耳鼻咽喉科・頭頸部外科87巻2号

2015年02月発行

原著

ステロイド声帯内注入が有効であった声帯後部癒着の1例

著者： 井上麻美¹ 岡本康太郎¹ 永尾光¹ 豊田健一郎¹ 信原健二² 上田大³

所属機関： ¹京都市立病院耳鼻咽喉科 ²京都府立医科大学附属北部医療センター耳鼻咽喉科 ³洛和会丸太町病院耳鼻咽喉科

ページ範囲：P.169 - P.171

文献概要

はじめに

　化学熱傷とは，さまざまな化学薬品によって引き起こされる熱傷様の皮膚・粘膜障害である。化学的腐食剤による喉頭損傷は，喉頭の化学熱傷ともいわれる。今回，化学熱傷により声帯後部癒着症をきたした症例を経験し，副腎皮質ステロイド（以下，ステロイドと略す）声帯内注射を行い，良好な結果を得たので文献的考察を加えて報告する。

参考文献

1）金沢英哲：ステロイド声帯内注射．音声言語医学51：179-182，2010

2）鈴木真輔・他：発症に塩素系洗浄剤の関与が疑われた声門上狭窄の一症例．喉頭19：21-24，2007

3）Cohen I, et al：Wound Healing, WB Saunders, Philadelphia, 1992

4）渡辺　皓・他：創傷治癒の生理学，創傷治癒の必須知識．エルゼビア・ジャパン，東京，2008，pp81-117

5）柳原尚明・他：副腎皮質ホルモン剤（プレドニン）による慢性炎症性喉頭疾患の治療．耳鼻臨床56：16-20，1963

6）柳原尚明・他：副腎皮質ホルモン剤デキサメサゾン（デカドロン）の声帯内注射療法．耳鼻臨床57：38-42，1964

7）平野　実・他：喉頭の炎症性疾患に対する喉頭内リンデロン局所注射について．耳鼻11：118-123，1965

8）Bouchayer M, et al：Microsurgery for benign lesions of vocal folds. Ear Nose Throat J 67：446-466, 1988

9）草間光俊・他：Triamcinolone acetonide筋注後の血中濃度及び尿中排泄率に関する研究．日内分泌会誌46：654-658，1980