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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科87巻3号

2015年03月発行

雑誌目次

特集 痛みの鑑別診断

ページ範囲:P.203 - P.203

耳が痛い

著者: 松延毅

ページ範囲:P.204 - P.210

POINT

●耳痛には耳(側頭骨)に原因のある耳原性耳痛と関連痛(非耳原性耳痛)とがある。

●問診として,①既往歴,②痛みの部位,③痛みの性状,④随伴症状,⑤全身症状などが重要である。

●関連痛では頭頸部悪性腫瘍の可能性を念頭に置く必要がある。

●神経痛を疑う場合も,まず器質的疾患を除外することが重要である。

顔が痛い

著者: 松根彰志

ページ範囲:P.212 - P.215

POINT

●「顔が痛い」を訴える疾患は,耳鼻咽喉科以外に脳神経外科,口腔外科,皮膚科,時には精神科の疾患など多岐にわたる。

●耳鼻咽喉科領域では,副鼻腔疾患,症候性も含めた三叉神経痛,頭頸部腫瘍(手術)などが主な原因疾患である。

●治療としては,原因除去が最も重要であるが,特に神経因性や心因性の場合,治療に難渋し,対症療法的な薬物治療に頼ることも少なくない。

●薬物治療としては,NSAIDs,カルバマゼピン,ステロイド,時には抗うつ薬が用いられる。神経ブロックが有効な場合もある。

口の中が痛い

著者: 草間薫 ,   山村幸江 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.216 - P.221

POINT

●口の中が痛いというときの痛みの部位としては,口唇,頬粘膜,歯肉,口蓋,舌,口腔底が考えられる。

●視診上は明らかな病変がないものの痛みを訴える症例では,診断があいまいにならないよう注意を要する。

●口内炎,口腔潰瘍,舌炎は局所所見が観察できるが原因は多岐にわたっており,内科疾患との鑑別を要するものも多い。

●再発性アフタ,難治性口腔咽頭潰瘍,舌痛症の診断は,ほかの疾患を鑑別したうえでの除外診断となる。

●舌咽神経痛は,食事,会話,顔面への接触などにより誘発される短時間の激しい痛みが特徴である。

●First bite syndromeは,術中の交感神経障害による手術合併症のみならず,特発性のもの,耳下腺・副咽頭間隙の悪性腫瘍の1症状であるものも存在する。

