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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科88巻4号

2016年04月発行

雑誌目次

特集 嚥下障害の完全マスター

ページ範囲:P.275 - P.275

嚥下の病態生理

著者: 今泉光雅 ,   大森孝一

ページ範囲:P.276 - P.282

POINT

●嚥下は,先行(認知)期,準備期,口腔期,咽頭期,食道期に分類され,誤嚥に直接関与する喉頭の役割は大きい。そのため,多職種によるチーム医療において耳鼻咽喉科医が積極的に貢献すべき領域と考えられる。

●摂食・嚥下運動にはさまざまな器官や,神経,筋肉が関与しているため,嚥下の病態生理の理解には,基本的な解剖や生理の知識が必要である。

●嚥下運動の中枢調節機構の解明など,さらなる研究が望まれる分野である。

嚥下機能評価

著者: 香取幸夫

ページ範囲:P.283 - P.290

POINT

●患者の経口摂取の状況に加え,誤嚥のリスクに関して評価する。

●問診,全身・局所の診察,簡易検査,嚥下内視鏡検査,嚥下造影検査の順に行う。

●局所の診察では,舌,咽頭,喉頭の運動と感覚に注目する。

●嚥下内視鏡検査では兵頭のスコアが有用で,特に感覚を評価する項目が重要である。

●嚥下造影検査はさまざま食材や体位での評価が可能で,治療的な検査としても行われる。

●医師,メディカルスタッフ,患者が評価結果を共有して治療を進めることが望まれる。

嚥下障害のリハビリテーション

著者: 國枝顕二郎 ,   藤島一郎

ページ範囲:P.291 - P.298

POINT

●嚥下障害の外科的治療の適応判断や,術後の嚥下機能改善のために嚥下リハは必須である。

●嚥下リハで重要なことは予後予測であり,嚥下リハの有効性や限界,嚥下障害の原因や病態を熟知しておく必要がある。

●嚥下障害のスクリーニングに水飲みテストなどがあるが,嚥下障害の早期発見のために最も大切なことは摂食場面の臨床的な観察である。

●嚥下リハでは,機能訓練だけでなく代償法や環境改善を疾患や障害に応じて使い分ける。

●誤嚥性肺炎患者において安全な摂食条件の設定が可能ならば安易な絶食は避ける。

●近年,非侵襲的脳刺激療法や神経筋電気刺激などを用い,従来の訓練と組み合わせた新たな嚥下治療が注目されている。

嚥下障害の外科的アプローチ—嚥下機能改善手術

著者: 兵頭政光

ページ範囲:P.300 - P.303

POINT

●嚥下機能改善手術は咽頭期障害を主とする嚥下障害に有効である。

●術前には嚥下内視鏡検査および嚥下造影検査による病態評価が不可欠である。

●輪状咽頭筋切断術,喉頭挙上術,声帯内方移動術などを病態に応じて選択・併用する。

●術後には嚥下リハビリテーションが必要で,それが実施できるADLが保たれていることが必要である。

●認知機能が低下した例や高齢者では経口摂取再獲得が困難なことが多い。

嚥下障害の外科的アプローチ—誤嚥防止術—いま医療現場で求められる役割と術式

著者: 鹿野真人

ページ範囲:P.304 - P.311

POINT

●高齢化と胃瘻普及のなかで誤嚥防止術は従来の位置づけを越える重要な役割を担うことができる治療法として,新たな認識が求められている。

●高齢者の誤嚥防止術の適応は経口摂取への強い希望,在宅介護の継続や施設入所・継続の希望をも十分に考慮して,本人・家族の同意のもと決定すべきである。

●高齢者に対する誤嚥防止術に求められる条件は,低侵襲,どんな頸部の状態でも施行可能,嚥下に有利な術式,安全で負担の少ない気道管理ができることである。

●新しい種々の術式の特徴として,手術操作範囲の縮小による低侵襲,輪状軟骨の鉗除や輪状咽頭筋の切断による嚥下改善,輪状軟骨鉗除による気管カニューレフリーが挙げられる。

●医療現場での期待に対して,安全で効果の高い新しい術式を耳鼻咽喉科医の多くがマスターし,さらに誤嚥防止術の施行できる施設が増えることが求められている。

頭頸部癌の嚥下障害リハビリテーション

著者: 高橋美貴

ページ範囲:P.312 - P.316

POINT

●主治医らと日々コミュニケーションを図り,患者の病態や治療方針などを確認する。

●術前より患者のキャラクターや理解力,嚥下機能などの評価を行う必要がある。

●術前より嚥下リハビリテーションを行うと効果が得られやすい。

●放射線治療を行う患者にも治療前より嚥下リハビリテーションを行う。

●頭頸部外科医や看護師,歯科口腔外科医や歯科衛生士などの多職種と連携を図る。

脳・神経筋疾患にかかわる嚥下障害

著者: 三枝英人

ページ範囲:P.319 - P.329

POINT

●進行性の脳・神経筋疾患であっても,個々の患者に発症している嚥下障害の病態生理は必ずしも一様ではない。個々の患者の真の嚥下障害の病態生理を明らかにすることで,さまざまに対応が可能である。

