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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科87巻9号

2015年08月発行

雑誌目次

特集① 外来で要注意!アレルギー周辺疾患

ページ範囲:P.665 - P.665

口腔アレルギー

著者: 白崎英明

ページ範囲:P.666 - P.671

POINT

●口腔アレルギー症候群は,特定の食物摂取後30分以内に口腔内の痒みや異常感や腫れが出現する病態の総称である。

●北海道や北欧に多いシラカバ花粉症では高率に合併し,花粉抗原と果物抗原に共通した部分があることに起因する。

●経皮的に感作されたラテックスアレルギーにおいても高率に口腔アレルギー症候群を併発する。

●診断には,問診,血清の特異的IgE検索,スキンプリックテスト,経口負荷試験などがあるが,後2者の検査においてはアナフィラキシーショックのリスクもあるので注意が必要である。

●鑑別すべき疾患として血管性浮腫が挙げられるが,食物摂取に関連しないため,問診により容易に鑑別される。

●治療の基本は,ほかの食物アレルギーと同様に抗原の回避となるが,口腔アレルギー症状に対する免疫療法の有効性についてはいまだに結論がでていない。

喉頭アレルギー

著者: 内藤健晴

ページ範囲:P.673 - P.677

POINT

●全身アレルギー(アナフィラキシー)の一部分症である急性喉頭アレルギーは,急激な喉頭粘膜浮腫による呼吸困難あるいは窒息の危険回避のため速やかな対応が要求される。

●慢性喉頭アレルギーは季節性と通年性に分類され,それぞれに診断基準が示されており,ともに抗ヒスタミン薬が有効である。

●通年性喉頭アレルギーは咽喉頭異常感症や慢性咳嗽の原因疾患の1つとなる。

●通年性喉頭アレルギーの咳は,咳喘息,胃食道逆流症,薬剤誘発性咳嗽,心因性咳嗽,後鼻漏症候群,好酸球性気管支炎など鑑別すべき類似疾患が多い。

●通年性喉頭アレルギーは耳鼻咽喉科医にとって下気道の重篤な疾患(肺癌,肺結核,肺線維症など)の除外が重要である。

遺伝性血管性浮腫

著者: 越塚慶一 ,   岡本美孝

ページ範囲:P.679 - P.683

POINT

●遺伝性血管性浮腫(HAE)は稀な疾患であるが,喉頭浮腫をきたすと死に至る場合がある。

●耳鼻咽喉科を受診する可能性があり,耳鼻咽喉科医が知っておくべき疾患である。

●診療ガイドラインが確立されており,診断や治療はガイドラインを参考に行っていく。

●治療にはC1-INH製剤を処方し,ステロイド製剤や抗ヒスタミン薬は無効である。

金属アレルギー

著者: 関東裕美

ページ範囲:P.684 - P.690

POINT

●金属製品による接触皮膚炎と生体内金属による全身型金属アレルギーがある。

●経皮感作の診断にはパッチテストが有用で,全身型金属アレルギーでは経皮感作が成立していない症例もあるので,その診断は食事負荷テストが有用である。

●高齢者は経皮感作,経口・経粘膜感作が成立する機会が多いので,気付かぬうちに金属アレルギーが成立していることがある。

食物アレルギー

著者: 山本幹太 ,   柳田紀之 ,   海老澤元宏

ページ範囲:P.692 - P.699

POINT

●原因食物の摂取により,皮膚症状,呼吸器症状,粘膜症状,消化器症状,そして複数臓器に症状が出現することをアナフィラキシーと呼び,ショック症状(意識障害,血圧低下など)に進展することもある。

●問診,血液検査,皮膚テストなどで得られた情報を参考に,食物経口負荷試験で確定診断を行う。

●管理の基本は,正しい原因─アレルゲンの診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去が原則である。

