原著
CHARGE症候群の小児3例における人工内耳埋め込み術後の聴性行動反応の変化
著者:
力武正浩
,
榎本千江子
,
南修司郎
,
加我君孝
ページ範囲:P.693 - P.698
はじめに
CHARGE症候群は,初期にはCHARGE associationという診断名が使われた多発奇形症候群である1)。網膜の部分欠損,心奇形,後鼻孔閉鎖,成長障害・発達遅滞,外陰部低形成,耳奇形・難聴を主症状とする。その後の分子遺伝学の進歩によりCHD7遺伝子のヘテロ変異(ha8番染色体8q12.1に存在するChromodomain helicase DNA binding protein-7)が原因の1つであることが判明した2)。耳科学的には外耳・中耳・内耳の奇形による難聴が認められことが多く,難聴の程度も軽度から高度までさまざまである。聴覚障害に対してはまず補聴器装用となるが,知的発達障害のため,そのフィッティングは容易ではない。高度難聴例では補聴器で効果が得られないため,人工内耳の適応が検討されるが,発達障害や内耳奇形のため,その判断は難しい。今回,われわれはCHARGE症候群小児例で高度難聴を認め,補聴器装用効果が乏しい小児3例に対し人工内耳埋め込み術を行った。その経験と,術後の聴性反応の変化について報告する。