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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科87巻4号

2015年04月発行

雑誌目次

特集 最新の補聴器診療—補聴器による聴覚リハビリテーション

ページ範囲:P.277 - P.277

日本における補聴器の現状—JapanTrak 2012

著者: 井上清恆

ページ範囲:P.278 - P.286

POINT

●全体では9人に1人,18歳以上では8人に1人が難聴である。

●難聴者の86%が補聴器を使用していない。

●補聴器使用が社会的損失の軽減に寄与する。

●補聴器使用者は非使用者に比べてうつ病になるリスクが低い。

●日本の難聴者が耳鼻咽喉科医師へ相談する率は40%である。

●日本人の補聴器満足度は36%である。

補聴器はどこまで進歩したか

著者: 西村忠己

ページ範囲:P.287 - P.293

POINT

●雑音抑制,指向性,ハウリング防止機能などの性能は技術の進歩により向上している。

●オープンイヤフィッティングが普及し,耳かけ型補聴器の割合が増加している。

●RICタイプの補聴器やIICなど小型化が進んでいる。

●通信機能の発達や撥水機能が導入され,利便性が向上している。

●軟骨伝導を利用した新しい補聴器の開発が進められている。

これから補聴器外来をはじめるために

著者: 佐野肇

ページ範囲:P.294 - P.301

POINT

●補聴器外来の手順について

●補聴器外来に参加する職種と業務の分担について

●補聴器販売の現状について

●補聴器に関する制度や公的補助について

補聴器フィッティングのABC

著者: 新田清一

ページ範囲:P.302 - P.309

POINT

●補聴器フィッティング成功のためには,耳鼻咽喉科医のかかわりは必要不可欠である。

●補聴器フィッティングの目標は,補聴器装用下において最良の語音明瞭度を会話音圧帯で達成すること,ファンクショナルゲインがハーフゲイン程度になることである。

●最初に耳鼻咽喉科医が,補聴器フィッティングの医学的説明を十分に行う。

●当科では,利得はハーフゲインの70%程度で開始して,最初から常用,3か月間頻回に調整をしてハーフゲイン程度を目ざす,という補聴器フィッティング方法をとっている。

●特性図の読み方と適切な特性図を知ることで,不適切な調整を検出し,適切な調整に変更するよう指示することが可能となる。

●耳鼻咽喉科医が特性図とファンクショナルゲイン,語音明瞭度曲線を確認して,補聴器フィッティングが適切に行われているかを判断する。

補聴器で耳鳴を制御する

著者: 高橋真理子

ページ範囲:P.310 - P.316

POINT

●耳鳴は,聴覚入力不足による中枢神経の過活動により生じると考えられている。

●聴覚入力不足に対して補聴器を用いて音を入力することにより,中枢の過活動を抑制する。

●耳鳴治療に用いる補聴器には,一般的な補聴器以外に,耳鳴治療器付き補聴器がある。

●耳鳴治療に対する音響療法の選択には,耳鳴の苦痛度,難聴を評価して総合的に判断する。

●耳鳴治療器付き補聴器は耳鳴治療に用いる医療機関向けの医療機器であり,その処方,調整は医療行為になる。したがって,補聴器販売店が独自で処方,調整することはできない。

