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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科87巻1号

2015年01月発行

雑誌目次

特集 新しい治療機器

ページ範囲:P.9 - P.9

≪耳科≫

人工中耳・人工内耳

著者: 工穣

ページ範囲:P.10 - P.15

POINT

●外耳・中耳疾患および外耳道閉鎖症による伝音・混合性難聴に対して有効な人工中耳が開発されている。

●人工中耳は,骨導閾値が上昇した混合性難聴症例に対しても,特に高音域にて骨導閾値を超える良好な聴取閾値が得られる。

●高音急墜型または高音漸傾型感音難聴に対して,低周波数帯域は補聴器の音響刺激で,高周波数帯域は人工内耳の電気刺激で音を伝える残存聴力活用型人工内耳が保険適用となっている。

●残存聴力活用型人工内耳の埋め込み手術で残存聴力を温存するためには,正円窓膜からのアプローチで挿入する必要がある。

BAHA

著者: 野口佳裕

ページ範囲:P.17 - P.20

POINT

●BAHAは骨導インプラントの1つであり,チタン製インプラントとサウンドプロセッサーより構成される。

●2012年よりわが国でも保険適用となったが,一側性外耳道閉鎖症や一側性重度感音難聴は非適用である。

●手術法は専用のデルマトームを用いる方法とlinear incisionによる方法があるが,最近は後者が一般的に行われる。

●BAHAは快適な装用感,良好な音質などの利点を有するが,皮膚の炎症反応,インプラントの皮下への埋没,インプラント脱落などの術後合併症に留意が必要である。

耳鳴治療器付き補聴器

著者: 高橋真理子

ページ範囲:P.21 - P.24

POINT

●耳鳴治療器付き補聴器は,補聴器機能に耳鳴治療を目的としたサウンドジェネレーターが搭載された医療機器である。

●耳鳴治療における音響療法は,環境音楽,サウンドジェネレーター,補聴器により行われているが,治療に難渋する場合や機器選択に迷う場合,耳鳴治療器付き補聴器が有効な例がある。

●耳鳴治療機器を選択する場合,耳鳴苦痛度,難聴,抑うつ不安状態から総合的に判断すべきである。

●耳鳴治療器付き補聴器を用いて治療する場合も,同時に指示的カウンセリングを行うことが重要である。

●耳鳴治療器付き補聴器は耳鳴治療に用いる医療機関向けの医療機器であり,その処方,調整は医療行為になる。したがって,補聴器販売店が独自で処方,調整することはできない。

