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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科87巻2号

2015年02月発行

特集 膿瘍—マネジメントとピットフォール

耳性頭蓋内膿瘍

著者: 中川尚志1

所属機関: 1福岡大学医学部耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.118 - P.120

文献概要

POINT

●耳性頭蓋内合併症の頻度は低いが,致死的となりうる合併症のため,常に念頭においておかなければならない。

●真珠腫性中耳炎でほかの中耳炎に比べて頭蓋内合併症の頻度が高い。

●耳性頭蓋内合併症は側頭葉膿瘍が最も多く,髄膜炎や小脳膿瘍が続く。

●耳性頭蓋内合併症は早期の診断および適切な治療が肝要である。

●中耳炎の患者に発熱,多量の耳漏があり,頭痛,肩や首がつった感じを訴えたときには頭蓋内合併症を疑うべきである。重篤感が強い。

●項部硬直やケルニッヒ徴候,ブルジンスキー徴候など髄膜刺激症状がある場合,すみやかに専門医に相談する。

●精神障害や社会への不適合が誘因となる。

●広い抗菌スペクトラムをもった抗菌薬で髄液移行のよいものを選択する。

●耳内病変に対しては耳科手術を行う。血行性感染が多く,次に経迷路性である。頭蓋窩に骨欠損を認めるときにはドレーン目的で周囲を広範に露出することがある。

●一期的に鼓膜形成を行うか,ドレーンとして穿孔を残し,段階手術とするかは,中耳病変の活動性で判断する。

●脳外科に穿頭ドレナージを先に行うか,耳科手術を先にするかは,議論があるところであるが,どちらを先に行っても生命予後は変わらない。全身状態や神経症状の臨床像や社会的事情によって判断する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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