼻腔手術を併せて行う。

鼻副鼻腔良性腫瘍の内視鏡下手術

著者: 花澤豊行 ,   山﨑一樹 ,   大木雄示 ,   飯沼智久 ,   木下崇 ,   岡本美孝

ページ範囲:P.529 - P.532

POINT

●鼻腔粘膜の切離には,できるだけ電気メスを用いて出血を最小限に抑え,視野を確保する。

●内反性乳頭腫は再発率が高いこと,および扁平上皮癌の合併が少なからずあることから,悪性腫瘍に準じたen bloc切除を可能な限り追求する。

●内反性乳頭腫および血管線維腫の切除においては,腫瘍茎をしっかり同定する。

●副鼻腔囊胞の開窓後の再閉鎖防止には,鼻腔の粘膜弁の活用が有効である。

●以上のポイントも含めて,術前には十分に手術のプランニングを行う。

下垂体腫瘍

著者: 小林正佳 ,   畑崎聖二

ページ範囲:P.533 - P.541

POINT

●近年,下垂体腫瘍に対する内視鏡下経鼻的手術が普及している。

●脳神経外科医と耳鼻咽喉科医が協力して手術に取り組むのが望ましい。

●術者2人以上で内視鏡下の3 or 4-handed techniqueを活用するのがよい。

●術者,助手ともに座位で手術を行うと負担軽減が図れる。

●術後の鼻副鼻腔の生理機能を温存するための術中,術後の処置が重要である。

●耳鼻咽喉科医にとって下垂体手術への参加は,鼻副鼻腔内視鏡手術全般のレベル向上にも有用である。

眼窩吹き抜け骨折

著者: 比野平恭之

ページ範囲:P.542 - P.546

POINT

●眼窩吹き抜け骨折は副鼻腔病変の1つとして考える。

●眼窩吹き抜け骨折はESSの適応疾患であり,術後経過観察もESS同様に行う。

●術中眼球牽引試験が重要である。

●経過不良例もESSの適応となる。

鼻涙管狭窄・涙道閉塞

著者: 吉田尚弘

ページ範囲:P.547 - P.552

POINT

●鼻涙管狭窄に対する治療は,狭窄部の拡張あるいは新たな涙道の作製〔涙囊鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)〕である。

●鼻内視鏡を用いたDCR鼻内法は従来の鼻外法と比して同等の術後成績である。

●DCR鼻内法は外切開を行わないという美容上の面から広く行われるようになった。

●涙道閉塞部位を診断し,涙小管に対する操作が必要かどうか,手術適応を術前に評価する。

●DCRバー,サージトロンなどの手術支援機器を用いて十分に涙囊を開窓することが重要である。

鼻出血

著者: 鈴木元彦

ページ範囲:P.553 - P.559

POINT

●鼻出血は耳鼻咽喉科外来診療や救急外来においてよく遭遇する疾患の1つである。

●鼻出血を治療するためには鼻腔の血管系などの解剖を熟知する必要がある。また,鼻出血の原因となるさまざまな疾患について理解している必要がある。

●鼻出血の診察において重要なことは出血部位の発見・確認とその処置(止血)であるが,同時に腫瘍や出血の原因となっている全身疾患などを見逃さないことがとても大切である。

●内視鏡下鼻内手術による止血術は,出血部位を明視下に確実に止血することが可能となり,有用な手段である。

●出血部位が鼻腔後方であるものの,正確な出血部位が特定できない再発性・難治性鼻出血においては蝶口蓋動脈の結紮(切断)術も一手段である。

副鼻腔内視鏡手術合併症の回避法・対処法

著者: 柳清

ページ範囲:P.561 - P.569

POINT

●初心者は解剖を熟知したうえで無理はしない。術達者は自分の腕を過信しない。困難な症例に直面したら撤退する勇気も必要である。

●術前にCTで手術症例の特徴を詳細に把握しておく。

●各副鼻腔開放の際に第一穿破部位を守る。

●隔壁を開放するたびにまめに目を押す。これで眼窩内損傷は防げる。

●マイクロデブリッダーは慣れるまで使用しない。また回転数を上げない。polypや粘膜病変の除去は1,000回転で十分である。

●タイトに手術を組まない。手術時間に余裕がないと精神的にも落ち着かず,思わぬ副損傷を引き起こす。

原著

顔面神経減荷術を行った9症例の治療成績

著者: 池嵜祥司 ,   大淵豊明 ,   橋田光一 ,   喜瀬祥啓 ,   小泉弘樹 ,   武永芙美子 ,   柴田美雅 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.571 - P.574

