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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科87巻12号

2015年11月発行

雑誌目次

特集 これだけは知っておこう—鼻出血への対応法

ページ範囲:P.963 - P.963

鼻腔血管の解剖

著者: 近藤健二 ,   倉澤由香里

ページ範囲:P.964 - P.970

POINT

●鼻腔に分布する血管は顎動脈の枝である蝶口蓋動脈と眼動脈の枝である前後篩骨動脈が主なものである。

●蝶口蓋動脈は鼻粘膜最大の血流供給源で,蝶口蓋孔から鼻腔に入り外側後鼻動脈と中隔後鼻動脈に分かれる。

●キーゼルバッハ部位は動静脈の吻合が比較的浅い位置で密に分布し,鼻出血の好発部位である。

●動脈性鼻出血の好発部位は,キーゼルバッハ部位,嗅裂前方,中鼻道後方,下鼻道後方の4か所である。

《診断・要因》

鼻出血の内視鏡診断

著者: 鈴木元彦 ,   中村善久

ページ範囲:P.972 - P.977

POINT

●鼻出血の内視鏡診断のためには鼻腔の血管系などの解剖を熟知する必要がある。

●鼻出血の診断のためには原因となるさまざまな疾患について理解している必要がある。

●鼻出血の診察において重要なことは患者の状態の把握,鼻出血の原因診断と出血部位の確認である。

●内視鏡を用いることによって鼻腔内や上咽頭の詳細な観察が可能となる。

●鼻出血の診察において内視鏡診断は非常に重要である。

●内視鏡診断によって鼻出血の局所原因と出血部位の診断が可能となる。

●特に出血量が多い鼻腔方向からの出血において内視鏡診断は必須である。

抗凝固薬

著者: 野村和弘

ページ範囲:P.978 - P.981

POINT

●鼻出血患者のうち抗血栓薬を服用している患者は約3割である。

●鼻出血に対する処置は薬剤内服の有無にかかわらず,出血点の把握と焼灼凝固である。

●止血が得られれば抗血栓薬は継続できる。

●抗血栓薬を休薬すると血栓のリスクが増大する。

●将来に備えてかかりつけ医に抗血栓薬休薬の可否を確認しておく。

●緊急の際には凝固能の管理について救急医にコンサルトする。

凝固能異常

著者: 都築建三

ページ範囲:P.982 - P.988

POINT

●止血機構は,血小板,凝固系,線溶系,血管の要素からなり,いずれの障害によっても出血傾向をきたす。

●止血に難渋する鼻出血は,全身疾患の部分症状である可能性がある。

●両側からの鼻出血,全身状態不良(高熱,全身倦怠感など)例には,出血傾向を考える。鼻処置を行った直後から多量の鼻出血が生じて,重篤な全身疾患が発見されることもある。

●血小板数が正常など,一般の止血機能スクリーニング検査では発見できない疾患が潜在する。

●全身疾患(血液疾患など)が疑われれば,速やかに内科専門医へコンサルトする。

妊娠と鼻出血

著者: 山内一真

ページ範囲:P.990 - P.995

POINT

●妊婦の約20%で鼻出血が認められる。

●妊娠による循環血液量の増加,高血圧といった全身性要因を背景に性ホルモンの作用による鼻粘膜の充血,鼻粘膜血管の拡張といった局所要因が加わるため,鼻出血をきたしやすくなる。

