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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科88巻6号

2016年05月発行

雑誌目次

特集 いまさら聞けない聴覚検査のABC

ページ範囲:P.371 - P.371

純音聴力検査とマスキング

著者: 石川浩太郎

ページ範囲:P.373 - P.378

POINT

●正しい規格のオージオグラムを使用して結果を記載する。

●規格に合致し,正しく較正されたオージオメータを使用して検査する。

●被検者に対して検査の目的と方法について説明し,十分な理解を得ることが正確な結果を得るのに大切である。

●予備検査と本検査の手法を理解する。

語音聴力検査

著者: 佐野肇

ページ範囲:P.379 - P.385

POINT

●語音聴力検査は純音聴力検査に次いで重要かつ必須の聴覚機能検査であり,どの施設でも施行される必要がある。

●語音聴力検査には語音弁別検査と語音了解閾値検査がある。

●語音弁別検査は聴覚障害の認定に用いられるほか,補聴器や人工内耳の適応判定および適合評価に使用されている。

乳幼児聴力検査

著者: 伊藤真人

ページ範囲:P.386 - P.391

POINT

●乳幼児の聴力評価は,すべての耳鼻咽喉科医に求められている。

●聴性行動観察が必要な検査では,得られた結果は「この値よりよい聴力閾値である」と考えるべきである。

●他覚的聴覚検査(OAE,インピーダンスオージオメトリー)を組み合わせれば,乳幼児の聴力スクリーニングが可能である。

●インピーダンスオージオメトリでは,骨導閾値が推定できる。

●アブミ骨筋反射は感音難聴の鑑別(内耳性か後迷路性か)にも有用である。

閾値上聴力検査(補充現象検査)

著者: 和田哲郎

ページ範囲:P.392 - P.397

POINT

●閾値上聴力検査は日常臨床で頻用される検査ではないが,難聴者の日常生活での不自由さをより直接に反映する。

●各種の閾値上聴力検査によって補充現象の有無をみることができ,内耳性難聴の鑑別に有用である。

●補充現象が生じるメカニズムは外有毛細胞の機能から理解することができる。

●SISI検査は簡便で感度が高く,バランステストは検査できる対象は限られるが最も確実に補充現象を診断することができる。

●補充現象を判定する各種検査法の特徴と限界,検査のポイントを理解し,適切な判断を行う。

耳鳴検査

著者: 坂田英明 ,   高浪太郎 ,   岡田岳歩

ページ範囲:P.398 - P.404

POINT

●耳鳴はゼロになることはない,変動する,治療はやっかいであるといった特徴や病態の説明を十分に行い検査を施行する。

●ピッチマッチ検査での耳鳴周波数は耳鳴自体と同一であることは少なく,あくまで近似した周波数であるということを被験者に話しておく。

●ラウドネスバランス検査では被験者の訴えからは耳鳴がかなり大きくても感覚的には25dB以上ということはなく,自覚的な耳鳴の大きさと一致しないこともある。

●内耳からの興奮性入力の低下が,大脳皮質(聴覚野)において異常な活動性や可塑的な変化を惹起することから,画像により耳鳴の診断ができることがある。

●耳鳴りは心理面での影響も大きく,精神神経疾患との鑑別を十分に行ったうえで検査を選択して行う。

耳管機能検査

著者: 大島猛史

ページ範囲:P.406 - P.413

POINT

●耳管機能検査装置は耳管狭窄だけでなく耳管開放症の診断に用いることができる。

●耳管機能検査には4つの検査モードがある。

●耳管開放症の診断には耳管鼓室気流動態法(TTAG)が有用である。音響耳管法では偽陰性が多い。

●鼻すすりは耳管開放症の病態を変化させ,検査結果にも影響を及ぼすので注意が必要である。

インピーダンスオージオメトリー

著者: 寺西正明 ,   曾根三千彦

ページ範囲:P.414 - P.420

POINT

●インピーダンスオージオメトリーは,音エネルギーが鼓膜,中耳へと伝わる際の音響インピーダンスを測定し,中耳の伝音機能を知る他覚的検査法である。

●インピーダンスオージオメトリーは,実際の臨床ではティンパノメトリーと耳小骨筋反射検査が行われる。

●頻用されるティンパノメトリーは低周波数(226Hz)プローブ音を用い,得られたティンパノグラムは,波形のピークの位置,高さで分類され,A,B,Cの3型に分類される。

●中耳伝音系のインピーダンスを詳細に検討するためには連続周波数ティンパノメトリーが有用であり,内耳圧の評価にも応用されている。

●耳小骨筋反射は簡便な他覚的聴覚検査であるが,反応が欠如していても,難聴と判断できないことがある。また補充現象陽性耳では,ある程度の難聴であれば反射が保たれるので,この反応を認めても難聴がないと判断できないため,注意が必要である。

●耳小骨筋反射は顔面神経麻痺の予後判定にも用いられ,陽性例の予後はよいが,陰性例でも必ずしも予後不良ではなく,電気生理学的検査による評価も必要となる。

耳音響放射と聴性脳幹反応検査

著者: 原田竜彦

ページ範囲:P.421 - P.428

POINT

●耳音響放射は蝸牛の外有毛細胞の能動運動機能,聴性脳幹反応は蝸牛神経から脳幹部の機能を反映する。臨床測定に用いられる耳音響放射には誘発耳音響放射と歪成分耳音響放射がある。

