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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科87巻6号

2015年05月発行

雑誌目次

特集 注意すべき真菌症診療の落とし穴

ページ範囲:P.363 - P.363

病原真菌の最近のトピックス

著者: 槇村浩一

ページ範囲:P.364 - P.372

POINT

●ヒトを含む動物と真菌は同じ分類群(オピストコンタ巨大系統群)を構成する。

●真菌の分類は大きく更新された。

●かつて「微胞子虫」と呼ばれたミクロスポリディアは新たに真菌となった。

●真菌の「2つの学名」は1つに統合されることになった。

●通常の検査室では同定できない「隠蔽種」には注意が必要である。

抗真菌薬の使い方

著者: 前﨑繁文

ページ範囲:P.374 - P.380

POINT

●深在性真菌症の治療には抗真菌薬が投与されるが,その種類はきわめて限られている。

●現在,わが国で臨床的に使用可能な抗真菌薬は,4系統8薬剤であり,原因真菌に応じた使い分けが重要である。

●カンジダ症では原因となったカンジダ属の菌種に応じた抗真菌薬の選択を行う。

●アスペルギルス症は抗真菌薬の投与でも無効な症例も多く,早期診断,早期治療が重要である。

●真菌における抗真菌薬の耐性菌は現時点ではそれほど問題ではないが,今後も適正な抗真菌薬の使用が必要である。

≪部位別:真菌症診療の実際≫

外耳・中耳

著者: 髙橋晴雄

ページ範囲:P.382 - P.387

POINT

●中耳原発の真菌症はごく稀で,中耳・外耳の真菌症の大部分は外界からの真菌の二次的感染でしかも表在性であり,その病因・病態は耳真菌症として一括できるものである。

●しかし鼓膜穿孔がない外耳道真菌症と慢性中耳炎に伴う真菌症とは局所治療の考え方,注意点が異なる。

●外耳道真菌症は外耳道皮膚炎や湿疹に続発するものがほとんどで,皮膚表在性真菌症の局所治療法が基本となる。

●慢性中耳炎に伴う真菌症は大部分が細菌感染に二次的に真菌感染が生じたものであり,治療には慢性中耳炎の感染のコントロールを含める必要と,真菌に対する局所治療薬の内耳毒性に常に注意を払う必要がある。

●全身的な基礎疾患(糖尿病,腎障害など)や免疫抑制薬服用中などの状況では,稀に中耳や乳突の真菌症さらには真菌性頭蓋底骨髄炎などの深部真菌症の病態をとることがあり,それらでは長期の全身的抗真菌薬投与を要する。

鼻副鼻腔:非侵襲型(慢性非浸潤型・アレルギー性)

著者: 渡邊荘 ,   比野平恭之

ページ範囲:P.388 - P.392

POINT

●非浸潤型副鼻腔真菌症には慢性非浸潤型およびアレルギー性がある。

●慢性非浸潤型は無症状で経過するものも多く,画像検査で発見されることも少なくない。

●アレルギー性はⅠもしくはⅢ型アレルギーが関与し,アレルギー性ムチンを有し,その内部に真菌が存在することが多い。

●両疾患とも手術的治療が第一選択である。

●副鼻腔内の内容物より真菌培養,細胞診などを確実に行う。

●アレルギー性の場合は術後に後治療として副腎皮質ステロイド薬の内服や免疫療法を行うことが望ましい。

鼻副鼻腔:侵襲型(浸潤型)

