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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科88巻8号

2016年07月発行

雑誌目次

特集 もう困らない! 異物摘出マニュアル

ページ範囲:P.541 - P.541

外耳道・中耳異物

著者: 萩森伸一

ページ範囲:P.542 - P.550

POINT

●外耳道・中耳異物の種類は年齢によって異なり,幼小児では小玩具類が,大人では耳掃除に用いた綿花や紙片などが多い。

●診断には視診が最重要で,顕微鏡や内視鏡下に観察することが望ましい。CT画像は異物と周囲構造物との関係や中耳損傷の有無の評価に有用なことがある。

●外耳道異物は一般に外来で摘出するが,疼痛が強い例や小児例では全身麻酔下で摘出する。中耳異物は鼓膜修復や耳小骨連鎖再建が予想される場合,全身麻酔を選択するのがよい。

●救急患者として来院することも多く,迅速かつ適切な診断と治療方針決定が求められる。

鼻腔・副鼻腔異物

著者: 梅木寛

ページ範囲:P.552 - P.559

POINT

●鼻腔異物のほとんどが10歳以下の幼少児例である。

●副鼻腔異物は鼻腔異物に比べると稀である。鼻腔異物とは異なり成人に多くみられる。

●ボタン型電池による異物は早急に摘出する。可能であれば蒸留水による鼻洗浄を行う。

●難治性の副鼻腔炎の原因として鼻・副鼻腔異物も疑う。

●視診による診断が困難な場合には,CTやMRIなどの画像検査が有用である。

口腔・咽頭異物

著者: 能田淳平 ,   佐伯忠彦 ,   羽藤直人

ページ範囲:P.561 - P.567

POINT

●口腔・咽頭異物は魚骨が多い。

●患者が訴える咽頭異物の介在部位の左右はほぼ正確であるが,上下は必ずしも一致しない。

●咽頭異物の介在部位は,口蓋扁桃,舌根部の順に多いことを念頭に置き,適切な器具を用いてていねいな観察を行う。

●鉗子チャンネル付き内視鏡は口蓋扁桃下部,舌根部,下咽頭の異物摘出に有用である。

●視診で異物を認めなくても,限局した持続する痛みを訴える場合はCTによる画像診断を施行する。

●口腔・咽頭腔外に異物が迷入した場合は,移動したり膿瘍を形成する場合があるため,早急に摘出を行う。

喉頭・気管・気管支異物

著者: 櫻井一生

ページ範囲:P.568 - P.575

POINT

●喉頭・気管・気管支異物は,生命にかかわる重篤な状態に陥ることがある疾患であり,早期に診断,治療する必要がある。

●喉頭・気管・気管支異物の診断には,まず疑うことが重要であり,注意深い病歴の聴取,胸部の聴診が必要である。

●小児の気管・気管支異物はX線透過性異物が多く,胸部単純X線検査では直接異物を確認することはできないが,Holzknecht's signは診断に有用である。

●胸部CT検査は,X線透過性異物の描出も可能であり,診断が困難な例には有用である。

●早期診断のためには,気管・気管支異物を疑ったら,ためらわず内視鏡にて気管内を観察することが必要である。

●喉頭・気管・気管支異物の摘出には術中,術後の気道管理が重要であり,異物摘出術は他科との連携を含め,万全な準備のうえに行うべきである。

食道異物

著者: 後藤一貴

ページ範囲:P.577 - P.584

POINT

●異物を念頭におき問診する。

●内視鏡検査,画像検査など複数の検査を行い見落としがないようにする。

●問診にて疑わしいと判断できれば上部消化管内視鏡をためらわない。

●他科との連携を普段から行っておく。

●異物摘出後は患者,家族に適切な指導を行う。

書評

口腔咽頭の臨床 第3版

著者: 宇佐美真一

ページ範囲:P.576 - P.576

 耳鼻咽喉科はカバーする領域が広く,多くのサブスペシャルティ領域から成り立っているのが特徴である。なかでも口腔咽頭領域は,耳鼻咽喉科の重要なサブスペシャルティ領域の1つとしてこれまで発展を遂げてきた。口腔咽頭領域の疾患の多くは直接明視できることから,視診がまず診察の第一歩として重要である。日本口腔・咽頭科学会が監修している本書は,1998年の初版発行の際からイラスト,カラー写真をふんだんに使用し,われわれ耳鼻咽喉科医が口腔咽頭領域の診察をするうえで重要な情報を提供してくれる書として好評を博してきた。

 この領域は味覚,摂食,嚥下,構音といった生活の質(QOL)を左右する重要な機能を扱っており,われわれ耳鼻咽喉科医にとってこの領域の疾患を正しく診断し,適切な治療をしていくことは重要な責務の1つである。またこの領域は,免疫学,分子腫瘍学とも関連が深く,ここ数年で急速な進歩がみられた分野でもある。今回の改訂第3版では,それぞれの疾患に関して最近明らかになってきた新たな知見を紹介してくれている。例えば,最近腎臓内科からの紹介が増えてきているIgA腎症との関連性,扁桃摘出術の有効性についても詳細にレビューされており,日常臨床で必要なエッセンスがコンパクトにまとめられている。また,最近新たに登場してきたHIV関連唾液腺疾患,IgG4関連疾患などの疾患概念,さらに社会的にも重要視されている睡眠時無呼吸症候群,嚥下障害などについても多くのページを割き,詳細かつていねいに解説をしてくれている。この領域の良性腫瘍,悪性腫瘍の取り扱いも耳鼻咽喉科医にとって重要であるが,診断から治療までわかりやすく概説されている。また治療,特に手術に関しては,最近は内視鏡を用いたより低侵襲の手術が主流となってきているが,本書はそういった治療面での情報も過不足なくアップデートされている。