●鼻出血を繰り返す場合には血管腫,特に妊娠性肉芽腫を念頭におく必要がある。

●妊婦に対する放射線検査の際は,受胎9〜15週が最も胎児の放射線被曝による影響を受ける時期であることを考慮する。

●妊婦に対するヨード造影剤,ガドリニウム造影剤の投与は禁忌ではないが,胎児に対するリスクよりも母体が得られるメリットのほうが大きい場合のみ使用すべきである。

《疾患》

遺伝性出血性毛細血管拡張症関連鼻出血

著者: 井之口豪 ,   髙原慎一 ,   藤尾久美 ,   丹生健一

ページ範囲:P.996 - P.1002

POINT

●常染色体優性遺伝,頻度は1/5,000〜8,000人とされ,家族歴の聴取が重要である。

●臨床的な診断基準と重症度分類があり,2015年7月から厚生労働省の指定難病に認定された。

●動静脈奇形を合併することが多く,自覚症状がなくても肺と脳のスクリーニングを勧めるべきである。

●鼻出血は難治性再発性であり,重症度別に治療法を検討する。

●電気凝固を繰り返すと鼻中隔穿孔を生じ,さらに止血が困難になることが多い。

血瘤腫

著者: 岡野光博

ページ範囲:P.1003 - P.1007

POINT

●片側性鼻出血の原因として留意すべき疾患である。

●MRIでは高信号域と低信号域が混在し,特に辺縁部での殻状低信号域が特徴的である。

●造影CTでは部分的で不均一な造影効果がみられ,真菌球症でみられる単純CT像のような所見となる。

●ほとんどは上顎洞に発生するが,蝶形骨洞や前頭洞あるいは鼻腔にも生じる。

●抗凝固薬・抗血小板薬の服用などの出血傾向が血瘤腫形成に関与する可能性が示唆されている。

●根治的には外科的切除が選択され,近年では経鼻腔的なアプローチでの成功例が増加している。

若年性血管線維腫

著者: 朝子幹也

ページ範囲:P.1008 - P.1010

POINT

●若年性鼻咽腔血管線維腫は思春期の男性に多い比較的稀な良性腫瘍で,鼻閉と鼻出血が主訴である。

●血流が豊富で安易な外来での生検は回避すべきである。

●手術治療が第一選択である。

《止血法》

初期対応のピットフォール—小児の鼻出血を含めて

著者: 能田淳平 ,   佐伯忠彦 ,   羽藤直人

ページ範囲:P.1012 - P.1017

POINT

●鼻出血は耳鼻咽喉科の日常診療においてよく遭遇する疾患であり,患者の全身状態を把握し迅速に行うことが重要である。

●鼻出血の初期対応の際,患者の緊張や不安,疼痛を軽減することに努める必要がある。

●小児では鼻出血の処置に際し協力が得られにくいことが多く,反復する鼻出血では全身性疾患の潜在も考慮し,あわせて口腔内や皮膚の病変がないかも配慮する。

●鼻出血止血処置後の再出血の可能性を患者や家族に説明し,緊急時の止血方法を指導しておくべきである。

内視鏡下鼻副鼻腔手術後止血

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.1018 - P.1023

POINT

●鼻副鼻腔内視鏡手術の術後には止血処置が必要である。

●最も確実な方法は圧迫止血と血管の焼灼・凝固である。

●パッキングの目的は止血と創傷治癒促進である。

●止血資材は吸収性と非吸収性に大別される。

●アルギン酸塩被覆材は最も優れた止血資材の1つである。

蝶口蓋動脈凝固術

著者: 阿部靖弘 ,   太田伸男 ,   新川智佳子

ページ範囲:P.1024 - P.1027

POINT

●鼻腔後方からの出血は,鼻中隔彎曲や鼻粘膜腫脹などにより正確な出血部位が同定できない場合がある。

●出血に対する後鼻タンポンは,止血効果より誤嚥や気道閉塞の防止に重要である。

●難治性出血例に超音波凝固術を用いた内視鏡下蝶口蓋動脈凝固術が有効である。

●蝶口蓋動脈凝固術に先だって,ワーキングスペースの確保のため鼻中隔矯正術,粘膜下下鼻甲介骨切除術を行う。

●蝶口蓋動脈凝固術は低侵襲であるため,出血性基礎疾患例,抗血小板薬・抗凝固薬内服例も適応となる。

Over gauze coagulation

著者: 安岡義人

ページ範囲:P.1028 - P.1034

POINT

●電子内視鏡(通常光・NBI)で鼻出血の血管病態を観察し,血管形態により6型に分類する。

●OGCの方法・コツ・注意点について型分類別に述べる。

●OGCによる術後創傷治癒経過を呈示し,適切な焼灼を考える。

●OGCの分類別適応と適応外症例の止血法について述べる。

●鼻出血の止血戦略についてまとめる。

原著

永久気管孔内部の気管粘膜炎に対してグリセリン加ネブライザー療法が有効であった1症例

著者: 田所慎 ,   吉福孝介 ,   吉永里香子 ,   西元謙吾 ,   松崎勉 ,   塩谷彰浩

ページ範囲:P.1035 - P.1039

はじめに

 下咽頭癌や食道癌に対する咽喉食摘術後や喉頭全摘術後の永久気管孔内部の気管粘膜は,炎症をきたして痂疲が多量に付着し,術後の気道管理の妨げとなることをしばしば経験する1,2)。今回われわれは下咽頭癌に対して咽喉食摘術を施行し,永久気管孔内部に急性気管粘膜炎をきたして多量の痂疲が付着し,当初治療に難渋したが,グリセリン加ネブライザー療法を施行して軽快した1症例を経験したので報告する。