著者: 初鹿恭介 ,   増山敬祐

ページ範囲:P.394 - P.401

POINT

●急性侵襲型は致命的な疾患となりうるため早急な診断治療が必要となる。

●免疫不全状態が背景にある患者において急性副鼻腔炎を疑う場合,侵襲型鼻副鼻腔真菌症である可能性も考慮して診療にあたる必要がある。

●症状や所見などから悪性腫瘍との鑑別が必要になる場合もある。

●画像上,骨破壊が軽度でも,周囲組織への浸潤性変化を認める場合は,侵襲型鼻副鼻腔真菌症の早期診断に重要な所見となりうることがある。

●(1.3)β-D-グルカンは補助的診断として有用であるが,偽陽性があることやムコールには無効であることなどには注意が必要である。

●治療は,免疫不全状態が背景にある場合,その改善が最重要であり,手術と抗真菌薬を使い分け治療を行う。

●慢性侵襲型も免疫状態の悪化などにより急性侵襲型に移行する可能性がある。

口腔

著者: 浮地賢一郎 ,   中島庸也

ページ範囲:P.402 - P.405

POINT

●口腔カンジダ症は,口腔真菌症のなかで最も頻度が高い疾患である。

●口腔カンジダ症は免疫機能の低下による日和見感染であり,原因の精査が重要である。

●口腔カンジダ症の臨床視診型には,偽膜性カンジダ症,紅斑性カンジダ症,肥厚性カンジダ症があり,病態により適切な抗真菌薬の投与が必要となる。

咽喉頭

著者: 香取幸夫

ページ範囲:P.406 - P.408

POINT

●口腔咽頭には真菌が常在菌として存在しており,健常者で病原性を示すことは稀である。

●全身的に免疫力の低下や,局所的に分泌液減少や粘膜免疫の低下があると咽頭真菌症を発症しやすい。

●典型例では,咽頭や喉頭の粘膜に白色の隆起性病変や偽膜を伴う潰瘍状病変が認められる。

●病理組織検査でみられる咽頭粘膜内への菌糸の侵入と増殖の所見が確定診断に有用である。

●治療として1〜2週間,抗真菌薬をのどの奥でうがいしたあとに嚥下することが勧められている。

食道

著者: 照屋勝治

ページ範囲:P.410 - P.416

POINT

●食道カンジダ症を診断した場合には,細胞性免疫の低下,特にHIV感染症の可能性や血液系悪性腫瘍などによる免疫不全状態を考慮する。局所的要因としてH2ブロッカーやPPIの長期内服と吸入ステロイド剤の有無を確認する。

●食道カンジダ症を診断した場合には,患者の同意を得たうえで原則としてHIVのスクリーニング検査を行うべきである。

●症状から本症を疑い,FLCZによるエンピリック治療を行ってそれが有効であれば,食道カンジダ症と臨床診断してよい。

●β-D-グルカンなどの血清抗原は,食道カンジダ症では通常は上昇がみられない。

●反復例については,症状に応じて適宜短期間のアゾール系薬剤による治療を繰り返す。安易なアゾール系薬剤の長期予防投与は耐性化の懸念から慎まなければならない。

全身(血液)

著者: 吉田稔

ページ範囲:P.418 - P.424

POINT

●カンジダ血流感染症は血液疾患やがん患者以外に外科,救急領域でしばしばみられる。

●菌種ではCandida albicansが多いが,近年はnon-albicans Candidaも増加している。

●診断後はCVカテーテルの抜去とキャンディン系抗真菌薬投与が推奨される。

●カンジダ眼内炎を念頭に置き早期発見と治療を心がける。

●わが国ではトリコスポロン血流感染症にも注意が必要である。

原著

学校検診で発見された脊髄由来神経鞘腫の1例

著者: 松下直樹 ,   井口広義 ,   和田匡史 ,   小杉祐季 ,   豊田宏光 ,   山根英雄

ページ範囲:P.427 - P.430

はじめに

 頭頸部領域において神経鞘腫は珍しくない疾患である。頭頸部領域では迷走神経や交感神経幹,頸神経叢,腕神経叢などから発生することが多いが,症状が出ることはあまり多くはない。特徴的な症状として,腫瘍圧迫により迷走神経由来のものでは咳嗽が,腕神経叢由来のものでは上肢への放散痛が認められることがある。症状が少ないために発生母地神経を同定するには術中の神経同定や術後の脱落症状からしかなく,結局,発生母地神経が不明のままであることも多い。

 一方で頭蓋内や脊椎などの骨で囲まれる部位に発生すると神経症状が出やすい。そのため,より積極的に治療を検討する必要がある。われわれは,学校検診にて咽頭後壁の腫脹として指摘された脊柱管内外に拡がる神経鞘腫の1例を経験したので報告する。