原著

頸部に発生した異所性胸腺腫の1例

著者: 布施慎也 ,   永尾光 ,   井上麻美 ,   豊田健一郎

ページ範囲:P.585 - P.589

はじめに

 異所性胸腺から胸腺腫が発生することは稀である。異所性胸腺腫は前側頸部,甲状腺下極内側や近傍に位置することが多い1)。今回,われわれは術後に診断に至った頸部に発生した異所性胸腺腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

インフルエンザ感染が契機となり喉頭痙攣を発症した1症例

著者: 皆木正人 ,   井口郁雄 ,   綾田展明 ,   江草憲太郎 ,   福増一郎 ,   河野達也

ページ範囲:P.591 - P.594

はじめに

 喉頭痙攣とは過度の気道防御作用により,声帯の内転運動が持続的に起こり,吸気性喘鳴や呼吸困難をきたす疾患である。気管内挿管時の発作が散見されるが1),日常生活中の気道過敏症状に伴う発症も報告されている2-5)。今回われわれは,インフルエンザ感染が契機となり喉頭痙攣をきたした1症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

磁石による両側鼻腔異物の2例

著者: 近藤律男 ,   榎本浩幸 ,   野中学 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.595 - P.599

はじめに

 鼻腔異物は圧倒的に小児に多い疾患であるが,磁石が鼻腔異物である症例は比較的少ない。また鼻腔異物が両側鼻腔に存在することは稀である。今回われわれは磁石による両側鼻腔異物症例を2例経験し,うち1例は鼻中隔穿孔にまで至っていた。鼻腔異物の文献的考察を加え報告する。

高齢者の上顎洞に発生した癌肉腫の1例

著者: 森川朋子 ,   寺田友紀 ,   宇和伸浩 ,   佐川公介 ,   毛利武士 ,   貴田紘太 ,   岡秀樹 ,   中正恵二 ,   山本聡 ,   冨士原将之 ,   阿知波左千子 ,   阪上雅史

ページ範囲:P.601 - P.606

はじめに

 癌肉腫は癌腫成分と肉腫成分が同一腫瘍内に存在する稀な悪性腫瘍である。頭頸部領域では喉頭,甲状腺に多いことが報告されており1),上顎洞に発生することは比較的稀である。癌肉腫は癌腫と肉腫が別々に同一腫瘍内に発生した真性癌肉腫と,癌腫成分の一部が二次的に肉腫様に変化したいわゆる癌肉腫の2つに大別される2)。今回われわれは高齢者の上顎洞に発生したいわゆる癌肉腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

甲状腺良性腫瘍内出血により急速な気道狭窄をきたした1例

著者: 安原一夫 ,   宮野一樹 ,   戸島均

ページ範囲:P.607 - P.610

はじめに

 甲状腺腫瘍における腫瘍内出血は良性,悪性ともその報告は散見されるが,急速な気道狭窄をきたした症例の報告は少ない。今回われわれは明らかな誘因なく生じた甲状腺腫瘍内出血による急速に進行する気道狭窄で,緊急気管挿管により救命しえた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.539 - P.539

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.611 - P.611

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.612 - P.612

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.616 - P.616

 5月19日から21日にかけて名古屋国際会議場にて村上信五会長のもとに第117回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会が開催されました。耳鼻咽喉科専門医制度が改訂されて初めての総会ということもあり,大勢の会員が参加していました。中でも,専門医の更新に必須の単位が取得できる臨床セミナーの会場はサテライト会場も含めて満杯で立ち見が続出。殺気立っていました。医学生・初期研修医向けのパネルディスカッションやハンズ・オン・セミナーも盛況で,耳鼻咽喉科・頭頸部外科の明るい未来を予感させてくれました。一方で,メイン会場が煽りを食って寂しかったのはちょっと残念でした。今後は単位を取れるセミナーは早朝に並列で開催し,日中は本来の学術講演を皆さんが聴講できるようにするべきですね。そう言えば,現在の2年目研修医の世代から,耳鼻咽喉科専門医となるためには筆頭著者で論文を執筆していることが必須条件となります。学会誌と違って本誌は共著者に入会していただく必要はありません。専門医を目指す専攻医の皆さん,初めての論文投稿は,是非,本誌にお願いします。

 さて,今月の特集は「異物」です。耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の異物は,外耳・中耳,鼻副鼻腔,口腔・咽頭,喉頭・気管・食道と多岐にわたります。当然のことですが,ほとんどの症例は救急患者として受け入れ体制の不十分な時間外に受診します。しかし,外耳道や鼻腔の異物はまだしも,気道や咽頭・食道の異物では重篤な呼吸障害や食道穿孔など致命的な病態を招くリスクがあり,早期の診断と迅速な対応が求められます。そこで,本特集では,「もう困らない!異物摘出マニュアル」と題して,第一線の現場で耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の異物を取り扱っている経験豊富な先生方に,ご自身の経験を踏まえて各領域の異物に対する対応を解説いただきました。「いざ」というときのために,ぜひ,ご通読いただくことをお願いいたします。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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