●誤食などにより誘発された症状に対しては症状/重症度に応じて,ヒスタミンH1受容体拮抗薬投与,ステロイド投与,β2刺激薬の吸入,アドレナリン筋注を行う。

薬物アレルギー

著者: 中村陽一

ページ範囲:P.700 - P.707

POINT

●薬物アレルギーおよび類似病態は薬物による有害事象(ADR)全体の約2割を占める。

●症状による薬物アレルギーの診断は難しく,原因薬剤の特定には,詳細な問診が重要となる。

●薬物アレルギーへの対処の原則は被疑薬の中止と再発の防止である。

●アナフィラキシーを疑う場合はアドレナリンほかの速やかな処置が必要である。

●生命にかかわる重症薬疹を疑う場合は適切な専門施設へ紹介する。

●チャレンジテストが必要な場合は危険度を熟知した専門施設で実施する。

アナフィラキシーへの対応

著者: 金子純也 ,   畝本恭子

ページ範囲:P.709 - P.715

POINT

●アナフィラキシー症状の早期発見

●重症度の把握

●エピネフリン使用のタイミングと使用方法

●エピネフリン無効時の対応

●再発予防とエピペン

特集② 今また結核を見直す

ページ範囲:P.717 - P.717

結核総論—わが国の現状と問題点

著者: 山岸文雄

ページ範囲:P.718 - P.723

Point

●2013年の結核罹患率は人口10万対16.1と欧米先進国の数倍であり,依然として結核中まん延国といわれている。

●結核患者の高齢化が著明であり,70歳以上の患者が57%,80歳以上の患者が36%を占め,80歳以上の罹患率は79.5と高い。

●最近の結核発病は,喀痰塗抹結核患者と接触した既感染者,免疫抑制宿主,健康管理の機会に恵まれない者などの,ハイリスク集団に集中する傾向がある。

●最近の結核集団感染事例は事業所が最も多く,次いで家族・友人,医療機関など,学校の順である。

●新規発生結核患者に占める外国人の割合は20代で特に顕著である。国籍では中国,フィリピン,韓国・北朝鮮の順であり,治療中断や薬剤耐性など,問題点が多い。

●今後,結核病床の確保,および結核診療にあたる医師の確保は重要な課題である。

中耳結核

著者: 近澤仁志 ,   小島博己

ページ範囲:P.724 - P.728

Point

●中耳結核の臨床症状や臨床所見は近年,古典的な症状・所見から変遷してきており,時に診断と治療が遅れてしまうこと(doctor's delay)が問題となる。

●耳鼻咽喉科領域の結核症例の診療では,医療器具を媒体とした感染拡大の可能性があり,早期発見と早期治療による合併症予防や感染拡大防止がきわめて重要である。

●難治性の中耳炎に遭遇した場合,中耳結核も常に念頭におき診療にあたることが早期診断につながる。

●各種検査法を組み合わせて繰り返し施行することが必要であり,それらの結果を総合的に判断し,確定診断を得ることが重要である。

●初回標準治療は,INH,RFP,PZAにSMまたはEBを加えた抗結核薬多剤併用療法が推奨されている。

口腔・咽頭結核

著者: 平海晴一 ,   佐藤宏昭

ページ範囲:P.729 - P.733

Point

●口腔・咽頭結核は稀であるが,上咽頭,舌に比較的好発する。前者は20〜40代の女性,後者は50歳以上の男性に多い。

●上咽頭結核は滲出性中耳炎をはじめとする耳症状を,舌結核は潰瘍をきたし疼痛を伴いやすい。頸部リンパ節腫脹の合併頻度は高い。

●臨床症状と結核菌検査,免疫学的検査,画像診断,組織学的検査から総合的に診断するが,口腔・咽頭結核では組織学的検査が比較的施行しやすく有用である。

●耐性化を招かないように呼吸器科医師と連携して治療にあたるべきである。

●HIV感染は結核のリスク因子であるため,HIV感染の合併にも留意する必要がある。

喉頭結核

著者: 鈴木亮 ,   大森孝一

ページ範囲:P.734 - P.740

Point

●喉頭結核の診断と治療

●結核患者および医療スタッフへの対応

●症例提示

頸部リンパ節結核

著者: 黒野祐一

ページ範囲:P.742 - P.747

Point

●頸部リンパ節結核は胸膜炎に次いで多い肺外結核である。

●病期により初期腫脹型,潰瘍瘻孔型,硬化型に分類される。

●画像検査で内部不均一な所見がある場合は浸潤型や膿瘍型の頸部リンパ節結核を疑う。

●リンパ節穿刺吸引検査は結核菌の検出とともに病理組織学的検査が可能である。

●初期腫脹型や細胞診で肉芽腫性病変が疑われる症例では開放リンパ節生検を行う。

抗結核薬総論

著者: 土井教生

ページ範囲:P.748 - P.753

Point

●結核の化学療法は作用機序の異なる複数の抗結核薬の同時併用による6〜9か月間の長期治療を原則とする。

●治療開始初期2か月間はRFP+INH+PZAの3剤併用治療を基本に,続く継続治療期間はRFP+INHの2剤併用を基本とする。

●多剤耐性結核(MDR-TB)治療のための新薬デラマニド(デルティバ®)の臨床適用が可能になった。デラマニドの適用は併用薬として効果の期待できるニューキノロン系抗菌薬およびPZAの少なくともいずれか1剤に感受性を示す症例に限定して適用する。