のど(咽頭)が痛い

著者: 櫻井一生

ページ範囲:P.223 - P.228

POINT

●咽頭痛を訴える患者の診断にあたっては,咽喉頭疾患だけではなく周囲臓器疾患や全身疾患を念頭に置き鑑別診断を行う必要がある。

●難治性咽頭潰瘍や咽喉頭結核,咽頭梅毒,咽頭クラミジアなど特殊な炎症も,頻度は低いが忘れてはならない疾患である。

●急性喉頭蓋炎や扁桃周囲膿瘍,咽後膿瘍など急速に進行し全身状態が悪化する危険性がある疾患に対しては,早期の診断と適切な処置が必要である。

●悪性疾患を見逃さないように注意が必要である。特に嚥下時痛が持続する場合は,上部消化管を含めた咽喉頭,頸部の精査が必要である。

●咽頭異物が疑われる場合,視診上異物が確認できなくても咽頭痛,嚥下時痛が持続する場合は,異物が迷入している可能性があるためCT検査を行うべきである。

くびが痛い

著者: 倉富勇一郎 ,   嶋崎絵里子 ,   峯崎晃充

ページ範囲:P.230 - P.235

POINT

●くびの痛みのうち耳鼻咽喉科・頭頸部外科医の診療の対象となるのは,主に前頸部,側頸部,顎下部の痛みである。

●前頸部,側頸部,顎下部の痛みの原因疾患の多くは甲状腺,リンパ節,顎下腺,先天異常に由来する感染・炎症性疾患であり,そのほかに非感染性の神経筋骨系疾患がある。

●くびの痛みを訴える患者の診療においては,第一に感染・炎症性疾患を想定し,問診,視診,触診で原因臓器を同定し,血液検査や画像診断などで病態の把握を進める。

●感染・炎症性疾患のうちで急性化膿性炎症性疾患の診断は比較的容易であるので,むしろ非化膿性の炎症性疾患に関する理解を深めておく必要がある。

●感染・炎症性疾患が否定されれば,稀な疾患であるが非感染性の神経筋骨系疾患の有無について診断を進めていく。

●くびの痛みの鑑別診断を適切に行うためには,原因となるさまざまな疾患の理解が必要である。

原著

鼻腔内に萌出した逆生歯牙の2例

著者: 窪田雄一 ,   藤尾久美 ,   井之口豪 ,   長谷川信吾 ,   山崎隆 ,   大月直樹 ,   丹生健一

ページ範囲:P.237 - P.241

はじめに

 逆生歯牙とは歯冠部が正常の萠出方向と逆方向にあり,鼻腔や上顎洞,上顎骨内に転位した歯牙を指す。1754年Albinusにより初めて報告され,わが国では1901年に金杉1)が最初に報告している。症例報告は比較的稀であり,無症状のまま経過する症例も存在する。しかし無治療の場合,鼻閉,鼻出血,鼻汁,頬部痛,上顎洞炎,蜂窩織炎,鼻腔口腔間瘻孔,歯原性囊胞など起こりうる付随症状や合併症は多岐にわたる。鼻・副鼻腔腫瘤を確認した際には鑑別診断の1つとして逆生歯牙を挙げ,的確に診断をすることが重要である。今回われわれは,鼻腔内腫瘤として発見された逆生歯牙を2例経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

外耳道に寄生したマダニの4例

著者: 一宮一成 ,   安西三郎

ページ範囲:P.243 - P.248

はじめに

 マダニの人体咬着は時に経験するが,外耳道に寄生した報告例は少ない。われわれは外耳道に寄生したマダニをこれまでに4例を経験したので,その診断,治療方針について考察を加えて報告する。

成人に発生した鼻副鼻腔原発横紋筋肉腫の1例

著者: 山口仁平 ,   石丸幸太朗 ,   高橋晴雄 ,   岡田雅彦 ,   舩越康智 ,   木下直江

ページ範囲:P.249 - P.254

はじめに

 横紋筋肉腫は骨格筋へ分化する間葉系細胞から発生すると考えられている稀な軟部肉腫であり,アメリカでは年間250例が新規に診断されている1)。主に小児期に発症するが,実際は10人中4人が成人例で人口100万人に対し年間4.3人の成人罹患率があるとされる2)。近年,化学療法により予後の改善が認められるようになりつつあるが,進行例の予後は依然としてきわめて不良で,high risk例の治療奏効維持3年生存率(failure free survival)は30%未満である3)。今回われわれは鼻副鼻腔に発生した成人の横紋筋肉腫の進行例に対し集学的治療を行った例を経験したので報告する。

持続型方向交代性上向性眼振例の検討

著者: 晝間清 ,   黒川友哉 ,   柳嘉典 ,   野島知人 ,   杉崎洋紀 ,   渡部涼子 ,   留守卓也 ,   三橋敏雄

ページ範囲:P.255 - P.259

はじめに

 外側半規管型BPPVのなかで,減衰型方向交代性下向性眼振を示すものは,半規管結石症(canalolithiasis)と考えられており1),Lempert法2)などの浮遊耳石置換法が有効であることはすでによく知られている。一方,持続型で方向交代性上向性眼振を示すものは,議論はあるが,外側半規管のクプラ結石症(cupulolithiasis)で説明されている1,3)。今回,当科で経験した持続型方向交代性上向性眼振を示した症例を検討し,その病態につき,若干の文献的考察を加え報告する。

書評

耳科手術のための中耳・側頭骨3D解剖マニュアル[DVD-ROM付]

著者: 村上信五

ページ範囲:P.261 - P.261

解剖の知識と手術の実践を兼ね備えた若手医師必携書

 耳科手術を学び上達するには何が必要か。それは側頭骨解剖の知識と画像の診断能力,そして手術のイメージトレーニングと実践である。すなわち,まずはCTやMRI画像から病巣を読影し,側頭骨解剖と融合させ,手術のイメージトレーニングができるようになることである。

