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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科87巻5号

2015年04月発行

増刊号 こんなときの対応法がわかる 耳鼻咽喉科手術ガイド

Ⅴ.頸部の手術

頸動脈小体腫瘍に対する手術

著者: 志賀清人1

所属機関: 1岩手医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科

ページ範囲:P.268 - P.272

文献概要

はじめに

 頸動脈小体腫瘍は稀な疾患であり,病理組織学的に同じ傍神経節腫である褐色細胞腫に比べて,その実態解明は大幅に遅れている。傍神経節腫については最近の急激な研究の進展で,原因遺伝子としてSDH遺伝子ファミリーであるSDHA,SDHB,SDHC,SDHD遺伝子のほか,これまでに合計16種類の遺伝子に変異が発見されている。今後も遺伝子変異の解析が進めば,さらに多くの変異が見出される可能性があり,これだけ多くの遺伝子変異で同一の組織型の腫瘍が発生するのは,ほかに例がない。また,sporadicな腫瘍にも何らかの遺伝子変異が存在する可能性を示しており,傍神経節腫における遺伝子変異の解析は極めて重要である。また,少数ではあるが悪性例も含まれるため,発見したら摘出術を考慮すべき疾患である。

 その一方で,頸動脈小体腫瘍は非常に血管に富み,また総頸動脈〜内頸動脈〜外頸動脈の周囲を取り囲むように成長することから,他の腫瘍のような感覚で手術操作を行うと多量の出血を伴ったり,頸動脈壁の損傷を引き起こして,その合併切除や再建術を必要とする危険が高い腫瘍である。われわれは,これまでの経験から術前の栄養動脈の塞栓術の必要性を確認し,放射線IVR医と連携を図ることによって,極めて少量の出血量(10mL前後)でこの腫瘍を摘出できるようになった。症例を示しながら,頸動脈小体腫瘍の手術について解説する。

参考文献

1)Shah JP:Head and Neck Surgery, 2nd ed. Mosby-Wolf, 1996, pp461-474.
2)Baily BJ, et al:Atlas of Head & Neck Surgery-Otolaryngology, Lippincott-Raven, Philadelphia, 1996, pp284-285.
3)Ogawa K, et al:A novel G106D alteration of the SDHD gene in a pedigree with familial paraganglioma. Am J Med Gen Part A 140A:2441-2446, 2006.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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