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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科86巻8号

2014年07月発行

雑誌目次

特集① 特殊な外耳・中耳炎の治療

ページ範囲:P.595 - P.595

再発性多発軟骨炎

著者: 肥塚泉

ページ範囲:P.596 - P.601

POINT

●再発性多発軟骨炎は全身の軟骨や,プロテオグリカンを多量に含む組織(眼,心臓,血管,内耳など)が,再発性かつ進行性に侵される,原因不明の稀な疾患である。

●初発症状としては耳介軟骨炎が一番多い。次に頻度が高いのは鞍鼻,蝸牛・前庭神経障害である。

●診断基準には,McAdamら,DamianiとLevine,Michetらのものがある。

●治療法は,重症度に応じて行う。非ステロイド系抗炎症薬,経口ステロイド,ステロイドパルス療法,免疫抑制薬などが使用される。

●気道病変が生命予後を左右する。

悪性外耳道炎の診断と治療

著者: 山崎博司

ページ範囲:P.602 - P.607

POINT

●悪性外耳道炎は重症化すると頭蓋底骨髄炎に進展して,致死的になりうる疾患であり,早期に診断して抗菌薬の長期投与を行うことが肝要である。

●適切な外耳炎の治療を継続しているにもかかわらず病状が悪化する場合には,悪性外耳道炎を疑いCTおよび造影MRI検査を行うことが早期診断のカギとなる。

●悪性外耳道炎は特異的な検査結果が少なく,確定診断のためには病理組織学的検査でほかの疾患を除外することが不可欠である。

●起炎菌は緑膿菌の頻度が高いが,MRSAや真菌による悪性外耳道炎の報告が増加しており,起炎菌の同定および感受性検査が重要である。

●頭蓋底に炎症が波及した場合には,少なくとも6週間以上の抗菌薬投与が必要である。

●既存の治療法を行っても増悪の一途をたどる悪性外耳道炎の場合,抗菌薬動注が有効な可能性がある。

MRSA中耳炎

著者: 菅原一真 ,   山下裕司

ページ範囲:P.608 - P.612

POINT

●MRSA中耳炎の外来処置は,鼓室処置による耳漏の除去と生理食塩水による洗浄を頻回に行うことが重要である。

●治療期間を短縮するためにブロー液やムピロシン軟膏の使用が試みられているが,内耳障害などの副作用に注意が必要である。

●MRSA耳漏を認める中耳疾患の周術期には,感受性のある抗菌薬を適切に使用すること,人工材料を避けること,充塡術を避けることで,ある程度感染を制御できる。

●術後や術中にMRSAが検出された場合は治療に難渋することを経験するので,術後感染の早期発見が重要である。

中耳結核

著者: 山本和央 ,   小島博己

ページ範囲:P.614 - P.618

POINT

●中耳結核の臨床症状は近年,古典的な症状から変遷してきており,時に診断と治療が遅れてしまうことが問題となる。

●耳鼻咽喉科診療では,医療器具を媒体とした感染拡大の可能性があり,早期発見と治療による合併症予防や感染拡大防止がきわめて重要である。

●難治性の中耳炎に遭遇した場合,中耳結核も常に念頭におき診療にあたることが早期診断につながる。

●各種検査法を組み合わせて繰り返し施行し総合的に判断し,確定診断を得ることが重要である。

●初回標準治療は,INH,RFP,PZAにSMまたはEBを加えた抗結核薬多剤併用療法が推奨されている。

好酸球性中耳炎

著者: 松原篤

ページ範囲:P.619 - P.623

POINT

●耳漏や中耳貯留液がニカワ状を呈する慢性中耳炎や滲出性中耳炎に遭遇した際には,貯留液や耳漏の好酸球浸潤をチェックする必要がある。