補聴器で脳を鍛える—聴覚トレーニング

著者: 岡本康秀

ページ範囲:P.318 - P.323

POINT

●難聴により認知機能の低下が起こりうる。

●難聴に介入することで認知機能の低下を防ぐ可能性がある。

●聴覚トレーニングにはボトムアップとトップダウンの強化が重要である。

●認知—聴覚システムを鍛えることでノイズ下の聞き取りが改善する。

●補聴器を用いた聴覚リハビリテーションを行う体制を整える必要性がある。

これからの補聴器診療—補聴器相談医の役割

著者: 坂口博史

ページ範囲:P.324 - P.329

POINT

●補聴器相談医は,難聴者の利益を担保し適切な補聴器供給を支援する目的で発足した。

●補聴器相談医は,補聴器の有効性と限界を十分に理解したうえで難聴者に適切な助言を与える。

●補聴器相談医は,補聴器の特性,機能,適合評価について最新の知識を保つ必要がある。

●補聴器相談医は,補聴器販売業界と良好な連携を築き,よりよい補聴器適合が得られるよう支援する。

●補聴器相談医は,補聴器診療をとりまく社会的問題について常に関心をもつ必要がある。

書評

内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術CT読影と基本手技[3DCT画像データDVD-ROM付]

著者: 佐伯直勝

ページ範囲:P.330 - P.330

経鼻内視鏡手術を行う脳神経外科医にとり有用な書

 脳神経外科手術領域における内視鏡下経鼻手術は,従来の顕微鏡下経鼻下垂体手術をさらに発展させた洗練された方法として認められつつあり,従来拡大経蝶形骨洞手術として行われていた傍鞍部腫瘍への到達法から,さらに広がりをもった手術法も可能となった。そして内視鏡下経鼻手術は,正中病変では前頭蓋底から頭蓋・頸椎移行部,側方病変では海綿静脈洞,翼口蓋窩,側頭窩下,眼窩内病変に至るまで,頭蓋底疾患を広く扱える手術法として発展しつつある。欧米諸国では,耳鼻咽喉科,頭頸部外科,脳神経外科をバックグラウンドとしたチーム医療が花開きつつあり,日本においてもこの領域に特化した専門医グループの出現が待たれる。

 一方で,髄液漏れ,血管損傷,脳神経麻痺などの内視鏡下経鼻手術に特有な合併症を起こさない工夫や,起こした際の対処法などを習熟しておかなければならず,習熟法の1つとしてキャダバートレーニングが有用であることは論をまたない。本書の編集者・執筆者である中川隆之氏は,京大の耳鼻咽喉科・頭頸部外科医の立場からキャダバートレーニングコースを開催し,内視鏡下経鼻手術の安全な手技の普及に貢献してきた。本書で特徴的なのは,個々のキャダバーの3DCTを術前に評価し,個別に手術手技,解剖をイメージしながら,段階を踏んで手術を行っていく方法で,実際の手術法に即した教科書としてまとめ上げられている点である。また本書は,初心者でも行えるわかりやすいプランニングと,安全かつシンプルな手術テクニックをコンセプトとしているとともに,基本的手技から一歩進んで,頭蓋底手術についても同様のコンセプトで解説している。

原著

鼻腔に発生したglomangiopericytomaの1症例

著者: 前田恭世 ,   野中学 ,   瀬尾友佳子 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.331 - P.334

はじめに

 Hemangiopericytomaは血管周囲細胞由来の腫瘍である。その約15〜30%が頭頸部領域に発生する1)が,鼻腔にできることは稀である。一般に易出血であり,出血の制御にしばしば難渋する。鼻腔領域で発生したhemangiopericytomaはglomangiopericytoma(鼻腔型血管周囲細胞腫)と呼ばれ,症状として鼻閉,鼻出血が多くみられる。局所再発や転移もあることから臨床的に良・悪性中間型腫瘍とされる2)。今回われわれは,手術を施行するにあたり多量の出血が予想されたため,血管塞栓術施行後に内視鏡下に腫瘍摘出を行ったglomangiopericytomaの1症例を経験したので報告する。

耳下腺部領域に発生した血管周皮腫の2症例

著者: 草間薫 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.335 - P.339

はじめに

 血管周皮腫(hemangiopericytoma)/孤在性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor)は後腹膜,骨盤,下肢などに生じる頻度が高い良悪性中間型の軟部組織腫瘍である。以前,両者は区別されていたが,厳密な分類は難しく,現在,WHOの軟部組織腫瘍の分類上はsolitary fibrous tumor & hemangiopericytomaと記載され同義とされている1,2)。全身のあらゆる臓器に発生する可能性があり,頭頸部領域の発生も報告されているが,耳下腺での発生頻度は少ない。今回,耳下腺部領域に発生した血管周皮腫の2症例を経験したので報告する。

