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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科87巻5号

2015年04月発行

文献概要

増刊号 こんなときの対応法がわかる 耳鼻咽喉科手術ガイド Ⅳ.喉頭・下咽頭の手術

声帯萎縮に対する手術

著者: 齋藤康一郎1 矢部はる奈2

所属機関: 1杏林大学医学部耳鼻咽喉科 2川崎市立井田病院耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.168 - P.172

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症例呈示

症例1:声帯内コラーゲン注入術(図1)

 37歳,男性。数年前から徐々に増悪する嗄声と音声疲労を主訴に受診した。内視鏡検査では声帯溝症の合併を認めたが,発声時声門閉鎖不全は軽度で,最長発声持続時間(MPT)は12秒,聴覚印象評価はG2R0B2A0S1,呼気流率は楽な発声(MFRc)で417.7mL/s,最長持続発声時(MFRm)で366.2mL/sであった。

 声帯ポリープの合併も認めたため,初回手術時には全身麻酔下にポリープ切除と同時に声帯内コラーゲン注入を行ったが,そのあとは外来にて4か月間隔で2回,さらに6か月,10か月の間隔で合計5回の注入を行った。2回目から5回目の注入直前のMPTは,それぞれ14秒,17.5秒,17秒,27秒と徐々に延長した。最終注入後4か月の時点でMPTは33秒,聴覚印象評価はG1R1B1A0S1,MFRcは376.3mL/s,MFRmは240.6mL/sと改善した。内視鏡検査でも発声時の声門閉鎖不全の著明な改善を認め,ストロボスコピーにて良好な粘膜波動を認めた。

参考文献

1)一色信彦:喉頭の機能外科 —とくに経皮的アプローチについて.京都大学医学部耳鼻咽喉科同窓会,1977
2)田山二朗・他:声帯内注入術の現状と将来.声帯内コラーゲン注入術.音声言語48:158-162,2007
3)牧山 清・他:音声外科Update.声帯内アテロコラーゲン注入術.耳喉頭頸86:331-335,2014
4)Isshiki N, et al:Vocal fold atrophy and its surgical treatment. Ann Otol Rhinol Laryngol 105:182-188, 1996
5)一色信彦:手術のキーポイントシリーズ.頸部喉頭・気管食道手術—治療の難しい喉頭病変への対応—声帯萎縮・声帯溝症の治療法.JOHNS 15:1485-1489,1999
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8)大久保啓介・他:当院にて施行した声帯内BIOPEX注入術.日気食道会報59:524-533,2008
9)梶原薫子・他:声帯萎縮に対する声帯内脂肪注入術.日気食会報57:345-350,2006
10)土師知行:喉頭科診療における論点.声帯萎縮に対する外科的治療—喉頭枠組み手術の立場から.JOHNS 23:1705-1708,2007
11)中村一博・他:甲状軟骨形成術3型が奏効した声帯萎縮による音声障害例.耳鼻臨102:303-307,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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