耳鼻咽喉科・頭頸部外科87巻6号

2015年05月発行

原著

CTP検査で診断された特発性外リンパ瘻例

著者： 三好正人¹ 西村邦宏² 車哲成² 内田育恵² 谷川徹² 小川徹也² 植田広海²

所属機関： ¹名古屋掖済会病院耳鼻咽喉科 ²愛知医科大学病院耳鼻咽喉科

ページ範囲：P.437 - P.439

文献概要

はじめに

　内耳外リンパ腔と周囲臓器の間に瘻孔が生じ，生理機能が障害される疾患が外リンパ瘻（perilymphatic fistula：PLF）である^1）。瘻孔から外リンパが漏出すると難聴，耳鳴，めまい症状が増悪，変動する。PLFにおいて特発性PLFという診断名は介達外力に伴う広義の特発性PLFと，何ら誘因になることが先行しない狭義の特発性PLFとに分けられる。狭義の特発性PLFは診断に苦慮する症例も少なくないが臨床的に確立した確定法がこれまで存在しなかったためである。今回，われわれは先行する誘因のない狭義の特発性外リンパ瘻の診断に外リンパに特異的に存在する蛋白であるcochlin-tomoprotein（CTP）^2）を中耳洗浄液から検出する検査^3）を用いて確定診断を得ることができたので，文献的考察を加えて詳細を報告する。

参考文献

1）池園哲郎：急患・急変対応マニュアル-そのとき必要な処置と処方　疾患ごとの救急処置法・処方　急性症状を示す聴覚器疾患 外リンパ瘻．耳喉頭頸85：242-247，2013

2）池園哲郎：難聴・めまいのバイオマーカーCTPの新展開．Otol Jpn 22：911-917，2012

3）Ikezono T, et al：The performance of CTP detection test for the diagnosis Perilymphatic Fistula. Audiol Neurotol 15：168-178, 2009

4）突発性難聴・聴力回復判定基準（厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究班会議），1984

5）Nomura Y, et al：Floating labyrinth. Pathophysiology and treatment of perilymph fistula. Acta Otolaryngol 112：186-191, 1992

6）Simmons FB：The double-membrane break syndrome in sudden hearing loss. Laryngoscope 89：59-64, 1979

7）Ikezono T, et al：Cochlin-Tomoprotein：A novel perilymph-specific protein and a potential marker for the diagnosis of perilymphatic fistula. Audiol Neurotol 14：338-344, 2009

8）Ikezono T, et al：The per-formance of Cochlin-Tomoprotein detection test in the diagnosis of perilymphatic fistula. Audiol Neurotol 15：168-174, 2010

9）外リンパ瘻診断基準　平成2年度（案）：厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究書研究班　平成2年度研究業績報告書：20，1990

10）外リンパ瘻診断基準　2012年度（案）：厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究書研究班および新規診断マーカーCTPを用いた難治性内耳疾患の他施設検討に関する研究班，2012年（改訂中）

11）池園哲郎：PLFの診断マーカーとしてCo-chlin-Tomoprotein（CTP）．臨床検査49：1259-1263，2005