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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科88巻9号

2016年08月発行

雑誌目次

特集 頸部腫瘤を見極める

ページ範囲:P.621 - P.621

頸部腫瘤の鑑別診断

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.622 - P.624

POINT

●頸部腫瘤を呈する疾患・病態はバラエティに富んでいる。

●鑑別診断の一番のピットフォールは,その疾患の存在を思い浮かべられないことにある。

唾液腺腫脹

著者: 井口広義

ページ範囲:P.650 - P.656

POINT

●詳細かつ的確な医療面接を行うことが唾液腺腫脹の鑑別診断にとって重要である。

●視診および触診では,耳下腺もしくは顎下腺のみの腫脹か,両者の腫脹か,また片側性の腫脹か両側性の腫脹か,に注意が必要である。

●腫瘍性病変かどうか,また腫瘍性病変なら悪性腫瘍かどうか,に注意が必要である。

●唾液腺局所の疾患のみでなく,全身性疾患の部分症状の可能性も念頭に置く必要がある。

●薬物療法の対象疾患か,手術加療が必要な疾患か見極める必要がある。

●結核,AIDS,MALTリンパ腫,サルコイドーシスなどの希少疾患も忘れてはならない。

神経原性腫瘍

著者: 小野剛治 ,   梅野博仁

ページ範囲:P.658 - P.664

POINT

●神経原性腫瘍の診断には,詳細な病歴問診,画像検査,吸引細胞診検査が有用である。

●術前に可能な限り起源神経を予測し,神経脱落症状についてのインフォームドコンセントを十分に行う。

●手術は基本的に機能保存を目的とした被膜間摘出術を行う。

●手術の際に起源神経を同定し,腫瘍上神経束の少ない部分を切開する。

●悪性神経鞘腫の診断には病歴が非常に重要であり,画像や吸引細胞診検査では診断が困難な場合が多い。手術は十分な安全域をつけ,腫瘍を摘出する必要がある。

血管性腫瘍

著者: 志賀清人

ページ範囲:P.665 - P.669

POINT

●「血管腫」は血管異常であり,腫瘍と奇形に分類される。

●乳児血管腫,毛細血管奇形,静脈奇形,リンパ管奇形,動静脈奇形は,血管異常のなかで臨床的に遭遇する機会の多い疾患である。

●頸動脈小体腫瘍は頸動脈分岐部の圧受容体の傍神経節細胞から発生する,きわめて血流に富んだ腫瘍である。

●頸動脈小体腫瘍の手術では,多量の出血を伴ったり,頸動脈壁の損傷を引き起こす危険性が高い。このため,安易な生検も禁忌である。

リンパ管腫・ガマ腫

著者: 香取幸夫

ページ範囲:P.670 - P.674

POINT

●側頸部や顎下部に柔らかい腫瘤を認める場合,リンパ管腫およびガマ腫の鑑別診断を念頭に置く。

●リンパ管腫は側頸三角に高頻度に認められ,出生時から乳児期に発症することが多い。

●ガマ腫は舌下腺由来の貯留囊胞で口腔底に限局するものが多いが,時に顎下型ガマ腫として頸部腫瘤を主訴に受診する。

●良性病変であることから,増大による気道狭窄や整容上の問題がなければ待機的治療の適応となる。

●治療として,摘出手術に代わり,近年ではOK-432(ピシバニール®)やエタノールによる硬化療法が選択されることが多い。

先天性頸部囊胞性腫瘤

著者: 山内盛泰 ,   倉富勇一郎

ページ範囲:P.676 - P.683

POINT

●先天性頸部囊胞性腫瘤の7割は甲状舌管囊胞,3割が第2鰓裂囊胞であり,この2疾患で大部分を占めるが,ほかにも稀な疾患が多く存在する。

●診断に際しては発生学的,解剖学的な関係を踏まえ,また皮膚瘻が存在する可能性について留意する。