はじめに

 末しょう性顔面神経麻痺は,単純ヘルペスウイルスの再活性化によるBell麻痺や水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によるHunt症候群1,2),および外傷に起因する外傷性顔面神経麻痺などに分類される。これらの末しょう性顔面神経麻痺に対し,副腎皮質ステロイド薬(以下,ステロイドと略す)大量療法が高い治癒率を示すことが知られており,わが国でも有効な治療法の1つとして広く用いられている3)。Bell麻痺やHunt症候群の場合は,抗ヘルペスウイルス薬による治療も併用される4,5)。一般に保存的治療の成績は良好で,末しょう性顔面神経麻痺に対する代表的な観血的治療法である顔面神経減荷術の適応となる症例は少ない。今回われわれは,当科で治療を行った末しょう性顔面神経麻痺症例のうち,顔面神経減荷術の適応となり,術後6か月以上追跡し得た9症例につき検討した。

下顎正中離断法にて摘出した巨大な副咽頭間隙傍神経節腫の1例

著者: 鈴木法臣 ,   渡部佳弘 ,   橋口さゆり ,   石岡薫 ,   川崎泰士 ,   和佐野浩一郎 ,   行木一郎太 ,   行木英生

ページ範囲:P.575 - P.580

はじめに

 副咽頭間隙は頭蓋底を底,舌骨大角を頂点とする逆円錐形をなしており,内側は咽頭収縮筋,咽頭壁,外側は内側・外側翼突筋,下顎骨,耳下腺深葉,顎二腹筋後腹,後方は椎骨,椎前筋に囲まれている1)。副咽頭間隙には神経系組織(複数の脳神経と自律神経)と脈管系組織(頸動脈,頸静脈,リンパ組織)が脂肪組織に覆われて,頸部と頭蓋内を交通する解剖組織として存在する。副咽頭間隙に発生する原発腫瘍としては神経系起源,脈管系起源,および間葉系起源の腫瘍があるが,さらに間隙の壁を構成する5つの解剖面からも鑑別すべき腫瘍が発生する。

 今回われわれは血管網に覆われた巨大な傍神経節腫に対して,手術合併症を最小限に抑えて全摘出するには,どのような配慮が必要であるのかを検討したので報告する。

--------------------

欧文目次

ページ範囲:P.491 - P.491

〔お知らせ〕平成26(2014)年度 日本めまい平衡医学会夏期セミナー

ページ範囲:P.560 - P.560

 平成26年度の日本めまい平衡医学会夏期セミナーを下記の要綱で開催いたします。

 めまい・平衡障害に興味をお持ちの医師を始め,関係する多くの方々のご出席を歓迎いたします。

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.581 - P.581

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.582 - P.582

投稿規定

ページ範囲:P.584 - P.584

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.585 - P.585

あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.586 - P.586

 週刊医学界新聞をご存知でしょうか。医学書院が1955年に創刊し,医学・医療の最新トピックを伝え続けてきました。その前身は科学図書新聞で,1955年2月(153号)から醫學界新聞と改題されました。1955年生まれということは私と同い年。来年で60周年を迎えます。前身の科学図書新聞からは1昨年3000号を迎えたことになり,その際の金原優医学書院社長の言葉のとおり,約60年間一貫して医学・医療関連領域の最新のニュース,医療制度・医学教育制度の改革ならびに医学研究と医療技術の進歩,医学関連学会の動きなどをいち早く伝え,医学・医療関連領域の発展,進歩に大きな貢献をしてきました。今後も医学新聞としての先進的な役割を果たしていただきたいと思います。

 さて,今月号の特集は「鼻副鼻腔内視鏡手術Update」です。60年前の鼻副鼻腔手術といえば当教室の西端驥一教授がpolysinusectomyやpansinusectomyとして多くの副鼻腔手術法を発表していた頃ですが,当時は副鼻腔の単洞化と副鼻腔粘膜全剝離・除去を裸眼下に行うのがコンセプトでした。しかし,1970年頃から内視鏡が導入され,MesserklingerやStammbergerによって可及的に粘膜を保存するfunctional endoscopic sinus surgery(FESS)が提唱され,1990年頃からはESSとして副鼻腔手術の主流になりました。額帯鏡を用いて裸眼で行っていた頃を思い起こしますと本当に隔世の感があります。今回の特集では前頭洞炎を含めた慢性副鼻腔炎に対する内視鏡手術から,やや特殊な好酸球性副鼻腔炎や副鼻腔真菌症から鼻副鼻腔良性腫瘍や下垂体腫瘍,眼窩吹き抜け骨折まで臨床の現場で遭遇する対象疾患をほぼ網羅しています。副鼻腔疾患以外でもアレルギー性鼻炎や鼻涙管狭窄・涙道閉鎖,鼻出血など内視鏡手術の良い適応になる疾患も含めました。また,鼻副鼻腔内視鏡手術では常に合併症が問題となりますが,その回避法・対処法についても詳しく解説していただきました。本格的な手術書で学習することも重要ですが,手術前に術式を再検討したり,術中に手軽に確認するなど,本特集を手元において鼻副鼻腔内視鏡手術に関する最新情報を手軽に活用していただきたいと思います。自信をもってお勧めしますので,ぜひご一読ください。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?