●気管支喘息を合併する滲出性中耳炎患者では,好酸球性中耳炎を念頭に置く必要がある。

●好酸球性中耳炎の局所治療薬としてはステロイド薬が第一選択である。

●全身治療としては,好酸球性炎症抑制のための抗アレルギー薬の投与を行い,ステロイド薬の使用量を減らすことを心がける。

ANCA関連血管炎性中耳炎

著者: 立山香織 ,   鈴木正志

ページ範囲:P.624 - P.629

POINT

●難治性中耳炎とともに急速に進行する感音難聴を呈する疾患に遭遇した場合,考慮すべき鑑別疾患の1つとして「ANCA関連血管炎性中耳炎」がある。

●臨床像とともに診断基準案,診断アルゴリズムを呈示する。

●ANCA陰性であっても本疾患を否定することはできない。除外診断および全身検索を早期に進め,ステロイドによる診断的治療も考慮する。

特集② 緩和医療・支持療法を知る

ページ範囲:P.631 - P.631

緩和ケアの現在

著者: 大坂巌

ページ範囲:P.632 - P.636

POINT

●緩和ケアに関する考え方は発展してきている。

●がん患者に対して緩和ケアを提供することの意義が検証されてきている。

●緩和ケアのニードは,緩和ケア病棟から一般病棟・在宅・外来へと拡大している。

●緩和ケアは,基本的緩和ケアと専門的緩和ケアに分けて考えられるようになった。

●緩和ケアを提供するリソースは十分ではなく,特に専門家の育成が重要である。

疼痛管理の新標準

著者: 森田達也

ページ範囲:P.638 - P.643

POINT

●痛みは,すべてのがん患者の53%に認められる。

●痛みは,体性痛,内臓痛,神経障害性疼痛に分類される。

●がん疼痛に使用されるオピオイドは,現在のところ,コデイン,トラマドール,オキシコドン塩酸塩,モルヒネ塩酸塩,フェンタニルである。

●オピオイドの主要な副作用は,嘔気・嘔吐,便秘,眠気,せん妄である。

リエゾン精神医療の新標準

著者: 小早川誠 ,   町野彰彦 ,   山下英尚 ,   林優美 ,   山脇成人

ページ範囲:P.644 - P.648

POINT

●リエゾンでも多職種によるチーム医療が基本になっている。

●せん妄,適応障害,うつ病が多いが,認知症も問題になってきている。

●認知症などでは意思決定について倫理的配慮が必要である。

●コミュニケーションスキルを学習することが医師にとって重要である。

支持療法の新標準

著者: 榎田智弘 ,   田原信

ページ範囲:P.649 - P.655

POINT

●元来,頭頸部がんでは嚥下などの重要な機能が障害されやすい。加えて多様化する治療の影響も受けてさまざまな病態を呈する。これに伴い支持療法の開発が進んでいる。

●化学放射線療法およびセツキシマブ+放射線療法に対する支持療法には,栄養管理,感染管理,疼痛管理が重要である。また,セツキシマブによる皮膚毒性など特徴的な有害事象の管理も必要である。

●支持療法を充実させることは,患者のQOLの維持に加えて,治療のコンプライアンスの向上から予後の改善にもつながる。

●さまざまな領域で専門的な介入が必要であるため,支持療法は一人ではなく,集学的治療チームにて行うべきである。

●支持療法に関する正確な知識を基に,常に変わりうる病態に応じた適切かつ細やかな支持療法が必要とされる。

在宅緩和医療の現状と課題

著者: 梁勝則

ページ範囲:P.656 - P.663

POINT

●がんの在宅死は着実に増加しているが地域格差が課題である。

●在宅看取りの中心は在宅専門医(在宅看取り実践医)と外来診療,在宅看取りの双方に取り組むいわゆるミックス型開業医であるが,近年のトレンドは在宅専門医に傾きつつある。

