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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科88巻5号

2016年04月発行

増刊号 耳鼻咽喉科処方マニュアル

1.主な薬剤の種類と使い方

向精神薬の種類と使い方

著者: 五島史行1

所属機関: 1国立病院機構東京医療センター耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.22 - P.27

文献概要

はじめに

 向精神薬(psychotropic)とは,中枢神経系に作用し,生物の精神活動に何らかの影響を与える薬物の総称である。抗精神病薬(antipsychotic),抗うつ薬(antidepressant),気分安定薬(mood stabilizer),精神刺激薬(stimulant),抗不安薬(anxiolytic),睡眠薬(hypnotic)のことである。このなかで耳鼻咽喉科で処方される頻度が高いものとして,睡眠薬,抗不安薬,抗うつ薬が挙げられる。本来,これらの薬剤が必要となる疾患は,不安障害,うつ病などの精神疾患である。これらの疾患を耳鼻咽喉科で診断・治療することはなく,精神科医に紹介することが多い。耳鼻咽喉科での適応は,実際には耳鼻咽喉科心身症である。

 心身症とは「その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し,器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし,神経症やうつ病など,他の精神障害に伴う身体症状は除外する」(1991年,日本心身医学会)と定義されている1,2)。耳鼻咽喉科の心身症として代表的なものには,めまい3),咽喉頭異常感症,耳鳴,アレルギー性鼻炎,嗄声,心因性難聴,顎関節症が挙げられる。耳鼻咽喉科を受診する心身症の割合は決して少なくない。総合病院の耳鼻咽喉科での心身症の割合は22.7%で,特に咽喉頭異常感や耳鳴,めまいを主訴とする場合には心身症の割合が高かったと報告されている4)。この割合は他科と比較しても低いものではない5〜7)

 ストレスの増加する現代において,ますます心身症患者の割合は増加することが予想される。本稿では,耳鼻咽喉科で用いられることの多い向精神薬と処方の実際を概説する8)

参考文献

1)小牧 元,他(編):心身症診断・治療ガイドライン2006—エビデンスに基づくストレス関連疾患へのアプローチ.pp2-9,協和企画,2006
2)中川哲也:心身医学の新しい診療指針(案).心身医学31:17-25,1991
3)矢野 純:【頭頸部の心身症】 めまい.心療内科7:103-109,2003
4)五島史行,他:総合病院耳鼻咽喉科における心身症の割合と心療耳鼻咽喉科医の必要性.心身医学50:229-236,2010
5)吾郷晋浩:心身医療のエッセンスとその実践再考.日本心療内科学会誌12:3-10,2008
6)谷川浩隆:外科系診療科ができる心身医療の可能性—運動器疼痛に対して心療整形外科的アプローチを行った1例から.心身医学47:1029-1036,2007
7)早川東作:学生の健康白書から見えてくるもの—学生の精神健康調査実施状況.Campus Health 45:74-77,2008
8)清水謙祐,他:【最新の向精神薬の使い方—うつ・不安・睡眠障害】耳鼻咽喉科疾患における向精神薬の使い方.臨牀と研究86:1006-1012,2009
9)Bennett T, et al:Suvorexant, a dual orexin receptor antagonist for the management of insomnia. P T 39:264-266, 2014
10)増田圭奈子,他:めまいの問診票(和訳Dizziness Handicap Inventory)の有用性の検討.Equilibrium Research 63:555-563,2004
11)五島史行:首都圏耳鼻咽喉科医における抗うつ薬,抗不安薬,睡眠薬の処方についての調査.耳鼻臨108:951-954,2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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