●治療は外科的な完全切除が基本であるが,手術に際しては瘻管を十分に追い,また近接する神経損傷に注意する必要がある。

●稀に悪性腫瘍の合併があり留意する必要がある。特に側頸囊胞ではHPV関連中咽頭癌の頸部リンパ節転移の可能性に注意する。

甲状腺腫脹・腫瘍

著者: 山下拓

ページ範囲:P.684 - P.692

POINT

●非腫瘍性甲状腺腫脹は,症状からある程度疾患名を予測し,甲状腺機能検査や各種抗体検査,シンチグラムを含む画像検査で診断を確定する。

●急性化膿性甲状腺炎は,下咽頭梨状陥凹瘻が原因であり,消炎を待って瘻管の存在診断および根治治療を行う。近年,低侵襲な経口的根治治療の試みも報告されている。

●乳頭癌はハイリスク症例には(準)全摘を行い,T1N0M0症例には葉切除でよいとのコンセンサスが得られているが,グレーゾーン症例については個々の施設・症例で検討を要する。

●濾胞性腫瘍は転移がない限り各種術前検査や迅速病理診断での良悪性の診断は困難であり,摘出標本上での被膜浸潤,脈管浸潤の有無により良悪性診断を行う。

●髄様癌では遺伝性と散在性に分けて治療方針を決定する必要があり,RET遺伝子検査が有用であるが,ていねいな遺伝子カウンセリングが望まれる。

●未分化癌はきわめて進行が速く予後不良なため,根治手術を予定している場合も,手術に並行して診断当初から終末期を意識した緩和医療の対象とすべきである。

《頸部リンパ節腫脹》

炎症性疾患

著者: 齋藤康一郎 ,   渡邉格

ページ範囲:P.625 - P.635

POINT

●確率の高い疾患・病因を知り,念頭に置く。

●問診,身体所見,臨床検査,画像診断や生検を適切に行って診断する。

●治療しながらの診断となる場合,投与する薬剤に配慮する。

●院内の感染制御チーム(ICT)や,他診療科と綿密に連携して診療にあたる。

悪性リンパ腫

著者: 近松一朗

ページ範囲:P.636 - P.642

POINT

●無痛性の増大する頸部腫瘤を認めたときは悪性リンパ腫を疑う。

●悪性リンパ腫はHodgkinリンパ腫とnon-Hodgkinリンパ腫に大別される。

●sIL-2R高値は悪性リンパ腫の診断にはならない。

●頸部リンパ節病変以外の節外病変の存在にも注意が必要である。

●画像所見は,周囲の構造に対して圧排傾向を主体とする比較的均一な内部性状を呈する複数領域のリンパ節腫大が典型的である。

●悪性リンパ腫の診断には生検(病理組織検査)が必要である。

転移性リンパ節腫脹

著者: 佐藤宏樹 ,   塚原清彰

ページ範囲:P.643 - P.648

POINT

●CT所見では局所欠損・中心壊死および集簇が重要である。

●上頸部の囊胞状リンパ節ではヒトパピローマウイルスによる中咽頭がんを疑う。

●頸部リンパ節転移診断はCTより超音波のほうが正確である。

●外切開によるリンパ節生検の前に,超音波ガイド下穿刺細胞診,組織診を検討する。

●左鎖骨上リンパ節には全身の癌種が逆行性に転移する。

●Modified Killian法を用いて耳鼻咽喉科領域をくまなく観察する。

書評

顎・口腔のCT・MRI

著者: 栗田賢一

ページ範囲:P.649 - P.649

 このたび,メディカル・サイエンス・インターナショナル社から刊行された「顎・口腔のCT・MRI」は,顎口腔領域に関する画像診断の最新の解説書といえる。私の知る限り,国内では本書に匹敵する同類の本は存在しないのでないか。

 編者による序文では,「最近,多くの歯科医,口腔外科医,耳鼻咽喉科-頭頸部外科医および放射線科医が顎・口腔領域に詳しい画像診断書を切望している,と頻繁に耳にするようになったため,その要望に応えるべく,顎・口腔領域について詳しく記載した画像診断書を出版する運びとなった」とあるが,まさに時宜を得た出版といえる。

