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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科88巻12号

2016年11月発行

雑誌目次

特集 外来に必須! 外用薬の上手な使い方

ページ範囲:P.897 - P.897

《外来処置》

手術・処置時に用いる消毒薬

著者: 杉本賢文 ,   曾根三千彦

ページ範囲:P.898 - P.900

POINT

●処理可能な抗菌スペクトルにより消毒薬は高水準消毒薬,中水準消毒薬,低水準消毒薬に分類される。

●皮膚,粘膜などの消毒対象部位,創部,手術部といった消毒部位の状況に応じて適切な消毒薬を選択する必要がある。

局所麻酔薬

著者: 中田誠一

ページ範囲:P.902 - P.905

POINT

●局所麻酔薬はアミド型とエステル型とがある。その違いを理解し,それぞれ代表的な薬の特性をよく知ることが重要である。

●局所麻酔薬による中毒や,その注意点を熟知したうえで日帰り手術や処置などに積極的に使用することは,耳鼻咽喉科医にとっては必要不可欠である。

血管収縮薬

著者: 堀井新

ページ範囲:P.906 - P.907

POINT

●血管収縮薬はアドレナリンα2受容体作動薬であり,エピネフリンに比べ血管収縮作用は強力である。プレドニゾロンを含有する薬剤もある。

●血管収縮薬は,鼻閉治療薬として,あるいは処置前の局麻併用薬として用いられている。

●治療薬として用いる場合は,点鼻薬性鼻炎の予防のため1〜2週間以内の使用にとどめるべきである。

●局麻併用薬として用いる場合は,年齢によって使用薬剤や濃度に関する推奨ガイドラインが存在する。

ネブライザー用薬

著者: 齋藤康一郎

ページ範囲:P.908 - P.912

POINT

●「急性副鼻腔炎に対するネブライザー療法の手引き」を参考にする。

●ネブライザーでの投与に保険適応のある薬剤は,抗菌薬,ステロイドともに少ない。

●鼻咽喉疾患に対する各薬剤の有効性を理解したうえでEBMに基づいたネブライザー治療を行う。

《耳科領域》

抗菌点耳薬

著者: 堤剛

ページ範囲:P.914 - P.916

POINT

●抗菌点耳薬は局所感染巣に高濃度の抗菌薬を投与することができる。

●外耳道炎と鼓膜炎,慢性穿孔性中耳炎急性増悪時がよい適応となる。

●穿孔のない急性中耳炎は病巣に薬剤が届かず適応とならない。

●耐性化は起こしにくいが,漫然と長期投与することは避けなければならない。

耳処置薬

著者: 白馬伸洋

ページ範囲:P.918 - P.920

POINT

●難治性耳漏の起炎菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA),緑膿菌,AspergillusCandidaなどに有効とされる耳処置薬についてそれぞれ検証した。