●聴性脳幹反応の測定では,頭頂部と耳垂付近へ電極を貼付する際に電極と皮膚の間の電気抵抗を小さくする。

●耳音響放射の測定では外耳道径に応じた適切な大きさの耳栓を選択して外耳道を密閉し,安定してプローブを留置する。

●聴性脳幹反応および誘発耳音響放射は時間波形として測定結果が表示されるので,典型的波形を理解して結果を判断することが重要である。

●聴性脳幹反応と耳音響放射はともに他覚的聴覚評価に活用されているほか,双方を組み合わせることで聴覚障害の部位診断に活用できる。また,歪成分耳音響放射は聴覚障害の早期発見にも役立つ。

原著

内視鏡下副鼻腔手術を施行した好酸球性副鼻腔炎症例の検討

著者: 牧原靖一郎 ,   浦口健介 ,   岡愛子 ,   石原久司 ,   宮武智実 ,   假谷伸 ,   岡野光博 ,   西﨑和則

ページ範囲:P.429 - P.433

はじめに

 慢性副鼻腔炎に対する治療は1990年代以降に,マクロライド療法の一般化と内視鏡下副鼻腔手術(ESS)の普及により大きく変貌した。しかしながら,症例を重ねるうちにこれらの治療に抵抗する難治性副鼻腔炎に遭遇するようになった。難治性副鼻腔炎はいくつかのフェノタイプに分けられるが,その代表の1つが好酸球性副鼻腔炎(ECRS)であり,病態機序の解明や診断基準の検討,あるいは治療方針に関するコンセンサスが検討されている1)。ECRSに対する手術治療の効果については多数報告されている1,2,3)

 今回われわれは,保存的治療にて十分な治療効果を認めず,ESSを施行した好酸球性副鼻腔炎症例の術前後の自覚症状,QOLの変化,また,内視鏡所見の変化について検討を行った。

原発性副甲状腺機能亢進症手術症例の検討

著者: 中村哲 ,   石永一 ,   濱口宣子 ,   松田恭典 ,   森下裕之 ,   竹内万彦

ページ範囲:P.435 - P.439

はじめに

 原発性副甲状腺機能亢進症は,副甲状腺ホルモンの過剰分泌により引き起こされる疾患である。根治治療は手術による原因部位の摘出であり,術前の局在診断と確実な切除が重要である。無症候性の発見例も多く,手術症例は増加している1)。多くは良性で,腫大腺の切除により治癒しうるが,特有の術後合併症も生じうる。当科で手術加療を行った症例につき臨床的検討を行ったので報告する。

顔面神経麻痺を契機に発見された肺癌側頭骨転移症例

著者: 橋田光一 ,   池嵜祥司 ,   武永芙美子 ,   田畑貴久 ,   寳地信介 ,   北村拓朗 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.441 - P.444

はじめに

 末梢性顔面神経麻痺の原因の多くはBell麻痺とRamsay Hunt症候群であり,腫瘍による顔面神経麻痺は5%程度と少ない1)。腫瘍性顔面神経麻痺の大部分は耳下腺,中耳,外耳などの隣接臓器に発生する悪性腫瘍の浸潤によるもので,転移性腫瘍による麻痺は稀である。今回われわれは側頭骨転移によって顔面神経麻痺をきたし,これを契機に発見された肺腺癌症例を経験したので若干の文献的考察を含め報告する。

鏡下囁語

牡ライオンCecilの死

著者: 上村卓也

ページ範囲:P.445 - P.445

 このタイトルの論説は,まずニューヨークタイムズの2015年8月9日号(ウィークリーレビュー)に載った。それによると,ザンビア(アフリカ,そのほぼ中央になるコンゴの南隣)でアメリカ・ミネソタの歯科医,狩猟家に牡ライオンCecilが殺されたというニュースはインターネット上で世界的な反響を呼んだ。野生動物の減少や大規模なゾウなどの密猟が問題になる今日,昔のような大型動物の狩猟を楽しむことはできなくなってきている。しかも,Cecilは普通の動物ではない。この13歳の牡ライオンはジンバブエの国立公園での人気者であり,首輪をつけられており,オクスフォード大学の研究者が2008年以来トラッキングしていて,殺すことは法律で禁じられていた。

 しかし,この事件後,アフリカのライオン狩りを制限ないし禁止すべきという話にはならなかった。2週間後のニューヨークタイムズはその後の話として,「トロフィー動物の弁護—ビック・ゲーム・ハンティングが野生動物の保護になるという自然保護活動家の主張」という記事を掲載した。その記事によると,狩猟はアフリカのライオンの減少,1世紀前の20万頭から今の約3万頭への減少の主因ではないという。主な脅威は生息地の減少である。ある狩猟家たちは獲物の生息地を維持する努力によってその保存を助けていると主張する。

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欧文目次

ページ範囲:P.369 - P.369

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.440 - P.440

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.446 - P.446

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.450 - P.450

 あとがきを書いておりますこの時期は桜が満開です。都内を車で走りますと桜の木の下には必ずシートを地面に敷き色々なグループが酒盛りをしています。規模の大きいところから,公園で1〜2本しかない木の下でもしっかり宴会モードです。私はと言えば,他の外科系医局から当医局に花見の会のお誘いがありましたが,若手に任せて風邪を引かぬように帰宅へと向かい,体力温存といたしました。5月号(6号)発刊のころは,それこそ暖かい発汗の時期になっていると思います。5〜7月には耳鼻咽喉科関連の学会もあちらこちらで開催され,耳鼻咽喉科の先生方は準備も含め,全国で忙しく活動されている頃でしょう。

 さて6号の特集は「いまさら聞けない聴覚検査のABC」として専門の先生にとりましてはもちろん,聴覚検査でわからないことや疑問をもっておられる先生方には丁寧に解説され,とても有用な企画となっています。8つの各項目を専門の先生方がわかりやすく解説,紹介,いまさら聞けないと感じている検査内容について改めて聴覚検査の道しるべとして示してくれています。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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