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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科88巻3号

2016年03月発行

雑誌目次

特集 新しい指定難病制度を理解する

ページ範囲:P.185 - P.185

指定難病制度の概要

著者: 飯野ゆき子

ページ範囲:P.186 - P.190

POINT

●これまで難病として特定疾患治療研究事業に指定されていた疾患のなかで医療費助成の対象であった56疾患の見直しが行われた。

●難病の定義は,発病の機構があきらかでない,治療方法が確立していない,希少な疾病,長期の療養を必要とするもの,の要件を満たすものである。

●指定難病は,難病の要件を満たすものをさらに絞込み,希少な疾病を人口の0.1%程度以下であること,さらに「客観的な診断基準(又はそれに準ずるもの)が確立している事」が付け加えられた。

●新たな指定難病は,第一次分として従来の56疾患中53疾患を含んだ110疾患,第二次分として196疾患が指定され,おのおの2015(平成27)年1月1日,2015(平成27)年7月1日から医療費の助成が開始された。

●厚生労働省研究班から提出された資料の審議の結果,耳鼻咽喉科領域からはアッシャー症候群,若年発症型両側性感音難聴,遅発性内リンパ水腫,好酸球性副鼻腔炎の4疾患が指定難病となった。

●診断書作成に関しては,診断基準を満たしていること,指定難病の対象は重症度によって厳しく規定されることを念頭に置く必要がある。

≪耳鼻咽喉科領域の指定難病≫

オスラー病

著者: 西野宏

ページ範囲:P.192 - P.196

POINT

●鼻出血,消化管出血,腹痛,口腔内出血,発熱,全身倦怠感,痙攣,頭痛の症状を呈する。

●診断基準と重症度分類がある。

●常染色体優性遺伝を示す。

●endoglin(ENG)遺伝子の変異を認めるHHT1とactivin receptor-like kinase 1(ACVRL1)遺伝子の変異を認めるHHT2のタイプがある。

●遺伝学的検査(ENG遺伝子,ACVRL1遺伝子,SMAD 4の変異)の結果のみで診断は可能である。

●症状を用いての診断では,反復する鼻出血,末梢血管拡張症,内臓病変,家族歴の有無で判定する。

ベーチェット病

著者: 川内秀之

ページ範囲:P.198 - P.202

POINT

●ベーチェット病では,種々の臓器に急性の炎症性病変をきたす。

●主症状は,口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍,皮膚症状,眼症状,外陰部潰瘍である。

●ベーチェット病では遺伝的背景としてHLA-B51の陽性率が高い。

●病因として,自己免疫異常や好中球機能過剰をはじめとした自然免疫系の異常が考えられている。

●眼病変が多彩であり,視力障害をきたすことに留意が必要である。

●眼病変,腸管,血管,中枢神経病変など重症例については,ステロイド薬や免疫抑制薬の全身投与が行われている。

●抗ヒトTNF-α抗体製剤,インフリキシマブ(レミケード®)の普及により,治療成績が著明に向上している。

好酸球性副鼻腔炎

著者: 松原篤

ページ範囲:P.204 - P.208

POINT

●難治性の副鼻腔炎である好酸球性副鼻腔炎が指定難病の対象とされた。

●診断にはJESREC Studyによる臨床スコアが重要であり,鼻茸組織中好酸球数により確定診断が得られる。

●末梢血好酸球数,CT所見,および,喘息・アスピリン不耐症・NSAIDsアレルギー合併の有無から重症度を判定し,中等症・重症の症例が申請対象となる。

●好酸球性中耳炎を合併する場合には,好酸球性副鼻腔炎の重症として申請対象となる。

シェーグレン症候群

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.210 - P.216

POINT

●シェーグレン症候群は指定難病制度の疾患群のうちの1つであり,耳鼻咽喉科医も理解しておくことが必要である。

●耳鼻咽喉科受診の多くはドライマウス,耳下腺炎の症状,他科からのシアログラフィー検査や口唇腺の生検依頼などである。

●本疾患の診断基準は国により異なり,わが国の診断基準は欧米のそれと共通点があるものの,異なっている項目も存在する。現状は1999年の改定診断基準に基づくが,将来はさらに改定される可能性がある。