 この度,医学書院から『耳科手術のための中耳・側頭骨3D解剖マニュアル[DVD-ROM付]』が刊行されたが,本書はまさにそれを可能にする書である。耳科手術のための側頭骨解剖書や手術書は数多く出版されているが,その多くはイラストや死体解剖あるいは手術写真で網羅的に解説されているため,解剖と実際の手術視野が一致しておらず,手術がイメージできないことが少なくない。耳科手術に必要なのは,いわゆる「surgical anatomy」で,手術のための実践的な側頭骨解剖である。本書の特徴は,①耳科手術に必要な最小限の側頭骨解剖と用語解説,②基本的な側頭骨CTの読影,③手術機器・器具の紹介と使用方法,④写真とDVD動画による死体側頭骨の手術解剖,⑤写真とDVD動画による手術の実際を有機的に秩序立てて解説している点である。また,手術は基本的な鼓室形成術から,人工内耳植え込み術,顔面神経減荷術と移行術,錐体部病変へのアプローチ,内リンパ囊開放,聴神経腫瘍手術など,ほとんどの中耳手術と側頭骨手術が網羅されている。そして,中耳手術の解剖では,実際の手術では剖出しない深部の内耳や顔面神経が描出されている。これは著者のメッセージでもある「内耳を知って中耳手術の限界を知る」を実践させるための方策で,長年にわたり中耳・側頭骨手術に携わってきた著者ならではの画期的なアイデアである。

緩和ケアエッセンシャルドラッグ 第3版

著者: 加賀谷肇

ページ範囲:P.262 - P.262

緩和ケア実践の近道といえる全スタッフ必携の書

 わが国の緩和医療を牽引してきた医師の恒藤暁先生と,緩和薬物療法認定薬剤師第一号である岡本禎晃先生による待望の新版が上梓された。

 著者たちは,症状マネジメントが緩和ケアの出発点というコンセプトの下,症状マネジメントの必須薬をこの本に集約している。すなわち本書を習得することが緩和ケア実践の近道ということができる。

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欧文目次

ページ範囲:P.199 - P.199

〔お知らせ〕日本頭頸部癌学会主催 第6回教育セミナーのご案内

ページ範囲:P.260 - P.260

 日本頭頸部癌学会主催第6回教育セミナーを下記の要領で開催いたしますのでご案内申し上げます。

 会場は「神戸国際会議場」で第39回日本頭頸部癌学会会場と同じ会場です。第6回セミナーの各論は1)鼻・副鼻腔と2)中咽頭と致しました。本セミナー受講者には日本がん治療認定医機構の学術単位(3単位),また日本口腔外科学会専門医制度の資格更新のための研修単位(5単位)が与えられますので,多数のご参加をお待ちしております。日本耳鼻咽喉科学会専門医の方は学術集会参加票をお持ちください。5単位が取得できます。また日本頭頸部外科学会主催 頭頸部がん専門医申請資格の学術活動として認められます。

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.263 - P.263

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.264 - P.264

投稿規定

ページ範囲:P.266 - P.266

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.267 - P.267

あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.268 - P.268

 札幌-大阪間を走る豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」が車両老朽化のため引退することになりました。ここのところ寝台特急は壊滅状態で一世を風靡した有名な寝台特急が次々と姿を消しています。時代の流れですので仕方のないことですが,寂しい限りです。「トワイライトエクスプレス」は日本海に沈む夕日と翌日明け方の薄明を意味する「トワイライト」がその名前の由来です。1989年に運転を開始,札幌-大阪間の約1,500キロを約22時間かけて結んでいるように,現存する寝台特急としては最も長距離を走ります。また,豪華個室や一級のフランス料理を楽しめる食堂車などで人気を呼んできました。大阪駅と札幌駅の発着時には,「いい日旅立ち」が流されているように何とも旅情をかき立てる寝台特急です。3月12日の最終列車の切符が2月12日午前10時に全国で一斉販売されましたが,全260席分が何と販売開始後1秒で完売。徹夜で並んでも購入できなかったファンからはため息が漏れました。直後に「ヤフーオークション」に出品された切符には120万円超の価格に入札が殺到する事態となったそうです。改めて乗り鉄くんや鉄子さんの情熱には驚くばかりですが,乗り鉄ではなくても一度は乗ってみたかったと思います。

 さて,今月号の特集は「痛みの鑑別診断」です。臨床の現場では「痛み」は最も頻度の高い症状ではないかと思います。また,「痛み」は自覚的な症状ですので,その診断には経験と洞察力が必要です。まさに臨床医の腕の見せどころでもあります。本特集では「耳痛」「顔面痛」「口腔痛」「咽頭痛」そして「頸部痛」について,それぞれの領域のエキスパートに鑑別診断のポイントをご教示していただきます。また,4編の原著も力作ぞろいです。もし,「トワイライトエクスプレス」の切符をゲットされた先生がおられましたら,耳喉頭頸をお読みになりながら,贅沢な22時間を優雅にお楽しみいただければと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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