顔面神経麻痺で発症した小児横紋筋肉腫の1例

著者: 宮下武憲 ,   米崎雅史 ,   近藤園子 ,   小谷野薫 ,   小西行彦 ,   稲本隆平 ,   大崎康宏 ,   星川広史 ,   岩瀬孝志 ,   岡田仁 ,   日下隆 ,   森望

ページ範囲:P.431 - P.436

はじめに

 顔面神経麻痺を初発症状とする鼓室に進展した悪性腫瘍では,炎症との鑑別が重要であり,鼓室病変の生検が必要である。稀ではあるが,小児顔面神経麻痺では,横紋筋肉腫などの悪性腫瘍の中耳進展による顔面神経麻痺の可能性も念頭におく必要がある。今回われわれは,顔面神経麻痺で発症し,中耳から内頸動脈周囲,そして上咽頭へ大きく進展する横紋筋肉腫症例を経験し,手術・放射線化学療法にて良好な経過であったので,文献的考察を含めて報告する。

CTP検査で診断された特発性外リンパ瘻例

著者: 三好正人 ,   西村邦宏 ,   車哲成 ,   内田育恵 ,   谷川徹 ,   小川徹也 ,   植田広海

ページ範囲:P.437 - P.439

はじめに

 内耳外リンパ腔と周囲臓器の間に瘻孔が生じ,生理機能が障害される疾患が外リンパ瘻(perilymphatic fistula:PLF)である1)。瘻孔から外リンパが漏出すると難聴,耳鳴,めまい症状が増悪,変動する。PLFにおいて特発性PLFという診断名は介達外力に伴う広義の特発性PLFと,何ら誘因になることが先行しない狭義の特発性PLFとに分けられる。狭義の特発性PLFは診断に苦慮する症例も少なくないが臨床的に確立した確定法がこれまで存在しなかったためである。今回,われわれは先行する誘因のない狭義の特発性外リンパ瘻の診断に外リンパに特異的に存在する蛋白であるcochlin-tomoprotein(CTP)2)を中耳洗浄液から検出する検査3)を用いて確定診断を得ることができたので,文献的考察を加えて詳細を報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.359 - P.359

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.441 - P.441

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.442 - P.442

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.446 - P.446

 4月下旬,韓国の耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会総会・学術講演会に出席してきました。従来は日本と同様,母国語で行われていたそうですが,“global standard”の時代に対応すべく,2014年から国際学会として開催するようになったそうです。30名の日本を筆頭に29か国から大勢の招待者が来韓していました。現在の教授世代の学生時代には英語の教科書しかなかったので自然と英語力が身についていたのに,今ではわが国同様,韓国語の医学書が豊富にあり,若い世代の英語力が落ちているのを憂いてのことだそうです。元祖ガラパゴス島のわれわれもお隣の国の意気込みを見習わなくてはいけませんね。もっとも,不満を覚える先生もいないわけではなく,今後は国際学会として開催するのは2年に1度とペースダウンするらしいですが……。

 さて,今週号の特集は「真菌症」です。真菌症は耳鼻咽喉科・頭頸部外科が守備範囲とするさまざまな臓器に発生する感染症ですが,免疫不全の患者に発生することも多く,侵襲性副鼻腔炎のように対応が遅れると致命的となることも少なくありません。そこで本号では,まず初めに,槇村浩一先生(帝京大医療共通教育センター)と前﨑繁文先生(埼玉医大感染症内科)に真菌症の最近の動向と抗真菌薬の使い方にについて解説していただき,続いて耳,鼻副鼻腔:非侵襲・侵襲型(浸潤型),口腔,咽喉頭,食道,全身(血液)の各臓器の真菌症について,髙橋晴雄先生(長崎大),渡邊荘先生(昭和大),初鹿恭介先生(山梨大),浮地賢一郎先生(東京歯科大),香取幸夫先生(東北大),照屋勝治先生(国立国際医療研究センター),吉田稔先生(帝京大学溝口病院第4内科)にご執筆をお願いいたしました。脊髄由来神経鞘腫(松下論文)と小児の横紋筋肉腫(宮下論文),特発性外リンパ瘻(三好論文)の原著論文3編とともにぜひご一読ください。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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