●本稿では,本疾患の概要と海外の診断基準との比較,指定難病制度にかかわるサポート内容,重症度の判定,評価基準について解説した。

IgG4関連疾患

著者: 氷見徹夫 ,   高野賢一 ,   野村一顕 ,   阿部亜由美 ,   山本元久 ,   高橋裕樹

ページ範囲:P.218 - P.223

POINT

●耳鼻咽喉科医が主に扱うのはIgG4関連唾液腺病変(ミクリッツ病とキュットナー腫瘍)である。

●診断は,症状,高IgG4血症,リンパ球・IgG4陽性細胞浸潤と線維化の組織所見による。

●典型的ミクリッツ病は臓器別診断基準を,キュットナー腫瘍は包括診断基準も用いる。

●確診例であっても,唾液腺単独病変,治療不要・寛解例は重症に分類されない。

●重症は,ステロイド抵抗性・依存性,他臓器障害(腎臓,膵臓など)のある症例である。

●ステロイド抵抗性・依存性は治療開始後6か月で判定する。

●生検が難しい臓器病変の診断確定のため,唾液腺病変の診断・生検が求められることがある。

若年発症型両側性感音難聴

著者: 西尾信哉 ,   宇佐美真一

ページ範囲:P.224 - P.232

POINT

●若年発症型両側性感音難聴は遅発性かつ若年発症(40歳未満の発症)の両側性感音難聴である。

●遅発性難聴を引き起こす原因遺伝子(ACTG1CDH23COCHKCNQ4TECTATMPRSS3WFS1)の変異が同定されていることが必要である。

●重症度分類において,高度難聴以上(500,1000,2000Hzの平均値で70dBHL以上)で指定難病の申請ができる。

●補聴器,残存聴力活用型人工内耳,人工内耳の効果が期待できる。

アッシャー症候群

著者: 岩崎聡

ページ範囲:P.234 - P.238

POINT

●アッシャー症候群は感音難聴に網膜色素変性症を伴う症候群である。

●臨床症状によりタイプ1,2,3に分類される。

●網膜色素変性症の症状と検査所見,難聴とめまいの症状と聴力検査所見が必要である。

●他の症候群を鑑別するため,ほかの随伴症状に注意する。

●アッシャー症候群の原因遺伝子診断も行うとよい。

指定難病制度を踏まえたミトコンドリア病の診療

著者: 松永達雄 ,   山本修子 ,   村山圭

ページ範囲:P.240 - P.247

POINT

●ミトコンドリア病とは呼吸鎖を中心とするミトコンドリア機能の障害を病態とする疾患の総称である。

●ミトコンドリアDNAまたは核DNAの異常で生じる。

●全身の臓器が障害されうるが,難聴など単一の臓器症状の場合もある。

●間歇性または再発寛解型の経過を呈する場合が多い。

●根本的治療はまだないが,難聴に対して補聴器・人工内耳の有効例が報告されている。

●難聴以外の全身症状があれば,小児科や内科の診療を受けることが重要である。

遅発性内リンパ水腫

著者: 武田憲昭

ページ範囲:P.248 - P.251

POINT

●遅発性内リンパ水腫が第2次指定難病に選定された。

●指定難病としての遅発性内リンパ水腫の診断基準によりdefiniteと診断され,重症度分類の3項目のすべてが4点以上の後遺症例が助成の対象である。

●遅発性内リンパ水腫の診断基準,重症度分類,臨床調査個人票は厚生労働省のホームページに掲載されている。

神経線維腫症

著者: 神崎晶

ページ範囲:P.252 - P.255

POINT

●神経線維腫症Ⅰ,Ⅱ型について疾患概要を解説した。

●診断基準を記し,指定難病の申請時の留意点を記した。

●障害福祉サービスについて記した。

書評

口腔咽頭の臨床 第3版

著者: 山岨達也

ページ範囲:P.217 - P.217

口腔咽頭領域の臨床における最先端の内容を網羅

 このたび,日本口腔・咽頭科学会より『口腔咽頭の臨床 第3版』が発刊された。本書は1998年に初版が,次いで2009年に第2版が刊行されており,今回6年あまりでの改訂である。初版ではB5判だったものが第2版からはA4判となり,各疾患の詳細な解説と写真,豊富な図が充実していたが,今回はこの6年あまりの間の新しい知識や知見が追加され,さらに充実したものとなった。いびきと睡眠時無呼吸症候群,摂食嚥下障害,構音障害,腫瘍などは前版に引き続き独立した章として編集されている。