外科的介入を行った直腸癌甲状腺転移の1例

著者: 田所慎 ,   溝上大輔 ,   原田栄子 ,   神藤英二 ,   荒木幸仁 ,   山下拓 ,   塩谷彰浩

ページ範囲:P.341 - P.345

はじめに

 直腸癌の他臓器への転移は首位が肝臓(直腸癌全体の9.5%),次いで腹膜(3.0%),肺(1.7%),骨(0.3%),脳(0.1%)と続く1)。治療はおもに外科的治療および化学療法,放射線療法を症例に応じて選択し,原発巣および遠隔転移巣がともに切除可能な場合には特に外科治療を考慮する。肝転移に対しては熱凝固療法も選択可能である1)。これら直腸癌遠隔転移例の治療後の予後は,肝切除後の5年生存率が20〜50%,肺切除後の5年生存率が30〜60%と比較的良好である2,3)

 一方,直腸癌の甲状腺への転移は上記に比べ稀とされていたが,近年頭頸部画像診断の進歩により報告例が増加している。しかし手術適応に関してはいまだに一定の見解が得られていない。今回われわれは直腸癌の甲状腺転移の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.273 - P.273

〔お知らせ〕第116回 日本耳鼻咽喉科学会 総会・学術講演会のお知らせ

ページ範囲:P.346 - P.347

 第116回日本耳鼻咽喉科学会総会ならびに学術講演会を下記の通り開催いたしますので,多数のご参加をお待ちいたします.

〔お知らせ〕第32回「耳の手術研修会」のお知らせ

ページ範囲:P.348 - P.348

 耳鼻咽喉科展望会では平成27(2015)年7月9・10・11日の3日間,慈大解剖学講座の協力のもとに下記の予定で「耳の手術研修会」を開催いたします。

 研修内容は側頭骨の解剖,手術供覧の他,次の項目を主に解説します。麻酔,基本的清掃手術,鼓膜・耳小骨の形成,真珠腫の手術,外耳道形成,乳突充塡,危険部位の処置,術後処置,耳小骨奇形,外傷,アブミ骨手術,内視鏡下手術などの他,人工内耳,顔面神経の手術について。

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.349 - P.349

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.350 - P.350

投稿規定

ページ範囲:P.352 - P.352

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.353 - P.353

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.354 - P.354

 新年度となって医学部は新入生,医局は新入医局員,病院は出向Drの交代など,さまざまな施設でマイナーチェンジがみられていることと思います。また,お子さんのおられる先生方は入学式などに出席されているかもしれません。本誌「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」も新たな気持ちで編集・企画に取り組んでいくつもりでおります。

 87巻4号は特集として「最新の補聴器診療—補聴器による聴覚リハビリテーション」を取り上げました。患者さんからは補聴器装用により生活の質が上がり感謝されることもありますが,何となく煩わしい,響いてしまって使うのを辞めてしまった,もう何個目かの購入でお金ばかりかかる,というような不満も聞かれます。眼科の老眼鏡と比較されるべきものではないのですが,そのような主旨の訴えを聞くこともあります。入手方法も通販で購入するひとから,慎重なフィッティングを行いmy補聴器を作り上げていくひとまでさまざまです。今回,補聴器の多くを知るという目的で補聴器の基本から補聴器外来を始める医師,施設に向けての解説,フィッティング,耳鳴治療への応用などについて,その道のスペシャリストである井上清恆先生,西村忠己先生,佐野 肇先生,新田清一先生,高橋真理子先生,岡本康秀先生,坂口博史先生に執筆をお願いしました。高齢化社会を迎え,明日からの日常診療の場で役に立つ内容と考えております。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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