軟骨伝導補聴器

著者: 西村忠己 ,   細井裕司

ページ範囲:P.25 - P.29

POINT

●小型,軽量で,ヘッドバンドなどで圧着固定する必要がないため,装用感に優れている。

●補聴器であるためBAHAと異なり手術を必要としない。

●骨性の外耳道閉鎖症でも骨導補聴器と同等の効果が得られる。

●骨導デバイスと比較して審美性に優れている。

●外耳道閉鎖症の補聴手段の大きな選択肢の1つになる。

中耳加圧治療器メニエット

著者: 五島史行

ページ範囲:P.30 - P.34

POINT

●Meniettは中耳に加圧することで難治性メニエール病の治療を行うデバイスである。

●本治療では鼓膜チューブ留置が必要となる。

●治療効果は内リンパ囊手術,鼓室内ゲンタマイシン投与術と比較しても遜色がない。

●近年,日本発の治療法として鼓膜マッサージ器を用いた中耳加圧治療が報告された。本治療では,鼓膜チューブ留置が必要ない。

●いずれの治療法も保険適応ならびに厚生労働省の認可を受けておらず、倫理委員会の承認のもと,行う必要がある。

中耳内視鏡手術機器

著者: 二井一則 ,   欠畑誠治

ページ範囲:P.35 - P.38

POINT

●死角が少なく広い視野が得られる経外耳道的内視鏡下耳科手術では高解像度のカメラシステムが必須である。

●基本的に片手操作となるため,吸引と剝離,吸引と骨削開が同時に行える新しい機器が有用である。

●後鼓室など死角となりやすい部位には器具も届きにくく,内視鏡手術用に開発された器具が有効である。

●電動のpowered instrumentsは手術操作に有効であるが,従来の手術器具も活用して上手く使い分けることにより,より安全な手術が行える。

≪鼻科・口腔咽頭≫

副鼻腔高圧洗浄機ハイドロデブリッダー

著者: 朝子幹也

ページ範囲:P.39 - P.42

POINT

●ハイドロデブリッダーはメドトロニック社製の副鼻腔手術用の高圧洗浄機である。

●先端の角度が左右に変わり,吸引機能もある上顎洞用と,細径で角度が固定され,吸引機能のない前頭洞用がある。ハンドピース部分はディスポーザブルである。

●真菌塊や好酸球性ムチンの除去に非常に有用である。

●Balloon sinuplastyとの組み合わせなど,鼻内内視鏡手術の幅を広げるツールである。

マイクロデブリッダーによる下鼻甲介粘膜手術

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.43 - P.46

POINT

●マイクロデブリッダーにタービネートブレードを装着すると,鼻腔通気の改善を目的とした下鼻甲介粘膜下切除術が行える。

●タービネートブレードを用いることで,下鼻甲介粘膜表層を温存して粘膜下組織のみ切除する。

●術後粘膜の治癒過程が迅速かつ円滑で,また高い臨床効果も期待できる。

●手術のポイントは,ブレード先端で粘膜下のポケットをしっかり作製し,十分量の粘膜下組織を切除することである。

マイクロデブリッダー法によるアデノイド切除

著者: 吉崎智貴 ,   原渕保明

ページ範囲:P.47 - P.50

POINT

●従来のアデノイド切除術は簡便であるが切除の精度は低い。

●内視鏡とマイクロデブリッダーを用いたマイクロデブリッダー法はより完全な切除が可能となる。

●マイクロデブリッダー法の手術効果は高く,特に低年齢児の手術においてきわめて有用である。

●手術コストが今後の課題である。

コブレーターによる扁桃摘出術

著者: 守本倫子

ページ範囲:P.51 - P.55

POINT

●コブレーターはラジオ波装置であり,組織に加える熱は45〜85℃と低温である。

●従来法と比較して熱損傷と組織の挫滅が少ないため術後疼痛が軽減する。

●術後出血も従来法とほとんど変わらないが,電気メスよりは止血力が小さい。

●ラーニングカーブがあるとされ,最初は慣れないと筋層に切り込むなど難しいときがある。

コブレーターの外来診療における使用

著者: 笠井創

ページ範囲:P.57 - P.61

POINT

●高周波凝固術は耳鼻咽喉科領域のさまざまな疾患に対して応用されている。

●コブレーターには下鼻甲介,扁桃,いびき治療などに適応する特殊電極が用意されている。

●下鼻甲介のコブレーションによる鼻閉改善効果は強力で効果が持続する。

●扁桃肥大や扁桃膿栓症に対して,コブレーターの口蓋扁桃縮小治療が有効である。

●いびき症の治療として,口蓋扁桃や舌根扁桃肥大の凝固手術,軟口蓋咽頭形成手術などにコブレーターは有用である。

唾液腺内視鏡

著者: 崎谷恵理 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.63 - P.66

POINT

●唾液腺内視鏡は唾石症や唾液腺管狭窄症に有効な低侵襲な術式である。

●内視鏡と口内法や外切開と併せたcombined approachがある。

●唾液腺内視鏡は急性炎症には禁忌である。

●唾液腺内視鏡のみで摘出できない場合もあるため,術前の精査とインフォームド・コンセントが必要である。

●2014年4月より唾液腺内視鏡加算が適用となった。

≪頭頸部≫

経皮的気管切開キット

著者: 齋藤康一郎 ,   宇野光祐

ページ範囲:P.67 - P.72

POINT

●わが国では,GWDF法,CBR法の2つの方法によるキットが入手可能である。

●経喉頭的に気管内挿管されている成人患者が対象である。

●緊急気道確保は適応外(禁忌)である。

●気管支鏡により声門下から気管の内腔を明視下に施術する。

プロヴォックス

著者: 福島啓文

ページ範囲:P.73 - P.79

POINT

●再建症例は,二期的にシャント形成を行うことを原則としている。

●初回挿入時に使用するプロヴォックスVegaパンクチャーセットは,ダイレーターでの装着が可能となり,シャント孔を大きく開けすぎることがなく脇漏れのトラブルを防止することが可能となった。