●脳・神経筋疾患の嚥下障害の誘因,増悪因子の多くは,姿勢保持の障害とともに消化管運動不全によるものであり,その対応は重要である。

●緩徐進行性筋疾患では,嚥下障害のみを初期症状として発症する場合がある。輪状咽頭筋切断術を行い,症状の改善を図るとともに,術中に得られる筋組織の病理検査により初めて診断が得られる場合がある。

●自己免疫性疾患を中心に治療可能な脳・神経筋疾患では,嚥下障害に対する治療に固執せず,原疾患の制御が十分なされるまで,患者を励ましつつ待つことも重要である。

●宿命的な経過を辿ることが予測される脳・神経筋疾患の患者の個々の生き方,生きる姿勢,心情を尊重し,患者のQOLを維持するための適切かつ確実な情報と技術を提供することが重要である。

高齢者の嚥下障害

著者: 唐帆健浩

ページ範囲:P.330 - P.336

POINT

●超高齢社会を迎え,高齢者の嚥下障害を診療する機会は,今後ますます増えていくであろう。

●高齢者は,加齢に伴う嚥下機能低下によって,嚥下の予備能は低い。

●高齢者は複数の常用薬を服用していることがあり,嚥下機能に悪影響を及ぼす薬剤には注意が必要である。

●誤嚥してもむせない,あるいは喀出できない可能性がある。

●高齢者の嚥下機能検査の際には,さまざまな配慮が必要である。

●嚥下機能を正しく評価したうえで,適切な食形態を提案する。

嚥下性肺炎の病態と治療

著者: 藤江俊秀 ,   稲瀬直彦

ページ範囲:P.338 - P.345

POINT

●嚥下性肺炎は本人も自覚しない不顕性誤嚥が主である。

●嚥下機能にはサブスタンスPがかかわっている。

●口腔内嫌気性菌を考慮に入れた抗菌薬の選択と用量調節をする。

●再発の予防のため,口腔ケア,肺炎球菌やインフルエンザワクチン接種を行う。

●高齢者は各臓器の機能が低下しており,適切な全身管理を行う。

原著

血友病A患者に発症した喉頭血腫の1例

著者: 森田真吉 ,   舘田勝 ,   天野雅紀 ,   中目亜矢子 ,   橋本省

ページ範囲:P.347 - P.350

はじめに

 血友病はX連鎖遺伝形式を示す先天性出血素因である。出血部位は関節内・筋肉内など深部出血の頻度は高いとされているが,口腔・気道に血腫をきたすことは比較的稀である。しかし出血すれば失血・窒息の危険があり速やかな対応を要する1〜3)

 今回,われわれは咽頭痛・摂食困難を主訴に来院,喉頭血腫を認めた血友病Aの症例を経験した。第Ⅷ因子の補充による保存的治療にて軽快したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

頭頸部頭蓋外髄膜腫の3例

著者: 鈴木秀明 ,   寳地信介 ,   小泉弘樹 ,   大久保淳一 ,   北村拓朗 ,   高橋麻由

ページ範囲:P.351 - P.356

はじめに

 髄膜腫はクモ膜細胞を母地とし硬膜に付着して発生する腫瘍で,原発性脳腫瘍全体の約1/4を占めている1)。髄膜腫のほとんどは頭蓋内部に向かって進展するが,稀に頭蓋外に進展したり発生したりする場合がある。今回われわれはこうした髄膜腫を3例経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.273 - P.273

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.359 - P.359

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.360 - P.360

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.364 - P.364

 3月3日,4日。大阪大学教授猪原秀典会長のもと,第28回日本喉頭科学会総会・学術講演会が開催されました。大阪駅直通ときわめて至便な会場で,米国を代表する2人の頭頸部外科医による招待講演,岩崎宏美さんの歌声,桂文枝(三枝)さんの特別講演と,実に贅沢な学会でした。参加人数も640名と過去最高! ご成功を心よりお慶び申し上げます。翌日の5日は神戸で第16回隈病院甲状腺研究会に出席。宮内昭病院長のアジアオセアニア甲状腺学会賞受賞記念講演で,米国甲状腺学会のガイドラインにも取り上げられた「低リスク甲状腺微小乳頭癌の非手術経過観察」など,世界有数の症例数を誇る同施設から発信された数々の貴重な知見を拝聴し,大きな刺激を受けました。

 さて,今月号の特集は「嚥下障害の完全マスター」です。前半はまず初めに,嚥下の病態生理と嚥下機能の評価を今泉光雅先生(福島県立医科大学)と香取幸夫先生(東北大学)に,続いて嚥下障害の治療法として,リハビリテーションを國枝顕二郎先生(浜松市リハビリテーション病院),外科的アプローチを兵頭政光先生(高知大学)と鹿野真人先生(大原綜合病院)にご執筆いただいています。後半は,各疾患における嚥下障害を取り上げ,頭頸部癌リハビリテーションを高橋美貴先生(神戸大学リハビリ部),脳・神経筋疾患を三枝英人先生(東京女子医科大学八千代医療センター),高齢者を唐帆健浩先生(杏林大学)に担当していただき,最後に嚥下性肺炎について藤江俊秀先生(東京医科歯科大学呼吸器)に解説していただいています。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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