●今後毎年2万人程度増加する死亡数の受け皿として上記2者では不十分であり,外来専従型開業医も在宅医療に参加して看取りの裾野を広げる必要がある。

●医師の消耗を防ぐためには,時間外・休日出動の頻度を極力抑えることが肝要であり,医師法20条の積極的活用と訪問看護ステーションとの円滑な連携が鍵となる。

書評

がん診療レジデントマニュアル第6版

著者: 小松嘉人

ページ範囲:P.664 - P.664

エビデンスが明確でわかりやすい診療マニュアル

 このたび,『がん診療レジデントマニュアル 第6版』に対する書評を書くようにご依頼をいただいた。おそらく,私は実はがん診療レジデントマニュアルの第1版の著者の一人であるので,先輩として後輩たちの作った第6版を厳しく評価せよ(笑)ということであろうと思われるので,お引き受けした。

 世の中には,たくさんのがんの本が出版され,どれを選んでよいのか,迷う先生方も多いのではないだろうか? 最近は随分減ってきたが,私がマニュアル作りに携わったころには,がんのテキスト本でも,著者の私見ばかりで,しっかりとしたエビデンスの記載のないものがたくさんあった。やはり記載された文書には,その考え,解説に至ったエビデンスの出典がしっかり記載されたテキスト本を選ぶべきである。そういう点から,本書を読むと,まさにその通りで事細かに,適切なエビデンスが選ばれており,著者の記載が適切であることが保証されている訳である。われわれが,抗がん剤という毒性の強い薬を患者に用いるときに,EBMの裏付けのない治療を施行することは絶対に避けねばならないが,本書を選択すればその心配はほぼないものと思われる。しかも,そのエビデンスも重要度が★によって判りやすく格付けがなされ,その推奨度が一目でわかるようになっている。

原著

顎下腺腫瘍の臨床ならびに病理学的検討

著者: 中村哲 ,   石永一 ,   大津和弥 ,   宮村朋孝 ,   竹内万彦

ページ範囲:P.665 - P.669

はじめに

 顎下腺腫瘍は,唾液腺腫瘍のなかで耳下腺腫瘍に次いで発生頻度が高い。その組織型は耳下腺同様多岐にわたり,悪性腫瘍については手術法・郭清範囲・予後について詳細に述べられた報告は少なく,治療法が確立していない。今回,われわれは過去17年間に当科で診断・加療を行った,顎下腺腫瘍について臨床的・病理学的に検討を行ったので報告する。

耳下部皮膚に自潰したワルチン腫瘍の1例

著者: 吉田亜由 ,   大月直樹 ,   米澤宏一郎 ,   四宮瞳 ,   川上史 ,   伊藤智雄 ,   丹生健一

ページ範囲:P.671 - P.674

はじめに

 ワルチン腫瘍は耳下腺,特に下極付近に好発し多形腺腫に次いで頻度の高い良性腫瘍である。喫煙歴のある中高年男性に好発し,発育は緩徐で,悪性化もほとんどないことから経過観察されることも少なくない。しかし,時に急に増大する場合や顔面神経麻痺をきたす場合が報告されている。

 今回われわれは耳下部皮膚に自潰し,出血のコントロール目的のため手術を要した耳下腺ワルチン腫瘍の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

初診時CTで診断困難であった小脳梗塞によるめまいの3症例

著者: 上浦大輝 ,   野村泰之 ,   戸井輝夫 ,   増田毅 ,   高根智之 ,   三浦正稔 ,   鴫原俊太郎 ,   古阪徹

ページ範囲:P.675 - P.680

はじめに

 めまいを訴える症例のなかには中枢病変が存在し,典型的な症状を呈さない症例にも小脳梗塞などの中枢性患者が存在することを常に念頭におき鑑別をすすめていくことが重要である。今回われわれが経験した,CTで判別しえなかった小脳梗塞によるめまいの3症例を文献的考察を加えて報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.591 - P.591

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.681 - P.681

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.682 - P.682

投稿規定

ページ範囲:P.684 - P.684

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.685 - P.685

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.686 - P.686

 また熱中症対策や紫外線対策の季節がやってきました。地球の裏側では現在まさにサッカーワールドカップが行われており,本誌が出るころには優勝国も決定していることでしょう。

 耳鼻咽喉科の専門医試験も今夏に定例どおり実施されますが,受験生にとってこれまでの本誌の増刊号や特集が必ず役に立つことと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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