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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科87巻2号

2015年02月発行

原著

盲聾の高齢者に対する人工内耳術後の聴覚再獲得とQOLの変化

著者: 永井遼斗1 南修司郎1 大友章子1 榎本千江子1 藤井正人2 加我君孝23

所属機関: 1独立行政法人国立病院機構東京医療センター耳鼻咽喉科 2独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター 3国際医療福祉大学三田病院耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.165 - P.167

文献概要

はじめに

 盲聾は視覚聴覚二重障害とも呼び,その原因はさまざまである。CHARGE症候群や先天性風疹症候群,先天性サイトメガロウイルス症候群,Usher症候群などが原因として挙げられる1)が,原因不明であることも多い。これら盲聾患者はわが国では22,000人いるとされる2)。現在では患者会などが徐々に増えてきているが,外部とのコミュニケーションの困難さゆえに,社会から孤立している患者も少なくない。2007年の東京都の調査によれば,東京都内で推定2,200人の盲聾者がいるとされるが,そのうち東京都が身体障害者手帳を発行している患者は821人(約37%)に留まっている3)

 盲聾者のコミュニケーションの方法には,点字筆記・指点字・触点字などが以前より使用されていたが4),最近では聴覚の再獲得を目的とした人工内耳がQOLの向上にも効果的であるという報告がある5)。日本耳鼻咽喉科学会が発表している成人への適応基準は,年齢18歳以上・90dBHL以上の高度難聴・補聴器装用効果が乏しい者とされており,年齢の上限は定められていない。成人の人工内耳埋め込み症例は50〜60代で多いが,近年では65歳以上の高齢者症例も増加傾向にあり,わが国やアメリカでは80歳代の成功例も報告されている6)

 今回われわれは72歳の盲聾患者に人工内耳埋め込み術を行い,良好な聴覚再獲得とQOL改善がみられた1例について報告する。

参考文献

1)加我君孝・他:新生児・幼少児の耳音響放射とABR.加我君孝(編).診断と治療社,東京,2012,p123
2)厚生労働省:平成18年身体障害児・者実態調査結果
3)東京都:平成15年度 東京都社会福祉基礎調査
4)井上理絵・他:盲聾患者の人工内耳埋め込み術施行前のコミュニケーション手段の確立.Audiology Japan 53:421-422,2010
5)Damen GW, et al:Quality of life and cochlear implantation in usher syndrome type I. Laryngoscope 116:723-728, 2006
6)Sanchez-Cuadrado I, et al:Is there an age limit for cochlear implantation? Ann Otol Rhinol Laryngol 122:222-228, 2013
7)Cloutier F, et al:OCTO“Outcomes of Cochlear Implant for the Octogenarians:Audiologic and Quality-of-Life”. Otol Neurotol 35:22-28, 2014
8)Takasaki K, et al:Cochlear implantations in visually impaired patients. Eur Arch Otorhinolaryngol 264:363-367, 2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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