文献詳細
原著
盲聾の高齢者に対する人工内耳術後の聴覚再獲得とQOLの変化
著者: 永井遼斗1 南修司郎1 大友章子1 榎本千江子1 藤井正人2 加我君孝23
所属機関: 1独立行政法人国立病院機構東京医療センター耳鼻咽喉科 2独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター 3国際医療福祉大学三田病院耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.165 - P.167
文献概要
盲聾は視覚聴覚二重障害とも呼び,その原因はさまざまである。CHARGE症候群や先天性風疹症候群,先天性サイトメガロウイルス症候群,Usher症候群などが原因として挙げられる1)が,原因不明であることも多い。これら盲聾患者はわが国では22,000人いるとされる2)。現在では患者会などが徐々に増えてきているが,外部とのコミュニケーションの困難さゆえに,社会から孤立している患者も少なくない。2007年の東京都の調査によれば,東京都内で推定2,200人の盲聾者がいるとされるが,そのうち東京都が身体障害者手帳を発行している患者は821人(約37%)に留まっている3)。
盲聾者のコミュニケーションの方法には,点字筆記・指点字・触点字などが以前より使用されていたが4),最近では聴覚の再獲得を目的とした人工内耳がQOLの向上にも効果的であるという報告がある5)。日本耳鼻咽喉科学会が発表している成人への適応基準は,年齢18歳以上・90dBHL以上の高度難聴・補聴器装用効果が乏しい者とされており,年齢の上限は定められていない。成人の人工内耳埋め込み症例は50〜60代で多いが,近年では65歳以上の高齢者症例も増加傾向にあり,わが国やアメリカでは80歳代の成功例も報告されている6)。
今回われわれは72歳の盲聾患者に人工内耳埋め込み術を行い,良好な聴覚再獲得とQOL改善がみられた1例について報告する。
参考文献
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