Actinomyces odontolyticusによる急性型頸部放線菌症の1例

著者: 佐伯忠彦 ,   大河内喜久 ,   佐藤恵里子 ,   能田淳平 ,   渡辺太志

ページ範囲:P.1041 - P.1045

はじめに

 頸部放線菌症は口腔内に常在する嫌気性グラム陽性桿菌のActinomyces属による感染症である。主な原因菌はActinomyces israeliiであり,慢性型の経過を示す例が多いが,稀にほかの菌種による急性型の頸部放線菌症がみられる1〜3)。今回われわれは,Actinomyces odontolyticusが原因菌となった急性型頸部放線菌症の1例を経験したので報告する。

小児良性発作性めまいの2症例

著者: 酒井昇 ,   宮﨑友香 ,   永沼久夫 ,   白取謙一 ,   山地誠一 ,   今石寛昭 ,   吉澤朝弘 ,   小市健一

ページ範囲:P.1047 - P.1051

はじめに

 めまい患者は一般に高齢者に多く,小児では少ない。小児のめまいでは患児がめまいの性状を正確に表現することができないため,また平衡検査などの検査も十分に協力が得られないため,診断に苦慮することが多い。これまで小児めまいの原因は,教科書的に起立性調節障害,頭痛に関連しためまい,心因性めまいなどが大部分であるとされてきた1)。しかしなかには脳腫瘍などの重大な疾患が潜んでいる可能性もあり,診断には注意を要する。

 近年,小児良性発作性めまい(benign paroxysmal vertigo of childhood:BPV)が小児めまいの原因として注目され,報告されるようになってきた。われわれは最近,小児良性発作性めまいの2例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.959 - P.959

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1053 - P.1053

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.1054 - P.1054

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.1058 - P.1058

 例年に比べ残暑は厳しくなかったように感じましたが,あとがきを書いている9月はさまざまな出来事がありました。明るいニュースの代表は南アフリカを撃破した日本ラグビーの快挙,その強さと執念には頭が下がる思いです。一方で台風や大雨,火山の噴火や地震などの災害も続いています。日ごろから個人個人で備えをしておきたいものですが,日常の生活に追われているとどうしても手薄になってしまうのも事実です。あらためて自分自身で身を守ることの大切さを認識している毎日です。さて,9月には,わが耳鼻咽喉科は日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会,日本口腔咽頭科学会の開催,耳鼻咽喉科医も少ないながらも参加した日本シェーグレン症候群学会が開催され,全学会に参加された先生は大変お疲れさまでした。さらに本誌11月号が発行されるまでには鼻科学会,耳科学会,音声言語,気管食道科学会などが開催される予定です。こちらも多くの先生方が熱意と信念をもって学術講演会の準備に臨まれることと思います。

 本誌の特集企画は日常診療にはもちろん,専門医の試験の準備としても意義あるものと考えています。ぜひ若い先生にも熟読をお薦めします。11月号の特集は「これだけは知っておこう鼻出血への対応法」です。いつの時代にも必ず教科書やテキストに載るテーマですが,耳鼻咽喉科医にとって必須のテーマでもあり,常に知識を整理しておく必要があります。原著は3つの論文掲載です。一つ目は永久気管孔をもつ患者さんの気管内の痂皮形成への対応を示したもので,同じ経験をしている先生方に役立つ情報となっています。二つ目は,急性型の頸部放線菌症の症例報告で,めずらしい疾患です。知識として放線菌症に起因する疾患の存在も常に念頭に置いておきたいものです。三つ目は,小児良性発作性めまいに関する論文でBPPVとも異なる疾患ですが,本疾患の経験の少ない施設が多いと考えられますのでぜひこれも押さえておきたい疾患です。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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