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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科87巻7号

2015年06月発行

雑誌目次

特集 All about頭頸部再建—多彩な皮弁を使いこなす!

著者: 橋川和信

ページ範囲:P.455 - P.455

≪頭頸部再建に用いられる皮弁≫

各種皮弁の特徴と選択

著者: 横川秀樹 ,   中塚貴志

ページ範囲:P.456 - P.462

POINT

●マイクロサージャリーの発展によって頭頸部領域の再建成績が飛躍的に向上した。

●救済手術などの際には,有茎組織移植も頻用される。

●頭頸部再建に頻用される皮弁は限られており,それぞれの皮弁の特徴と選択を十分に把握しておく必要がある。

DP皮弁

著者: 矢澤真樹 ,   貴志和生

ページ範囲:P.463 - P.467

POINT

●頭頸部再建に幅広く利用できる皮弁である。

●マイクロサージャリーを要しない局所皮弁である。

●多くの頭頸部手術で体位変換不要であり,安全かつ簡便に,短時間で挙上可能である。

●皮弁遷延術(delay procedure)を利用すれば,眼窩・頭蓋底から下咽頭頸部食道の再建で使用可能である。

●大胸筋皮弁と干渉せずに,組み合わせても利用可能である。

大胸筋皮弁

著者: 古賀憲幸 ,   清川兼輔 ,   力丸英明

ページ範囲:P.468 - P.473

POINT

●3種類の大胸筋皮弁とその適応の理解

●皮島の血行が安定している範囲の把握

●欠損部位と皮島のデザインのコンセプト(Pivot point:皮弁移動支点の重要性)

●到達距離を延長する血管柄の処理方法

有茎広背筋皮弁

著者: 兵藤伊久夫

ページ範囲:P.474 - P.480

POINT

●頭頸部再建に用いられる有茎皮弁のなかでは,大胸筋皮弁と比較して大きな筋体量が得られる。

●皮弁到達範囲は側頭部まで可能である。

●皮弁採取による機能障害などの犠牲は比較的少ない。

●有茎皮弁として再建に必要な筋体量や皮島を得るためには,側臥位での挙上が望ましい。

●そのため,手術中に2回の体位変換を要する。

腹直筋皮弁—遊離腹直筋皮弁を用いた頭頸部再建

著者: 今西理也 ,   朝戸裕貴

ページ範囲:P.482 - P.488

POINT

●遊離腹直筋皮弁は,解剖学的変異が少ないため,採取手技が比較的容易である。

●頭頸部腫瘍切除と並行して皮弁を採取することが可能である。

●皮下脂肪がほかの皮弁と比較して厚いことから,広範囲の腫瘍切除後の再建に用いられることが多いが,薄層化することも可能であるため,その適応範囲は大きい。

●皮弁採取にあたり最も重要な点は,皮膚穿通枝が確実に皮弁内に含まれるようにすることである。そのためには,臍周囲の皮膚を含めて皮島をデザインし,皮膚穿通枝に近すぎる場所で前鞘を切開しないように注意する。

●皮弁移植時は,縫合不全が起こらないように安定した皮弁血行を第一としながらも,欠損部に応じて皮弁皮下脂肪量と筋体量を調整し,術後の機能障害を少なくすることが重要である。