●難治性耳漏に対しては抗菌剤を多用せず,頻回の耳洗浄と適切な耳処置薬を併用した局所処置が重要である。

《鼻科領域》

抗菌鼻腔用軟膏—ムピロシンカルシウム軟膏

著者: 三橋拓之 ,   梅野博仁

ページ範囲:P.922 - P.924

POINT

●ムピロシンカルシウム軟膏は,MRSAによる術後感染症や院内感染を防止するために鼻腔内MRSA保菌者に対して使用する薬剤である。

●ムピロシンカルシウム軟膏は適応症と耐性菌の観点から適正使用が求められる薬剤であるため,耳鼻咽喉科の日常診療には用いるべきではないと考える。

点鼻用副腎皮質ステロイド

著者: 竹内裕美

ページ範囲:P.926 - P.929

POINT

●ステロイド点鼻液の種類によって,剤型,1日の使用回数,1回の噴霧回数,適応年齢,デバイスの形状などが異なる。

●アレルギー性鼻炎に対する効果は薬剤間で差がない。

●急性副鼻腔炎や副鼻腔炎の術後治療などアレルギー性鼻炎以外の疾患に対する有効性が検討されている。

点鼻用抗アレルギー薬

著者: 和田弘太

ページ範囲:P.930 - P.931

POINT

●点鼻抗アレルギー薬(ケミカルメディエーター遊離抑制薬,点鼻抗ヒスタミン薬)の処方に関しては,鼻アレルギー診療ガイドラインでの記載はない。

●安全性という側面から,治療のステップダウンや妊婦などで,まだまだ使用の機会はある薬剤と考えられる。

鼻出血用外用薬

著者: 吉川衛

ページ範囲:P.932 - P.934

POINT

●鼻出血用外用薬のよい適応は,キーゼルバッハ部位のような視認しやすい部位からの,拍動性ではない少量の鼻出血である。

●鼻出血用外用薬としては,粘膜を変性させて止血する腐食薬と,種々の作用機序をもつ局所止血薬がある。

●腐食薬による止血では,綿棒で塗布する際に出血点以外の正常鼻粘膜や鼻入口部の皮膚を腐食させないよう注意しなければならない。

●局所止血薬のなかには非常に強力な止血効果を有する製剤もあるが,過信は禁物である。

《口腔・咽喉頭領域》

含嗽薬

著者: 井口広義

ページ範囲:P.936 - P.939

POINT

●薬価基準に収載されている含嗽薬には,アズレン製剤(アズレンスルホン酸ナトリウム水和物,アズレンスルホン酸ナトリウム水和物・炭酸水素ナトリウム),ヨード製剤(ポビドンヨード),抗生物質製剤(フラジオマイシン硫酸塩),界面活性剤(ベンゼトニウム塩化物)がある。

●耳鼻咽喉科外来ではアズレンスルホン酸ナトリウム水和物とポビドンヨードが主として処方されるが,各薬剤の特徴をふまえたうえで的確な薬剤選択が必要である。

トローチの基礎知識

著者: 長谷川雅世 ,   吉田尚弘

ページ範囲:P.940 - P.943

POINT

●トローチは口腔咽頭の炎症性疾患,特に軽症例の局所治療として有用である。

●各種薬剤の特徴を理解したうえで,疾患の重症度や患者の状態にあわせて適切に使用することが重要である。

口内炎治療薬

著者: 山下拓

ページ範囲:P.944 - P.947

POINT

●アフタ性口内炎へのステロイド軟膏は一般に著効するが,口内炎の種類を見極めた治療を行うことが重要であり,ステロイド軟膏の漫然とした使用は避ける。

●褥瘡性潰瘍に対してもステロイド軟膏は有効であるが,原因(義)歯の調整,処置も併せて行う。また難治性の場合や硬結を蝕知する場合は悪性疾患の鑑別も必要である。

●難治性の口内炎は,自己免疫疾患や内科・皮膚科疾患または悪性疾患の可能性を考えて診断を進める必要がある。

口腔乾燥症状改善薬

著者: 星川広史

ページ範囲:P.948 - P.950

POINT

●原因となる疾患や薬剤がある場合は,それらの治療や薬剤の変更などを考慮する。

●口腔粘膜の状態,齲蝕,歯周病,義歯の有無と乾燥の程度を把握する。

●内服薬のほか,口腔内の状態や嗜好に合った外用剤の選択と,日常生活や衛生指導にも留意する。

歯周病治療用軟膏

著者: 相馬啓子

ページ範囲:P.952 - P.955

POINT

●歯周病治療の基本は,プラークコントロールである。

●形成されたバイオフィルムや歯石は,抗菌薬では壊しにくい。

●スケーリング・ルートプレーニング(SRP)などの機械的な処置後に,ミノサイクリン歯科用軟膏などを歯周ポケットに注入し,治療効果を高める。

《顔面・頭頸部領域》

非ステロイド抗炎症外用薬

著者: 田中康広

ページ範囲:P.956 - P.959

POINT

●NSAIDs外用薬はステロイド外用薬と比較するとその種類は少なく,抗炎症作用によるランク付けもされていない。

●ステロイド外用薬よりも副作用は少ないが,抗炎症作用は非常に弱いため対応できる疾患が少ない。

●ステロイドおよびNSAIDs外用薬の特性,副作用の相違点を理解して使い分けることが治療を行ううえで重要である。

副腎皮質ステロイド外用薬

著者: 横関博雄

ページ範囲:P.960 - P.964

POINT

●副腎皮質ステロイド外用薬(以下,ステロイド外用薬)はアトピー性皮膚炎,接触皮膚炎,乾癬,扁平苔癬など,ほとんどの炎症性皮膚疾患に有効である。

●ステロイド外用薬は,皮膚血管収縮作用と臨床効果より,ストロンゲスト,ベリーストロング,ストロング,マイルド,ウイークの5段階に分類されている。

●ステロイド外用薬の基剤は季節,皮膚の状態,部位によって決める。頭部はローション基剤が使いやすい。

●ステロイド外用薬の強さは皮膚症状の程度,病変の違い,年齢,皮疹の部位,範囲に応じて適切なステロイド外用薬を選択する必要がある。顔・頸部は弱いステロイド外用薬で十分である。