 内容としては,まず基礎編として口腔・咽頭・扁桃・唾液腺などの「発生・解剖・機能」が,また摂食嚥下・味覚・唾液・構音・扁桃・睡眠時無呼吸症候群の「検査法」がそれぞれ取り上げられている。「発生・解剖・機能」ではわかりやすい解剖図や組織写真が多用されており,「検査」では観察のポイント,重症度判定や診断基準,起炎菌の検出頻度や試験の陽性率などが紹介されるとともに検査の実際が写真として提示され,初心者でもよく理解でき,検査を行う際の参考にできるようになっている。

原著

鼻性眼窩内合併症をきたした急性副鼻腔炎の2例

著者: 鯉田篤英 ,   栢野香里 ,   松本幸恵

ページ範囲:P.257 - P.262

はじめに

 鼻性眼窩内合併症は鼻副鼻腔疾患が原因で発症し,眼痛や眼瞼腫脹,眼球運動障害,視力障害などの視器症状をきたす疾患である。急激に視器症状が進行することが多く,耳鼻咽喉科疾患のなかでも緊急性の高い疾患の1つである。今回われわれは鼻性眼窩内合併症をきたした急性副鼻腔炎の2症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.183 - P.183

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.265 - P.265

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.266 - P.266

あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.270 - P.270

 空前の健康ブームを迎えています。テレビや雑誌も健康食やダイエットプログラムの宣伝であふれています。衝撃的な宣伝で有名な「ラ・・ップ」は生理学や栄養学などの優れた最新知見を体系化した2か月間で達成できるダイエットメソッドの開発に成功したとのこと。当教室員もこのダイエットメソッドに挑戦,2か月間で3kgの減量に成功したと喜んでいましたが,その後の食欲をみるとどれだけ効果が持続するか心配です。さて,健康食やダイエットプログラムの究極の目的はアンチエイジング(抗加齢)です。超高齢社会を迎えたわが国が健康ブームで盛り上がっているのはそのためです。日本の医療費は41兆円に達し,病気になってから治療するという対策だけでは国民の健康はもとより経済をも維持できなくなることは明らかで,予防医学への期待が高まっています。抗加齢医学は超高齢社会を迎えたわが国にとって最も期待されるアプローチであり,このアプローチを科学的に体系化する目的で設立されたのが日本抗加齢医学会です。本年,6月10日〜12日にパシフィコ横浜で第16回日本抗加齢医学会が開催されますが,その会長は東京大学の山岨達也教授です。「日本抗加齢医学会も16年目になりますが,耳鼻咽喉科領域の会長が主催するのは初めてのこととなります。耳鼻咽喉科領域の学会との共同企画,また外科手術のアンチエイジングに与える影響や異なる運動のアンチエイジング効果に関しても,ディスカッションの場を多く設けたいと考えています」とは山岨達也会長のご挨拶の一文です。ぜひ,多くの耳鼻咽喉科医が参加されることを期待したいと思います。

 さて,今月号の特集は「新しい指定難病制度を理解する」です。さまざまな紆余曲折を経て,2014年に「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病医療法)」が制定され,第1次実施分,第2次実施分を含めて現在,306疾患が指定難病として認定されています。耳鼻咽喉科領域でも多くの関連疾患が指定難病に認定され,多くの耳鼻咽喉科医が難病指定医に登録されています。指定難病制度を理解することは実地診療を行ううえで不可欠であり,ぜひこの機会に指定難病の概要を学んでいただきたいと思います。原著も臨床上重要な「鼻性眼窩内合併症」の症例報告です。花粉症も佳境となり耳鼻咽喉科医が最も忙しい時期に発行の3月号ですが,診療の合間に一読していただきたいと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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