●プロヴォックスVegaスマートインサーターでの交換により,プロヴォックスをキット内にセットする必要がなく,短時間で安全に交換が可能となった。

●発声困難症例に対し,適切に対処をすることで音声獲得率を向上させている。

FKリトラクター,FK-WOリトラクター

著者: 冨藤雅之 ,   塩谷彰浩

ページ範囲:P.80 - P.84

POINT

●FKリトラクター,FK-WOリトラクターは広く咽喉頭展開ができる手術機器である。

●拡張型の直達鏡であり直の鉗子類を使うことが可能である。

●先端のブレードは可変式であり口腔,中咽頭,下咽頭,喉頭と広範囲を観察することができる。

●経口的咽喉頭腫瘍切除術やロボット支援手術などに有用なデバイスである。

Colorado MicroDissection Needles

著者: 古田康

ページ範囲:P.85 - P.89

POINT

●コロラドニードルはチップ先端が5μmときわめて鋭利なモノポーラ針である。

●止血能に優れ,低いパワー設定で切開が行えるので周囲組織障害を起こしにくい。

●さまざまな先端の形状と長さ(有効長2〜17.8cm)のバリエーションがあり,耳鼻咽喉科・頭頸部外科の各種手術に利用できる。

エナジーデバイス

著者: 酒井昭博 ,   大上研二

ページ範囲:P.91 - P.95

POINT

●近年,頭頸部外科領域において新しいエナジーデバイスの使用機会が増加している。

●デバイスを最大限に活かすため,その原理,特性を理解し使用する必要がある。

●安全なシーリングには組織に緊張をかけないことが重要である。

●どのデバイスも熱が発生するため,重要臓器周囲の使用には注意が必要である。

ネオベール(創傷被覆材)

著者: 安里亮

ページ範囲:P.97 - P.101

POINT

●ネオベールはポリグリコール酸よりなる素材で,加水分解され吸収・代謝される。

●柔らかく・伸縮性をもつ不織布で組織の運動や凹凸に追従できる。

●フィブリン糊との相性がよく,創部被覆が容易にできる。

●フィブリン糊とともに創部被覆することで出血・疼痛・瘢痕拘縮などが軽減でき,有用な被覆材である。

書評

解剖と正常像がわかる! エコーの撮り方 完全マスター

著者: 遠田栄一

ページ範囲:P.90 - P.90

技術習得に必要な知識を網羅超音波検査ビジュアル入門書

 超音波検査の第一人者である種村正先生の熱き思いが伝わる教科書が誕生しました。読み進めていくうちに,いやはや驚きました。初学者の入門書のかくあるべき姿がここにあったからです。

 超音波検査は非侵襲的かつ短時間で多くの情報を得ることができるため,日常診療では必須の検査法となっています。しかし,本法は全く臓器の見えない体表からプローブを当てて,ある目印を頼りに検査担当者が自らの手で異常を探すという技術を必要とする検査法です。この技術をマスターするためには解剖学や病態生理学はもちろん,プローブの当て方,装置の調整法などを系統だてて覚えていくことが必要となりますが,指導者のいない施設では難しいと言わざるを得ません。

緩和ケアエッセンシャルドラッグ 第3版

著者: 元雄良治

ページ範囲:P.102 - P.102

著者の知識と経験を生かし,臨床に役立つ要点をまとめたポケットブック

 本書を持つと,そのコンパクトなサイズと適度な厚さのため,すぐ手になじむ。

 まず,「本書の構成と使用法」が記され,それに続く「WHO必須医薬品モデル・リスト」「症状マネジメントの原則」「症状マネジメントの概説」「エッセンシャルドラッグ」から本書は構成されている。「WHO必須医薬品モデル・リスト(WHO Model Lists of Essential Medicines)」は最新の18版が2013年に公表されている。有効性・安全性・経済性を考慮し,主に開発途上国での最小限必要な医薬品が収録されている。特記すべきは,これまで腫瘍学のセッションに含まれていた緩和ケア関連薬剤が,「痛みと緩和ケアのための薬」として独立し,しかも成人用の30セクションのうちの2番目に位置付けられた点である。本書はこのリストを参考に,わが国の現状に適合させて選ばれた薬剤を扱っている。実際,「エッセンシャルドラッグ」の章には51成分(56薬剤)がリストアップされている。

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欧文目次

ページ範囲:P.5 - P.5

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.103 - P.103

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.104 - P.104

投稿規定

ページ範囲:P.106 - P.106

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.107 - P.107

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.108 - P.108

 2014年はさまざまな出来事がありましたが,あっという間の1年と感じられた先生も多いことと思います。年齢的な感覚からくるものか,取り巻く環境・社会の変化が激しいことによるものか,あるいはその両者によるものなのかもしれません。

 12月には未来に向けてハヤブサ2号が打ち上げられました。この計画に携わった多くの設計者・技術者、事務的・経済的支援に従事した人、細かい部品作製にかかわった職人の英知の結晶といえます。テレビでネジをはじめとする材料・部品を手作業でつくる町工場が紹介されていましたが,まさにクールジャパンの真骨頂でしょう。日本の匠の技が,われわれの伝統として次世代に続いていくことが期待されます。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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