●ステロイド外用薬には皮膚萎縮など多くの副作用があるが,適切なステロイド外用療法を行うとこのような副作用は予防できる。

皮膚潰瘍治療薬—創状態に応じた使い分け

著者: 薩摩敦子 ,   坪井良治 ,   塚原清彰

ページ範囲:P.966 - P.969

POINT

●真皮下層レベルより深い慢性皮膚潰瘍では,壊死組織のデブリードマンと滲出液のコントロールが重要である。壊死組織の有無や滲出液の量などの条件で,外用薬を使い分ける。

●Mohs chemosurgeryは腫瘍表面を凝固・固定し部分的に切除する,あるいは止血や消臭が目的である。高齢や認知症などの理由で手術が困難な患者に用いる。頭頸部がんなどの露出する皮膚浸潤癌に有効である。

原著

上顎洞verrucous carcinomaの1例

著者: 三嶽大貴 ,   祢津宏昭 ,   堂坂善弘 ,   打田武史 ,   福田諭

ページ範囲:P.971 - P.975

はじめに

 verrucous carcinoma(VC)は1948年にAckerman1)によって確立された扁平上皮癌(squamous cell carcinoma:SCC)の亜型である。通常のSCCとは異なり局所での緩徐な発育や弱い浸潤性,低い転移率,外科的切除により予後良好などと特徴づけられる低悪性度の癌であり,その頻度はSCCの2.2%といわれている2)。頭頸部領域では口腔や喉頭に好発するが鼻副鼻腔の発生例は稀で,すべての鼻副鼻腔腫瘍の1%程度との報告がある3)。今回われわれは,再発を繰り返し診断に難渋した上顎洞VCの1例を経験した。本症例についてその臨床像を提示し,文献的考察を加えて報告する。

詳細な聴覚平衡覚検査を行った脊髄小脳変性症症例

著者: 井上彰子 ,   五島史行 ,   井田裕太郎 ,   佐々木優子 ,   川邉文代 ,   枝松秀雄

ページ範囲:P.977 - P.983

はじめに

 脊髄小脳変性症は進行性の変性疾患で,「運動失調を主症候とし,小脳,脊髄に病変の首座をもつ原因不明の変性疾患の総称」である。主症状は不安定歩行,四肢機能障害,眼球運動障害,構音障害であり,めまい・ふらつきを主訴として耳鼻咽喉科を受診することもある疾患である。

 今回われわれは,神経耳科学検査が小脳機能評価に有用であった脊髄小脳変性症例を経験した。本症例の診断過程や臨床的特徴について若干の文献的考察を含めて報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.895 - P.895

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.976 - P.976

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.984 - P.984

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.988 - P.988

 専門医制度,専門医機構の混乱の中,耳鼻咽喉科学会は粛々と制度に従い学会活動がなされていますが,今後,新専門医機構がどのような施策を打ち出してくるのかいまだ不明な点が多々残されています。結果に振り回されず,着実に進んでいくことを願っています。

 さて,毎年9月から11月は,多くの他学会がそうであるように,耳鼻咽喉科領域も多数の学会総会・学術講演会が開催されます。日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会,日本口腔・咽頭科学会,日本耳科学会,日本鼻科学会,日本聴覚医学会,日本めまい平衡医学会,日本音声言語医学会,日本気管食道科学会,さらに中国四国ブロック主幹の専門医講習会と勉学の秋といったところです。改めて耳鼻咽喉科医の関わる疾患,領域の広さを認識させられます。もちろんすべての学会に参加される先生は少ないと思いますが,日常診療とバランスをとりながら,いくつかの学会を通じて新しい知識を入れたいところです。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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