原著
下眼瞼向き眼振を呈した17症例の臨床的検討
著者:
松吉秀武
,
山西貴大
,
後藤英功
,
三輪徹
,
栗崎玲一
ページ範囲:P.513 - P.518
はじめに
下眼瞼向き眼振(DBN:down beat nystagmus)は約40%が特発性で原因不明とされている1)。DBNが前庭小脳の障害によって認められるとの報告は多く,局在診断的意義も大きいとされている。脊髄小脳変性症(SCD:spinocerebellar degeneration)とDBNとの関係については,同眼振を認める50症例の検討を行ったところ38症例が中枢性であり,そのうち,13症例の非遺伝性多系統萎縮症(MSA:multiple system atrophy)型のSCDを含んでいたとの報告がある2)。またSCDのうち脊髄小脳変性症6型(SCA6:spinocerebellar ataxia type 6)においては84%の症例に頭位変換時のDBNを認めたのに対してMSA症例では6.3%にとどまり,DBNはSCA6に有意に多いと報告されている3)。SCDによる小脳機能不全症状がしばしば末梢性めまいと類似するため,約25%の患者が耳鼻咽喉科を受診すると報告されている4)。このためSCDを適切に診断し,治療および社会支援に向けての耳鼻咽喉科医の責務は大きなものと考える。そこで,当院を受診したDBNを認めた17症例についての検討を行った。