原著

CHARGE症候群の小児3例における人工内耳埋め込み術後の聴性行動反応の変化

著者: 力武正浩 ,   榎本千江子 ,   南修司郎 ,   加我君孝

ページ範囲:P.693 - P.698

はじめに

 CHARGE症候群は,初期にはCHARGE associationという診断名が使われた多発奇形症候群である1)。網膜の部分欠損,心奇形,後鼻孔閉鎖,成長障害・発達遅滞,外陰部低形成,耳奇形・難聴を主症状とする。その後の分子遺伝学の進歩によりCHD7遺伝子のヘテロ変異(ha8番染色体8q12.1に存在するChromodomain helicase DNA binding protein-7)が原因の1つであることが判明した2)。耳科学的には外耳・中耳・内耳の奇形による難聴が認められことが多く,難聴の程度も軽度から高度までさまざまである。聴覚障害に対してはまず補聴器装用となるが,知的発達障害のため,そのフィッティングは容易ではない。高度難聴例では補聴器で効果が得られないため,人工内耳の適応が検討されるが,発達障害や内耳奇形のため,その判断は難しい。今回,われわれはCHARGE症候群小児例で高度難聴を認め,補聴器装用効果が乏しい小児3例に対し人工内耳埋め込み術を行った。その経験と,術後の聴性反応の変化について報告する。

小児に発症したアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎(allergic fungal rhinosinusitis)の1例

著者: 上甲智規 ,   上田哲平 ,   菰渕勇人 ,   森敏裕

ページ範囲:P.699 - P.703

はじめに

 アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎(AFRS:allergic fungal rhinosinusitis)は真菌に対するⅠ型・Ⅲ型アレルギーが関連した難治性の疾患である。従来稀な疾患とされていたが,近年病態の認知とともにその報告は増加してきている。今回われわれは小児に発症したアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎の1例を経験したので報告する。

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欧文目次

ページ範囲:P.619 - P.619

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.705 - P.705

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.706 - P.706

あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.710 - P.710

 昨今のニュースにはあまりに刺激的なものが多く,テレビやネット,活字を通じて幾度となく情報が流れ,世の中全体が混乱させられています。東京都知事の辞職問題,参議院選挙,いつの世にもあるゴシップの類,医療に関係あるところでは,さらに混迷をきわめている新専門医制度問題などです。日耳鼻総会の後にまた暗礁に乗り上げた感じです。そういったなかでもMLBでのイチローの大活躍,テニス界における錦織選手の世界的躍進は至極の一服であります。新専門医制度の有効性は別として,耳鼻咽喉科の若手の先生方は,どうぞ前向きに症例報告,研究報告を学会で口演し,論文発表を通じて広く世の中に提示してください。耳鼻咽喉科・頭頸部外科が至極の一冊となるよう編集委員,医学書院総力を挙げて努力したいと思います。

 今月の特集は「頸部腫瘤を見極める」というテーマで,新進気鋭の先生方に執筆をお願いいたしました。総論的な「頸部腫瘤の鑑別診断」については本誌編集委員の丹生健一先生に,頸部リンパ節腫脹の「炎症性疾患」は齋藤康一郎先生,「悪性リンパ腫」は近松一朗先生,「転移性リンパ節腫脹」は佐藤宏樹先生,「唾液腺腫脹」は井口広義先生に,「神経原性腫瘍」は小野剛治先生,「血管性腫瘍」は志賀清人先生,「リンパ管腫・ガマ腫」は香取幸夫先生,「先天性囊胞性腫瘤」は山内盛泰先生,「甲状腺腫脹・腫瘍」は山下 拓先生にと,各疾患のポイントと診断,分類や鑑別のコツ,治療に至るまでわかりやすく解説いただいています。専門医試験を前にされている先生方にも有益な内容です。また原著として小児に関する2編,CHARGE症候群小児3症例の人工内耳に関する論文と,小児のアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎症例が掲載されています。いずれもホットな内容です。是非ご一読いただければと思います。執筆していただいた先生,ご投稿いただいた先生に改めて御礼申し上げます。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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