書評

今日から使える医療統計

著者: 小林広幸

ページ範囲:P.691 - P.691

臨床研究を行う研究者,医学論文を紐解く臨床医は必読!医療統計学珠玉の指針がここに

 “数式を使わないで直観的に学ぶ”「今日から使える医療統計学ビデオ講座」で,精力的にわかりやすい情報を発信されてきた新谷 歩教授の医療統計への慧眼と熱き思いが,単行本として結実し上梓された。基礎および臨床医学研究大国である米国で生物統計学者として20年の豊富なキャリアを重ねてきた著者が,医療統計の重要なテーマに関する極意を例題/具体例を活用し読み物形式で伝授してくれる。これまで医療統計の本に構えてしまった読者でも,数時間もあれば楽しく講義を受けている感覚で一気に読めるだろう。

 本書を読み進めていくと,2003年から2年間ヴァンダービルト大学大学院の臨床研究科学マスターコースで新谷教授から医療統計の講義・演習を受けた際の衝撃が鮮烈に蘇ってきた。グラフィックやイメージを多用し実例を基に医療統計の概念や前提条件を教えてくれる講義は,医療統計学に対する見方が一変,目から鱗が落ちる連続で,楽しみながら医療統計に関する知識・スキルを習得することができた。新谷教授は,研究者としてはもちろん教育者としても一流で,そのユニークな統計教授法には定評があり,ヴァンダービルト大学でベストティーチングアワードを受賞している。

トラブルに巻き込まれないための医事法の知識

著者: 古川俊治

ページ範囲:P.716 - P.716

臨床家に読んでほしい難解な法的議論を平易にまとめた学術書

 全国の第一審裁判所に提起される医療過誤訴訟の数をみると,1990年代から2004年にかけて急増し,その後は,同程度の数にとどまっている。しかし,訴訟には至らないかなりの割合の医事紛争が,当事者間の示談や各地の医師会などの機構を通じて,裁判外で解決処理されているため,実際に医事紛争数が減少しているのかどうかは明らかではない。1990年代からの医事紛争増加の理由として,医師数が増加して医療供給が量的に確保されたことによる患者数の増加,新薬・新技術の開発に伴う副作用や合併症の増加なども挙げられるが,第一の理由は医療に関する一般的知識が国民に普及し,患者の人権意識が高揚したことにある。このような患者の権利意識の伸張を背景に,近年の裁判所の考え方には大きな変化がみられ,近年の裁判例では,医療機関に要求される診療上の注意義務は厳しいものとなっている。

 それ以上に,仮に勝訴するにしても,患者からクレームを受けたり訴訟を提起されたりして,その対応に追われることは,病院・医療従事者にとって大きな時間的・精神的負担となる。何よりも,医事紛争を未然に防ぐ対策が,きわめて重要である。医療事故や医事紛争は,それぞれの医療機関において,同じような原因で発生することが多い。したがって,過去の事例に学び,その原因を分析し,自院の医療事故や医事紛争の予防に役立てる取り組みが重要である。また,医事紛争は,医療従事者に法的意味での過失があり,その結果,悪しき結果が実際に患者に発生した場合にだけ起こるわけではない。医療従事者が法律知識を欠いているために,対応や説明を誤り,患者側の不信感を強めているという場合も多い。したがって,医療従事者は,広く病院・臨床業務に関する基本的な法律知識を学び,医療事故や医事紛争に対する適切な対応を習熟しておくことが必要である。このことは,医療機関の管理者だけではなく,実際に患者に接することになる,第一線で活躍する医療従事者にこそ望まれる。

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欧文目次

ページ範囲:P.661 - P.661

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.755 - P.755

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.756 - P.756

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.760 - P.760

 6月末,手術前の病棟回診で患者さんの部屋におじゃましたときのことです。その患者さんは一心不乱にパソコンを操作しておりましたので「何かお仕事ですか」と尋ねたところ,株取引をやっているとのこと,ギリシャ危機で株安激しく,まさに激動の時間帯,このときに利益を上げようというものでした。手術前日でしたが,おそらく一晩中こっそりパソコンに張り付いていたのではと想像されました。本誌が発刊されるころはユーロ圏とギリシャの関係もはっきりしていると思います。ギリシャ特有の税率,年金,観光資源,公務員待遇について,折に触れ耳にしますが,われわれ日本人にとってはその国民性の違いに驚かされます。

 さて,「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」をはじめとして本邦の雑誌作製に多く携わって参りましたが,雑誌の企画,編集,次いで執筆者への原稿依頼,原稿受理の過程のほとんどにおいて,依頼させていただいた執筆者からは,充実した原稿を期日にピタッと合わせていただきます。ギリシャのニュースをみるたびにこれも日本人のなせる業か?と,あるいは耳鼻咽喉科を選択された先生の勤勉さか?といつも納得させられています。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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