前腕皮弁

著者: 久保盾貴 ,   細川亙

ページ範囲:P.489 - P.493

POINT

●動脈系は橈骨動脈,静脈系は深部静脈と皮静脈の2系統からなる。

●血管茎は太く,長く採取することもでき,安全・容易に挙上できる。

●皮弁は薄くしなやかで,また,皮島を複数作製することも可能であり,頭頸部腫瘍切除後の複雑な欠損にも対応できる。

●毛が少ないことが多いので,口腔や咽頭への移植に適している。

●ボリュームを必要とする症例には使用できない。

●皮弁採取部の閉鎖は植皮となることが多く,また,目につきやすい部位のため,採取部の整容性の点では劣る。

●知覚皮弁や骨付き皮弁,腱(長掌筋腱)付き皮弁とすることが可能である。

大腿皮弁

著者: 木股敬裕 ,   松本洋 ,   杉山成史 ,   小野田聡

ページ範囲:P.494 - P.500

POINT

●大腿部における特殊な血管形態を紹介した。

●多種多様な皮弁形態での移植が可能である。

●ほかの皮弁と複合移植が可能である。

●頭頸部領域の手術と同時進行で皮弁の挙上が可能である。

●頭頸部領域欠損に対する幅広い適応範囲に触れた。

●皮弁採取部の犠牲が少ない。

遊離肩甲骨皮弁—頭頸部再建における応用

著者: 七戸龍司 ,   古川洋志 ,   林利彦 ,   山本有平

ページ範囲:P.502 - P.507

POINT

●肩甲骨皮弁の歴史を紹介した。

●肩甲骨皮弁の特徴と適応についてまとめた。

●肩甲骨皮弁挙上の実際について触れた。

●肩甲骨皮弁の術後管理と合併症対策について述べた。

●代表症例を供覧した。

腓骨皮弁

著者: 橋川和信

ページ範囲:P.508 - P.515

POINT

●腓骨皮弁は,腓骨動静脈を血管茎とし,腓骨と下腿外側の皮膚を含む複合皮弁として挙上される。

●頭頸部領域では,主に上顎や下顎に生じた欠損を再建するための遊離皮弁として用いられる。

●一般的な解剖構造に加えて下腿のコンパートメントについても理解しておくと,安全かつ速やかに挙上可能である。

●術前の画像診断による骨皮弁採取部の血管評価はきわめて有用である。

●血管系に問題がある場合は,対側の腓骨皮弁やほかの皮弁へ変更するほうがよい。

空腸

著者: 川端一嘉

ページ範囲:P.516 - P.522

POINT

●咽喉食摘術後の標準的再建としての遊離空腸再建方法

●咽頭上方広範切除後の再建

●頸部食道の再建

●喉頭機能温存手術の再建

●喉頭温存下咽頭頸部食道全周性切除後の再建

●咽頭後壁上方高位切除後の再建

≪頭頸部再建の実際≫

頭蓋底・上顎再建

著者: 亀井譲

ページ範囲:P.524 - P.527

POINT

●頭蓋底,口蓋,顔面皮膚の優先順位で再建する。

●遊離腹直筋皮弁移植が有用である。

●中頭蓋底再建では顔面神経の再建も必要となることが多い。その際,遊離大網移植は有用である。

口腔・中咽頭・下顎再建

著者: 中川雅裕 ,   井上啓太 ,   赤澤聡

ページ範囲:P.528 - P.535

POINT

●頭頸部癌でよく用いられる遊離皮弁は,前腕皮弁,前外側大腿皮弁,腹直筋皮弁,腓骨皮弁,肩甲骨皮弁などである。

●舌再建では切除部位や切除範囲により皮弁の選択が異なり,基本的には舌半切では前腕皮弁や前外側大腿皮弁などのボリュームが少ない皮弁を選択し,亜全摘以上ではボリュームのある腹直筋皮弁を選択するが,患者のBMIの考慮も重要である。

●中咽頭再建ではGehanno法や舌根断端と咽頭後壁断端の縫い上げを行い,できるだけ欠損面積を小さくし,粘膜面に皮島の露出を少なくする。

●下顎再建は血管柄付き骨再建が第一選択であり,腓骨皮弁や肩甲骨皮弁,腸骨皮弁などが用いられている。骨再建の適応でない症例では再建プレートと皮弁を用いるが,正中を越えない切除であれば皮弁のみ再建も可能である。

下咽頭・頸部食道再建の実際

著者: 東野琢也 ,   櫻庭実

ページ範囲:P.536 - P.541

POINT

●下咽頭・頸部食道の再建について,咽頭喉頭頸部食道全摘時の再建,喉頭温存頸部食道切除時の再建,下咽頭部分切除時の再建に分けて述べた。

●咽頭喉頭頸部食道全摘時および喉頭温存頸部食道切除時の再建には遊離空腸移植を用いている。

●咽頭喉頭頸部食道全摘時の遊離空腸による再建では,移植空腸がたるまないように移植することが良好な嚥下機能の獲得に重要である。

●下咽頭部分切除後の再建では,切除が下咽頭に限局する場合は遊離空腸パッチを,披裂喉頭蓋ヒダなど喉頭の一部に及ぶ下咽頭喉頭部分切除の場合は,遊離前腕皮弁を用いて再建している。

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欧文目次

ページ範囲:P.453 - P.453

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.543 - P.543

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.544 - P.544

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.548 - P.548

 5月21日から23日までの3日間,東京で日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会が開催されました。会長は本誌編集委員の小川郁先生です。スチーブ・ジョブズばりの華麗な会長挨拶に始まり,再生医療で高名な慶應義塾大学岡野栄之教授の特別講演,村上信五先生の「顔面神経麻痺」と宇佐美真一先生の「難聴遺伝子」の宿題報告,最後はテレビ朝日小川彩佳アナウンサー(小川会長のお嬢様)司会のよる閉会式。最初から最後まで,趣向に満ちた素晴らしい学会でした。いつもなら暴飲暴食でグッタリの学会からの帰り道,今日は心地よい疲れのなか,新幹線の車中でこの「あとがき」を書いています。ちなみに,慶應義塾大学眼科坪田一男教授のご講演によれば,少なくともネズミの世界では,暴飲暴食しても,1日置きにカロリー制限をすれば老化予防に役立つとのこと。人に当てはまるのかわかりませんが,ダイエットが苦手な私には朗報でした。

 ところで,6月4日から6月6日までの3日間,神戸国際会議場で小生が会長を務めるアジア頭頸部癌学会・日本頭頸部癌学会のジョイント・ミーティングが開催されます。ということで,本号の特集は,このタイミングに合わせ,いつもお世話になっている神戸大学形成外科橋川和信先生に「特集 All about頭頸部再建—多彩な皮弁を使いこなす!」を企画していただきました。執筆者は,中塚貴志先生・他(埼玉医科大学),貴志和生先生・他(慶應義塾大学),清川兼輔先生・他(久留米大学),兵藤伊久夫先生(愛知県がんセンター中央病院),朝戸裕貴先生・他(獨協医科大学),久保盾貴先生・他(大阪大学),木股敬裕先生・他(岡山大学),山本有平先生・他(北海道大学),橋川和信先生(神戸大学),川端一嘉先生(がん研有明病院頭頸科),亀井譲先生(名古屋大学),中川雅裕先生・他(静岡県立がんセンター),櫻庭 実先生・他(国立がん研究センター)とオールジャパンの錚錚たるメンバーです。増刊号「こんなときの対応法がわかる—耳鼻咽喉科手術ガイド」(87巻5号)とともに,耳鼻咽喉科・頭頸部外科医座右の書として,ぜひご活用ください。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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